作成者別アーカイブ: tomonarit

一歩先を見越したICT活用:WFPのmVAM

 

mVAM

Source: http://vam.wfp.org/sites/mvam_monitoring/#

ども、Tomonaritです。国連WFPが食糧不足などの状況をリサーチするためにとして携帯電話を使っているという話を聞いたので紹介します。

その名はMobile Vulnerability Analysis and Mapping (mVAM) 。上記の地図の青い国、約30カ国で使われている。仕組みとしては、音声通話とSMSを使って簡単な質問(商人に対して食糧の価格を質問したり、一般家庭に対して食糧確保や栄養状況など)をして、得た回答をデータベースにまとまるというもの。mVAMの仕組みを紹介する動画がYouTubeにあがっているけど、以下の動画(レソトの例)がとても現場感があって分かりやすい。「なんか凄いイノベーディブな取り組みなのか!?」と期待して動画を見ると、超地味に電話オベレーターが質問をしている感じに拍子抜けする。

この動画を見ても一体、どういう情報をとって、どいうアウトプットになるのかというイメージがわかない。でも、一例としてマラウイのレポートナイジェリアのレポートを見てみたら、とてもイメージがわいた。例えば、ナイジェリアでは食糧価格の動きを調査するために、特定の州の商人を対象に電話調査を行った話が書いてある。まず、2016年6〜7月に490名の商人に電話をかけて食糧価格を聞き取り、次に2016年12月に同じ商人(490名中416名)に再度電話をかけて食糧価格を聞き取り、再度、そのうちの378名にインタビューを実施している。結構、泥臭い作業だけども、思いのほか同じ商人にリーチ出来ている(378名/490=77%)のは凄いもんだ。日本と違って住所とかちゃんとしてないだろうに。

最初にどうやって電話番号を取得しているのか?という点については、商人についてはFace to Faceの調査で得た情報、一般家庭については携帯電話会社から得た情報を使っている。携帯電話のSIMカードを買う時に氏名や住所を登録しているので、ターゲットにしている地域の住民の番号はある程度取れるのだろう。勿論、SIMカードが転売されたり友達に使われたりということがあるので、登録情報が正しくないとこもあるが、おそらく携帯電話の位置情報でどこからのコールかは分るので、対象地域意外からの不要な回答は除外出来るのだろう。

電話を受けた人が質問に回答するインセンティブは?という点については、回答者には小額の謝金(50セント位)を払うケースもあるという。これは携帯電話の通話クレジットとして供与される仕組みだ。金を貰えるなら質問に答える気にもなる。

正直、自分の第一印象は「イノベーションって言うよりはテレアポ的な泥臭い手法だなぁ」というものだったが、「いやいや、ちょっと違うぞ」とすぐ思い直した。これまでは民間のコールセンター等を使ってオベレーターが電話をしているが、近い将来AIチャットボットを使って人じゃなくてコンピュータが電話調査をしてくれるようになる。そして収集したデータの分析もAIの力を借りてより簡単に出来るようになる。これは凄く簡単且つチープに調査が出来るようになるということ。そう考えると、現時点で人が電話調査を行い、ターゲット地域の人達に「電話調査ってこういうもんがあるのね」ということを認識させ、慣れさせておくことの意味はとても大きい。

mVAMの効果を考えると、「食糧不足とか栄養失調とかで困っている人達が住んでいるようなエリアには、携帯電話ネットワーク網が行き届いてないのでは?」とか「そういう人達って、そもそも携帯持ってないのでは?」というツッコミはある。しかしながら、mVANの効果は、現時点での利便性どうこうで善し悪しを判断するのではなく、今はいわばユーザへの啓発活動とも言える(電話調査ってもんを理解してもらう)準備期間なんじゃないか、と思った。

Uberによってタクシー運転手とのコミュニケーションは不要になり、Uberは無人タクシー導入の下地を作っていると言われる。同様に、今後のICT4Dは、課題解決のために今有るテクノロジーでどう対処するか?ということを考えるだけでなく、一歩先の将来により一層の効果を発揮出来るにはどう対処するか?ということも同時に考える必要があるのだと思ったのでした。

AI時代に大切なのは?

