カテゴリー別アーカイブ: インパクト評価

ベトナムのIT・日本語人材の高い市場価値

2016年8月に実に5年ぶりにベトナムのハノイを訪問したのだが、当時担当していたプロジェクトがどうなっているかを確かめるべく関係者・関係機関を私的に訪問した。そのプロジェクトというのは、「ハノイ工科大学ITSS教育能力強化プロジェクト(2006-2012)」というベトナム最高峰のハノイ工科大学と日本政府が共同で、IT教育と日本語教育を同時に行う学部を新設するというものである。

プロジェクト当時、この学部に入る学生にとって一番魅力的であったのは日本への留学であった。1学年120人程度のうち20人が(日本政府の資金で)日本に留学できるとあって、優秀な学生が集まっていた。その日本政府からの留学資金支援も終わって早2年以上、この事業はどうなっているのだろう?きちんと日本語・IT学部教育を継続できているのだろうか?こういった点を確認すべく、まずハノイ工科大学を訪れた。

まずプロジェクトのフロアに到着すると、生徒が作った日本語のポスターなどがあり、日本語教育が継続していることが確認できて、とても安心した。

P1200446 (1)

その後、プロジェクトのカウンターパートであった教授、担当者にも話を聞いてみた。彼らによると、現在もその学部教育は続いており、毎年120名程度が入学している。日本政府の支援で留学という目玉はなくなったものの、IT産業の活況(ベトナムのIT産業の最大の貿易相手は日本である)と日本文化への興味もあってか、入学を希望する学生は継続しているとのこと。

そして気になるのが生徒の成長、つまり市場価値のある人材に育っているかという点について尋ねてみた。この点は2012年のプロジェクト終了時評価報告書でも「これまで日本人専門家を中心に維持・運営されてきた就職支援及び企業コンソーシアムとの関係継続についてが、 最大の懸念事項である。(p.19)」と明記されているように、最も心配していた点である。

この点に関しては、驚くべき成果があがっていた。なんと卒業生の6割が日本を勤務地とする内定を得ているとのこと。日系IT企業の現地採用ではなく、日本での採用となっているのが半分を越えているというのは正直驚いた。その他にも2割が日系IT企業を含むベトナム国内でのIT関連業務、1.5割程度が進学、と非常に高い成果となっていた。私が担当していた2012年頃は、中国・インド人材の人件費高騰もあり、まさに日本のIT企業がベトナムに向き始めた頃で、多くの視察客が訪れてはいたものの、日本勤務での就職を得れるのはほんの一握りであった。当時からITと日本語ができることの付加価値は感じていたが、ここまで高い就職率を得れるとは想像していなかった。

では、なぜこんなにも高い就職率を保てているのか?その大きな理由の一つは、日本語教育の資金などを確保するべくハノイ工科大学が独自に日本の民間企業と連携を始めたことだ。その企業連携の代表格が日本のIT企業であるFramgia社である。Framgia社は民間企業としてハノイ工科大学と連携し、日本語教育に関するマネジメント、実践的なIT教育カリキュラムの導入、そしてジョブフェアの開催による日本企業への学生の就職支援などを行っている。やはり日本語でジョブフェアの宣伝などをできる日系企業の存在は大きく、ベトナム側だけではいくら頑張っても6割を日本で就職させることは困難であろう。この連携のビジネスモデルとしては、卒業生の就職仲介の際に一定の料金を日本企業から取ることで、日本語教師雇用などの資金源にしているとのこと。

私は経済開発の理想はODA(政府援助)より民間事業による牽引と思っているので、ODA事業として下地を作り、それを民間企業が引き継いでビジネスとして継続・発展していくという形がありうるということを知れたことは、非常に有益であった。もちろん予算面ではODAに比べて潤沢ではないため、日本語教師確保等で課題は多いようであるし、ODA事業の民間企業へのあるべき引き継ぎ方についても議論があるだろうが、このようなODAと民間事業の連携のあり方について、今後もウォッチしていきたい。

