FOSSビジネスについて

OSS2012@チュニジアに行ってきました(写真は自分のプレゼンじゃないです)。ICT4D分野に興味を持ちつつも、FOSSというテーマについてはそれほど関心がなかったのですが、今回の会議に参加してみて、改めてFOSSも非常に奥の深いテーマなのだと実感しました。会議では、Google、マイクロソフト、Samsungからの発表者もいて、民間企業もこの分野には関心が高いのだと改めて感じました。あまり多くのセッションに出席したわけではないのですが、いくつか出たセッションを通じて感じた点を以下ご紹介。

複数のセッションのテーマでビジネス×FOSSというテーマが取り上げられていました。特にこの分野ではアフリカやカリブ諸国といった途上国という背景でのFOSSビジネスについての発表がありました。

確かにFOSSはライセンス料の問題がないし、オープンソースなのでビジネスを始めるハードルが低いと言える。なんとなく初期費用が少なくて済むICT分野での小規模ビジネスで、さらにFOSS関連のビジネスならば、途上国のICT産業を盛り上げるドライバーになる可能性は考えられそう。とはいえ、問題はある。
FOSSは一部のサーバ製品を除いてはあまり普及していない。そのため、「普及していない→(FOSSユーザ企業が少ないので)ビジネスにならない→(ビジネスにならないので)FOSSを扱うベンダーが誕生しない→(FOSSベンダーが少ないので)FOSSユーザ企業が増えない→普及していない」というスパイラルが存在し、これが問題である。一部の国では、政府がFOSS利用を推奨する政策(政府自身がFOSSユーザとなるなど)をとっている国もあるが、途上国では政府がFOSSを利用するように推奨しても、対応可能なベンダーが限られていれば、普及も限られてしまう。結局、ICT産業においてどうやってFOSSビジネスクラスターを育成・熟成出来るかが途上国でのFOSSを利用のポイントである。今回、その解決策については、政府の政策次第という話しか聞けなかったが、これが上手いこと出来れば途上国のICT産業発展においてFOSSビジネスが果たす役割は大きく、また、これまで先進国にはなかったモデルとして発展したら面白いと感じた。

これまでFOSSというテーマは技術的分野だと思っていたけれど、途上国のFOSS利用というのは、このように政策的な要素が強いということに気づけた点をはじめ、この分野の日本人研究者の方々とお知り合いになれたことなど、今回の会議に参加出来て非常にためになりました。

FOSSビジネスについて」への8件のフィードバック

  1. Kanot

    プレゼンお疲れさまでした。FOSSは確かにオープンソースだけあって、営業部隊がないですよね。なので積極的に途上国に展開や人材育成するインセンティブもなく・・といったところでしょうか。Linuxも10年前はあれだけ騒がれながら、一般ユーザには浸透せずでしたし(androidのようにLinuxベースで開発されたものはありますが)。大事なのは価格だけでなくマーケティングということですね。

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      そうですね。結局、サポートが出来る会社、技術者の数によるところが大きいのだと感じました。
      自分と同じく本の紹介で発表した元ピースコープのアメリカ人が、ガーナの学校でOpenOfficeや古いPCをシンクライアント化するツールなどFOSSを活用した経験を紹介したのですが、かなりスキルがないとそのような活動は無理で、途上国でそんなスキルを持った先生を雇うくらいなら、違法コピー製品を使うほうが楽というのが実態だと思いました。事実、彼女もその点は同意で、自分がいなくなった後は、引き続きFOSSが使われるのか確証はないと言っていました。

      返信
  2. Ozaki Yuji

    FOSS利用の古いPCのシンクライアント化、ってLTSPかな? Ubuntu (Edubuntu) など、Linuxでは昔に比べて導入が容易になりましたね。大阪の箕面市では市の職員さんが学校を中心に導入しています。
    箕面市役所Edubuntu日記
    この前提となるには「快適なネットワーク環境」が必要ですが、少なくとも10Mbpsを超えるインターネット接続帯域を個人で占有できる環境でしょうね。いかにFOSSが無料とはいえ、インストールディスクもノウハウもクラウドもインターネットの先にありますし。

