月別アーカイブ: 2017年7月

Work with People, not for People

 

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どうでもいいですが、左手は自分の手です(笑)

もう1年以上前ですが、「消費者からプロデューサーになる道とは?」というタイトルで投稿したように、”Handbook on ICT Policy for developing countries“という本(コペンハーゲンのAalborg UniversityのProf Knud Erik Skoubyなどが編者)のchapter募集に応募したら、選考にとおりまして、やっとこさ5月末にその本が出版されました。そしてその第9章に自分の論文が載っています(初期段階から相談にのってくれたこのブログの共同運営者のKanotとMaki、サンキューです〜)。

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内容は、IoT、AI、ビッグデータ、3Dプリンタなどの新しいテクノロジーがアフリカの発展に及ぼす負の影響にフォーカスしたものです。便利にはなっても、最終的に一番の利益を得るのは先進国の企業であり、途上国はお金を払うお客さん&お金になるデータを提供するユーザー、という立場にしかなれない可能性が高いという点や、先進国のメーカーの工場を誘致しても、工場そのものの遠隔操作やロボット活用によって、そこからの技術移転が望めない(=中国や東南アジア諸国のような製造業の発展モデルは成り立たない)という点などのリスクに言及してます。「じゃ、どうすれば良いの?」って点については、インターネットの世界やアプリ経済においてアフリカ独自のマーケットを確立すべく自国の起業家育成(←ルワンダみたいな)や、隣国との(一国ではパイが小さすぎる国が多いので)地域経済共同体としての独自マーケット確立に注力することが重要だろうといういう意見を、インドや中南米諸国のビジネス・インキュベーション政策やイノベーション促進支援政策を引き合いにしつつ書いてます。

例えば、Nollywoodと称されるナイジェリア映画を見るためのAfrinollyというアプリがあります。Youtube等でHollywood映画が無料で見れる時代でも、やっぱりナイジェリア人はNollywood映画も見たいってこと。こんな風に新しいテクノロジーについても、独自のマーケットへのユニークなサービス展開を促進する政策あれば、負の影響ばかりではなくなるだろうという意見です。

そう言えばつい最近、(信憑性はさておき)ガーナ大学の学生がYouTubeに競合する可能性のあるサーチエンジンを開発したというニュースがガーナの新聞(「19-year-old Ghanaian student builds search engine to rival Google」)に載りました。アフリカ諸国が先進国企業へお金を払うお客さん&お金になるデータを提供するユーザーという立場ではない、別の未来を期待したいです。

また、もう一年前に書いた内容なので、今となっては例示で使った事例等にちょと古い情報が多いなと思ったりしています。そして、今から付け加えられるなら、日本のODAでも「新しいテクノロジーをどう活かすか?」について途上国支援をするべきという論点を加えたいなぁ、と思ったりしています。

日本のODAの一つの主流として「日本の経験や得意分野の技術を途上国へ!」という方向性があると思います。「質の高いインフラ輸出」はその代表。それはそれで否定はしないですが、そろそろ「日本の経験」とか「日本の技術」が活かせない課題が増えて来る気がしています。そもそもOne fits all的なソリューションが上手くハマる課題はないし、誰も経験したことのない課題に直面している(これからする)のが途上国なんだと思います。なので、必要とされているのは誰かのお古じゃなくて、自分達に合ったソリューションを一緒に考えてくれるパートナーなんだと。そして、自国の経験や技術を他国に当てはめるのではなく、ゼロから一緒に考えることの方が、面白いんじゃないかと思います。まだインフラ分野でなら「日本の経験」が必要とされる国があるけれど、将来的には状況が変わるだろうと考えると、ICT分野で誰も経験したことのない課題について一緒にソリューションを考えるというスタイルの援助をやっていくことは、援助スタイルのオプションを増やす意味でも重要かと思ったりしています。

10年以上前、青年海外協力隊の訓練所で、「Work for PeopleじゃなくWork with Peopleが大切」という話を誰かから聞いたのですが、特にICT分野ではそいうスタイルの援助に途上国のニーズがあると感じています。

開発援助のオープンデータ化

以前、「オープンデータと途上国開発」という2015年3月の投稿で、途上国の開発援助関係データのオープンデータ化の動きについて書いたことがありました。オープンデータって何?という方には、上記の世界銀行の動画が分り易いです。

そして、つい先日、国際開発ジャーナル(2017年4月号)で「データに基づき開発を支える 〜援助動向の“見える化”に挑む〜」というタイトルで3つの援助データを公開しているWebサイトの紹介があったのでご紹介します。

紹介されていたのは以下3つのWebサイト(以下、簡単な説明を抜粋してますが、詳しい説明は国際開発ジャーナル見て下さい)。

アメリカの大学等が共同で2009年に立ち上げたもの。90以上の援助機関が1945年から現在までの間に実施してきた150万近くの援助プロジェクトに関する情報をデータベース化。