さて、ここまでが事業としての話であったが、人材として卒業生がどうなっているのかも少し追ってみた。訪れたのはHBlab社という、この学部の卒業生5人が集まって立ち上げたというスタートアップ企業である。立ち上げて1年程度の新しい会社で、主に日本企業からゲームやアプリの開発を受注しているとのこと。社長はこのプロジェクトで日本に留学した学生であり、日本語も堪能。このようにプロジェクトで育てた人材が、日本で最近起きているIT人材不足を補い、ベトナムの発展と日本のIT業界の両方に貢献しているということは、非常に素晴らしい形であると感じる。このHBlab社をはじめ、プロジェクトの卒業生が立ち上げたスタートアップ企業は6社程度に上るとのこと。ぜひ今後も日本とベトナムの架け橋として頑張って欲しい。

なお、今回の訪問は私的なものであり、見解含めて全て筆者の個人的な考えです。JICAの組織としての見解ではないことは改めて申し添えます。

貧困層への支援は現金支給がいい?

途上国の貧困層の支援は援助機関・NGO経由ではなく現金(ベーシック・インカム)支給が効果的である!という議論を呼びそうな活動を行っているNGOを紹介したい。

実施しているのはGiveDirectryという組織で、具体的な仕組みとしては、まず途上国の極度に貧困なエリアを探す(現在はケニアの農村部のみ)。次に支援対象の住民を選び、賄賂等にお金が使われなそうか一定期間モニタリングする。支援対象に決まったら1,000米ドル(ほぼ1年分の収入!)をM-PESAで携帯送金する。そしてその後、そのお金が有効に使われているかをモニタリングする、というものである。借金ではないので返済義務は生じない。

これまでの途上国での貧困層へのアプローチというのは、たいてい政府や援助機関やNGO経由で行われてきた。基本的には現金は避け、蚊帳や保健・教育サービスなどの支援が多かったと思う。一方で、寄付金などで集められた資金が貧困層にきちんと届いているかというと、当然ながら援助機関やNGO職員の人件費や広報にある程度使う必要があるため、貧困層へのサービスに使われる前に目減りしてしまう。

「目減りするくらいだったら、途上国の貧困層に直接現金を送ったほうが効果的なのではないか?」と考え、政府・援助機関・NGOをすっ飛ばして、ケニアの住民に直接現金を送る活動をしているNGOがGiveDirectryである。Chairmanは若手の経済学者でアドバイザーに教授職の人たちが名前を載せるなど、ややアカデミック色の強い印象がある一方で、Googleなどからも資金援助を受けている。

現金(ベーシック・インカム)支給については、日本でも生活保護という現金支給について賛否両論あり、フィンランドやスイスでもベーシック・インカム導入に関して様々な議論が行なわれている。これらに関する主な批判的なコメントとしては、現金をもらえてしまうと勤労意欲が減少し、経済的にはマイナスである、というものである。

Vision_1023

GiveDirectlyでは、現在の資金援助の仕組み・非効率さに疑問を投げかけており、上図のように、これまでの援助機関やNGOが間に入って目減りするくらいであれば、携帯電話を使った送金で直接送ってしまったほうが実は経済開発に与える効果は大きいのではないか?というものである。(上図のgifアニメがうまく見れない方はこちら

実際に1年分の現金を無償で受け取った住民はどのような行動をとるのであろうか?酒やタバコに使ってしまうのだろうか?店を開いたりするのだろうか?何かに投資したりするのだろうか?

この効果の検証にはRCT(Randomized Control Trial:ランダム化比較実験)という手法が用いられている。RCTは開発経済学では現在よく使われている手法であり、統計や計量経済学を学んだことがある人は聞いたことがあるかもしれない。簡単に説明すると、効果測定のバイアスを小さくするために、一定規模のエリアでランダムに(これがミソ)被験者を選び、その中で2つのグループ(現金支給グループと支給しないグループ)に分けて効果を比較するというものである。Googleなどが新サービスの検証に使っているA/BテストもRCTの一種である。

さて、GiveDirectlyに話を戻すと、HPに効果も説明されていて、34%が収入増、52%が資産増、42%が子供に食べさせられない日が減少、そしてタバコやアルコール消費が増加した世帯は0%、という結果が出ているという。従来の性悪説(もらったら使ってしまうに決まってる)に基づく援助概念から見るとにわかに信じがたいデータだが、正しく使いそうな人だけにあげている(選定のバイアス)や、開始数年ということで長期的データがないことなどから、本当に効果があるかの検証にはもうしばらく時間(モニタリング)が必要と考える。