SDG4

東洋経済オンラインで、AIを使った学習塾「Qubena(キュビナ)アカデミー」が取り上げられていました。先日、エチオピアのアジスアベバでもAIを取り入れた学習用タブレットの試行がなされていると紹介しましたが、日本でもかなり進んでいるようです。

Qubenaアカデミーでは、生徒は塾に来てタブレットを使って勉強をするスタイル。その問題の出し方はAIが考えており、生徒が問題を間違えると、その間違え方をAIが分析し、つまづいたところが分るようになる問題が続々と出題され、それを解いていくと最初に間違えた問題も出来るようになるというもの。一方、間違えない子はどんどん難しい問題へステップアップできる。なんと「学習スピードを7〜10倍にまで高められる」らしい!(超ざっくりな説明なので、詳細は上記リンクから元の記事を見てもらうと、もっと「スゲぇーなー…」という感じが伝わると思います)。

特に自分が面白いと感じたのは、この会社の社長さんが塾という形態に拘っている点。このやりかたなら「先生いらないじゃん?」と思うのですが、社長さん曰く、講師は生徒のやる気を出したり、メンタル面をサポートする「コーチング」の為に生徒の傍らに寄り添う必要あるという。確かに科目を教えるという「ティーチング」は AIに任せられるが、「コーチング」は生身の人間が必要だろう。

いきなり生活感溢れる話題になりますが、我が娘(小学校1年生)もおだてないと宿題をしないです。そして、漢字が分らないうちの奥さん(←エチオピア人なんでね)が傍らで「へー、こんな難しい漢字も書けるんだね。すごいねぇ!ママは読めないよ〜」とおだてる役をやってそれなりに上手く娘の気分をノセてます。

「モチベーションを上げる」という点で最近読んだ尾原和啓氏の「モチベーション革命」という本の記載を思い出しました。以下、引用です。

“AIによって世の中はいかに変わるのか。作業的に、効率的に、合理的に仕事を進めるうえでは、人間はもうロボットには勝てないでしょう。しかし、世界を変えるような新しいサービスや画期的なイノベーションは、1人の人間の偏愛によってしか生まれません。
これからは、この偏愛こそが人間の価値になる時代です。好きなことをやり続けることこそが最大の競争力になるのです。”(第2章「偏愛こそが人間の価値になる」より)

合理的、作業的なことは人間はAIには勝てないが、「なぜか自分だけが頑張る意味が持てる」という偏愛によるモチベーションは、人間にしかなく、それが人間の強みだという話が書かれています。

最初の話に戻ると、今後、先生に求められるスキルは、教え方のスキルじゃなくて、子供の関心をどんどん延ばして、色んなことにチャレンジするモチベーションを上げるというコーチングになっていくのだと言う点はとても納得(これまでもコーチングは先生のOne of themのスキルだったはずだし)。

「詰め込み教育」から「ゆとり教育」に変わり、その反動でまた最近は「詰め込み教育」の傾向にあるけれど、AIが学習スピードを早めるくれるなら、「詰め込み」の学習量で知識を高め、且つ、「ゆとり」が目指した「生きる力」を育む時間もとれるようになるのではないか、とAIによるポジティブな影響に期待したい。

AIによって職を奪われるというネガティブ論もあるけれど、教育分野に限らず、やらないといけないけど面倒な仕事はAIにお任せし、やりたい仕事に集中出来るようなるというのが、理想的なAIの活用方法だと思う。ただ、そのためには自分のなかで「やりたい仕事」が明確にあるのが前提条件なので、「偏愛によるモチベーション」を大切にしなければ・・・!と思う訳です(←自分自身への自戒も含めて)。

ダボス会議2018 ブロードバンド普及についての2025年目標

1月22〜26日に開催されたダボス会議2018で、ICT4Dチックな話題があったので紹介。

23日、Broadband Commission for Sustainable Developmentという組織が以下をトピックとしたSpecial Programを開催したそうです。

  • How to increase the efforts put towards connecting the 52% remaining people to the internet?
  • How to fight the increasing cyber-crime and cyber-bullying?
  • How to ensure that the fourth industrial revolution technologies don’t create a digital divide?
  • How to ensure that the issue of growing gender digital divide is addressed?