経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)と世界銀行の協力により2010年に立ち上げられた。データのビジュアル化が特徴。

ドイツの開発コンサルティング企業が2011年に立ち上げたサイト。2015年からビル&メリンダ・ゲイツ財団から助成を受けて運営。

以上、3つのサイトの紹介でした。

机の前に座っていてもネットでここまで途上国の情報が分るって、マジで凄いなと思います。こうなってくると、例えばどの国のどの分野のどのプロジェクトを支援するか?という判断をデータに基づいて行ったりすることが正しい方法として加速しそうですが、個人的にはそこまで簡単じゃないと思ってます。判断の際には、そのプロジェクトを実施する際に関係者の協力が得られるかとか(反対勢力がいないかとか)、熱い思いの良いリーダーがいるかとか、あの政治家の奥さんはあの土地の出身だとか、データに現れない要素も考慮しないといけないから。また、データを沢山集められるようになっても、それをどう解釈して使えるかという能力(仮説と立証的な能力)が必要で、その能力は言い換えると、「いかに多くの人が賛同出来るストーリーを作り上げれるか」という能力だと思います。結局、データを有効活用できるのは、人間力みないなものを持つ人なんだろうと。

ただ、上記で述べた関係者の協力が得られるかとか(反対勢力がいないかとか)、熱い思いの良いリーダーがいるかとか、といったデータまでもがデータベース化される未来が来る可能性もありえるかも…。

ICT4Dの教科書

ICT4Dを勉強したい人はICT4Dの教科書を探したことがあるかと思います。でも、これまでそれらしい教科書はなかったんじゃないでしょうか。ところが近々に教科書が出版されます!僕が書きます!!

というのは嘘です。

マンチェスター大学大学院のICT4DコースのRichard Heeks教授がICT4Dの教科書を出版するそうな。amazonで見ると10月下旬の出版予定。そして、Heeksのブログにそのコンテンツの一部がDraftとしてアップされてました。以下のサブタイトルで全9回の講義用パワーポイント教材がダウンロード出来ます。

– ICT4D Course Introduction

– Session 1: Understanding ICT4D

– Session 2: Foundations of ICT4D

– Session 3: Implementing ICT4D

– Session 4: ICTs and Economic Growth

– Session 5: ICTs, Poverty and Livelihoods

– Session 6: ICTs and Social Development

– Session 7: e-Governance and Development

– Session 8: ICTs and Environmental Sustainability

– Session 9: The Future of ICT4D

ありがたいことに先生用に、生徒に課す課題や演習のインストラクション的なことも書いてあったりします。ただ、パワーポイントだけあって基本的にはフレームワークやモデルやグラフなどのビジュアルな教材なので(読んで理解するには、出版後に本を買って文章も一緒に読む必要アリでしょう)、見ただけでは理解出来ない点も多いと思いますが、「これからICT4Dについて勉強したいけど、実際どんなこと勉強すんだろ?」と思っている人には参考になるかと思います。ICT4Dというかなり幅広いテーマを今の途上国開発や技術革新に沿って多面的な切り口から解説・分析している点がわかるだけでも結構参考になるかも。

ちなみに、ICT4Dの教科書的な本としては、以前このブログで紹介した外山健太郎氏(このブログの管理人Knotの指導教授)の「Geek Heresy」やTim Unwin氏の「ICT4D」などがあるけど、それらと比較してHeeksの本はよりフレームワークやモデルといった理論に重きがおかれている感じです。上記の2冊はいずれも読んでみた感想として、理論的でありつつも、そこに著者の想いがより込められている感じ。読み物としての面白さはそっちの方があるかもしれないですが、Heeksの本は実際のプロジェクトをどう理論に落とし込むか、という点に重きが置かれている感じ。

日本にいると英語力落ちるので10月に出版されたら自分も読んで勉強せねば…。

バングラデシュ・ルワンダ・アメリカ・日本のコミュニケーション文化の違い

こんにちは、Kanotです。これまでバングラデシュ(3年)・アメリカ(2年)・ルワンダ(3ヶ月)と住んでみて、それぞれの国・組織でコミュニケーション文化がだいぶ違ったので、備忘録も兼ねて、それを書いてみようと思います。(注:筆者の個人的な経験に基づきまくってます。

1. バングラデシュ(政府系の場合)2012/8 – 2015/8まで滞在

携帯電話での通話がコミュニケーションの大半を占める。政府・民間などの所属にかかわらず、基本的には全て携帯での電話が重要視される。仕事でも当たり前のようにお互い携帯電話番号を交換し、あまり急ぎでない内容でも電話をかける。SMSもEメールも政府関係者は見ているかよくわからないのであまり使わない。固定電話は品質が悪いので、あまり使わない。電話以外の方法で政府関係者とアポを取るのは困難。携帯電話をマナーモードにしない人も多く、年中どこかでピロピロ鳴っている。ミーティング中でも電話が鳴れば、だいたい「Sorry」とか言いながらも出る。それによってミーティングが中断することは頻発。

