難しいITプロジェクト、厳しい途上国開発、失敗に終わるICT4D、だけど・・・

ICT4Dプロジェクトの大半が期待通りの成果が上がらず失敗に終わっているという話を良く聞く。ICT4Dについて勉強しに行ったマンチェスター大学でも、「またか・・・」という程、失敗例のケーススタディを読んだ。

今回も「またか・・・」という話題。当ブログの元ネタとして使わせてもらっているICT4Dブログにて、「Why ERP System in Developing Countries Fail(何故、途上国のERPシステムは失敗に終わるのか)」というタイトルで、途上国の公共団体やNGO等の組織がERPシステムを導入した場合、失敗に終わるケースが多いことが指摘されている。

このほかにも、途上国のe-governmentプロジェクトの8割以上が「完全な失敗」もしくは「部分的な失敗」に分類されるというレポートや、教育分野でのICT利用は失敗に終わるケースが多いといったような主張は多くある(例えば、OLPCに対する議論でも同様の主張は見られる)。

こういった「ICT4D失敗説」の多くは、何故失敗するのか?という分析に重きが置かれている。そして、どうすれば失敗しないのか?という代替案になると、主張はされているものの失敗要因の分析に比べると若干説得力に欠ける感がある。なぜなら、様々な研究者やInfoDevに代表されるようなICT4D推進派援助機関などが「代替案」を提案しているもの、未だに「ICT4D成功例激増!」といった記事は目にしないからだ。

そもそも、途上国が背景でなくとも、大規模なITシステム導入プロジェクト(=“ICT” of ICT4D)の成功率は低い。さらに、この数十年間に莫大な援助をしているにも関わらず途上国開発が予想通りに進んでないことからも、一般的に途上国開発プロジェクト(”D” of ICT4D)が大成功に終わる可能性も高いとはいえない。これら2名の劣等生を生みの親とするICT4Dが、そんなに簡単にいくわけがない。特に最近、IT関連の仕事に携わっているが、なかなか思い通りに行かぬことが多い。個人的にも、改めて単なるITプロジェクトの難しさを痛感し、重ねて、ICT4Dによる途上国の発展はかなりハードルが高いと感じる。

ただ、プロジェクトとしてのICT利用ではなく、携帯電話やインターネットのようなICTの普及によるポジティブなインパクトについては、途上国の発展に大いに貢献していると思うし、非常に期待が出来る。ICT4D分野の研究も、ERPとかe-government(○○申請システムとか)といった個別システム導入に関するプロジェクトやOLPCなどのICT機器導入プロジェクトよりも、通信網整備や通信コスト削減といった情報インフラの整備そのものや、その情報インフラをどう使うかといったユーザ支援プロジェクトに対象が移っていくべきだと思う。

難しいITプロジェクト、厳しい途上国開発、失敗に終わるICT4D、だけど・・・」への3件のフィードバック

  1. HIROPA

    最近読んだ「傲慢な援助」に影響されてしまったのですが、e-gavamentや教育のICT利用の多くが失敗しているのは、そのアプローチに原因があるのでは、という印象を持っています。イースタリーは「傲慢な援助」の中で、計画至上主義、トップダウンの事業やプロジェクトは失敗し、試行錯誤とフィードバック、アカウンタビリティーの確保された現場主導、ボトムアップ型の事業は比較的成果をあげている、と指摘しています。セブンイレブンの鈴木敏文氏も、試行とフィードバックの重要性を繰り返し指摘されていますし、葉っぱビジネスの「いろどり」もアイデアと計画だけで成功したわけではなく、買い手の情報、ニーズを詳細に把握するために横石さんは1年間の給料の全てを注ぎ込んで料亭通いを続けたし、ビジネスが立ち上がってからも市場の動向、ニーズを把握するために時間と労力を惜しまず努力されています。
     事業サイクルの中に、消費者や現場のニーズを正確かつ詳細に把握し、それを確実にすばやく投入側にフィードバックするシステムが組み込まれていること。全ての計画は失敗することを前提に慎重に試行的に進め、かつ、失敗したときにはすばやく修正や見直しを行うこと。公的なICT事業を含めたあらゆる事業が、生き延びれるかどうかの鍵は、そういったところにあるのではないかという気がします。事業を始める前に要請書一枚とって、これでニーズを把握した、なんて考えている組織は次元が違いますね。

    返信
  2. tomonarit 投稿作成者

    「傲慢な援助」は我が家の本棚にも並んでいます。あの本を読むと、援助機関や先進国による開発援助の失敗は枚挙に暇がないと痛感します。また、ボトムアップアプローチの重要性や住民参加の重要性は明白であり、それを実現させるための手法・フレームワークなども開発されているにもかかわらず、果たして理想通りに開発プロジェクトが実施されるようになったのか?という疑問があります。HIPOPAさんのおっしゃる“事業を始める前に要請書一枚とって、これでニーズを把握した、なんて…”という現実。
    一方、ICT4D分野でも同様にユーザ参加が重要、ボトムアップアプローチが重要と言われているし、先進国におけるITプロジェクトでも同じようなことが繰り返しうたわれていると感じます。しかしながら、それでも依然としてICT4D、ITプロジェクトの成功率が高いとは言えない現状。
    セブンイレブンや「いろどり」のようにグッドプラクティスはあるのに、全ての組織がそのように出来る訳ではないのが実際。
    ボトムアップアプローチなどのグッドプラクティスの「実現」とそれが出来ない「現実」。この間を埋めるための「何か」が足りないような気がしますが、その「何か」が何なのかは自分もわかってないです。

    返信
  3. ピンバック: USAIDとシティバンクによるモバイルマネー利用促進 « ICT for Development.JP

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