月別アーカイブ: 2018年1月

ソーラーパネルを背負って避難する難民たち

こんにちは、Kanotです。最近世界で大きな問題になっているロヒンギャ難民問題、皆さんもニュース等でご覧になって、気になっている方も多いのではないでしょうか?簡単に説明すると、ミャンマーのラカイン地域に住むイスラム教徒が、ミャンマー軍から迫害を受けてバングラデシュに逃げて来て難民化しているという問題です。この問題についてもっと詳しく知りたい方はこちら

さて、今回の難民たちが家から逃げる時に持って来たものは何でしょうか?

手持ちのお金、最低限の服・・・などがあるかと思いますが、タイトルと絵からご察しの通り、ソーラーパネルを運んでいる人が多数いた、というのが今回の話です。(画像は、めけお氏作)。着の身着のままでソーラーパネルだけを担いで逃げて来た家族もいるとのこと。なぜ彼らは衣食などの生活必需品よりも重くて大きいソーラーパネルを選んだのでしょうか?

ソーラーパネルを運びながら逃げて来た人は、「このソーラーパネルが私の命を救った」と言っています。ミャンマー軍を避けながら逃げるのに一番大事だったのは「情報」で、安全なルートを見つけ出すには携帯電話からの情報が欠かせず、その携帯電話をチャージするのにソーラーパネルが必要だったとのことです。

驚くべきポイントは、ソーラーパネルが夜の懐中電灯やジャングルでの寝泊まりに役立ったというのはありつつも、一番の目的が、携帯電話をチャージするのに役になったという点です。もはや携帯電話が、貧富の差や情報リテラシーの壁を超えて、コミュニケーションツール、そして情報取得ツールとして使われているということです。

では、彼らはわざわざこの退避のためだけにソーラーパネルを手に入れたのかというと、もちろんそういうことではなさそうです。そもそも、彼らの住んでいるエリアは電気の普及率が高くなく、ソーラーパネルを日常の電気確保に使っていたようです。ミャンマーではソーラーパネルが安く、20ワットのパネルが約$15で買えるため、比較的普及しています。バングラデシュで同じものを買うと8-12倍の値段がするそうで、その事が情報として入っていたため、このような行動に至ったとのことです。

また、難民キャンプまでたどり着いた後も、ソーラーパネルがキャンプ生活に役立っているそうです。まずは安全確保上の問題です。難民キャンプには電気が来てないケースが多く、夜の盗難やレイプなどから身を守るためにもライトが必要とのこと。また、電気があれば浄水することもできるとのこと。もちろん携帯電話の充電もできます。

英語の原文を読みたい方はこちらです。
ロイター通信:Feeling Rohingya carry one key asset: solar panels

ここからは記事の感想ですが、まさか難民キャンプに逃げてくるような人がソーラーパネルを背負ってくる時代が来るとは思っていたなかったので驚きました。一方、これを一般の生活に置き換えてみると、テクノロジーが進むことによって、逆に原始的な生活ができるようになる(火は簡単に起こせる。電気もソーラーで得れる。その電気で水も浄化できる。食べ物も簡易に作れるようになる(はず))。そんな未来もあるのかもしれません。これも立派なイノベーションだと感じます。日本でも大震災に備えて携帯用ソーラーパネルを買っておいた方がいいかも???

ダボス会議2018 ブロードバンド普及についての2025年目標

1月22〜26日に開催されたダボス会議2018で、ICT4Dチックな話題があったので紹介。

23日、Broadband Commission for Sustainable Developmentという組織が以下をトピックとしたSpecial Programを開催したそうです。

  • How to increase the efforts put towards connecting the 52% remaining people to the internet?
  • How to fight the increasing cyber-crime and cyber-bullying?
  • How to ensure that the fourth industrial revolution technologies don’t create a digital divide?
  • How to ensure that the issue of growing gender digital divide is addressed?

そもそも、「ん?なんだ、Broadband Commission for Sustainable Developmentって?」。これはITUとUNESCOが「MDG達成にはブローバンドが大事だろっ!」ということで2010年に設立した組織。当初の名称はBroadband Commission for Digital Developmentだったのが、その後、MDGがSDGに変わったのをうけてネーミングを変更。おなじみのマイクロソフト、インテルや中国のHUAWEI、ミャンマー等にも進出しているカタールの携帯会社Ooredooなどがパートナーになっている。

この23日のディスカションの内容詳細が記載されているWebサイトはまだ探せてないのですが、Broadband Commission for Sustainable Developmentのプレスリリースによると、2025年をターゲットに以下7つのゴールが設定されたとのこと。

  1. By 2025, all countries should have a funded national broadband plan or strategy, or include broadband in their universal access and services definition.
  2. By 2025, entry-level broadband services should be made affordable in developing countries, at less than 2% of monthly gross national income per capita.
  3. By 2025 broadband / Internet user penetration should reach: 75% worldwide, 65% in developing countries, and 35% in least developed countries.
  4. By 2025, 60% of youth and adults should have achieved at least a minimum level of proficiency in sustainable digital skills.
  5. By 2025, 40% of the world’s population should be using digital financial services.
  6. By 2025, unconnectedness of Micro-, Small- and Medium-sized Enterprises should be reduced by 50%, by sector.
  7. By 2025, gender equality should be achieved across all targets.

ターゲットの年数が2025年なのは、2020年まではすでに一定の予測をしたレポートをITUが出しているからだろうか・・・?2030年はSGDの目標年だから間を取って2025年かな?

