ウェブ時代をゆく

ガーナ日本人補習校へ娘を連れて行くのが土曜日の日課。ふと、日本人補習校の図書室の本棚を眺めていたら、「ウェブ進化論」で有名な梅田望夫氏の本「ウェブ時代をゆく」を発見。以前読んだことがあったが、改めて読んでみた。2007年の本ながら、今読んでもすごく面白い。日本の大学生とか社会人若手に向けての本だと思うけど、ICT4Dの観点から読んでいても、とても参考となるキーワードに出会えたので、紹介したい。

  • 「オプティミズムに支えられたビジョン」
    梅田氏は、Webの進化(Web 2.0)をとてもプジティブに捉えている。Webの発展には、正の面と負の面の両方があるけれど、梅田氏は以下のように述べている。
    「オプティミズムの姿勢で物事に対峙しなければ、想像は生まれない」、「新しい事業を積極的に未来志向で捉え、挑戦する若い世代を励ましつつアドバイスを与えることの出来る『知的で明るい大人』が増えなければ、未来の想像は出来ない。未来は能動的に変えることが出来るものだが、そのエネルギーはオプティミズムが支えるのだ。(P13−14)」

この点に非常に好感が持てる。そして、ちょいと自分自身の姿勢について反省した。このブログでもそうだが自分はICT4Dについて考えるときに、ついつい批判的になってしまう傾向がある。マンチェスター大学での勉強も基本的には、「ICT=万能なソリューション」じゃないですよ!要注意!ってなメッセージが強かったので、ICT4Dプロジェクトを見ると自分も常に課題や落とし穴を探すことに気を取られがちに…。
でも、そればかりじゃいかんと反省。昨年度、神戸情報大学院大学でICT4Dの講義を持たせてもらったが、ルワンダからの留学生に「失敗事例ばかりでなく、成功事例ももっと取り扱ってほしい」と言われたのを思い出した。『知的で明るい大人』になれるよう、オプティミズムな視点をもっと出していかねば。

  • オプティミズムの根拠となるインターネットの技術的正確(P14)
    梅田氏は上記のオプティミズムを支持する根拠として以下5つのネットの特徴をあげている。そして、これらの特徴は、途上国開発にインターネットが大きな役割を果たすという根拠にもなると感じた。
  1. ネットが「巨大な強者」(国家、大資本、大組織・・・)よりも「小さな弱者」(個人、小資本、小組織・・・)と親和性の高い技術であること。
  2. ネットが人々の「善」なるもの、人々の小さな努力を集積する可能性を秘めた技術であること
  3. ネットがこれまでの「ほんの一部の人たち」にのみ可能だった行為(例:表現、社会貢献)をすべての人々に解放する技術であること
  4. ネットが「個」の固有性(個性、志向性)を増幅することにおいて極めて有効な技術であること
  5. ネットが社会に多様な選択肢を増やす方向の技術であること

上記を眺めてみると(そして、ネットに限定せずに携帯電話等のICT全般として考えてみると)、1の点については、途上国においても、携帯電話やネットは弱者をエンパワーするツールであるし、2や3の点については、Kivaのようなクラウド・ファンディングによって、途上国の小規模ビジネスに寄付や投資を出来る仕組みがあったり、4や5の点については、ネットにMITなど有名大学の授業が公開されたり各種情報がタダで入手出来ることで、途上国でも時間と距離の制約を飛び越えて、勉強したり情報収集するチャンスが増えた、というように考えることが出来る。

自分がICT4Dに魅かれた一番の理由は、途上国の人々も「かっこいい」モノ・事が好きだから、という点からだったけれど、こうして改めて考えると、ICTの途上国開発への貢献というのは必然であることがわかる。

  • オープンソース・プロジェクトの成功要因(P66)
    上記の2の点に絡んで、オープンソースの話が出てくる。「オープンソース・プロジェクトで成功するものと、失敗するものの差は?という疑問に対して、「成功するかどうかは、人生をうずめている奴が一人いるかどうかですね」とシリコンバレー在住のハッカー石黒邦宏が答えたエピソードが紹介されていた。

このオープンソース・プロジェクトの成功要因は何なんだろう?と自分も以前悩んだことがあった。それは、FOSS4Dの論文を書いたときのこと。そのときはバシッとした答えが見つからなかった感があったけど、Linuxのリーナス・トーバルズやRubyのまつもとゆきひろのように自分の人生をかけてそのプロジェクトに打ち込めるリーダーがいれば成功する、という上記の回答はとても腑に落ちた。ICT4Dプロジェクトにおいても強いイニシアティブを持ったリーダー(Champion)の存在が重要という指摘はされているが、それと同じことだ。

上記の点以外でも沢山ためになる学びがあったのですが、長くなるのでここまでで。でも、最後に自分自身がWeb2.0の恩恵を受けたと思える事例を紹介したい。上記のネットの技術的正確の3や4の点である。

