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情に報いると書いて「情報」=information

今日、とても面白い話を聞いたのでわすれないように。

まずは、前段。

これまでの投稿で何度か、dataとかinformationは受け取る人の教育レベルや経験によって、その人にとって有益にもなるし無意味にもなる、というようなことを書いてきた。だからICTを使って情報を配信しただけでは、必ずしも全員が恩恵を受けられるわけじゃない。このコンセプトは、Heeks教授の”4A model”というモデルが分り易い。

A4 Model

Source: Heeks, R. (2002) “iDevelopment not eDevelopment:Special Issue on ICTs and Development”, Journal of International Development, 14(1), 2002, 112, which has been published in final form at: http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jid.861/abstract

Dataは単なる数字や単語の塊であり、それだけでは意味をなさない。そのDataにアクセス出来て(←例えば、スマホでインターネットを使ってアクセスするには、スマホというデバイスやインターネットを使えるだけのお金やスキルが必要)、Assessすることが出来て(←その数字や単語の塊が何を意味するのか?を分析・理解するためには教育や経験が必要)、Apply(Adapt)することが出来て(←自分の仕事や生活に当てはめて、そのDataを有益に活用するアイデアに気づくためにも教育や経験が必要だし、さらに、それを「有効活用しよう!」と考える意識・思いが必要)、そこまで出来て初めて単なる数字や単語の塊であるDataが有益な意味を持つInformationになる。そして、その有益な情報に基づいて、自分にメリットのあるActを取ることが出来る(←そのためは、時としてお金や時間や体力などが必要)。ということを上記の4A modelは示している。

要するに、受け取り手側の教育レベルや経験、能力によりけりということ。これは、「結局、アナログ・コンポーネントが重要」という世銀のWorld Development Report 2016の内容とも同じ趣旨だ。

んで、今日聞いた面白いこととは、日本語でInformationは「情に報いる」書いて情報ということ。Informationにこの日本語訳を当てはめた人は、上記で述べた「有効活用しよう!」と考える意識・思いが必要」という点を理解していたのだろうと驚き。

Informという単語は、「知らされたもの→知識、考え→情報」というような語源を持つらしいのですが、informという情報発信側主体の単語の名詞形に、情報の受けて側の視点から日本語に訳した方はスゲーなーと感心してしまいました。

ソマリアを知ろう ~元通信大臣が語るICT事情、迫りくる飢饉そしてソマリアの未来~

かなり急なお知らせですが、3月30日(木)に、DMM.Africaにて「ソマリアを知ろう ~元通信大臣が語るICT事情、迫りくる飢饉そしてソマリアの未来~」というイベントがあると友人から聞きまました。あまりにグッと来たので、もう日がないながら以下、紹介しちゃいます。

 ソマリアと聞いて皆さんなにを思い浮かべるでしょうか? アフリカの角とよばれる場所に位置するソマリアは、多くの日本人にとって馴染みが深いとは言えない国です。あたらしい政権が発足し、日本との正式な国交が樹立し、様々なソマリアと日本を結ぶビジネスが始まっている昨今、みんなで一度ソマリアの人の話を聞いてみませんか?

 ソマリアのICT事情のこと、ソマリアの干ばつと飢饉のこと、そして何よりも大事なソマリアの未来のこと。ソマリア政府の通信大臣を務め、様々な立場からICTによってソマリアを活性化しようと尽力してきたモハメド・イブラヒム氏が緊急来日。皆さんの好奇心に真摯に答えます。

  • 日時:3月30日(木)15:00〜17:00 (開場は14:30〜)
  • 場所:〒106-6224 東京都港区六本木三丁目2番1号 住友不動産六本木グランドタワー DMMグループ総合受付24階

    地図 – https://goo.gl/maps/m3W5ZBn7XoJ2

  • 参加費 :無料
  • 参加登録 :以下のフォームから

https://docs.google.com/a/kcgrp.jp/forms/d/e/1FAIpQLSda2yp_LMjY3b4iIGlWPlC5ESuuBQQ-NJQ8gNkSjub2AJjHRw/viewform

  • 諸注意 :通訳のご用意はございません
  • 当日は名刺2枚をご持参ください
  • 1Fの受付にて、担当者が入館証をお配りします

ご関心のある方、行ってみてはいかがでしょうか?