2. ルワンダ(商工会議所の場合)2017/5 – 2017/7まで滞在

携帯電話の通話の比重が大きいものの、バングラデシュほどではない。その一方、WhatsApp(LINEのようなアプリ)の使用率が非常に高く、ビジネス関係の連絡もWhatsAppのチャットで連絡を取ったりする。メールやSMSも使われてはいるが、リアルタイムでやり取りできるWhatsAppの方がスムーズに行くケースも多い。ミーティング中でも電話が鳴ったら「Sorry」と言いながら取り、ミーティングが中断するのはバングラデシュと一緒。

3. アメリカ(大学の場合)2015/8-2017/8まで滞在

メールの比率が圧倒的に高い。親しい同僚以外はお互いの携帯電話番号は知らないことも多いが、メールで非常にフランクにコニュニケーションを取る。社交辞令や挨拶などは省いて用件だけを書く一行メールも多く、チャットのようにメールがどんどん交わされていく。初対面の人からでも「Dear XX」ではなく「Hi XXX」みたいなメールが届くフランクさ。ミーティング中は携帯電話はマナーモードにしておくのがマナー。メールやSNSがコミュニケーションの中心なので、会議中に電話が鳴ることは少ない。

4. 日本 (政府系の場合)2012/5まで滞在

コミュニケーションの基本はメール。電話はそれを補助する形で使われることが多い。特徴的なのは、メールがとても冗長で、部下や友人でもない限り、「XX様・XXさま・XXさん」から始まり、「お疲れ様です・お世話になっております・お元気ですか」といった挨拶を挟み、「よろしくお願いいたします」で締めると言った謎の定型パターンが存在する。それに沿わないと「あいつはビジネスの基本もわかってない失礼なやつだ」と思われる。オフィスでは携帯電話はマナーモードにするのがマナー。ミーティング中は鳴っても基本的には出ない。

 

以上、自分の個人的な経験をまとめてみましたが、このように国や組織によってコニュニケーションの仕方が大きく異なるというのは非常に面白いですね。仕事を円滑に進めるには、こう言ったコミュニケーション文化への理解は大事と思います。なお、民間や政府・大学などの分野によっても大きく異なると思いますし、滞在した時期も違うので、「この国はこうだ!」と一般化するつもりは全くありません。あくまで筆者の個人的な体験をまとめただけですので、あしからず。

携帯電話のビックデータ解析から貧困や裕福さが予測可能??

こんにちは、Kanotです。特定の国や地域の経済状況を知る手段として、国勢調査がありますよね。こういった調査が国民の経済状況を理解するのに重要なのはわかるものの、膨大な資金と時間とマネジメント能力がないとできません。そして途上国の場合などは、こういった調査をする土台が整ってないことも多く、例えばアンゴラの例だと最新(2014年)の前の国勢調査は1970年で、その間だけで人口が4倍になっていた、など国勢調査が現状を表していないケースも多い状況です。

その一方で、今や途上国においても携帯電話は一人一台の時代に近づきつつあり、この携帯電話の使い方についてのビッグ・データを解析することで、その人の行動や経済状況って予測できるのでは???という疑問を検証した論文があります。

Science誌に掲載されたBlumenstock氏(U.C.Berkley)の「Predicting Poverty and Wealth from Mobile Phone Metadata」という論文です。Blumenstock氏はICT4Dの経済学的アプローチ究で有名な研究者です。

この論文では、ルワンダの、(1) 携帯電話のビッグデータ(使用履歴・行動履歴)、(2) 国勢調査の結果、(3) 電話インタビューで得た経済状況に関する情報から、どの程度携帯電話のデータだけで経済状況が予想可能かを調べています。

結果としては携帯電話のデータと経済状況には高い相関関係が得られていて、こういったデータを活用することでより早く・正しい推測が可能になるのではとしています。特に効果的なのが時間・資金面の問題で、通常の国勢調査だと途上国でも1億円以上、そして1年以上かかるものが、このビッグデータ解析だと150万円程度、4週間で終わるとしています。

この研究では、通話やメールを中心に調べていますが、FacebookなどのSNSやGoogleなどの検索サイトもかなり行動履歴を持っているはずなので、今後様々なことがこういったデータから予測できる日が近づいてきている(すでになっている?)のかもしれません。

ちなみに、ここで私が面白いなと思うのは、テクノロジーを使って国勢調査を簡単にしましょうという手段の代替ではなく、一見関係ないデータ(携帯電話の使用パターン)から経済状況を推測しようとしている点です。つまり、相関関係から推定する、というやつですが、ビッグデータの可能性を感じるいい機会になりました。

最近読んだ藤原和博さんの本「10年後、君に仕事はあるのか?」でも、これからの若者は人生の半分をネットの世界で過ごすことになると言っているように、もしかすると実生活よりもモバイルやネットでの行動パターンを分析した方がより正確な情報が得られる時代がもうすぐそこに来ているのかもしれません。