ただ、私は彼らのHPと彼らの論文を見た時に、ちょっとした憤りを感じた。彼らの「直接支援のほうが効果が高いのでは?」という思想に反対するつもりはないが、やり方が実験的すぎる。つまり研究として興味深いのは事実だが、社会実験の度を越えているのでは?、という懸念である。まず、1年分の収入を携帯送金で送ってしまうというのは、その人の生活を壊してしまう可能性がある。例えば、タバコ・酒・ギャンブルなどに浪費して生活が変わってしまう可能性、一時収入に喜んで仕事を辞めてしまう可能性、などは十分にリスクとして想定できる。そして支援を得た情報を周辺住民が得た時に、(日本でも宝くじのケースで聞くが)周りとの人間関係がおかしくなってしまう可能性だって十分にありうる。特に人間関係に悪影響が出た場合のインパクトは、途上国のコミュニティでは致命的である。彼らの論文を読むと、現金を一度に送る場合と複数回に分けて送る場合も「比較実験」していて、意義は分かるものの「なんだかなぁ・・」という疑念は拭えない。

現時点では負の影響は出ていないと言っているので、すべてただの杞憂なのかもしれないが・・。そしてこれまでの援助の常識が非常識で、彼らの仮説が正しいのかもしれないが・・。いずれにせよ、非常に興味深い活動ではあるので、今後も注意深く見ていきたいと思う。

追記(2016/4/24)
いただいたコメントの中で、「アメリカで社会保障を唱える人の論理で多いのは、貧困そのものを問題視するよりも、能力があるのに貧困にとどまってしまっている人が存在することへの問題意識のほうが大きい気がします。この取組の背景にはもしかしたらそうした考えがあるのかなと思いました。」というのがありました。このコメントを受けて気づいたのが、私がリスク回避(負の例を出さないこと)を最重視してこの投稿を書いていたということです。まさにこの辺りは日本とアメリカの違いな気がしています。落ちこぼれをなくす教育を重視する日本、優秀な人間を伸ばす教育を重視するアメリカ、こういった差が考え方の違いに出ているのかもしれません。

 

Development Impact Bondを活用した雇用促進&起業家支援

年末に世銀のWebでDevelopment Impact Bond(以下、DIB)を活用した
 “Finance for Jobs”というパレスチナにおける起業家支援+雇用促進を目的とした
雇用開発や教育訓練などを行う事業記事があった。
前にSocial Impact Bondに触れた記事をUpしてみたが、最近個人的にこのインパクトボンドに関心ありまして、以下の二点について考えてみた。
①DIBを活用した事業スキーム
②「ICT」の雇用への影響
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まずは①について。DIBを活用した事業スキーム
その前に、、、改めてDIBとは? 以下、ちょっとくどい説明、、
「投資家がドナー/途上国政府の事業に出資し、その事業実施者が行った事業成果に基づき、ドナー/途上国政府から投資家に対して成功報酬が支払われる」
今回の世銀案件でおきかえると、
「投資家が世銀/パレスチナの事業に出資し、その事業者が雇用促進事業を行った結果、パレスチナの雇用環境において事前に定めた目標に達成した場合、ドナー/途上国政府から投資家に対して成功報酬が支払われる」
ことになる(注1)。
 つまり一般的な開発事業にビジネスの仕組みを組み込み、より投資対効果が求めるスキームということだ。もちろん成果を貨幣換算するのは難しいし、関係者間の「成果」への合意形成は大変そうだが、SDGs達成に必要な資金の多くが民間資金を充てにしていることやインパクト評価の重要性の高まりを鑑みれば、今後は他ドナーでもこうしたDIB案件の組成が増えてるんでは。そのためにもこの第1号案件がどうなるか今後注目したい。投資家の存在や成果報酬といったビジネス的なやり方だからこそ、成果を数値で見易い民間セクター開発のような案件にはフィットし易いんだろうな。
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次に②について。「ICT」と雇用
この事業において、雇用促進の為の職業訓練には、「ICTスキル」向上が含まれ、雇用促進の対象セクターの一つに「ICTセクター」が含まれている。当たり前のようだけど「ICT」と雇用について考えるとき「ICTスキル」と「ICTセクター」は分けて考えたほうが整理し易い。
ICTの普及は「ICTセクター」の直接的な雇用増加に対して正のインパクトは実はあまり大きくない。その雇用はスキルを有する少数人材に限られているからだ。例えば、ICTセクターの雇用は発展途上国の平均では全体の雇用の1%でしかない。OECD加盟国ですら、たった平均3-5%だ(P14,WDR2016)。よりインパクトが大きいのは「ICTスキル」を得ることによって可能となる雇用情報の取得や、ICT以外の他セクターでICTスキルを必要する雇用機会へのアクセスだ(下図参照, WDR2016)。
WDR Table2.2
もちろん、その地域の「ICTセクター」の発達なしには、一般人の「ICTスキル」の取得は進まないのでどちらか一方だけというわけにはいかないだろうけれども。
この世銀案件は、起業家支援も目標としているが、「ICTスキル」を身につけ、
マイクロワークを手にした人々が次に向かう目標はイノベーション&起業なんだろう。例えば、インパクトソーシングの起業家たちなんかはまさにその典型ともいえる。こう考えると、WDRにあった以下の図がしっくりとくる気がしてきた。
WDR Figure07
ICTによる雇用への影響に関しては、正のインパクト(生産効率の工場、雇用情報へのアクセス、イノベーション促進等)だけでなく、負のインパクト(ICT化による失職等)もWDRでは多く言及されている。結局、結論はケースバイケースで一概には言えない、のでWDRがあんなに分厚くなっちゃうんだろうな。
とりとめない文章ですが、、以上。
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ソーシャルインパクトボンドを活用したプログラミング教育

