カテゴリー別アーカイブ: Bottom of the Pyramid, BoP

世界の経済ピラミッドの下層に属する貧困層のマーケットを新たな市場としてとらえるビジネスと国際協力のハイブリッドな感じのニュースやプロジェクト。

貧困層への支援は現金支給がいい?

途上国の貧困層の支援は援助機関・NGO経由ではなく現金(ベーシック・インカム)支給が効果的である!という議論を呼びそうな活動を行っているNGOを紹介したい。

実施しているのはGiveDirectryという組織で、具体的な仕組みとしては、まず途上国の極度に貧困なエリアを探す(現在はケニアの農村部のみ)。次に支援対象の住民を選び、賄賂等にお金が使われなそうか一定期間モニタリングする。支援対象に決まったら1,000米ドル(ほぼ1年分の収入!)をM-PESAで携帯送金する。そしてその後、そのお金が有効に使われているかをモニタリングする、というものである。借金ではないので返済義務は生じない。

これまでの途上国での貧困層へのアプローチというのは、たいてい政府や援助機関やNGO経由で行われてきた。基本的には現金は避け、蚊帳や保健・教育サービスなどの支援が多かったと思う。一方で、寄付金などで集められた資金が貧困層にきちんと届いているかというと、当然ながら援助機関やNGO職員の人件費や広報にある程度使う必要があるため、貧困層へのサービスに使われる前に目減りしてしまう。

「目減りするくらいだったら、途上国の貧困層に直接現金を送ったほうが効果的なのではないか?」と考え、政府・援助機関・NGOをすっ飛ばして、ケニアの住民に直接現金を送る活動をしているNGOがGiveDirectryである。Chairmanは若手の経済学者でアドバイザーに教授職の人たちが名前を載せるなど、ややアカデミック色の強い印象がある一方で、Googleなどからも資金援助を受けている。

現金(ベーシック・インカム)支給については、日本でも生活保護という現金支給について賛否両論あり、フィンランドやスイスでもベーシック・インカム導入に関して様々な議論が行なわれている。これらに関する主な批判的なコメントとしては、現金をもらえてしまうと勤労意欲が減少し、経済的にはマイナスである、というものである。

Vision_1023

GiveDirectlyでは、現在の資金援助の仕組み・非効率さに疑問を投げかけており、上図のように、これまでの援助機関やNGOが間に入って目減りするくらいであれば、携帯電話を使った送金で直接送ってしまったほうが実は経済開発に与える効果は大きいのではないか?というものである。(上図のgifアニメがうまく見れない方はこちら

実際に1年分の現金を無償で受け取った住民はどのような行動をとるのであろうか?酒やタバコに使ってしまうのだろうか?店を開いたりするのだろうか?何かに投資したりするのだろうか?

この効果の検証にはRCT(Randomized Control Trial:ランダム化比較実験)という手法が用いられている。RCTは開発経済学では現在よく使われている手法であり、統計や計量経済学を学んだことがある人は聞いたことがあるかもしれない。簡単に説明すると、効果測定のバイアスを小さくするために、一定規模のエリアでランダムに(これがミソ)被験者を選び、その中で2つのグループ(現金支給グループと支給しないグループ)に分けて効果を比較するというものである。Googleなどが新サービスの検証に使っているA/BテストもRCTの一種である。

さて、GiveDirectlyに話を戻すと、HPに効果も説明されていて、34%が収入増、52%が資産増、42%が子供に食べさせられない日が減少、そしてタバコやアルコール消費が増加した世帯は0%、という結果が出ているという。従来の性悪説(もらったら使ってしまうに決まってる)に基づく援助概念から見るとにわかに信じがたいデータだが、正しく使いそうな人だけにあげている(選定のバイアス)や、開始数年ということで長期的データがないことなどから、本当に効果があるかの検証にはもうしばらく時間(モニタリング)が必要と考える。