ちなみに、「あのエロ動画のDMM.comが、ソマリアって…?!ん、よく見ると”.Africa”になっとる?」という方は、こちらのニュースを見てみて下さい→アフリカ市場で事業を創造せよ!あのDMM.comが新プロジェクトに挑む若者を募集中!

JICA監修アプリ「Jhappy」

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JICAがSNSアプリをリリースしているのでご紹介。
以下、JICAのWebサイトからのコピペです。

JICA監修SNSアプリ「Jhappy(ジェイハッピー)」のAndroid版をリリース致しました(iOS版は2016年11月に先行リリース)。

本アプリは、世界各地で途上国開発に関係する様々な人々(日本に来ている途上国の留学生、途上国のカウンターパート、日本の開発専門家、コンサルタントetc)や、国際協力やボランティアにご関心のある人々にご利用いたただける情報交換のプラットフォームです。誰でも無料でダウンロード、情報発信・閲覧等ご利用いただけます。インターネットで検索するよりも簡単に国際協力やボランティアに関心のある世界中の人々や情報と出会い、対話することができます。世界の課題解決のためにご尽力いただいているみなさまの対話・学びあいの促進にご活用ください。

また、日本含め世界各国が抱える社会課題は多様化しており、問題解決のためには、今後も益々多くの方々の事業へのご参画を必要としています。JICAは、このアプリを通して、事業の成果にかかる情報発信や、日本に招聘している途上国からの留学生との交流強化に一層努めます。

これまで国際協力事業とはご縁のなかった方々にも、Jhappyを通して、世界で起きていることを、より身近に感じていただけますと幸いです。

以上がJICAのWebサイトの紹介文。うーむ、か、カタい。かなりおカタい感じの紹介文だ。でも、万博関西弁バージョンのようにくだけ過ぎするよりは良いか。

紹介文の賛否はさておき、関心がある方は、iOS版はここから、Android版はここからダウンロード出来ます。

そう言えば、大分昔(2009年)の投稿「SNSの可能性」の中でも紹介していたのですが、ドイツのGIZ(ドイツのJICAみたいな組織)が「Alumniportal Deutschland」というSNSサイトを2008年からやっており、2009年時点では約2500人だったユーザー数が、現在は15万人近くまで拡大していました。

SNSが成功する(盛り上がる)のか否かのポイントは、ICT4Dプロジェクトの成否のポイントと類似点が多い気がする。SNSサイトを立ち上げたり、アプリをリリースするだけでは何も起らない。例えば10年位前、mixiが流行った時代には、自治体の多くが自治体SNSサイトを立ち上げたものの、成功した例はかなり限定的だった。「ICT=Solution」的な発想でシステム導入だけしても、その効果が出ないという明快な例だったと思える。

SNSについては、それを使うユーザーへの動機付けや、ユーザーを巻き込むことが必要。更に使い勝手にも気を配る必要がある。一方、負の面を考慮すると、ユーザーのマナー(リテラシー)や、英語以外のマイナー言語(例えば、スワヒリ語とか)で不適切が書き込みがあった場合に、誰がどうそれを発見して削除するのか?や個人情報の取り扱い、セキュリティといった難しさもある…。

と思いながら、とりあえずダウロードしてみました。

ICT4D分野の進路相談

先日、ICT4D分野の進路相談を受けることがありました(自分も進路相談したい位の若輩者ではあるのですが・・・)。また、最近、職場の異動やら娘の小学校入学準備やらで、なんとなく新年度を迎える感が高まりつつあったので、ICT4D分野の進路相談をテーマに投稿します。

求人情報

まず紹介したいのは、「http://ict4djobs.com/」というサイト(実は2011年の投稿でも紹介済みだったりしますが)。このブログでもちょいちょい元ネタにさせてもらっているICTWorksの運営者Wayan氏などがやっているサービスで、メアドを登録するとICT4D分野の求人情報が定期的に送られて来ます(以下、その一例)。