個人的にはダボス会議とか大きな国際会議で掲げられる公約や目標設定は、ホントに意味があるのかな?と疑問に感じたり、大きな会議やる費用を途上国に回せば良いのに・・・と思ったりしています。会議にかかるコストとそのベネフィットって、どうやって測っているだろうか・・・。でも、ゴールを設定することによって、「国際的に決められてるゴールなら!」と、お金が集まってくるというメリットは間違いなくあるのでしょう。

それはさておき、この手のゴールにはかなりアンビシャスな「無理ゲー」的ゴールが設定されたりしますが、昨今のテクノロジーの進歩を考慮すると、今回のゴールは比較的達成可能なゴールなのかと思います。「Sustainable Digital Skill」って具体的になんだろう・・・?と思ったりもしますが・・・。

ICT4D分野は、この先10年位が一番面白いかも

先週、「大企業のBOPビジネス卒業式~BOPビジネスの幻想とSDGsへのバトン~」という勉強会に参加しました。インドで苺栽培に取り組むNEC、マラリア予防の蚊帳(オリセットネット)を展開する住友化学、インドでビジネス創出のプラットフォーム構築に取り組むリコー、クロスフィールドの留職プログラムも使いつつ途上国でのビジネスに取り組むパナソニック、といった大企業の方々が、「BOPビジネスに取り組んだ結果、どうだったの?ホントに儲かってんの・・・?」という疑問に答えてくれるような内容でした。

この疑問に対する答えは、「やっぱり儲かんない」という感じのもの。オリセットネットはドナーが大量購入しておりちゃんと儲かっている点ではビジネスとしては成功。でも、途上国の貧困層をターゲットとしたB to CのBOPビジネスとしては、やはり成功とまでは言えない感じ。他の3社については、大企業が取り組むビジネスとして採算が取れるレベルでは儲かっていないというのが実情。残念だけど、これが現実、という点は納得感がある。

グループディスカッションの場もあり、他の参加者の方々とも色々と意見交換することが出来た。その中で、「やっぱBOPビジネスは儲からない」、「CSRとして企業イメージアップのためにやるのが限界」、「現地を知らず、コストの高い日本人が汗かいてやるより、現地企業を買収したほうが早い」、といった意見も。残念だけど、いずれも納得感がある。

それでも、バングラデシュのグラミンフォンとかケニアのM-PESAとか、数少ないサクセスストーリーの響きは良く、この分野に興味・期待を持っている人は少なくないと思う。実際、この勉強会は参加費が2000円だったものの、100名位が参加していた。

正月早々の日経新聞に途上国ビジネスの特集が掲載されていた。その記事ではケニアのM-PESAの利用者は3千万人を超えたが、一方、世界で金融サービスを利用出来ない成人は20億人。同様に安全な水にアクセス出来ない人は21億人、清潔なトイレにアクセス出来ない人は45億人、ネットを使えない人は40億人など、まだまだ満たされないニーズは山ほどあるというような事が書かれていた。さらに、シンガポールの大手商社オラム・インターナショナル社がガボンの農園でドローンを飛ばし、農作物の育成状況を監視し、ビッグデータを使って肥料散布のアドバイスをするサービスを展開している事例などが紹介されていた。

今、SDGsの背景からも途上国ビジネスへの注目が高まっているが、これだけ途上国ビジネスが注目を浴びている背景には、やはりテクノロジーの発達が大きいと思う。以前からニーズはあったもののビジネスを展開出来る術がほとんとなかった状況が、今はテクノロジーのお陰で「出来るかも?」というふうに変わっている。そして今後さらにテクノロジーの発展により社会が大きく変わって今は想像出来ないサービスが生まれるので、「イノベーションが起きれば実現可能!」と期待感も高まる。最近、やたらめったら耳にするイノベーションって言葉には違和感(そんな誰でも起こせないからイノベーションなのに、とても普通に使われている感が否めない)を感じるものの、「ニーズ・課題が沢山あって、それを解決出来そうなツールもある」という今の時代に生きているというのは結構恵まれていると思う。

最近、「現代の魔法使い」落合陽一氏の「これから世界をつくる仲間たちへ」という本を読んだら、以下のようなくだりがあった。

“たぶん、2030年代ぐらいの近未来の若者たちは、2010年代という過去を羨ましがるに違いありません。『20年前は、まだコンピュータで解決されていない問題があったらいいよなぁ』というわけです。”

こんなふうに思うと、「BOPビジネスは儲かんない」とか、このブログでも良く取り上げるように「ICT4Dプロジェクトは失敗に終わる…」と悲観的にならずに、諦めずにテクノロジーを駆使して成功させる道筋を考えられるのは今だけのような気もしてくる。

冒頭の勉強会でオリセットネットについてプレゼンをした住友化学の山口くん(←自分のエチオピアの青年海外協力隊の追後輩でもある)が、「今後はどうしたらマラリアを撲滅させる事が出来るかAIを活用して対策を考えるようなこともトライしたい」と言っていた。確かにそういう使い方もあるなぁ、AI。ICT4D分野は、この先10年位が一番面白いかも。時代の流れに取り残されないようにせねば・・・!

ちなみに、この話題にあまり関係ないけど、冒頭の写真はエチオピアの首都アディスアベバで行われている、タブレットを利用した人工知能プロジェクト「ヤネト(YaNetu)」。多分、YaNetuはアムハラ語で「私と一緒に」という意味かな。下の動画に出て来るアバターの先生の顔、ちょっと怖い(笑)