ゲーム for Development

 

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Africa Quest.comより

JICA(国際協力機構)がアプリゲームをリリースした。そこで働いている立場としても、結構驚きました!そのアプリは、アフリカの農業を疑似体験出来るSHEP (Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion)というもの。SHEPというのは、農業分野での支援アプローチのことで、市場で売って儲かる農作物を作りましょう(「作ってから売る」じゃなく「売るために作る」)というもの。このアプローチを学ぶことが出来るアプリです。このアプリの詳細は、Africa Quest.com「JICAが監修!アフリカの農業を疑似体験できるアプリ”SHEP”で遊んでみた」に詳しく紹介されてるので、是非、見てみて下さいまし。

ゲームを途上国開発に役立てるというアイデアといえば、以前、「Gameと国際協力」というタイトルで途上国開発を考えるきっかけとなるゲームをいくつかこのブログで紹介したことを思い出した。その中でも世界銀行が作ったEvokeというゲームはなかなか興味深かったので、改めてちょっと調べてみた。

このEvoke (呼び起こす、喚起する、引き起こす、呼び出す、という意味)は、いわゆるARG (Altanative Reality Game:代替現実ゲーム)というジャンルのもの。アフリカにおける様々な社会問題(女性の地位向上、災害や暴動時の緊急ネットワーク構築、食料問題への対策など)に対する改善策(Social Innovation)をプレイヤー達が考えるというもの。プレイヤーは与えられた問題の解決案作成のため、チームになってオンライン上でコミュニケーション(ブログを使ったり、映像や動画を共有したりして、各自の知識や調べたことを共有する)をとり、最終的に質の高い改善案をまとめあげる、というのがゲームのゴール。当初はアフリカの若者を対象としていたが、実際は世界150ヶ国から、援助開発業界のプロや教育者など様々な人たちが参加し、最終的な登録ユーザー数は19,324人に。

ゲームは2020年の想定でアフリカ問題に関連した色々な問題が発生する。プレイヤーはその問題解決を依頼された専門家的な立場。ゲームの期間は10週間。この期間に毎週1つの課題が与えられ(問題が発生する)、プレイヤーはそれを解決するために「学ぶ」(指定されたブログポストを読んだり)、「行動」(実在するSocial InnovatorとFacebookで友達になったり、Twitterでフォローしたり、ブログの読者登録したり)、「想像」(自分でもブログを書いたり、Social Innovationプロジェクト案を提示したり)という3つのプロセスを行う。書いたブログについてはプレイヤー同士でポイントを付与出来るので、自分のアイデアがどれくらい賛同されているかもわかる。優秀なプレイヤーは世界銀行から「World Bank Institute Certified Social Innovator」に認定されワシントンD.C.での「Social Innovation Conference」に招待されたり、優秀なプロジェクトアイデアには資金がついたり、という現実世界ともリンクしたゲームになっている。

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http:www.urgentevoke.comより

ちなみに面白かったのが、一番最初の課題は、「東京都知事が米不足に困っている」というストーリーから始まる食糧危機(ナイジェリアでのトウモロコシ不作)を解決するという点。上の漫画の吹き出しを見ると、「米のストックがあと一ヶ月で底をつく」ってなことが書いてある。

A Parallel World for the World Bank: A Case Study of Urgent: Evoke, An Educational Alternate Reality Game」という論文でこのEvokeについての考察があった。その中で、ユーザ数とゲーム開発費用の話があったので紹介したい。

 

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David I. WADDINGTON (2013) A Parallel World for the World Bank: A Case Study of Urgent: Evoke, An Educational Alternate Reality Game, Revue internationale des technologies en pédagogie universitaire, 10(3), pp 42 – 56.

上記は当初目標にしていたユーザ数と実際のユーザ数の比較表。そしてゲーム開発費は500,000USD (5,000万円か、結構高いね…)。ターゲットとしていたアクティブユーザ数が700ってことは、1ユーザあたり714USDのコスト。Completeできるユーザは7名ということは、1ユーザあたり71,428USD。高すぎだろ!&7人しかクリア出来ないってどういうゲームだ?という気がする。しかし実際は目標数値以上のプレイヤーが参加したというのは救いか。

この論文を読むまで知らなかったのですが、途上国開発だけではなく、教育分野でのゲーム活用というのは結構メジャーなテーマらしい。実際、Manchester Metropolitan UniversityとUniversity of Boltonが共同でARGOSI (Alternative Reality Game, Orientation, Socialization, and Induction)プロジェクトというのを2008年にやってたりする。

「効果をどう測るか?」という課題がありそうだけど、ゲームを使った啓発・教育というのは、ICTが普及すればするほど色んな可能性がある。そういえば、EvokeにはOLPC版もあるそうな。今回JICAが作ったアプリもどういう効果をもたらすのか(どう評価されるのか?)興味深いところです。

ゲーム for Development」への8件のフィードバック

  1. Kanot

    興味深い情報ありがとうございます。ちょうど今、教育におけるゲームの活用を追っていたところだったので、近いうちにゲーム活用の問題点などについて投稿したいと思います!

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      是非ともお願いします〜!これから結構面白いテーマだと思います。

      返信
  2. おじじ

    会社に、JICAへ中途で出て行って、戻ってきた若手がいるので、紹介しましょう。
    因みに、彼はマラウイへいってました。

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      是非とも紹介して下さい。そして感想も聞かせて頂けるとありがたいです!

      返信
  3. Ozaki Yuji

    JICAが監修したとされるFun Fun Farming、面白い取り組みではあります。SHEPプロジェクトのコンセプト説明用パワーポイント資料の代わりにインタラクティブゲーム(昔のDirectorとか自己実行型Flashの代替かな?)、ひいてはプロジェクトのブランド価値向上への施策、という感じがするので、「とにかくユーザーを獲得する(インストールベースを基準として広告収入を当てにする)」という、商用ゲーム的な評価には当てはまりづらいでしょうね。

    その一方、世銀のゲームはリアルな報償と結びついている以上、アクティブユーザー数とか完走できる人を少なく見積もるのは仕方ない…。しかし、これをひとつの調査案件とみなすと、(ゲーム=調査を通じて)ナイスなアイデアやプランが導出されるなら5000万円でも安く感じるはず。
    純粋にゲーム市場におけるひとつのゲームとして考えると、クソゲー呼ばわりされてもおかしくない難易度ですが(笑)。

    個人レベルでは、教育という場では「ゲームをする」というより「現実・仮想の世界観をゲーム的に解釈する(ラノベやゲームのシナリオライティング→パラメータ設定→実際にプレーしてみる)」方が没入感があってオモシロイのではないかと考えたりもします。

    返信
    1. tomonarit 投稿作成者

      調査案件とみなして、ナイスなアイデアやプランが導出するなら5000万円でも安い、というのは確かにそうかも。一方で開発前に「本当にナイスなアイデアが出るのか?」という問いに対して、「YES!」と回答する(説得する)のが結構ハードル高そうですね。
      でも、約4700人がユーザー登録したことを考えると、啓発活動的な側面もプラスして費用対効果を考慮すれば、それなりの効果なのかもしれないですね。

      返信
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