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このサービス、自分も利用しているのですが非常に幅広い求人情報が載っていて、「今どいう団体がどういう人材を欲しているのか?」というICT4D人材の世界的な需要を知ることが出来、職探しとは別の視点で勉強になります。

大学院留学

以下、過去の投稿を整理してまとめてみました(中には情報が古くなっているものもあるかと思うので、その点はご容赦下さい)。

この他、Sussex 大学のInnovation and Sustainability for International Developmentなんかもあり、探せばまだまだあるのかも。

次に以前、このブログのコメントで頂いた質問に対する自分の回答を紹介します。あくまでも個人的な見解なので100%正解ではないという頭で見てもらい参考になれば幸いです。

マンチェスター大学のICT4D修士コース(その1)

以前、このブログ相談(詳細はProfileページをスクロールしてみて下さい)を受けた質問3つに対する回答です(2012年8月)。これはもう完全に個人的な感想で、しかも自分が留学していた2007〜2008年の頃の話なのであくまで参考までに。

  1. ICT4Dを学ぶにあたっての現場経験(エンジニアとしての経験)
  2. マンチェスター大学について
  3. 研究テーマについて

まず、大学院でICT4Dを勉強するという点において、ICT業界などでの現場経験の重要性は、「なにを勉強するか?」によると思います。例えば「オープンソースソフトウェアを活用して途上国向けアプリ開発をするには?」的な技術的なことを追求したいなら、プログラマやSEとしての現場経験は非常に有益ですが、「途上国のICT政策の在り方について」といった政策的なことや、「ICT4Dプロジェクトの評価手法について」といったことを学術的な観点から研究するなら、現場経験の重要性は薄れると思います。

そして、マンチェスター大学で学ぶ内容は、後者になります。途上故国開発系の授業に加えてシステム開発関連の授業もありますが、技術的な話というよりは、プロジェクトマネジメント的な内容です。IT資格試験で例えるなら、CCNAやネットワークスペシャリストやではなく、ITストラテジストやプロマネの試験内容といった感じです(ちなみに、自分はマンチェスター大学の授業での課題で書いたエッセイのネタを流用してITストラテジスト試験に合格しました)。

なので、「ICT4Dプロジェクトの成敗の要因」を技術面からではないアプローチで研究したいということなら、マンチェスター大学は良いと思いますし、現場経験の無さも大きなデメリットにはならないと思います。

また、1年間のコースで勉強出来ることは「浅く広く」です。ICT4DといってもUSPのような教育分野から保健医療、農業、電子政府、BOPビジネスetc.かなり幅広いですし、テクノロジーも携帯電話から衛星や地デジまでハード、ソフト含めさらに幅広です。分野・技術・地域・アプローチなどから研究テーマを絞り込む過程で自分の興味の焦点が明らかになると思いますが、そのためにも、まずは幅広い文献や事例に目を通すのが良いです。個人的には、この幅広い文献や事例を学べるのが大学院の1年の一番のメリットと思います。

マンチェスター大学のICT4D修士コース(その2)