ただ、私は彼らのHPと彼らの論文を見た時に、ちょっとした憤りを感じた。彼らの「直接支援のほうが効果が高いのでは?」という思想に反対するつもりはないが、やり方が実験的すぎる。つまり研究として興味深いのは事実だが、社会実験の度を越えているのでは?、という懸念である。まず、1年分の収入を携帯送金で送ってしまうというのは、その人の生活を壊してしまう可能性がある。例えば、タバコ・酒・ギャンブルなどに浪費して生活が変わってしまう可能性、一時収入に喜んで仕事を辞めてしまう可能性、などは十分にリスクとして想定できる。そして支援を得た情報を周辺住民が得た時に、(日本でも宝くじのケースで聞くが)周りとの人間関係がおかしくなってしまう可能性だって十分にありうる。特に人間関係に悪影響が出た場合のインパクトは、途上国のコミュニティでは致命的である。彼らの論文を読むと、現金を一度に送る場合と複数回に分けて送る場合も「比較実験」していて、意義は分かるものの「なんだかなぁ・・」という疑念は拭えない。

現時点では負の影響は出ていないと言っているので、すべてただの杞憂なのかもしれないが・・。そしてこれまでの援助の常識が非常識で、彼らの仮説が正しいのかもしれないが・・。いずれにせよ、非常に興味深い活動ではあるので、今後も注意深く見ていきたいと思う。

追記(2016/4/24)
いただいたコメントの中で、「アメリカで社会保障を唱える人の論理で多いのは、貧困そのものを問題視するよりも、能力があるのに貧困にとどまってしまっている人が存在することへの問題意識のほうが大きい気がします。この取組の背景にはもしかしたらそうした考えがあるのかなと思いました。」というのがありました。このコメントを受けて気づいたのが、私がリスク回避(負の例を出さないこと)を最重視してこの投稿を書いていたということです。まさにこの辺りは日本とアメリカの違いな気がしています。落ちこぼれをなくす教育を重視する日本、優秀な人間を伸ばす教育を重視するアメリカ、こういった差が考え方の違いに出ているのかもしれません。

 

オンライン・アウトソーシングの現状と課題とは?

7、8年前、マンチェスター大学のICT4D修士コースに留学中の話。修学旅行的な感じでインドに行った際、ホテルにシングルの部屋が足らず、クラスメイトのネパール人と相部屋になった。自分が数時間外出して部屋に戻ると、彼が自分のノートPCを使っている。

「あ、勝手に使ってゴメン!簡単なプログラミングの仕事を請け負ってたんだけど、俺のPCはなんか調子が悪くて。締め切り間近だったんで、申し訳ないが勝手にお前のPCを拝借させてもらったよ〜」

とのこと。そのときは「へー、こいつインドに来てまで仕事してんだなぁ。でも、勝手に人のPC使うなよ・・・(エロ動画とか見たんじゃないか?)。」と思いました。今思うと彼は2007年頃からオンライン・アウトソーシングで収入を得ていたんだと思います。

さて、昔話はさておき、世銀でICT&EducationコンサルタントをしているSaori ImaizumiさんがWDR2016 “Digital Dividends”の内容にも絡んだとても示唆に富んだ興味深いブログを書いていたので紹介します。「How is online outsourcing changing employment opportunities?」というタイトルで内容は、オンライン・アウトソーシングの現状と課題についてのもの。詳しくは直接読んでもらいたいので、以下、自分がなるほどと思った点のみの紹介です。

オンライン・アウトソーシングの現状は?

2009年には年間$700millionの市場規模しかなかったのが、今や約$1billion規模に成長している。いわゆるジョブ・マッチングをするためのプラットフォーム数は2013年の時点で少なくとも145のサイトがあり、今も増加中。有名どころは、Freelancer (登録者数約17millon)やUpwork(登録者数約9.7millon)。

主要な面子はどんな国?

2014年のある調査によると、Upworkに吸収されたoDeskというプラットフォームでの仕事を発注する側の主要な国Top5は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イスラエルであり、一方、仕事を受注する側の登録ユーザ数Top5は、アメリカ、フィリピン、ロシア、バングラデシュ、イギリス。バングラデシュが入っているところに思わず目が行く。

儲かってるの?

oDeskの賃金

Source: Agrawal, Ajay, John Horton, Nico Lacetera, Elizabeth Lyons. 2013. “Digitization and the Contract Labor Market: A Research Agenda.” NBER Working Paper No. 19525. Cambridge, MA.