そもそも、「ん?なんだ、Broadband Commission for Sustainable Developmentって?」。これはITUとUNESCOが「MDG達成にはブローバンドが大事だろっ!」ということで2010年に設立した組織。当初の名称はBroadband Commission for Digital Developmentだったのが、その後、MDGがSDGに変わったのをうけてネーミングを変更。おなじみのマイクロソフト、インテルや中国のHUAWEI、ミャンマー等にも進出しているカタールの携帯会社Ooredooなどがパートナーになっている。

この23日のディスカションの内容詳細が記載されているWebサイトはまだ探せてないのですが、Broadband Commission for Sustainable Developmentのプレスリリースによると、2025年をターゲットに以下7つのゴールが設定されたとのこと。

  1. By 2025, all countries should have a funded national broadband plan or strategy, or include broadband in their universal access and services definition.
  2. By 2025, entry-level broadband services should be made affordable in developing countries, at less than 2% of monthly gross national income per capita.
  3. By 2025 broadband / Internet user penetration should reach: 75% worldwide, 65% in developing countries, and 35% in least developed countries.
  4. By 2025, 60% of youth and adults should have achieved at least a minimum level of proficiency in sustainable digital skills.
  5. By 2025, 40% of the world’s population should be using digital financial services.
  6. By 2025, unconnectedness of Micro-, Small- and Medium-sized Enterprises should be reduced by 50%, by sector.
  7. By 2025, gender equality should be achieved across all targets.

ターゲットの年数が2025年なのは、2020年まではすでに一定の予測をしたレポートをITUが出しているからだろうか・・・?2030年はSGDの目標年だから間を取って2025年かな?

個人的にはダボス会議とか大きな国際会議で掲げられる公約や目標設定は、ホントに意味があるのかな?と疑問に感じたり、大きな会議やる費用を途上国に回せば良いのに・・・と思ったりしています。会議にかかるコストとそのベネフィットって、どうやって測っているだろうか・・・。でも、ゴールを設定することによって、「国際的に決められてるゴールなら!」と、お金が集まってくるというメリットは間違いなくあるのでしょう。

それはさておき、この手のゴールにはかなりアンビシャスな「無理ゲー」的ゴールが設定されたりしますが、昨今のテクノロジーの進歩を考慮すると、今回のゴールは比較的達成可能なゴールなのかと思います。「Sustainable Digital Skill」って具体的になんだろう・・・?と思ったりもしますが・・・。

ICT4D分野は、この先10年位が一番面白いかも

先週、「大企業のBOPビジネス卒業式~BOPビジネスの幻想とSDGsへのバトン~」という勉強会に参加しました。インドで苺栽培に取り組むNEC、マラリア予防の蚊帳(オリセットネット)を展開する住友化学、インドでビジネス創出のプラットフォーム構築に取り組むリコー、クロスフィールドの留職プログラムも使いつつ途上国でのビジネスに取り組むパナソニック、といった大企業の方々が、「BOPビジネスに取り組んだ結果、どうだったの?ホントに儲かってんの・・・?」という疑問に答えてくれるような内容でした。

この疑問に対する答えは、「やっぱり儲かんない」という感じのもの。オリセットネットはドナーが大量購入しておりちゃんと儲かっている点ではビジネスとしては成功。でも、途上国の貧困層をターゲットとしたB to CのBOPビジネスとしては、やはり成功とまでは言えない感じ。他の3社については、大企業が取り組むビジネスとして採算が取れるレベルでは儲かっていないというのが実情。残念だけど、これが現実、という点は納得感がある。

グループディスカッションの場もあり、他の参加者の方々とも色々と意見交換することが出来た。その中で、「やっぱBOPビジネスは儲からない」、「CSRとして企業イメージアップのためにやるのが限界」、「現地を知らず、コストの高い日本人が汗かいてやるより、現地企業を買収したほうが早い」、といった意見も。残念だけど、いずれも納得感がある。

それでも、バングラデシュのグラミンフォンとかケニアのM-PESAとか、数少ないサクセスストーリーの響きは良く、この分野に興味・期待を持っている人は少なくないと思う。実際、この勉強会は参加費が2000円だったものの、100名位が参加していた。

正月早々の日経新聞に途上国ビジネスの特集が掲載されていた。その記事ではケニアのM-PESAの利用者は3千万人を超えたが、一方、世界で金融サービスを利用出来ない成人は20億人。同様に安全な水にアクセス出来ない人は21億人、清潔なトイレにアクセス出来ない人は45億人、ネットを使えない人は40億人など、まだまだ満たされないニーズは山ほどあるというような事が書かれていた。さらに、シンガポールの大手商社オラム・インターナショナル社がガボンの農園でドローンを飛ばし、農作物の育成状況を監視し、ビッグデータを使って肥料散布のアドバイスをするサービスを展開している事例などが紹介されていた。