同様にこのブログ相談(詳細はProfileページをスクロールしてみて下さい)を受けた質問3つに対する回答です(2013年2月)。

  1. 「コースの状況(授業の雰囲気、教授のスタンス等)」
    少数制の議論中心の授業を想像してビビッていたのですが、授業は大半が40人位での講義型でした。ガンガン意見を言い合うというのではなく、2~3人のグループでちょこちょとと話をして、その結果を代表が発言したり、発言する人は発言するという感じ。「発言しない人はいないも同然」という米国のMBAコースみたいな感じではなないです。また、5~6人でグループワークを行いプレゼンするということが多かったです。プレゼンとタームエッセイで評価される授業が多かったです。
    雰囲気はかなり多国籍でした。そして、学生のレベルもまちまち。米国やカナダからわざわざ英国留学に来るような学生はレベル高かったですが、途上国からの学生のなかには、自分から見ると「そんな発言すんなよ~」と思うこともありましたが、でも先生はちゃんと丁寧に回答してたし、周りの雰囲気も和やかでした。人によっては「もっとレベル高いかと思った」と感じる人がいてもおかしくないと思いますが、個人的には、和やかな雰囲気が好きでした。
    教授のスタンスはわりとみんな親切・親身に話を聞いてくれる感じでした。自宅に招いてのバーベキューみたいなことはなかったですが、個人的には満足でした(以前ロイヤルホロウェイの学生に聞いたら、Tim Unwin教授は自宅でバーベキューとかやってくれるという話でした)。例えば、今でもRichard Heeks教授とは繋がっており、日本へ来た際に会ったり、個人的に論文を書いた際に相談したり、といった関係は続いています。
  2. 「フィールドワークでどのようなことを実施したか」
    ICT4Dコースにフィールワークってのがありますよね。自分のときはインドへ1週間ちょい行き、ICT4D活動をしているNGOやマイクロソフト・リサーチなどの企業を訪問したりでした。フィールドワークっていってもリサーチをする感じではなく、視察旅行みたいな感じです(修学旅行のもう一段レベルアップしたようなものですね)。でも、現場でいろいろな話を聞けたのはためになりましたし、何よりも同級生や教授と仲良くなれたのが良かったです。
    ちなみに、自分はコースとしてのフィールドワークとは別に、修士論文のためにエチオピアへフィールドワーク(これは本当にリサーチをするため)に行きました(自腹です)。
  3. 「卒業後にManchesterだったから得られたメリット」
    うーん、これは難しい質問ですね。別の大学院だったらどうだったのかと比較ができないので、なんとも言い難いですが、とりあえず同窓生が結構居るので、「あ、自分もマンチェスターでした」って話が出来る機会が結構あり、メリットかもしれません。でも、開発業界ではサセックスも卒業生多いですよね。

以上、昔のネタに再びスポットを当ててみました。これから新しい進路を目指す方へ参考になれば幸いです。もっと最新情報を知っている方がいれば、是非、コメント下さい!

せどり@ガーナ

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どうもTomonaritです。ガーナ生活がピッタリ3年経ち、とうとう今日、日本へ帰国する日を迎えました。折角なのでガーナ生活の最後はガーナネタで締めたいと思います。

ちょうどここ最近、日本への引っ越しで色々と荷物を整理をしていました。同様に帰国などで不要品を整理する同僚や友人と話していたら面白いことを聞いたのでご紹介。

ガーナに住む外国人が不要品を処分するときに良く使っているのがaccraexpat.comというWebサイト。いわゆるヤフオク的なサイトで、使わなくなった家財道具、洋服、車などを希望販売価格、連絡先、写真等とともに掲載し、サイトをみて欲しい人が直接売主に連絡して交渉・売買を行うというもの。結構多くの外国人が利用してる。

最近、このサイトを利用している知り合い何人かに聞いた話では、アイテムを掲載するとガーナ人からの問い合わせがガンガン来るらしい。時には掲載して数分以内に来る問い合わせも。問い合わせ内容の多くは「んで、いくらまけてくれるの?」というもの。しかし、中には「何でも買い取るから、何かあれば今後、優先的に連絡してくれませんか?」的な人も。

一方、外国人ではなくガーナ人が主に利用している同様のWebサイト(例えば、tonaton.comなど)もある。興味深いのは、外国人御用達のaccraexpatよりもガーナ人が主に利用しているWebサイトの方が全体的に掲載されているアイテムの価格が高いという点。同様のアイテムでもガーナ人が主に利用しているWebサイトのほうが何故か高い値段が付けられているというのだ。

この理由は、外国人は基本的に価格交渉なしという前提で価格を付けたり、また、引っ越しで不要なので二束三文でもOKという価格を付けているのに対して、ガーナ人は価格交渉をされる前提で価格を決めているから。

そして、ガーナでも「せどり」で設けている人達がいる様子。前述したように、「何でも買い取るから、何かあれば優先的に連絡して下さい」的な人達は、自分が欲しくて買い取るのではなく、外国人が使用しているアイテム(自国から持って来ているモノなど結構良いものもある)を二束三文で買い取って、ガーナ人向けのWebサイトで利益を乗っけた価格で販売しているようなのだ。