発注する側は安く仕事を請け負ってくれる人を探せるのがメリットであり、且つ、この手の仕事はIT単純労働が多いと思うと、受注してどんくらい儲かっているのかが気になりますが、このブログでは上記のデータを紹介しています。oDeskの賃金と各国の最低賃金の比較の表。これら2つの賃金が全く同じなら斜めの直線上に各国の点がプロットされるわけですが、見てみるとバングラ、ベトナム、インド、ケニアなどの途上国は、特に斜めの直線からかなり上に位置しています。つまりoDeskからの仕事は途上国の人ほど自国の賃金との比較で何倍もの賃金を貰えるということ(例えば、バングラの人は自国の最低賃金(約$0.10)の40倍の約$4.00の賃金を貰える)。

オンライン・アウトソーシングは途上国への裨益を拡大していく?

自宅で出来るという点で女性にもやりやすいオンライン・アウトソーシングは、途上国の人々に雇用の機会を与え、途上国の人々へ裨益していくと期待したいけれども、それには以下の課題が…

  1. そもそも安定したインターネット環境や個人のスキルが高くないと仕事が受注出来ない(結局、インフラや教育レベルなどのアナログ・コンポーネントが重要という前回前々回のトピックと同様)
  2. オンラインで発注出来る仕事は限定的
  3. やはり発注者は自国のエンジニアに発注しがち
  4. 言語の壁
  5. スムーズに支払いを受け取れる送金システムが途上国に整っていない

どれも全てそのとおりという指摘。単純にオンライン・アウトソーシングの発展が途上国にもどんどん裨益して行くとは言えなさそうです。

以上が「How is online outsourcing changing employment opportunities?」の内容紹介でした。

これまでこのブログでも何回かオンライン・アウトソーシング(の形態の一つとしてより途上国を対象にしているインパクト・ソーシングとかソーシャル・アウトソーシング)について取り上げて来ましたが、やっぱり課題としてあるのは、受注するエンジニアがIT単純作業レベルからどうレベルアップして行くのか?という点。レベルアップしないと結局価格でより低賃金の途上国のエンジニアに仕事が流れて行く「Race to the bottom」に陥ってしまう。そうならないためにはやはりレベルアップするための施策が必要と改めて感じます。例えば、以前の投稿で書いたような、個人としてではなく、組織としてのアウトソーシング受注を狙って、組織として受注した仕事を国内で細分化してアウトソーシングする(自国内でその組織から個人へのアウトソーシングをする)ようなこと。バングラとかまだ低賃金で仕事が取れるメリットを活かせるうちに、そういうことを戦略的にやっていかないと、そのうち国の発展とともに賃金も上がり「Race to the bottom」に負けてしまうのではないか?と感じます。

壊れたパソコンが、たった一本のUSBメモリで復活!!

先日、友人から「こんなのあるよ」と紹介されたビジネスコンテストのアイデアが面白かったのでご紹介。

40億人のためのビジネスアイデアコンテスト」という開発コンサルタント会社のアイ・シー・ネット株式会社が実施するビジネスコンペのビジネス部門に出されていたアイデアがこれです。(以下の紹介文は同ビジネスコンペのウェブサイトからのコピペです)

【概要】壊れたパソコンが、たった一本のUSBメモリで復活!!

途上国には、ハードディスク故障やウィルス感染で動かないパソコンがいっぱい。OneUSBは、 これらの問題をあっと言う間に解消します。使い方は簡単、OneUSBをパソコンのUSBポートに挿して起動するだけ。プログラミング学習・画像作成・インターネット閲覧などの豊富ソフトで、すぐにパソコンを創造ツールとしてフル活用できます。
日々のメンテナンスや、高価なOSを購入することが困難な国々で、コンピューター利用を促進し、将来はIT活用で世界の課題解決ができる人材育成へとつなげます。

確かに途上国では壊れたPCが放置されているケースが多いので、これはすごい便利なツールだと感じます。最近知り合ったガーナの大学生で、田舎村でPCの使い方を定期的に教えるボランティア活動 をしている方がいましたが、その活動があるときには毎回、友人等からノートPCを借りて、5台くらいのノートPCを担いで田舎村まで行っているとの話でした。壊れたPCが活用出来れば、安価で入手してこういうツールで再活用することが出来るな。

日本では、ハードディスクが壊れたら、ハードディスク交換だけでも結構な金額を取られてしまうので、自分だったら新しいPCを買ったほうがいいと判断すると思う(昔はPC高かったのでハードディスク交換修理を選択したけど、今は数万円で新品が買えちゃう時代なんで)。また、途上国だとハードディスク交換という簡単な修理でも、交換用のハードディスクが市場になかったり、日本同様に高かったり、というケースが多い気がする。なので、ハードディスク故障によって使われなくなるPCって意外に多いんじゃなかろうか。