最近、日本でもソーシャル・インパクト・ボンド(以下、SIB)について耳にすることが多くなった。

そもそもSIBのわかりやすい説明は、
社会的課題の解決と行政コストの削減を同時に目指す手法で、 民間資金で優れた社会事業を実施し、事前に合意した成果が達成された場合、 行政が投資家へ成功報酬を支払います。
出所:Social Impact Bond Japan
と、ある。ついでにいうと、上記の「行政」を「ドナー」に置き換えたものが開発業界向けのDevelopment Impact Bond(以下、DIB)と考えれば良いだろう。
2010年にイギリスで、ピーターボロ刑務所の受刑者の再犯防止と社会復帰の為に世界初のSIB案件が形成されて以来、先進国を中心に30案件以上が実施されている(1)。日本も地方自治体と日本財団による SIBのパイロット事業も開始され、子供・家庭の支援、若者の就労支援などの案件が進められている(2)。
ここから、本題。昨年開始されたSIB案件で面白い案件を見つけた。ポルトガルのJunior Code Academyという案件である(3)
概要は、義務教育課程の小学生3年生に1年間のプログラミング教育を行い、学力の向上を通じて、落第や留年を減らす、というものだ。その成果の評価方法は次の2点を教育を受けた生徒と受けていない生徒のものを比較して行う。
  1. ロジカルシンキングと問題解決能力:レーヴン漸進的マトリックス(要は、知能テスト)で比較(評価ウェイト9割)
  2. ポルトガルで4年生が受ける義務のあるNational examの算数の成績(評価ウェイト1割)
first-social-impact-bond-in-portugal-2-638
出所:”Junior Code Academy First Social Impact Bond In Portgul”,Presentation at OECD, Calouste Gulbenkian Foundation
案件の関係者を整理すると、以下のようになる。
  1. 民間サービスプロバイダ:Junior Code Academy
  2. 行政:リスボン市
  3. 投資家:Calouste Gulbenkian財団
  4. 受益者:リスボンの小学生
つまりこの案件では、「Junioir Code Academy」の教育を受けた「リスボンの小学生」に期待される効果が出た場合、「リスボン市」は投資家である「Calouste Gulbenkian財団」に対して成功報酬を支払うわけだ。
プロジェクトの対象期間は2015年1月から12月なので、もうすぐ、1年間の教育を受けた3年生が4年生に上がる試験のころ?。効果がどうであれ、結果がでるので楽しみだ。
現時点では、SIBは先進国の国内案件が中心だけれども、今後、DIBの活用が拡大すれば、先進国の民間サービスプロバイダや投資家を通じて、途上国でDIB案件が形成されていくのではないか。これまで、途上国へのICT関連の民間企業の進出は自社に十分な投資余力がある比較的大手の企業が多いのだろうけれども、DIBのようなファイナンスのモデルがあれば、投資余力のない中小の企業にもこうした案件組成への参画のチャンスが増えていくのかもしれない。