今、SDGsの背景からも途上国ビジネスへの注目が高まっているが、これだけ途上国ビジネスが注目を浴びている背景には、やはりテクノロジーの発達が大きいと思う。以前からニーズはあったもののビジネスを展開出来る術がほとんとなかった状況が、今はテクノロジーのお陰で「出来るかも?」というふうに変わっている。そして今後さらにテクノロジーの発展により社会が大きく変わって今は想像出来ないサービスが生まれるので、「イノベーションが起きれば実現可能!」と期待感も高まる。最近、やたらめったら耳にするイノベーションって言葉には違和感(そんな誰でも起こせないからイノベーションなのに、とても普通に使われている感が否めない)を感じるものの、「ニーズ・課題が沢山あって、それを解決出来そうなツールもある」という今の時代に生きているというのは結構恵まれていると思う。

最近、「現代の魔法使い」落合陽一氏の「これから世界をつくる仲間たちへ」という本を読んだら、以下のようなくだりがあった。

“たぶん、2030年代ぐらいの近未来の若者たちは、2010年代という過去を羨ましがるに違いありません。『20年前は、まだコンピュータで解決されていない問題があったらいいよなぁ』というわけです。”

こんなふうに思うと、「BOPビジネスは儲かんない」とか、このブログでも良く取り上げるように「ICT4Dプロジェクトは失敗に終わる…」と悲観的にならずに、諦めずにテクノロジーを駆使して成功させる道筋を考えられるのは今だけのような気もしてくる。

冒頭の勉強会でオリセットネットについてプレゼンをした住友化学の山口くん(←自分のエチオピアの青年海外協力隊の追後輩でもある)が、「今後はどうしたらマラリアを撲滅させる事が出来るかAIを活用して対策を考えるようなこともトライしたい」と言っていた。確かにそういう使い方もあるなぁ、AI。ICT4D分野は、この先10年位が一番面白いかも。時代の流れに取り残されないようにせねば・・・!

ちなみに、この話題にあまり関係ないけど、冒頭の写真はエチオピアの首都アディスアベバで行われている、タブレットを利用した人工知能プロジェクト「ヤネト(YaNetu)」。多分、YaNetuはアムハラ語で「私と一緒に」という意味かな。下の動画に出て来るアバターの先生の顔、ちょっと怖い(笑)

東海大学での講義と2018年に向けて

HFA02035

12月23日、東海大学で情報通信技術を学ぶ大学1年生を対象に、ICT4Dについての講義をさせて頂く機会をもらいました。ICTが発展途上国でも意外と活用されているという事例を中心に、自分が青年海外協力隊で経験した話などを交えつつ、大学1年生の学生さん達に、途上国の課題解決にICTが活用出来るという可能性と共に、ICT導入の課題ついても話しました。良い意味の気づきがあったので、忘れないように2つ書いて見ます。

  • 誰もが途上国開発に関心がある訳じゃない

プレゼンの最初に「JICAって知ってますか?」と聞いてみたところ知っている学生さんは殆どおらず、また、「エチオピアの首都はどこでしょう?」と聞いても、皆さん「・・・?」という感じ。講義後にレポートを提出してもらったのですが、それを見ると、「途上国のためになる活動は素晴らしいことと思うけど、自分は行ってみたいとは思わない。」という意見も多く、「なぜなら日本にも課題は沢山あるから」とか「英語力がないから行っても貢献出来ない」とか「食事とか治安とか生活面が不安」といったような納得感のある理由でした。付け加えておくと、勿論、何割かの学生さんからは、「自分も将来ICT4Dに関わってみたい」という意見もありました。

もう10年以上途上国開発に関わる仕事をしてきたので、自分の中のスタンダードが世間一般のスタンダードとちょいずれてること(ついつい誰もがケニアのM-PESAのことは知っていると思ってしまう…みたいな)に気づくことが出来たのは良かったです。自分が大学1年生のとき(というか青年海外協力隊へ応募するまで)を思い返せば、自分もJICAって知らなかったしなぁ、と思ったりしたのでした。

  • 遠くのどこかの話をどう身近な話と感じてもらうか

なるべく関心を持ってもらえるようなネタを準備したと思っていたのですが、「遠いアフリカの話をどう身近な話として感じてもらうか?」という点は、もう少し工夫の余地があったなぁ、と反省。ケニア発のUshahidiが東日本大震災後に日本でもSinsai.infoとして活用されていたというネタは話したのですが、同様に日本にも繋がりを持たせたICT4D事例の紹介の仕方があったかなと。例えば、ちょっと途上国の開発課題の解決という観点からは(教育とか保健とかと比べると)分り難いかと想い、Impact Sourcingの事例は省いてしまったのですが、「大学に入り一人暮らしを始めようと見ている住宅情報の見取り図は、もしかしたらカンボジアの人達が作成した図面かもよ?」というような持って行き方もあったなぁ、と思ったり。こういう説明方法のスキルは上げて行きたいなと感じたのでした。