どのPCでも自分のPCのように使えるという意図(データを持ち歩くという意図)でUSBを挿してそこから起動するツールは以前どっかで見た気がしますが、故障PCを再利用という意図でのこのアイデアはとても面白いし、ありそうでなかったソリューションだと感じました。

ITアウトソーシングと途上国開発(論文通らず…)

esko人材募集

先日の投稿「IT Sourcing for Development: International Workshop@マンチェスター大学」で紹介したワークショップの論文募集にトライしてみることにしたという報告を以前しましたが、その結果がきました。残念ながら通らず…。無念な結果に終わってしまった。
ブログを通じてとても勉強になるコメントをくれた皆さん、スイマセン。

それでも最終的な結果をもらうまでに何度か事務局との質疑応答があり、それはそれで有益でした。それを通じて選考が通らなかった理由も明確に理解出来たので、今後、同様の学会発表などにトライする際の参考になればと思い、以下紹介したいと思います。

自分が書こうとしていた内容は、既存レポートやネットの情報から得られる情報を用いて(=つまりSecondary Data)、途上国政府がIT Outsorcingによる発展を目指す場合の留意点等を整理してみるというものでした。

しかしながら、このワークショップに参加する他の方々は、自身が実施したり、直接調査したりした結果(=Primary Data)を用いた分析結果等を論じるということで、自分の想定した論文内容ではちょいと太刀打ち出来ないといったところだと理解しています。

また、書きたい内容は非常に当たり前すぎたというのも理由の1つでした。「これまでImpact Sourcingや途上国のIT Outsourcingといったテーマがいくつもの論文が各種の機関や研究者によって書かれているが、あなたが今回書く論文は何かSomething Newな発見があるのか?」という質問もあり、そういわれると、そこまでの想定はなかったなぁと反省。

最初のひらめきというか思いつきで、ささっとabstractをまとめて応募しちゃったけど、もっと1ヶ月くらいかけてじっくり考えるべきでした。

以上、結果報告でした。

写真は、携帯電話を使った農業関連情報提供サービスをアフリカ各国で展開しているe-sokoの人材募集。ガーナの現地新聞に掲載されていました。こういう実務経験を経た人たちが訴える地に足のついた研究内容に比べると、自分の議論はどうしても空中戦になってしまう。それを補うためににゃ、もっと論文とか読まないとなぁ。

インパクト・ソーシングの形態

ここ最近、このブログでも取り上げたインパクト・ソーシング(以下、IS)についての2つのレポートを読んでみました。1つは先日の「新興市場戦略としての”インパクト・ソーシング”」でも紹介されていたMonitor社(ロックフェラー財団支援)の”Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing”、そしてもう一つはマンチェスター大学のWorking Paper “Towards a Taxonomy and Critique of Impact Sourcing“。

今まで知っているようで知らなかったことがちょっと整理出来た感がある。以下、それぞれのレポートについて紹介。
Towards a Taxonomy and Critique of Impact Sourcing

Taxonomy (分類という意味)という言葉とおり、ISを分類することを試みている内容。以下、5つの観点からSamaSourceやRuralshore、TATA Rural BPO Center, Wipro Rural CenterといったISSP(インパクト・ソーシング・サービス・プロバイダ)を分類している。

  • 観点1. Prevailing Concept: そもそもの事業のコンセプトが何か?(社会開発が目的なのか、お金儲けが目的なのか?的な問い)
  • 観点2. Primary Business Objective: Market-drivenかCommunity-drivenか?
  • 観点3. Captal Investment: 資本に政府やドナーからのドネーションが入っているか?
  • 観点4. Economic Sustainability: 運営資金として政府やドナーからのドネーションに依存しているか、それとも事業収入で自立しているか?
  • 観点5. Return on Investment: リターンは社会開発的な効果か、それとも商業的な効果か?

この5つの観点からISを分類すると、以下の4つのカテゴリに分けられるという結果になっている。カッコ内の言葉は自分が勝手にイメージでつけてみました。

  • Non-profit Social Outsourcing Organization(寄付金に頼っても社会開発が主目的)
  • For-profit Social Outsourcing Organization(まずは利益を出すことが前提)
  • Socially Responsible Social Outsourcing Organization(大企業を中心にCSR的な意味も含めて)
  • Dual Value Social Outsourcing Organization(ビジネスで社会開発!)