ガーナの首都アクラに住んでいると、町ゆく人達の多くがスマホを使っているし、ネットもサクサクなので、こういう話を聞いても非常に納得感がある。でも、ガーナに来る前に聞いたら結構ビックリしただろうなぁ、などと思う。アフリカのICT普及の波は多くの日本人の想像以上に拡大・深化しているんだと改めて感じた、という話でした。

全然関係ないですが、冒頭の自画像は職場のガーナ人同僚が記念品としてくれたもの。どっからどうみても中国人だなぁ…(笑)でもありがとう(涙)

Geek Heresy日本語版「テクノロジーは貧困を救わない」

以前、このブログでも紹介した外山健太郎氏の「 Geek Heresy: Rescuing Social Change from the Cult of Technology」の日本語訳版が発売された。日本語タイトルは「テクノロジーは貧困を救わない」。なるほど、なかなかキャッチーなタイトル。

基本的に、「Technology = Solution」ではない!というのが外山氏の主張。その主張は上記の動画でも良くわかる。それなのに、先進国主導のテクノロジー導入をコアとする様々な開発援助(例えば、OLPCなど)が実施され失敗に終わっている。テクノロジーが出来るのはそれを使う人々の能力を増幅(Amplify)することだけで、そもそも能力がない人達にとっては、期待する効果を発揮することが出来ないという話。

Richard Heeksの「途上国のe-Governmentプロジェクトは85%が失敗に終わる(Most e-Government for Development Projects Fail)なぜならテクノロジーだけポンと導入しても、それを使う組織、人、制度、価値観などが十分準備出来てないから」という主張や、世銀の「World Development Report 2016:Digital Dividends (デジタル化の恩恵)」の結論のテクノロジーの恩恵を十分に享受するためには「アナログ・コンポーネント(人材育成など)」が重要という内容とも一致する。

そいう意味では、この本の主張はもっともであり、且つ、様々な事例を上げてそれを説明しており説得感がある。

一方、「じゃ、どうすればICT4Dプロジェクトは成功するのか?」となると、根性のあるリーダーとか、やる気のある裨益者とかの存在が重要という内容は記載されているものの、若干精神論的にも思える点に物足りなさを感じる読者もいるんじゃないかと思える。実際、Amazonのカスタマーレビューでもそういう指摘がされていた。その意見には賛成出来るものの、「じゃ、どうすればICT4Dプロジェクトは成功するのか?」の解がズバリ分るような簡単な答えならとっくに判明しているとも思う。

「どうして開発援助プロジェクトにおけるテクノロジー導入が思いのほか成功しないのか?」という問いをよくよく考えてみると、「どうして開発援助プロジェクトは思いのほか成功しないのか?」という問いとほぼ同じじゃなかろうか。そして、「どうすればICT4Dプロジェクトは成功するのか?」という問いは、「どうすれば開発援助プロジェクトは成功するのか?」という問いと同じではないだろうか。開発援助プロジェクトがほぼ100%成功しているならば、「なんでICT4Dプロジェクトは成功しないのか…?」という問いが成り立つが、そもそも開発援助プロジェクトそのものの打率が10割じゃないのだ。

今日、ガーナから日本に留学して博士号を取得し、その後も日本で働いた経験のあるガーナ人の方と一緒に食事をする機会があった。彼曰く「ガーナの人達はDevelopmentしたいと語るが、何がDevelopmentなのかわかっていない人が多い」とのこと。この言葉は結構刺さった。彼は先進国とガーナを比較し、何が足りないかを理解しているが、それは彼がその比較を出来るだけの経験や勉強をしているからである。そういう機会に恵まれない人達(こういう人達が開発援助プロジェクトの裨益者となるのだが)にとっては、今の生活と何を比較して「どこに向かうべきか(つまりDevelopmentの方向)」を理解するのだろうか?そいう人達はDevelopmentと言ったときに具体的にどんなイメージをもっているのか?そもそも持てるか(実は今の生活が当たり前で、それなりに満足?)?