こんな感じの気づき&学びがを得る事が出来て、とても良かったです。機会を頂けたことに感謝!しかし、18〜19歳位の若い方達と話すと、(自分も若いつもりでいるんですが)歳食ったなぁ〜と実感。

自分がICT4Dを専門にしたいと思った2003年頃に比べると、日本で得られる途上国の情報はかなり多くなったし、「援助」だけでない途上国との関わり方もかなり多様化して来たと感じます。それでも、まだまだ日本の中でイメージする途上国(特にアフリカ)と実情にはギャップがあるので、そのギャップを縮めたいな、と改めて思いました(これ、協力隊から帰国したときにスゴい感じたことなんだよね)。これかは(これからも)より多くの人達をICT4D分野に巻き込んで行きたいな、というのを2018年に向けての抱負にしようと思います!

ICTという分野はあるのか?

スクリーンショット 2017-12-28 22.35.55

前回の投稿で紹介したInternational Development Youth Forumが実施した勉強会「ICT × 国際開発を考える講演会・ワークショップ」に参加してきました。前半の講演会は、アジア開発銀行で相殺首席補佐官を務める池田洋一郎氏、JICAの篠原雄之氏による話。後半は参加者でのディスカッション。色々と勉強になったので、備忘録的に。

  • ICTという分野はあるのか?

ICT4Dの話をすると、どうしても「ICTの前にBHNじゃないのか?」とか「ICT分野は民間がやるからODAでやらんでも良いだろう」という話題が出る事が多い。なので、池田氏に「公的資金をつぎ込む場合、ICT分野の優先順位はどう考えるのか?」という質問をしてみました。回答はとても明快で「ICTって分野はない」というもの。ICTはツールなので◯◯分野で何かを効率的に実施するために必要なら使うということ。以前からあるICTのメインストリーム化という観点と同じだと理解しました。じゃ、「教育分野で先生のトレーニングをした方が良いのか、それともICT教材を導入した方が良いのか?」のようにツールとして具体的に wiht or without ICT?となると判断は分野や個別案件で異なるのだろうと感じつつも、「ICTという分野はない」という点は最近Kanotとも話していた話題でもあり、ストンと落ちるものでした。

  • アジア開発銀行の高度技術信託基金(High-Level Technology Fund)

スマートシティやリモートセンシング技術などの高度なテクノロジーを途上国で活用するためのファンドが設立され、2017年5月のアジア開発銀行の第50回年次総会では日本政府が2年間で4,000万ドルを拠出するとの発言もされていたのでした。知らなかった。JICAではICT案件の比率はかなり低いですが、国際的にはSDGsに絡んだSTI (Science, Technology, and Innovation)やこういう動きもあるのだと改めてICT4D熱が高まっているかも、と感じます。

  • ICTの普及は途上国にとって良いの悪いの?

AIやIoTなどICTの普及が進むと人間の労働がICTに取って代わられてしまうとか、ICTを十分利用出来る人と出来ない人の格差が広がる…といった議論もありました(ある意味、王道の議論)。答えはないのですが、公的機関の役割としては、プラットフォームやデータの支配者による独占が起きないように法的枠組みを作ること、という話があり、まさにそうなんだよなと同感しつつも、一方で規制によって民間企業のイノベーション促進に足かせをしてしまわないか…?という懸念も。この辺りの議論は世銀のWDR2016にも書かれていましたが、独占を禁止し公正な競争を促進するとう法的枠組みをどう作って行くのはセキュリティの課題とともに、大きなテーマだと再認識しました。

  • 質問力を鍛えねば

後半のディスカッションのテーマは、「ICTの普及によって若者の失業率は高まる?我々の働き方はどう変化する?生活はどう変わる?」的なものでした(正確じゃないけど、ざっくり言うとこんな感じのテーマでした)。答えがないテーマだからこそ面白いものの、哲学的な問いにも発展する内容。池田氏からは「より具体的且つ身近なテーマの方がディスカッションし易いよ」とのコメントがあり、確かにそうだなあと感じました。自分も神戸情報大学院で講師をしているときに、ついつい漠然とした問いを学生へ投げてしまうことがあるのですが、今回自分自身が参加者となったことで、「質問力を鍛えねば…」と自戒したのでした。また、答えのない課題について、どう自分なりの答えを持っておくのか?という点も、もっとちゃんとせねば…と思いました。