下記の表がその結果をしめしたもの。なるほどなんとなく、こういうカテゴリがあるのかってなことがわかる。思わず「だから何?」というふうに思う方もいるかもしれませんが、ISのメリットやデメリットが何か?、課題が何か?、批判は何か?といったことを考えるにあたって、こういう分類は重要。一言で「インパクト・ソーシングの課題は○○だ」といったときに、上記のような様々な種類のISのうち、全てに当てはまるのか、それとも、どれかについて言っているのか?は明確にしておく必要がある。

Taxonomy of Impact Sourcing Organization

Source: Malik, F., Nicholson, B., & Morgan, S. (2013). Towards a Taxonomy and Critique of Impact Sourcing.

このレポートではISについての批判についても触れられているが、その批判は次に紹介するMonitor社のレポートとかぶるので、次にMonitor社のレポートを紹介したい。

Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing
最初のレポートがISの組織形態(資本にドネーションが入っているか等)とか社会開発インパクトにフォーカスを当てているのに大して、このレポートでは、もっとビジネスよりの視点からISを分類している点で違いがあって面白い。具体的には、ビジネスモデルの観点から以下、5つのカテゴリに分けている。(Source: Markets, M. I. (2011). Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing. Working paper, Monitor Group, Mumbai.)

  • Micro Model
クライアントが発注した業務を単純作業レベルに細切れにして主に個人へ発注するパターン。携帯電話だけでも作業できるようなレベルの仕事もあり、支払いはモバイルマネーやairtime(通話料クレジット)で支払うパターンも(実際にtxteagleというアメリカ企業が実施している)。簡単に誰でも参加できるが、ガッツリ儲けるのは困難か。また、管理会社としてはクオリティ・コントロールが難しい場合も。

クライアントが発注した業務を単純作業レベルに細切れにして主に個人へ発注するパターン。携帯電話だけでも作業できるようなレベルの仕事もあり、支払いはモバイルマネーやairtime(通話料クレジット)で支払うパターンも(実際にtxteagleというアメリカ企業が実施している)。簡単に誰でも参加できるが、ガッツリ儲けるのは困難か。また、管理会社としてはクオリティ・コントロールが難しい場合も。

  • Intermediary Model
クライアントと複数のISSPの間に中間業者(Intermediary)が入るパターン。中間業者はクライアント確保に注力して、作業のクオリティ・コントロールはISSPに投げることが可能。多くのクライアントを持ち、多くのISSPを抱えていくことが中間業者の儲ける道。また、最後の仕上げは中間業者が行うことである程度の質の担保も可能か。この形態の事例はSamasource。

クライアントと複数のISSPの間に中間業者(Intermediary)が入るパターン。中間業者はクライアント確保に注力して、作業のクオリティ・コントロールはISSPに投げることが可能。多くのクライアントを持ち、多くのISSPを抱えていくことが中間業者の儲ける道。また、最後の仕上げは中間業者が行うことである程度の質の担保も可能か。この形態の事例はSamasource。

  • Sub-contractor Model
大きなクライアントの下請けとしてBPOを請負う会社があるパターン。インドのParadigm Infotechという大企業の下請け(子会社)としてケニアにあるParadigm Expressが良い例。クライアント(親会社)から安定して仕事がもらえる&大企業のネームバリューがあるので、途上国が始めるBPO産業として有益な形態とも言える。

大きなクライアントの下請けとしてBPOを請負う会社があるパターン。インドのParadigm Infotechという大企業の下請け(子会社)としてケニアにあるParadigm Expressが良い例。クライアント(親会社)から安定して仕事がもらえる&大企業のネームバリューがあるので、途上国が始めるBPO産業として有益な形態とも言える。

  • Partner Model
Intermediary Modelと似ているが、中間業者(Parent ISSP)が取りまとめる相手が小さいISSPではなく、Center Partner(労働集約型のBPOセンター)である点が違う。BPO Center Partnerは従業員へのトレーニングやクオリティ・コントロールを行い、トップマネジメンはParent ISSPが行う。インドのRuralShoresがこの一例。

Intermediary Modelと似ているが、中間業者(Parent ISSP)が取りまとめる相手が小さいISSPではなく、Center Partner(労働集約型のBPOセンター)である点が違う。BPO Center Partnerは従業員へのトレーニングやクオリティ・コントロールを行い、トップマネジメンはParent ISSPが行う。インドのRuralShoresがこの一例。