そして「ICT4D(テクノロジーの導入によるDevelopment)」とは、とりわけ彼らにとって具体的イメージが持ちにくい分野なのではないだろうか。なぜなら、裨益者としての対象となるような人達には、テクノロジーの具体的イメージ(活用方法やそれで何がどう便利になるのかなど)もDevelopmentの具体的方向性もいずれも分りにくいから。

そう考えると、懇切丁寧に粘り強くその具体的イメージを説いて回る根性あるリーダーとか、ある程度の具体的イメージを持っている(欲しいものがわかっている)やる気のある裨益者とかが、成功要因になるものわかる気がした。

m-Agriculture成功の鍵は、どれだけ人が介在出来るか?

先日、ガーナのグラミン・ファンデーションが実施しているm-Agricultureプロジェクトの話を聞く機会があった。実際にプロジェクトを担当している方からの話が非常に興味深いものだったので紹介したい。

Achieving Impact at Scale through ICT-Enabled Extension Services (AIS) projectという名前のついたプロジェクトの話。グラミン・ファンデーションの他、カナダのIDRC、インド発祥のDigital Green、Farm Radio Internationalが連携して実施している。

携帯電話を使った農民支援というとパッと思いつくのが、農作物の市場価格や天気予報といった情報をテキスト等で農民に提供することで、農民が仲買人に作物を買い叩かれないようになったり、天候によるリスクを軽減出来たりというメリットがある、という話だ。しかしながら、今回聞いた話は、そういう取り組みと一味違った内容で面白かった。

グラミン・ファンデーションがいわゆる農業情報配信システムを開発し、市場価格や天気予報などの情報を配信するという点は同じ。ただし、単純に農民に情報を配信するのではない。

農民から農作物を買い付ける仲買人(Agent)に対して、プロジェクトから情報配信用のアプリが入ったデバイス(スマホ、タブレット)を提供し、仲買人が農民に対して情報をセレクトして配信する仕組み。仲買人は最初に各農民と面談し、農民の情報(氏名や性別等の基本情報、育てている作物、農業スキル、欲しい情報、等)を聞き取りシステムに登録する。仲買人は定期的に各農家を訪問しアドバイスを提供することが義務付けられ、訪問時には写真を取ったりメモを取ったりして、その情報はデバイスを通じて、サーバーにアップされる。各シーズンにいつ頃、誰を訪問するべきか?というタイミング(種まきの前とか、収穫の前とか)はアプリで知ることが出来る。アプリには、登録された農民情報から農民をグルーピングして「米を作ってる農家」、「メイズを作ってる農家」、のように作物で分類したり、「経験抱負な農家」、「経験が浅い農家」のようにスキルで分類したりする機能があり、仲買人は配信される情報の内容を見て、それが必要なグループに配信する。沢山の情報を一斉に全員に配信するのではなく、各農家に合った情報を提供する。アプリの言語は英語のみだが、農民の中には英語が出来ない人もいる。その場合は、仲買人は定期訪問時に現地語でアドバイスしたり、ポータブルのプロジェクターで動画を見せて説明したりする。

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農家→仲買人→大手バイヤーの全体にメリットを提供出来る仕組み作りが上手い!

 

仲買人は50件の農家を管理しており、このプロジェクトではガーナ中で約200名の仲買人を対象としている。つまり、200×50=10,000ということで、一万件の農家を支援しているわけだ。当初は仲買人は100件の農家を管理する想定だったそうだが、実際にやってみると定期訪問が大変で数を50に変更したとのこと。

「どうやって対象とする仲買人を選んでいるのか?」と聞いたところ、仲買人を選ぶのではなく、複数の仲買人から作物を買い取る大手バイヤーのなかから農民への一定の支援に協力的なバイヤーを選び、その下にいる仲買人が対象になっているということだった。農民が作る作物の質・量が向上することは、大手バイヤーにとってもメリットであり、また、大手バイヤーは肥料販売やトラクターのレンタルなどもやっているケースが多く、そいうサービス業の繁盛にも繋がる。仲買人にとっても農民が作る作物の質・量が向上することは、安定した買い付けが出来る点でメリットがある。より安くて質の高い作物を探して遠方まで買い付けに行くコストよりも、地元の農民を支援してニーズにあった作物を育てさせる方が効率的である。つまりAISプロジェクトは、農民だけを直接支援しているというよりも、「農民→仲買人→大手バイヤー」という農作物の買い取りシステム全体を支援しているような印象。

