新興国・途上国46ヶ国のブロードバンド「値ごろ感」ランキング

以前、ICTWorksブログで取り上げられていたレポート「The Affordability Report 2013」についてご紹介。Alliance for Affordable Internetという団体が作成したレポートです。その名のとおり、ブロードバンドの「値ごろ感(Affordability)」の切り口で、新興国・途上国46ヶ国をランク付けしたもの。

  • 世界の5人に3人はインターネットに接続できない。
  • 途上国では31%の人しかインターネットに接続できていない。
  • 最貧国では、10%以下の人しかインターネットに接続できない。
  • インターネットの重要性が増している現在、インターネット環境の未整備は国の経済・社会発展を阻害している。

という上記のイントロから始まるこのレポートでは、①インフラ整備状況と②接続コストの2つの観点から、46ヶ国のブロードバンドの「値ごろ感」を総合評価している。気になるランクは下記のとおり。

AffordabilityRanking MAP

Alliance for Affordability Internet (2013) Affordability Report 2013. p16-17

ランキング順位はさておき、レポートには誰もが使える価格帯のブロードバンド接続を実現するための障壁として4つのポイント(以下)が記載してあった。ちょっと端折って紹介。

  1. 市場競争原理の導入だけで上手くいくもんじゃない: 市場競争原理の導入(市場開放)は、ブロードバンドの低価格を促進するための重要な手段であるが、それだけでは機能しない。需要と共有の両方を促進するための適切な政策と規制が必要。
  2. 通信インフラ環境整備がまだまだ足りない: 特に途上国ではインフラが足りていない。インフラへの投資が必須であるが、そのためには、投資リスクの軽減を図るとともにインセンティブを持たせるための政策が必要。例えば、補助金、免税特権、複数社での回線共有、PPPといった政策が必要。また、新規事業者の参入やイノベーションを促進するための規制緩和も重要。
  3. 人口が少ない地方部のフォローが大変:人口(=ユーザ数)が少なく採算が合わない地方部のインフラ整備・サービス提供については、政府が補助金や免税政策を使って、いかに通信事業者にインセンティブを持たせるかがカギになる。また、ローカルコンテンツ、ローカルサービスの開発も重要。
  4. ブロードバンドの効果(雇用創出、仕事効率化、生産性向上、経済効果)を最大限に活かすには政府のリーダーシップが重要: 多くの国がブロードバンド化への方針を策定して実行に移しているが、政策は包括的である必要がる。インフラ投資を促進しつつ、一方でBOP層などへの利用促進を図るといった需要と共有の両方をカバーした政策であるべき。

以上、4点が記載されていました。通信分野に限らず、運輸交通でも電力でも郵便サービスでもなんでも、採算がとれない地方への投資・サービス提供をどうするか?というのは公共性のある事業では、必ず直面する課題ですが、こうしてみると改めて納得。

また、ガーナのブロードバンドについてのケーススタディがレポートに載っていたので、紹介したい。(ちなみにガーナはランキングでは30位)

ガーナではモバイルブロードバンドの価格が2011年から2012年の1年間で劇的に下がった。500MBのモバイルデータ通信価格が、14USD (2011年)から10.60USD(2012)と、実に4分の1も値下がりをしている。

この背景には、海底ケールの市場競争があった。2010年時点でガーナに陸揚げされているブロードバンド向け海底ケーブルはSAT3の1本(1社)のみ。ところが2010年から2013年の間に新たに4本(4社:Main
One、 Glo-1、 WACS、 ACE)の海底ケーブルがガーナにつながった。これが、ブロードバンド接続料金が大幅に低下した背景になっている。

なるほど、ついつい国内の通信市場開放とか通信事業者の動きばかりに目が行ってしまうけど、大元は国際海底ケールというわけか。

今回、このレポートを紹介しつつ、改めて「インフラ政策」の重要性を認識しました。オモシロさでいくと前回投稿のWiHatみたいなエンドユーザーを対象とした取組やICT4Educationとか4HealthといったICT利活用も興味深いけれど、ICTのインフラを整備するためのインフラ政策の重要性にももっと注目せねばと思いました。

新興国・途上国46ヶ国のブロードバンド「値ごろ感」ランキング」への4件のフィードバック

  1. Ozaki Yuji

    「人口が少ない地域へのフォロー」「通信インフラの環境整備」については、ユニバーサルサービス(ユニバーサルアクセス)がキーワードでしょうか。
    日本では、毎月の携帯電話料金明細の中で、電話番号あたり3円ほど請求されている「ユニバーサルアクセス料」が類似ネタかと。プリペイドが多い海外では請求しづらい仕組みなのかもしれませんね。
    総務省のユニバーサルサービス制度の解説:
    http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/universalservice/
    分かりやすい説明:
    http://www.appbank.net/2013/08/18/iphone-news/652796.php

    フィリピンでは、ちょっと似ている「サービス・エリア・スキーム」があります。新規移動体通信事業者に対し、都市部10に対してルーラル地域1の割合で回線を整備するよう義務づけており、携帯電話事業者間の相互接続(ローミング)についても、アクセス約款(異なる事業者間での通信を保証するもの)を規制官庁に提示し、承認を受けることが必要であったと記憶しています。
    また、「通信インフラの環境整備」についても、テレビ放送波の空きチャネル(TV White Space)を使ってTCP/IP通信を通す実験が行われています。遠隔医療もネタに入っていますね。
    http://www.gmanetwork.com/news/story/346994/scitech/technology/tv-white-space-tech-to-be-used-for-health-care-access-in-phl-provinces

    「市場競争原理」については、少し前に途上国への支援で流行した、国営通信事業社の民営化や、地方分権化の負の側面が顔を見せているのかもしれませんね。

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      そうですね。ユニバーサルサービスは、採算がとれない地方部への通信網整備をどうするかの1つのキーワードですね。個人的には、日本にいたときは馴染みの薄い用語でしたが、途上国の通信分野に関する議論をするようになって、初めてちゃんと理解した用語でした。
      フィリピンの事例紹介ありがとうございます。他の国でも、民間企業への通信ライセンスの付与条件に地方の通信網整備を含めたりしてますね。

      返信
      1. Ozaki Yuji

        日本のユニバーサルアクセスは、かつてNTT(電電公社)が敷設した、地方における既存の通信回線の維持とアップデートがメインテーマなので、これから回線を増強敷設する必要がある途上国とは事情が異なるかも。

        思いつきですが、途上国の地方で電力網や道路網などインフラを整備するとき、計画段階から光ファイバー埋め込めませんかね….(県民一人当たり光ファイバーが、全国で一番長い徳島県のやり方に似ているかな…)
        インフラ関係の工事現場って多くの人が働くことになるので、当初はそれら関係者の利用を当て込んで携帯電話のアンテナ立ててもらう→その後人が居住したら恒久利用、っていうスジは成り立たないかなあ…と。途上国の工事現場はハードな環境なので、労働者への福利厚生の一環で遠隔医療(あくまで補助手段として)も実験しちまえ….と。

        医療とか教育とかの目的ごとに細分化した予算の中で、オマケ扱いで引っ張れるほど通信インフラってお安くはないですし。

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