自分はこのICT4Dプログを2009年に開始して、不定期&文章クオリティもまちまち、というスタイルながらコツコツと継続してきた。その結果、ブログを通じてこの分野で活躍する方々とも知り合いなれたし、以下のチャンスをもらうことが出来た。

必ずしもブログをやっていたからという理由だけではなく、本業のJICAの仕事に絡んだ講演などもあるが、ブログを書いていなかったら、こういった機会はなかったと思う。今回、梅田氏の本を読み返しつつ自身の経験と照らし合わせて、Web 2.0、ICTの可能性を改めて実感。こういったWeb 2.0、ICTの可能性・便益を途上国の人々にも提供する手助けが出来るよう頑張ります〜

ウェブ時代をゆく」への3件のフィードバック

  1. Ozaki Yuji

    tomonaritさんが引用している「成功するかどうかは、人生をうずめている奴が一人いるかどうかですね」は、故スティーブジョブズの「The only way to do great work is to love what you do.」に繋がるものなんでしょうね。一方で、私が同書の中で気に入っているフレーズは、「Only the Paranoid Survive」だったりします(だったっけ)。

    現実のODAプロジェクトのソフトコンポーネントでは、制度化を目的としたものが結構あり、そのパーツとしてのICT活用では、必然的に制度的なモノが有する問題から逃れることができないでいます。制度的なモノは、対象層が明確になる一方で、その対象層に含まれる全てが「リーチアウト義務の分母」となります。ICT適用に当たり、この分母の制約条件が可処分所得(機器保有状況とか通信料の負担など)や個人レベルのリテラシやだったりする。それって私のせいじゃないっす…。
    結果的に「インパクトが見込めねーよ」と開発学っぽいタームを使ってリソースが計画段階から絞られ、絞られたリソースでは大したことが出来ない…という負のスパイラルまっただ中。

    インターネットなどの通信に立脚したビジネスでは、通信へのアクセス手段を有する人の購買力がターゲットであり、ここでは通信端末の普及度や購買力というモヤモヤしたモノが「売り上げの分母」ですね。ちょうど、AIDMAやAISASといった消費者購買モデルの分母が「認知(Awareness)」という、正確に測定できない事象になっているのと似ています。ここでは、リーチアウトではなく、売り上げが緩やかに義務化します。リーチアウトはどうやってもベストエフォート(自分でコントロールしづらい要素)になっちまうもんね。

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      Ozakiさん:「Only〜」のフレーズ、よく覚えていますね。「病的に注意深い人だけ生き残ることが出来る」みたいな意味ですよね。
      ICTを活用するプロジェクトの場合、おっしゃるとおりターゲット層全員がICTの恩恵を受けるってことは困難で、「俺っちはネット接続するデバイスもってないっす」とか、「デバイス持っているけど、接続料金は払えません」とか、「デバイスも接続も出来るけど、実はIT音痴なもんで、操作が出来ません・・・」といった各自の事情がありますよね。通信インフラのプロジェクトですら、バックボーンネットネットワークの回線速度が3倍になることで、「ユーザー数が◯倍になります」とは言い切れず(←携帯やネット業者の宣伝、価格設定、サービス内容・質などによりけりなので)、いわゆる想定する裨益効果をどう設定するか?は簡単じゃないですし。
      とは言いながら、例えば、交通量予測やマーケティングの市場予測など未来に関する調査ってのは、どれもある程度は思い込みで突き進むものかと感じます(笑)悲観的にならず、この本のようにオプティミズムで行きたいですね。

      返信
  2. Ozaki Yuji

    私自身は、将来にわたる技術発展に対しては激しく楽観的なんですけど、下記の日経ビジネスオンラインの記事にもあるように(2ページ目。閲覧には要無料登録)、「将来の事実をちゃんと持って来い」なんて言う人たちを相手にするのはツラいですよぉー(あははは)。んま、お金を動かすことは大変ですし、お金が公金原資であって、期限がガチならなおさら。
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140910/271073/

    なお、マーケティングの分野では、広告等のクリエイティブ分野や経営判断では感覚・感情的なネタは残っていますが、その裏の企画や販促の世界ではかなり前から、情報通信技術の発展をベースにしたメトリクスを重視しています。
    このあたりでは、吉野家HD(牛すき鍋膳)とゼンショーHD(牛すき鍋定食)の、新製品投入に至る意思決定(人時客数 vs 人時売上)の違いが興味深いです。指標の扱いが店舗運営(店舗オペレーションの継続性)や雇用形態にまで影響を及ぼすんだなー、と、小売の現場にいたこともある人として考えさせられました。※小売の話はODA向きではないですけどね。
    http://togetter.com/li/701671

    返信

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