Googleの取組みに見るhybridisation

マンチェスター大学Heeks教授のブログで、ICT4Dプロジェクトで作ったシステムやサービスが、途上国の人々(ユーザ)に使われないことがままあるのは何故か?というテーマについての投稿があったので紹介。

“Understanding ICT4D Adoption via Institutional Dualism”というタイトルで、その理由を説明している。先進国からのプロジェクト設計・実施者は、先進国の習慣、常識、ルール、考え方などに基づいてプロジェクトを実施するが、途上国のユーザの習慣、常識、ルール、考え方などとは違うため、そこでギャップが生じることで、ユーザに受入れられないケースが少なくないという。習慣やルールなどは、その国や地域、組織内で、皆がそれに基づく行動をとり、その行動によってさらに習慣やルールが浸透・確立されるという相互連鎖関係(Institutional Network)がある。先進国でも途上国でも、独自のInstitutional Networkにより、それぞれの習慣やルールが確立されてきたため、先進国主導のICT4Dプロジェクトでは、その違いからギャップが生じることになる。そして、そんなギャップが生じた実際のプロジェクトは以下4通りのどこかに行き着く。

  1. Domination:先進国or途上国のいずれかのInstitional Networkが勝つ。先進国が勝つ場合は、ユーザがシステムを使わないという失敗に終わり、途上国が勝つ場合、プロジェクトは修正・再構築を余儀なくされる。
  2. Contest: 先進国or途上国のいずれかのInstitional Networkが優勢になりつつも、劣勢となった側も抵抗をつづけ、もめ続ける・・・。
  3. Parallel-Running:部分的に先進国側が勝つところ、途上国側が勝つところに分かれる。プロジェクトのスコープやフレキシビリティによっては可能。
  4. Hybridisation:両方がミックスされて独自のInstitutional Networkが出来上がる。

もちろん4番目がもっとも理想的であるが、不幸にも1や2になってしまい失敗に終わるケースも。。。

と、上記がHeeks教授のブログの内容。まぁ、そう言ってもHybridisationってのは簡単ではなさそうだ・・・と思っていたところに、ちょうどHybridisationとも呼べそうな取組みがGooglgeのアフリカ現地語対応にみてとれたので、こちらも紹介したい。

Google Africa Blogによると、最近、ガーナ、南アフリカ、セイシェルでの4つの現地語にGoogle検索が対応可能となった。これで合計31のアフリカ現地語に対応したことになる(ちなみに、インターネットユーザが100人当たり0.54人(2009年ITU統計)しかいないエチオピアの公用語アムハラ語にも対応しているのは凄い)。その現地語対応の翻訳作業には、ボランティアで現地の多くの大学(12大学)が協力している。ボランティアで参加した学生は、非常に良い経験を積めるし、Googleとしてもより正確な現地語対応が可能となる。しかも、ボランティアだから費用はあまりかからない。これまで消費するだけの立場だった途上国ユーザが、作り手として参加する意味もある。どちらもWin-Winな関係で、最終的に現地ユーザにも受入れられるシステムが出来上がるという仕組み。これってHybridisationだなぁ。

もう一つ思ったのは、現地語対応というGoogleの素直なアプローチにセンスを感じる。知識やスキルがなければ使えないシステムを、トレーニングや啓蒙活動を通じて使えるようにするのではなく、素直に特別な知識やスキルがなくても使えるようにシステムを変更するというアプローチは、以外に少ないじゃないかと思う(勿論、そもそも英語キーボードのためアルファベットの読み方くらいはわからないと無理だが)。日本のシステム構築プロジェクトでも、使い勝手が悪いシステムや組織のフローにあっていないシステムを、トレーニングやマニュアルを充実させたり、組織のフローを変えることで導入させたりするケースは少なくないのでは・・・?
単純に使いやすいものを提供するというアプローチが、ICT4Dプロジェクトで出来れば、よりユーザに受け入られるものになるのだろう。

Googleの取組みに見るhybridisation」への2件のフィードバック

  1. M Miyazaki

    国際化/現地語化(i18n/L10n)のプラットフォーム下でのl10n,現地語化は大きく入力システムや辞書・シソーラスの翻訳などの作業があります。アジアの言語は、日本語のようなかな漢字変換システムや東南アジア系文字などの脚の処理など大きな技術的課題がありますが、アフリカの言語はアルファベットのためその部分は問題ないと聞いています。(ただ、ここでおっしゃっているアムハラ語はアラビア語系)

    input method については特に大きな技術的な問題はないと思いますので、ここで言っている現地の大学生が参加した現地語化作業とは、シソーラスの作成の部分のことだと思います。

    ちなみにマイクロソフトは、(すいません、もしかしたら、5-6年前のことなので若干変わっている可能性もあります)
    現地語化する段階について地域を4つに区別しています。

    -Full localization
    -Partical localization
    -LIP localization (UIとspellersのみ)
    -enablement only

    また、途上国ユーザに(とはいってもオフィスかウィンドウズを持っていないといけないという条件つきですが)無償のLIPという現地語化したソフトウェアを提供しています。
    Language Interface Pack
    http://en.wikipedia.org/wiki/Language_Interface_Pack
    http://www.cicc.or.jp/japanese/hyoujyunka/pdf_ppt/04SECambodia%20.pdf

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      コメントありがとうございます。
      そういえば、現地語対応ということについて、別の視点から最近面白いと思うことがありました。G-mailがアムハラ語対応してはいるものの、どうやら多くのエチオピア人はアルファベットでアムハラ語の音を表記して、それでメールを良くやっていることを知りました。英語が全然出来ない人でも、どうにかそれなりにちゃんと意味が通じるメールをアルファベットで書いているのに驚きました。本当に便利なものは、どうにか使い方を自分達で考えるというのが、自然な流れなんだと、改めて感じました。

      返信

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