他にも色々面白いICT4D事例の紹介などがJICAの篠原さんからあったり、ディスカッションではキレのある発言があったりと、得るものが沢山あったのですが、全部は書けないのでこのへんで。

International Development Youth Forum

IDYF

Facebookを通じて「International Development Youth Forum(IDYF:国際開発ユースフォーラム)」という団体の方から連絡を貰いました。2012年に設立されたこの団体は、国際開発に関心のある学生達のネットワーキング的な活動をしているそうです。

何故ICT4Dブログに…?と思ったのですが、この団体が毎年行っている「国際開発ユースフォーラム」(場所は東京)の2018年のテーマが「“How should we co-exist with ICT? Does ICT bring us peril or prosperity?”」というもの。ほほぅ。

このフォーラムは約一週間、参加者がディスカッションしたりするプログラムなんですが、ディスカッションのお題が「“How could the use/advancement of ICT contribute to achieving inclusiveness within society?”」。具体的には3つの事例に基づいた議論を行うものですが、うち2つがICT4Dネタなのです。なかなか面白そう(以下、IDYFのサイトからコピペです)。

****************************************

  • 「ベトナムの農業におけるICTの活用」

アグリ・インフォマティクスと呼ばれる、データ分析に基づいて適切なアドバイスを提供するシステムが大きく注目されている。生産の効率化、低コスト化、専門的な経営、人材育成、信頼性など様々な問題を解決できて農業の第6時産業化が促進されるからだ。ベトナムでは、2010年のICT早期強化プロジェクトに関する首相決定に基づいて、2020年までにICT技術を農村まで拡大しようと努力している。ICT協力を謳った日越共同声明を受けて、JICAはベトナムでのAIに関するODA輸出を頑張っている。本会議では、日本がベトナムで行っている農業情報支援事業を様々な角度から分析し、どのような開発であるべきで、かつどのように改善できるのかを考える。

  • 「コロンビアの紛争後の平和構築におけるICTの役割」

コロンビアは内戦とそれに続く複数の危機を1960年から50年の長きにわたり経験した。FARC(コロンビア革命軍)と ELN(民族解放軍)の2大ゲリラ勢力は 政府に対し活発に反乱を起こし、麻薬取引や人身売買といった国際的組織犯罪により活動資金を調達していた。現在、政府はいずれの勢力とも終戦協定を締結し、紛争後の復興と発展に向けて舵を切った。コロンビアのICT大臣はICTが社会の統合を進め、市民参画を促し、民主化の定着に資し、以って復興と開発を加速させるとしている。国家的なICT大綱である “Vive Digital 2018”は ①働き方の改善②雇用創出③企業家支援④都市と地域の転換を4本柱に据えている。しかし同時に大臣は高齢者や障がい者はこうした社会の抜本的な変化に際してより大きな困難を抱えるとも認め、懸念している。さらに国内外の努力にも係わらず若者の失業率は17%近い。本ケーススタディにおける要点は「コロンビアにおけるICT活用・発達への情熱はデジタル・デバイド、高い若者の失業率、紛争後の復興という諸問題の解決に繋がるのか」であろう。参加者はICT活用がコロンビアにおいて相応の解決策であるのか状況を混乱させるだけなのかについて社会に存在する様々なギャップを念頭において熟慮する。

****************************************

面白いテーマ設定で、思わず自分も参加したくなったのですが、若者限定イベント(18〜28歳が対象)ということで、オジサンは参加不可能でした(涙)

しかし、世銀のWDR2016のテーマがICT4Dだったり、民間企業もICT4Dという用語を使うようになってきたり、SDGs達成のためにSTI (Science, Technology, Innovation)が注目されたりと、ここ最近、ICT4Dの波が来ている気がしています。そして、こういう若者のフォーラムのテーマにもなるとは。10年前とは偉い変化だなぁ・・・。

と、なんだか浸ってしまいましたが、この「国際開発ユースフォーラム2018」(2018年3月11〜18日)に参加したい方(年齢制限18〜28歳の若者)は、この団体のWebサイトから申込みしてみてはどうでしょうか(締め切りが12月17日と結構迫ってます)。