参考
(1) The Potential and Limitations of Impact Bonds -LESSONS FROM THE FIRST FIVE YEARS OF EXPERIENCE WORLDWIDE-, Brookings
(2) 日本財団プレスリリース
http://www.nippon-foundation.or.jp/news/pr/2015/40.html
http://www.nippon-foundation.or.jp/news/pr/2015/61.html
http://www.nippon-foundation.or.jp/news/pr/2015/69.html
(3) (1)に同じ

インパクト評価とIoTの可能性

今週、国連で開催されていた世界情報化サミット(WSIS)では、2005年の前会議からの10年の間にICTがもたらした貢献について、国連事務総長から言及があった。次のWSISによるレビューは10年後の2025年ということだが、ITUはその頃までには全てのものにインターネットを、と言っている。今年のITのトレンドキーワードになったIoT(Internet of Things)であるが、全てのものがインターネットにつながる世界など先進国だけかと思いきや、実は途上国にこそ可能性があるらしい(インドと中国が含まれるなら当たり前かもしれないけど)。

ITUが2015年に発行したMeasuring the Information Society Report, では、IoTの経済的価値は様々な条件が整えられることが要するものの、その活躍が期待されるのは主に新興国であるという。また、Mckinseyの予想では2020年までに世界のIoT市場の40%の市場価値は新興国から産み出されることが想定されており、その大半のインフラは国連のSustainability goalsの実現にむけたプロジェクトの一部として構築されるだろう、という。

新興国でIoTが実現される世界においては、国際開発プロジェクトにもいろいろな影響はあるだろうが、まずはインパクト評価の視点で考えてみた。

近年の公共政策(国際開発含む)ならびに民間投資の分野では、ヒトモノカネの資源を投入した事業に対し、社会的インパクトの評価・分析を行い、その成果を測定し、投入によって得られたリターンが本当に見出されているのかという証拠の提出と説明責任が求められている。いわゆる社会的責任投資(SROI: Social Return on Investment)の潮流だ。一つ前のtomonaritの投稿で記載あったナイジェリアの事例もにもける成果の見える化もその流れの一つだろう。

今後、ITUが目指すIoTの世界が実現すれば、そうしたインターネットインフラを活用してこうしたインパクト評価の流れはよりデータの収集・評価・分析の精度があがり、一層活用が進むんではないかと思う。

既にマニュアルで集めたデータを分析しグラフィカルにそのアウトプットやアウトカムを見える化することは世界のどこでも行われている。でもこれからはデータを集めるところから自動化できるようになれば、アウトプットやアウトカムだけではなく、より説得力のあるインパクトの測定につながることができるのではないか。

例えば、「中国のある工業地帯における集塵装置の設置による大気汚染の削減」、というようなプロジェクトがあった場合、本事業のロジックモデルはごくシンプルにすれば以下と考えることができる。

   インプット   事業への資源投資(ヒトモノカネ)
   アクティビティ 事業の実施
   アウトプット  集塵装置の設置
   アウトカム   大気汚染の削減
   インパクト   周辺住民(受益者)の健康被害の改善

beijing-articlelarge-v3Source:nytimes

これまでもアウトカムの測定については一定程度のデータ収集は行われているが、この場合このインパクトを図るのに、もしも対象地域の住民の健康データがリアルタイムで収集できれば、本事業の投資効果や改善に向けた継続的なアクションが取りやすいのではないか。

現在の世界のインパクト評価の測定にはインタビュー等を通じた定性的データの取得と専門家の判断が一般的だとは思う。それでも今後の技術の進展でセンサーや無線の技術が安価に提供できるようになれば、インターネットに常時接続された環境から取得される受益者の 定量、定性のビッグデータが、インパクトの分析に使われるようになっていくのでは。国連や世銀がICT企業と一緒になってそんなシステムつくったら面白いのにと思う。