サイバーセキュリティ「体に悪いと知ってるけどジャンクフード大好き」的な感覚

イチャつき禁止

「外交」(2014年3月 vol.24.)という業界誌に、特別企画「サイバー戦争の実相」という記事があった。専門家4名の方々(岩本誠吾氏、山本一郎氏、名和利男氏、鈴木美勝氏)がそれぞれの立場で興味深い記事を書かれていた。

以下、印象に残った点を紹介したい(上記4名の方々の記事を一部抜粋、引用しつつ)。

まず、そもそも国際社会・政治において、ICTの影響を振り返ると、

フランクリン・ルーズベルトの有名な炉辺談話は、ラジオというICTを活用した例であり、結構前からICTは政治のツールとして影響力があったと言える。

同じラジオを全体主義を目指す大衆運動に利用したのがナチス・ドイツの権力者達。ヒトラー内閣の宣伝相ゲッペルス曰く、「19世紀に印刷術が果たした役割を、20世紀にはラジオが担うだろう…(中略)…すなわち第8番目の大いなる力―それこそがラジオの声なのである」(33年大10回ラジオ展示会での演説)(「原典メディア環境」(東京大学出版会)。

そして、ラジオからTVにICT技術が変わり、米大統領選挙では、ケネディVS ニクソンのテレビ討論を皮切りに選挙でのテレビの影響がでかくなる。そして、ICT技術がネットになると、2008年にオバマ大統領がネットをうまく使って成功。一方、「アラブの春」はネットによる統制の機会ないパワーの拡散状況の例。ラジオやTVという一方方向の一対多のツールは、政治家の意思を波及させるために上手く使えたけれど、双方向のネットは使いこなすためのハードルが高く、逆に既存の権力を破壊することにも容易に使えるツールであると言える。

こうして見ると、ICTの影響ってのが改めて大きいものだと気付かされる。

そんなICTを活用するうえでの懸念の1つはサイバーセキュリティである。ご想像のとおり米国はサイバーセキュリティ対策に非常に力を入れており、年間8000億円の予算規模でサイバー攻撃対策をしている(一方、日本は2013年度で300億円に過ぎない)。

そして、以前、このブログでも取り上げたように、中国製通信機器を政府調達から除外するなどの動きもある。

また、英国の情報機関は、名指しでHuaweiの手口として「まずは問題のない正規の製品を納入し正常に稼働させた後で、その半年後に障害を起こした機器を交換すると称してバックドアを仕込んだ機器に差し替える手口で重要情報を奪取しようとする」ことを披露した。

実際、Huawei、ZTEを含む中国系通信機器製造会社は、米政府だけでなくインド、オーストラリア、カナダでも政府調達品から排除され、民間企業での取引の自粛を求める勧告が出された。これを受けて、2013年12月には事実上の米国市場撤退宣言をHuawei社の上級副社長が表明するに至る(ちなみに、日本でも多数の携帯電話通信網にHuaweiの機材が使われている)。

一方、Huawei、ZTEのことを問題視している米国にだって、Googleなどのメールサービス等が米国諜報機関に情報提供をしているということも指摘されている。中国からすれば、お互い様的な感覚か…。

そして、米国のように多額の予算をサイバーセキュリティについやせない国はどうしたら良いのか?途上国ではHuaweiやZTEの通信機材がかなりのシェアを占めているし、政府関係者であっても、名刺を見るとメアドはGmailやYahooメールだったりする。一体、どうやったらセキュリティが確保出来るのか?を真剣に考えると考えるほど困難であるとわかる。

「情報化が進めば進むほど、ぜい弱な国家になる。」という状況は、ICT4Dの可能性を逆にリスクにしてしまう。

とりとめのない課題だけど、それゆえに結局、みんな「交通事故は怖いけど自動車に乗る」とか、「体に悪いと知ってるけどジャンクフード大好き」的な感覚でICTとお付き合いしていくしかないのだろう。

最後に、冒頭の写真はボスニア・ヘルツェゴビナのモスクにあった、「いちゃつき禁止」の看板。サイバーセキュリティと関係ないけど、なんとなく。

サイバーセキュリティ「体に悪いと知ってるけどジャンクフード大好き」的な感覚」への1件のフィードバック

  1. Ozaki Yuji

    「情報化が進めば進むほど、ぜい弱な国家になる」を、「情報化が進めば進むほど、(隠蔽されていた)国家の脆弱性が顕在化する」にお願いしまーす(笑)。
    TCP/IPなどのインターネット関連技術という、同一プラットフォームを使っているが故に、世界のあちこちで顕在化した脆弱性に当事者として対処が求められるようになった、ってことで。

    同時に、ネットワークにぶら下がるICT機器も、自動車と同じく、嗜好品的にコモディティ化しているんでしょうね。

    個人的には、嗜好品的要素の入ったコンシューマ向けの技術やモノの発展には、アーリーアダプターとしての健全なアマチュアの存在が不可欠だと考えています。アドビ社とかアップル社、日本のカメラメーカーは、そんな市井の人たちを巧みに囲い込んでいるような気もします。
    かつては、職業的専門家と非専門家の間にいる人たちが「アマチュア」と呼ばれていましたが、今ではそのポジションが「ヲタ」とか「マニア」として金銭的な非生産性と結びつけられて蔑まれるようになり、「アマチュア」が非専門家(3つ以上のボタンを操作しない人)の総称に変容してしまったように思います。

    海外支援・援助→ICTの世界に健全なアマチュアが出現して受け入れられる時代が来るのか、サウザーの定理(詳しくはググッて)が跋扈するヒャッハーな世界になるんでしょうか…。

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