  • Direct Model
下請けやパートナーという立場のBPOセンターではなくParent ISSPが自社でBPOセンターを設立していくパターン。自社でやる分、クオリティ・コントロールは効くし、需要に見合った規模のセンターを作れる反面、ビジネス拡大には投資と時間を要する。Subcontractor Modelの形態で親会社でない会社から受注した場合はこの形態と見なせる。インドのeGramITなどが例。

下請けやパートナーという立場のBPOセンターではなくParent ISSPが自社でBPOセンターを設立していくパターン。自社でやる分、クオリティ・コントロールは効くし、需要に見合った規模のセンターを作れる反面、ビジネス拡大には投資と時間を要する。Subcontractor Modelの形態で親会社でない会社から受注した場合はこの形態と見なせる。インドのeGramITなどが例。

以上、5つの形態に分けてあるのを見ると、先に紹介した分類とはまた違った面白さがある。ICT4D的な観点からは、いわゆるBOP層にも収入を得る機会を与えたり、携帯電話が使えれば参加できて、支払いもモバイルマネーといったMicro Modelに興味がわくが、一方で経済的インパクトや国としてのICT産業振興を考慮すると、Sub-contractor Modelの方が魅力的に見えたりもする。

最後にISの課題について。Monitor社のレポートの最後に、3つのカテゴリにわけて合計9つの課題が挙げられているたので紹介。

Source: Markets, M. I. (2011). Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing. Working paper, Monitor Group, Mumbai.

Source: Markets, M. I. (2011). Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing. Working paper, Monitor Group, Mumbai.

どれもそのとおりと納得できる課題ばかりだが、特に気になった点に黄色マーカーしてみた。
まず「本当にBPO層を採用、雇用、トレーニングできるのか?」という点。インドのように大卒でそれなりに学があるけど、田舎に住んでいるから職にありつけないというようなポテンシャルの高い人材がいる国なら、少々のトレーニングで使えるようになるかもしれないが、一方、インドとはちがって、中学校に行けなかった若者たちに対して、どれだけのトレーニングをすれば使えるようになるのか?を考えると、Micro Modelでの小遣い稼ぎレベルなら良いけど、本格的なアウトソーシング業務を実現できるISは簡単ではないと思われる。

「Race to the Bottom」というのは、どんどん低賃金で働く層に向かっていくことを示唆している。レポートでは、「does not create new class of “digital sweatshops.”」ということが言われていた。Sweatshopとは低賃金で長時間労働をさせる工場のこと。つまり、服飾産業(イギリスのプライマーク等が途上国で児童労働をさせているのが批判されていたことがあるが)の前例のように、仕事を単純化して安い賃金で働く労働力(児童労働など)を確保する方向へ、途上国のBPO産業が向かわないようにしなくてはいけないということ。
こういったリスクを回避するためにも、単なる価格競争とならないように、途上国のBPO産業はブランディングが必要だと改めて感じる(以前、このブログでも投稿してみた内容同様)。

これら2つのレポートはとても勉強になった。ISが進んでいるのはインドをはじめ、南アフリカ、ケニアという。今後、780,000人の雇用を生み出すと言われるISの波が、どうなっていくのか?ガーナにもその波は来そうなので、ウオッチングしていきたいと思います。

新興市場戦略としての”インパクト・ソーシング”

先週に「インパクト・ソーシング(以下、IS)」関連調査等を含めインドに出張しました。先の投稿でも言及あったRualshore社を含め大〜小規模のIS事業者にお会いしました所、折角なので(相当久々なのですが)投稿させて下さい。

4年前、このブログで投稿した際「ソーシャル・アウトソーシング」と呼んでいたけれど、最近は「ソーシャル」でなく「インパクト」というらしい。そこで改めて、「インパクト・ソーシング」とは、、??

