インドのソーシャル・アウトソーシング事例

Heeks教授のICT4Dブログから、「インドのソーシャル・アウトソーシング事例と、そこから見えるDevelopment 2.0の課題」を紹介したい。Heeks教授のブログでは、socially-responsible outsourcing(=SRO)という用語が使われているけれど、このブログではもうちょっと短くソーシャル・アウトソーシングという用語を使います(以前使ってた用語で統一するため)。

インドでテレセンター事業などを展開しているDrishteeが、都市部で得た仕事(データ入力、データ編集、電話サポートなど)を地方のテレセンターに卸すことで、地方の所得創出を狙ったプロジェクトを行なっている。事例ではBiharという地域が取り上げられている。比較的人口の多い町(6000人程度)では、地域事務所(PC20台、プリンタ2台、インターネット回線(512KB)、UPS、ジェネレータ等が整備されている←USD13,000で開設)において、データ入力、データ編集、電話サポートなどを行う。一方、もっと小さな村では、個人運営のテレセンター(PC2台〜、インターネット回線(114KB)等が整備されている←USD1,500で開設)でデータ入力、データ編集など(電話サポートはなし)を行う。都市で受注した仕事をするためには、従業員のトレーニング(ITスキル、コミュニケーションスキル、言語など:2〜3ヶ月)が必要であり、それでも仕事開始当初はデータ入力の正確さは75%程度で、開始後2ヶ月ほどでその正確さが95%になるという。このBihar地域でのソーシャル・アウトソーシングのパイロットプロジェクト結果としては、それなりの雇用(地域事務所で19名、地方テレセンターで5名)を生み出し、さらに、十分な仕事が受注出来れば、地方にしては高給を得ることができる(=サステイナブルである)ということが判明したという(細かい結果レポートが知りたい方は、直接Heeks教授のICT4Dブログを参照してくださいね)。

「おっ、凄いな〜」と思ったけれど、Heeks教授の見方は結構シビアである。Development 2.0 として、①ICTの中抜き効果による“ダイレクト”な開発、②ICTによるデジタルプロダクションが可能となったかという視点で見ると、地方で仕事がなかった者が本プロジェクトでデータ入力作業などが出来るようになり、自らが情報の作り手側になれたという点で②は実現出来たと言える。しかし、①については、結局、都市部から地域オフィスへそして地域オフィスから地方のテレセンターへと仕事が流れてくる仕組みであり、最も裨益すべき者(つまり地方のテレセンターで職を得る者)にとっては、全然ダイレクトな開発ではない。ICTによって貧しい者達がダイレクトにデジタルエコノミーに参加することでこれまで以上の利益を得られるというのが、Development 2.0時代に期待されることだけど、これは実現出来ていない。

さらに、十分な仕事を受注する困難さが深刻な課題であると指摘する。一般的なインドのアウトソーシングと比べて価格面でのメリットがあるものの、クライアント側にしてみると、まだ認知度の低いソーシャル・アウトソーシングというモデルそのものに対する不安が拭えないようだ。10年以上前からICT4D分野の課題として指摘されているITインフラやスキルといった典型的なハードルも以前としてある。そして、これらが解決されたとしても、信用や認知度といった新たな課題が立ちはだかる。ICTによるダイレクトな開発が実現される道のりはまだまだ遠い・・・。

と、ここまでがHeeks教授のブログの内容である。確かに、ICT関連の仕事は、「フェアトレードだから、ちょっと質が悪くても買っちゃおうかなぁ」とか思える類のものじゃない(データ入力にミスがあるんじゃ委託出来ない・・・)。そう考えると、ソーシャル・アウトソーシングが信頼を勝ち取るのは簡単じゃないだろう。また、クオリティを確保するためには、ピラミッド型に上位の会社が責任とチェック機能をおう構造にならざるを得ないため、貧困層が“ダイレクト”に利益を得るのも難しい。うーむ、なるほどと思いつつも、ビジネスなんだから安定した受注を得ることの困難さはあって当たり前だし、新しいビジネスモデルなら、浸透するのに時間がかかったり、それを浸透させるために策を打つのも当然という気がした。Biharのパイロットプロジェクトをこれまで同様の開発援助の視点から見ると、Heeks教授の指摘するように、「まだまだ課題が山積み・・・」という気がするが、そもそも、視点を変えるべきだと思う。援助機関が実施するプロジェクトではなく、一般企業であるDrishteeが実施するソーシャル・ビジネスなのだから。課題があって当たり前、むしろBiharのパイロットプロジェクトは十分な仕事が取れればサステイナブルと分かっただけで大成功なのでは?とも感じた。

インドのソーシャル・アウトソーシング事例」への2件のフィードバック

  1. Ozaki Yuji

    テレセンターを手に入れ、「地方で仕事がなかった者が本プロジェクトでデータ入力作業などが出来るようになり、自らが情報の作り手側になれた」ことは、ICT系において最初の大きな壁「インフラと汎用的なスキルを獲得する」を越える素地ができたと言えるでしょう。
    次のステージは、このインフラとスキルを利用して、他の収入源を開拓できるかどうかだと考えます。国際機関の援助/協力は、この最初の大きな壁を越えそうだという結論を報告書に記載して、あとは「後は野となれ山となれ」で締めくくったケースが多いような気がします。

    以下、利率は高いけど禁じ手です(苦笑)。
    ———-
    オンライン詐欺や、詐欺まがいのアフェリエイトでカッパいで逃げる。
    腰を据えてRMT(リアルマネートレーディング)に徹する。
    組織化して、貧困ビジネスを徹底する。
    ———–

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      Ozakiさん、いつもコメントありがとうございます。
      確かに、「次のステージ」にどう進めるか?が課題ですね。スキルを手に入れたことで、チャンスはかなり広がると思いますが、他の収入源やよりレベルの高いポジション(データ入力からテレセンターの運営者になるみたいな)を得るためのキャリアプランが必要ですね。

      貧困層出身でIT長者となったモデルが存在し、それゆえ、人々のITにかける期待が大きく、それが結果的に新たなIT長者の誕生につながるという好循環が出来れば・・・と期待したいです。

      返信

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