ODA成果の日本への還元、新しい形

これまでJICAではICT分野の人材育成支援を東南アジアを中心に行ってきている。

その目的としては、
・相手国のIT人材を育成することで、その国の国際競争力を上げる
・技術を身に付けることによる就業機会の増加
という開発援助の主目的に加え、
・日本からのオフショア開発などの投資を受けられることを目指す
・日本の技術基準などを紹介し、日本基準の世界への普及を目指す
などの日本の国益といった観点でも支援をしてきている。

そういったプロジェクトが多かった中、新しい形のODA成果の日本への還元事例があったので、手前味噌で恐縮だが、紹介したい。

その支援先は、フィリピン大学ITトレーニングセンター(通称UP-ITTC)というICT分野の職業訓練校であり、JICAでは2004年の設立支援からかれこれ7年ほど支援を続けていた。(支援プロジェクトは2011年3月で終了)

そのUP-ITTCに、昨年から本邦のIT企業(日立情報システムズ)が、新人研修の一環として社員を研修生として送り込むということが行われている。

確かにグローバル化を目指す日本のIT企業にとって、UP-ITTCはとてもいいパートナーになりうると考えられる。
理由として思いつくだけでも、以下のようなものがある。
・フィリピンは英語が標準語であり、英語教育に向いている
・英語とIT技術の研修を同時にできる
・欧米などの英語圏で研修するより遥かに安い
・スタッフはじめ日本との接点があるため、日本文化などへの理解がある

これは、日本がODAとして支援し、育ててきた学校を、日本の企業が研修先として活用するという、これまでありそうでなかった形である。
近年、ODA予算の削減とともに、国益への還元への要望が高まっていると感じることが多いが、このケースはその一つになりうるのではないかと考える。
既にJICAの手を離れ、独自採算で運営しているUP-ITTCであるが、今後もこのように本邦企業などが活用してくれることを切に望む次第である。

<参考>JICAフィリピン事務所に本邦IT企業からの研修生が訪問した記事
http://www.jica.go.jp/philippine/office/information/event/110204.html

ODA成果の日本への還元、新しい形」への4件のフィードバック

  1. Ozaki Yuji

    関わっていた者からの補足情報です。

    このエントリーに取り上げられている研修の実施については、第三者(在フィリピンのコンサルタントさん)が、日立情報システムズさんとUP-ITTCの間を取り持ってくれています。
    具体的には、研修の内容や目標の設定(KPIとかKGIとか)、研修のスケジューリングやモニタリング、講師・補助講師の手配等を具体化し、人が動けるような仕組みを作ってくれました。

    営利企業と非営利団体の間に立ち、言語の壁を乗り越え、信頼性を担保し、両者をうまくすり合わせてビジネスに仕立て上げることのできる人材が、この種の事業には必須です。
    この部分のコストや手間暇をケチると、なかなかうまく進みません。現地滞在期間に強いシバリがある人ではできない業務でしょうね。

    参考1:
    以前(2007-2008年頃)、似たような企画が別の日本企業よりUP-ITTCに持ち込まれたことがありました。
    日本企業が日本国内で一般募集した参加者が、UP-ITTCにて英語で基本情報技術者試験(FE)の課程を学ぶというものです。「英語と技術を同時に学べてキャリアアップ!」ですね。UP-ITTCを下請けとして利用する発想です。
    企画内容は興味深いものだったのですが、余りにもリスクが高すぎると判断されたため、この話は流れてしまいました。

    参考2:
    余談ですが、UP-ITTCに対するFAQとも言える典型的な批判を、手短にまとめてくれた方がいらっしゃいます。
    http://ameblo.jp/manila-ceo/entry-10838303947.html
    *ブログオーナーは日本の大手IT系企業の方をUP-ITTCに案内したそうなので、案内された方が記事内容のような批判をしたのかもしれないですね。
    なお、ブログ主もご存じなのですが、ODAにおける日本語教育の位置づけは非常にヤヤコシく、プロジェクト現場で解決できる問題ではありません。納税者を名乗る人にも理解してもらえる理由づけや仕組みを、予め用意しておく必要があります(ただし、「デマケ」という言葉は、一般的に強い反発を招くようです)。

    返信
  2. M Miyazaki

    >納税者を名乗る人にも理解してもらえる理由づけや仕組み

    これ、難しいですね。。。。
    過去に同様に悩まされた立場にいた者としますと、(もし、考え方間違っておりましたら、ご指摘頂きたいのですが)、プロジェクトの枠組みを超え、ODAのスキーム自体変わっていく必要があるのではないのかなと。

    特に情報系のプロジェクトは、例えば、日本のODAのスキームだと人件費で赤字になって企業さんからは倦厭されてしまう状態など、他国の状況など踏まえて,国民にも分かりやすいような日本企業や日本に裨益がある、と見える柔軟に対応できるスキームに変わっていかないと、この先実施を続けていくのは大変なのではないかな。。。。と。
    技術が日進月歩のITの支援は、途上国支援団体だけでなく、ozakiさんのようなコンサルタントの方や、最新技術をおっかけている技術者がいる企業、企業と比較すると時間的・費用的にも余裕がある協力者のいる大学との連携しながら実施するのが現実的ではないかなと当時は思いながら仕事をしていました。

    返信
    1. tomonarit

      そうですね。
      USAIDのようにODAによる国益を真正面からアピールする空気が日本にはないように感じます。ICT分野は、ODAでやる意義が教育や医療とかに比べてわかり難い。本当は、途上国だって食料や水だけでなく、ICTも必要としていると思うのですが。
      そうは言っても、民間企業や大学などの方が途上国と日本の両方のためになることが出来そうな可能性が高いというのが現状でしょうか。

      返信
  3. Kanot 投稿作成者

    レスポンスが遅くなりまして、すみません。
    ODAの国益への還流については、ずっと頭を悩ませているところです。誰のためのODAなのか?
    現在の流れとしては、弊社は日本国という最大の株主に対し、配当(国益への還流)を求められている民間会社と認識しています。
    ただ、理想的には相手国の発展を第一に、プロジェクトを形成すべきであり、本来的にはそうありたいです。国益に還流できるかは結果論であり目的ではなくありたいです。
    それが日本の信頼などお金では測れない効果を生んできたと思っているので。。

    また、ozakiさんの言っていた、企業と研修先の間に入る人が重要という指摘、ちょっと前にNPOを立ち上げた知人も同じことを言っていました。一見必要なさそうに見えるところにビジネスの種がある。こういうニッチな物が見える人がビジネスとしても成功していくのでしょうね。

    返信

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