アイデアとして「質の良い作物を大量に買い取りたい」という大手バイヤーを巻き込んだところが、秀逸だと感じた。政府系の農業普及指導員を巻き込んでこのような取り組みをしても、農民のスキルは向上したとしても最終的に質・量が改善した作物を「誰が買い取ってくれるのか?」という出口が不明瞭だ。一方、このプロジェクトでは最初にその出口を確保し、そこから支援の対象となる農民が選ばれている。農民のセレクションではなく大手バイヤーのセレクションからという逆のアプローチは秀逸だ。さらに、政府系の農業普及指導員よりも、仲買人の方が利害関係から「農民に良い作物を作らせる」という目的に対してモチベーションが明確である。

また、プロジェクトは農民への直接的なトレーニング等は行わず、仲買人に対してのみ各種トレーニングを提供している。ダイレクトに農民に情報配信をするのではなく、農民と仲買人という既存の関係性の上に情報配信をプラスするという方法をとっている点や、情報配信をするだけでなく実際はフFace to Faceで仲買人が農民に現地語でアドバイスをしたり定期訪問したりする点は、「ICTはあくまでツール。ICTそのものがソリューションではない。」ということを具現化したようなプロジェクトだ。いくつかm-Agricultureプロジェクトの事例を見ると、やはり「どれだけ人が農民とICTの間に介在出来るか?」が成功・失敗の分かれ目になっている。ちなみに、ガーナのグラミン・ファンデーションには、何度かこのブログでも紹介した外山健太郎氏が活動していたインドのマイクロソフト・リサーチで働いたいたガーナ人がいました。そういう繋がりから、Digital Greenとも連携しているのかもと憶測。

気になるのは、この農業情報配信システムの利用料金を「誰が払うか?」だ。現時点ではIDRCの援助で成り立っているため、誰からも利用料金は取っていないとのこと。この援助がストップしたときの持続性はどうなのか?

この質問については、いつくかの案があるということだった。例えば、農民は現金を払うことに付いて非常に抵抗感が強いため、仲買人が作物を買い取るときに、作物の量を増やす等の方法でモノで払い(使用料金をさっぴいた買い取り価格にする方法も)、仲買人が現金で使用料金を支払うという方法が考えられる。また、別の案としては、最終的に質の良い作物を手にする大手バイヤーが使用料金を肩代わりする方法も。さらに、このプロジェクトは携帯電話での情報配信だけでなく、ラジオでの情報配信も行っていることから、トラクター貸し出し業や肥料販売などをしている会社(大手バイヤーと被ることもある)の宣伝をラジオに載っけて、その広告料でシステムの利用料金を賄うといった方法もありえる。

持続性については今後も色々と考えて行くという話だったが、上記の案はいずれも悪くないように感じた。ただ、これが援助でなくビジネスとして成り立つ場合、仲買人は自分が管理する農民をよりシビアにセレクトすることになる。例えば、肥沃な農地を持っている農民や一定のスキルのある農民を対象にした方が良いに決まっている。言い換えると、より恵まれない環境にある農民は、この仕組みに入れずに、お隣さんがより質の高い作物を作っているのを羨ましそうに見て、より格差が広がる…ということに。このプロジェクトでは、そういうことを避けるためにラジオを通じた情報提供を分け隔てなく行ったり、仲買人が農民をセレクトする際にバランスのとれたセレクションをするようにしているとのことだが、援助がビジネスに切り替わると、弱肉強食の世界にならざるを得ないだろう。まぁ、この手の話はまた別の機会に書きたいと思います。

今回、グラミン・ファンデーションの方から話を聞いて、人を支援するという視点ではなく、システム全体にメリットのある支援を考える視点の重要性を強く感じた。いやはや、とても勉強になりました。

最後に、Achieving Impact at Scale through ICT-Enabled Extension Services (AIS) projectの紹介がされているWebを見ると、もっと色々な情報が掲載されており、一部上記の話とも違う点(例えば、プロジェクトが対象としている仲買人は200ではなく220との記載)もありますが、生で聞いた話を元に上記は記載してみました。