株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)設立について

JICT.001

株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)という新しい会社が2015年11月に設立されました。

事業内容は、以下のとおり(同機構のWebから抜粋)。

「海外において電気通信事業、放送事業若しくは郵便事業又はこれらの関連事業を行う者に対して資金の供給、専門家の派遣その他の支援を行う。」

その名のとおり、海外の通信・放送・郵便事業へ投資する官民ファンドです(日本政府のインフラ輸出戦略の時流に乗って総務省が旗ふり役となり立ち上げた官民ファンドというのが背景かな)。ファンド総額は300億円規模で、このうち国が200億円を出資するとのこと。発起人となるみずほ銀行から社長が選出されています。また、銀行のほか通信事業者やメーカーなど民間企業も出資しています。ICT企業だと、NTT、KDDI、野村総研、NEC、富士通、パナソニック、日本ユニシス、三菱電機、フジクラ、古川電気工業などが出資しています。なんとなくこの顔ぶれを見ると、ICTサービスというよりは、光ファイバー整備などのICTインフラよりかな?と個人的には思ったのですが、是非、サービス領域も支援してもらいたいところ。

Webサイトも出来たばかりで限られた情報しかなく、この機構への期待感についてはあまりネットでも記事がないなぁ、と思っていたら、BLOGOSで以下のように触れられていました。

「官民ファンドについては、具体の案件もないまま税金を積み上げ、官民の体裁を整えるために税金で巨額の債務保証を付けた上で民間銀行等から半ば強制的に出資又は融資を出させ、実績を作るために甘い審査でお金を突っ込んで結果として税金を毀損させるという行為を繰り返してきた。

今回の放送・通信関係の官民ファンドはどうだろうか?①具体の案件があることと②回収の見込みがあることが最低限の条件。対象となるのは海外案件であるが、果たしてどうであろうか?」

なるほど回収見込みがある優良案件がどれだけ作れるか?にかかっているってことですね。当たり前ですが。

ODAでICT案件を支援しようとすると、ICTは民間企業が実施出来る分野(採算が取れる事業)ということから、他の分野に比べてICT分野の支援はハードルが高く、日本のODAのなかではマイノリティーの分野だろうと思います。

この機構が出来たことで、JICAが支援しないようなICT案件にはこの機構が支援するというように、日本としてのICT分野の海外進出が促進されるのはICT4Derの自分としては嬉しいところ。

また、最近、インドネシアの高速鉄道の大型受注合戦で日本は中国に負けましたが、その理由と1つとして考えられる要素には、日本の円借款は政府保証を必要とするが、中国の提案が政府保証を必要としないものだったというのがありそうです。中国の提案は、融資方式であり、中国とインドネシアの合弁企業体へ投融融資するというもの。国家債務を増やしたくない国には魅力的な提案だと言えます。

このように日本のODAの円借款では制度上の制限があるので、官民ファンドという別の選択肢を持つことは日本としても、また、支援を受ける側にしても良いことだと思います。

ただ、懸念としては、上記の「回収見込みがある優良案件がどれだけ作れるか?」という点。これはICT分野に限った話じゃないですが、本当に儲かる優先事業は民間企業が独自に行うものだろうと考えると、官民ファンドを活用して行う事業というのは、本当の優先事業よりも若干劣る(何が劣るかは曖昧ですが、リスクが高いとか利幅が少ないとか)事業になる可能性が高い。もしそうだとするとこの官民ファンドに来る案件は必ずしも「回収見込みがある優良案件」とは限らないということになる。

また、中国、韓国、インドといった新興国のICT企業に日本企業が価格で勝つのは簡単じゃないなかで、相手国側が日本をパートナーに選ぶだけの魅力(ブランド)をどう作るか?ってのも課題か。

とはいえ課題はあって当たり前。今後、JICTがどんな国のどんな案件に出資して行くのか?楽しみです。

株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)設立について」への4件のフィードバック

  1. Yuji Ozaki

    世界各国で郵便を含む通信を手がけていた組織が民営化しているため、GtoGがやりづらくなり、GtoBは無理があるのでBtoBのスキームを使いたい→単独企業では限界がある→ブランドつきタネ銭としてのJICT、って感じもしますね。
    ご指摘の通り、JICTには、電気通信・放送・郵便事業の規制官庁(総務省=自治省+郵政省)と、ハードインフラよりの企業が集まっているようにも見えます。そこは日本がまだ強みを残しているエリアっぽい。

    日本のGtoG支援(JICAによる支援が典型的)だと、構造上どうしても非市場戦略と市場戦略が分断されてしまいがちなので、JICTの中で人事交流などやりつつ、法やルール作りなどの非市場戦略を総務省(+JETRO +JICA +大使館)、市場戦略を企業さん、という感じで同期や連携があれば面白いはず。
    夢を見すぎかなぁ…。

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      非市場戦略と市場戦略をつなげて行くという考え方は良いですね。どんな案件が出てくるのかが楽しみです。夢を見ましょう〜

      返信
  2. Maki

    国交省の海外交通・都市開発事業支援機構(交通・都市開発案件の支援)の総務省版のような感じなんでしょうか、、と思ったら、今年の6月の改訂版 日本再興戦略に前出の国交省の機構とともにこちらのJICTの記載がありました。
    分野に問わず、採算の悪い海外インフラ事業への民間企業の参入が、このような機構を設立することで進むなら他の省庁もやればいいですけど、乱立しすぎてもJICAやJBICや既存機関との調整が大変そう、、、、と思いました。

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      なるほど。道路などの都市開発分野では一年先に同じような組織が作られていたんだ。知らなかった。他の省庁も作っていくのかなぁ。自分としては結構賛成。餅は餅屋というか、分野ごとに官民ファンドがあっても面白い。選択肢は多い方が良いと思うし。

      返信

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