この2ー3年でこの単語を積極的に使っているのは、米最大級の慈善団体ロックフェラー。その定義では「十分な機会に恵まれない農村部の若者や社会的弱者へ、職業訓練とBPOセンタでの持続的な雇用を提供すること」とある。

出所:ロックフェラー財団HP

米BPO大手コンサル、Avasant社の予測では、2020年時点でISは世界BPO産業の約17%、554億ドルの規模になる可能性があるという。

話はインドに戻ると、BPO発祥地でもある同国では2014年4月1日に施行された新会社法で一定規模(例:売上100億ルピー以上(170億円程度))以上の企業に税引前利益の2%をCSR活動へ支出することを義務化した。その対象は「食糧、貧困、教育、ジェンダー、乳幼児死亡率、母子保健、感染症・マラリア等、環境、雇用と職業訓練、ソーシャルビジネス、首相特別ファンド、差別カースト」への支出と記される。

「IS業界への追い風かも?」と思い、現地でIS事業者に聞いたが、各社の統一見解は、「単純なIS事業者へのBPOは、単なるコスト削減策で、『顧客自身のCSR』とは言えないだろう。」とのことだが、IS事業者のインフラへの寄付や職業訓練への協力等も含めた活動であれば、CSRとしても認められる、とのこと。同国ソフトウェア業界団体(NASSCOM)傘下の財団では、こうしたCSRの潮流が、IS拡大の起爆剤となる可能性を管轄省庁と議論中である。

ISを活用する顧客事例も多く聞けた。産業に応じた差異はあるが、大きく以下の3つの中長期的な顧客の目的が見えてきた。

第1に、現地での企業ブランド確立。訓練と雇用の提供する農村部BPOセンタにIS事業者と共同投資し、その周辺に自社プラントを建設する顧客もいた(途上国によくあるプラント設立反対運動等はなかったとの事。)。

第2に、ローカル人材資源獲得。特に金融、保険、消費財業界等の営業・マーケ部門においては海外や都市部から人材を送り込むよりもBPOセンタの資源を活用した、マーケットアクセスが可能だ。

第3に、新興市場で戦える自社人材の育成。BPOセンタの立ち上げ時期にはISを活用する顧客の本社も管理、教育を行うことが多く、顧客企業における一種の人材教育になっている、という。

世界のBPO市場の中心的労働力はこの数年はインドからの供給が多いこと、そして、同国の新会社法によるCSRの潮流によって、同国のIS事業の拡大とその活用は今後さらに増えていくと思われる。

 

ガーナ携帯電話事業者TigoがIFCとMasterCard Foundationの支援を受けモバイルマネー普及促進

MDG Tigo sign in Accra, Ghana

本日、ガーナの新聞を読んでいたら、面白い記事があったのでご紹介。

ガーナの携帯電話事業者Tigo(Tigoはガーナでは3番手のシェア(約15%)を占めている携帯電話事業者)が、世銀グループのIFCとMasterCard Foundationの支援を受けて、モバイルマネー普及促進活動に力を入れるとのこと。支援金額は2百万USDで、IFCがTigoに対してビジネス展開のためのアドバイザリーサービスも提供するという。IFCのWebサイトにも載っていました。

新聞によると今回の支援は、IFCとMasterCard Foundationが実施するサブサハラアフリカにおけるマイクロファイナンスとモバイルマネー(貧困層でも利用可能な金融サービス)を促進させるジョイントプロジェクト(総額37.4百万USD)の一部ということ。

ガーナにおいて成人の29%しか銀行口座を持っておらず、低所得者層においてはその数は15%だという。今後、より多くの人々が金融サービスを使えるようになることが期待される。

ふと、Tigoについて調べていたら、もう一つ面白い話があった。

globaldevelopmentというサイトによると、Tigoは携帯電話利用者に対する保険サービス提供を始めたパイオニア的存在である。どいうことか?

シャア争いに鎬を削る携帯事業者は、顧客離れを防止するため・新規顧客獲得のために、様々な策を打っているわけですが、なかでも利用者に保険サービスを提供するという手法をTigoが2011年ころに始めたという。顧客は、保険料を払うことなくTigoの携帯を使うというだけで、自分自身及び家族1名までの生命保険に入れるというもの。同サイトの記事によると、死亡時に受け取れる金額は104USDから520USDでその額は顧客が毎月使っている通話料に比例して決まる。

スイスの会社等と連携してこのサービスを始めたところ、好調だった様子だが、MTNなど同業他社も同様のサービスに乗り出して来ているという。

こうしてみると、携帯電話を通じての送金サービスから保険まで、組み合わせの可能性は沢山あるのだと気づかされる(e-sokoのような農業情報提供や母子保健情報提供なども)。GoogleやFacebookがプラットフォームとしての位置を確立して儲けているように、携帯電話も途上国開発におけるある種のプラットフォームになっているのだと改めて思う。次はどんなサービスが始まるかな?