    個人向けビジネスへの展開については、かつての「デルの悲劇」が想起されます。同社は2002年から2004年にかけて、個人利用者を取り込むべくテレビ広告を展開したこともあり、個人向けパソコンの販売量は3倍以上に伸びたものの、急激な販売の伸びにサポート体制が追いつかず、2003年で総合1位だったサポートランキングが2005年には最下位に落ち込んでしまった事例です。
    大衆化の宿命

    デスクトップで動くOSやアプリケーションの販売や提供(必然的にBtoCや受託開発風味)では、開発力もさることながら、販管やサポートに体力を吸われてしまうので、小さい企業ではしんどいでしょう。
    流行となっているWeb上のサービス開発では、クラウドも安くなっているので、貴重なエンジニアをサポートやサーバーの増強や保守管理に専念させすぎることなく、サービス開発に集中させることも徐々に可能となっているようですね(人間の物理的な移動が少ない)。
    知識とマナーと好奇心があり、占有できるネットワーク環境と少額決済手段を持っている人間が、そのような「オモロイ」サービスを体験・開発できる時代なのでしょう。

    役務にも物納を義務づける等、物理的にモノを購入・入手しないと気が済まず、(事前に見積もりが取りづらい)リカレントコストの発生を嫌う役所系のオシゴト(特に途上国)では難しいかも。

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      Ozakiさん
      コメントありがとうございます。
      「知識とマナーと好奇心があり、占有できるネットワーク環境と少額決済手段を持っている人間」というフレーズが気に入りました。
      こういう人間が途上国に増えれば、SMEのIT産業が盛り上がるでしょうね。IT人材育成と言ったときにプログラミングのスキルだけでなくWeb上でのコミュニケーションスキルなども今後かなり重要になる気がします。

      返信
    2. M.Miyazaki

      Ozakiさんのおっしゃる「間接経費が認められ、快適なネットワーク環境」があれば、例えば経営破たんした夕張市役所のシステムのようなリース切れしたPC使用シンクライアント化し(OSはLinux)、データは全て某県のデータセンターに保管(クラウド利用)といった安価で最先端な自治体システムの事例をそのまま途上国政府に持って行ける気がします。……..でも、その前に夕張市役所の人が途上国に行ってくれないか笑。

      返信
      1. Ozaki Yuji

        Miyazakiさん;
        無形物であるサービスの概念や機能を説明するには、とにかく動くモノ(プロトタイプ)を提示することが手っ取り早いはずです。Webサービス開発の場合、Amazon EC2/S3、Windows Azureなどの、IaaS/PaaSのプラットフォームとしてのクラウドサービスが大きな役割を持っていると考えています。やや齟齬はありますが、OSI参照モデルの、第4層くらいまでがメンテフリーにでき、開発者は第5層から上(特に第6-7層)に資源を集中することができるのではないでしょうか。さらに、本番環境への移行でも、スケールアウトが「お金の支払い(だけ)で直接解決できる」こともあります。

        とはいえ、途上国の公務に関わる業務システムを(当該国から見て)海外のクラウドサービス上に置いてしまうのは気が引けます。政治的要因(国際データ通信ネットワークが意図的に遮断されたり、米国との政治関係の悪化の可能性など)や、途上国の貧弱な通信環境を考慮すると、結果的にオンプレミス一択となり、システムメンテナンスが大変なうえ、数年レベルで陳腐化せざるを得ない高価な機器を購入することの抵抗感にブチ当たります(参考:無償資金協力実施適正会議(平成15年度第8回会合)議事録)。

        Amazon EC2/S3だけでなく、Salesforce.com など、いい環境がぞろぞろ出ているのですが、「無形物であるサービスにお金を支払う」という概念そのものも受け入れづらいのでしょう(これは日本でも同じ)。Google Appsをはじめ、無償のサービスが異常に強いことも原因のひとつではありますが。

        JICAプロジェクトの現場レベルで言えば、リカレントコストの支払い能力が弱い(継続的なローカルコスト発生に対して非常に敏感)カウンターパートが多いため、IT機器等が(プロジェクト初期にODA資金で)すべて買い切りになりがちであり、ソフト/サービスは(よくわかんないから、という理由で)ハードのオマケとして扱われがち、って事情もありますね。

  3. M.Miyazaki

    確かにファーストサーバの例などあるので
    クラウドを過信してはいけないと思うのですが、
    今後多くの企業がデータ丸ごとサービス業者に
    委託する体制が主流になっていくのかなあと思って
    います。

    Windows Azure,Amazon EC2/S3のようなメジャーなサービス使って、
    アメリカが政治的に遮断…思いつかなかったです笑。

    私はもっとローカルなのを想像して、例えば
    東南アジアあたりだったらタイのセキュリティ等
    しっかりした民間会社に委託、バングラだったら国内の
    民間に委託するようなことをイメージしてました。

    リカレントコストは日本のODAでは未だのようですが
    USAIDでは法律に準ずる場合は契約時の交渉次第で
    認められているようですね。
    http://home.comcast.net/~NGOcolumn/021028hs.html

    ITプロジェクトに限らず、途上国支援全体において
    各段と状況が改善されると思うのですが。

    頂いた資料拝見しました。
    「一旦供与するのはいいが、更新は誰が行うのか。
    更新の際にも援助することは援助依存体質を生んでしまうし、
    援助し続けることはできない。」

    これを論破できる作文ができればいいということですね。

    返信
  4. Ozaki Yuji

    > Miyazakiさん;
    おっしゃる通り、業務システムがオンプレミスからクラウドへ移行する流れは止められないと思います。例えば、3.11後の日本での地方自治体や公共団体のディザスタリカバリへの取り組みなどが代表的でしょう。この流れは副次的に、受託開発(ソフトウエアの所有)から、サービスの利用(サブスクリプションや共同サービス開発)への移行として顕在化するでしょう。

    とはいえ、IFRSでもクラウドをリースと見なし、資産として計上する可能性があるため、小さいレベルでの受託開発そのものは無くならないでしょうけど。

    政治的な話の部分では、データセンターの運営会社、データセンター設置場所、データを預けている者、それぞれの国の法律が問題となるのでは?と考えています。
    国内データセンターに強制捜査が入るリスクの現実度は?

    ある国の政府が、意図的に他の国のドメインや特定のサービス(SNSやファイル共有など)へのアクセスを遮断することは十分に考えられますし、対抗して米国当局が、捜査権限を米国企業が自国や他国に設置しているデータセンター内のデータに対して直接/間接的に行使することも十分に考えられる訳です。
    また、日本の当局が、米国企業が日本国内で提供しているサービス(Amazon EC2東京リージョンなど)に対する捜査を行うことも考えられます。
    陸続きの国同士は、歴史的/感情的に微妙な関係であることも多いのですが、ASEANやECOWASなどの地域共同体レベルでデータセンターを相互バックアップできればいいんですけどね。その上にクラウドサービスが乗っていればさらに面白いんですけど…。

    ネタ:
    ファーストサーバの障害は大きな影響となりましたね。ファーストサーバ側の運営体制が責められるのはアタリマエですが、ファーストサーバに業務システムを乗せることを提案した担当者(ユーザー企業内の担当者)が、自社内で袋叩きになったんじゃないかと危惧しています。曰く「お前がクラウド利用なんぞを提案したから我が社は被害を被った」と。
    もし、JICAのプロジェクトで(ユーザーとしてファーストサーバを使っていて)こんなことが起こったら、提案した人間(私のような者)がマジで詰め腹を切らされてしまうことになるんだろうな、とガクブルです(笑)。

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