カテゴリー別アーカイブ: CSR

Samsungの太陽光発電を使ったDigital Villageがガーナにも登場

先日、ガーナのローカル新聞を見ていたらICT関連の記事が2つ並んでいて目にとまりました。1つは、「TIgo launches mobile digital library」という記事。ガーナで第3位のシェアを占める携帯会社TIgoが、移動式デジタル図書館を開始したというもの。そういえば、日本でも自分が子供の頃にも移動式図書館はあった気がする。本が一杯置いてあるバス。それのデジタル版ということで、机・椅子、そしてノートPCが設置してあるバスが田舎へ行って巡回サービスを行うというものだ。

Tigo Digital Library

Tigo Digital Library

ルワンダのインターネット・バスとか、似たような試みは結構あると思うのですが、面白いのは、この事業がStreet Library Ghanaというパートナーとともに立ち上げられている点。何が面白いかというと、この団体は2012年にTigoが主催した「Changemaker Competition」で優勝した方が設立した団体である点。要するに、Tigoは自社で主催したビジネス・コンペの優勝者のアイデアを支援して形にしたということ。ガーナの起業家を支援しつつ且つ自社の宣伝もバッチリ行っている。

もう一つの記事は「Samsung sets up digital village in Volta Region」というもの。

Samsung Digital Village

Samsung Digital Village

これは、Samsungがアフリカで展開しているDigital VillageというCSR活動の一環。太陽光発電を使ったインターネット教室、遠隔医療施設、ヘルスセンター、太陽光発電機そのもの、といった設備をパッケージとして村にドン!と提供するもの。ガーナの新聞によると、860,000USDの費用がかかっている。上記の図は、エチオピア、ガボン、南アフリカで展開されているこの活動の説明資料です(ナイジェリアにもある)。それがガーナにも出来たというのが記事の内容。

自分が見た新聞記事には載っていなかったのだが、ネットで別の記事を見たら施設の活用については、UNESCOがトレーニングなどの技術協力を提供するという。なるほど、Samsungは資金・機材を提供して運営面はUNESCOにお任せするというやり方。Samsungとしては手間を省く&宣伝効果も上がるというメリットがあり、一方、UNESCOとしてもお金をかけずにこれだけのハード整備が出来るというメリットがある。

以上が記事の内容。
で、この2つの記事を見ていて感じたのが、TigoでもSamsungでも上手くやってるなあという点。ビジネスコンペで見つけたアイデアを支援してガーナ人のためのガーナ人による活動を支援しているTigo。UNESCOと組んでCSR色を大きく打ち出してるSamsung。正直、どちらの取り組みも「1年後、大丈夫か?」という持続性についての懸念は拭い切れないものの、企業として良い事・面白い事をやっているというポジティブなイメージは強く伝わってくるなあ。
よっしゃ!今度、携帯会社をTigoに変えて、携帯端末をGalaxyにしてみよう!…かな?

インパクト・ソーシングの形態

ここ最近、このブログでも取り上げたインパクト・ソーシング(以下、IS)についての2つのレポートを読んでみました。1つは先日の「新興市場戦略としての”インパクト・ソーシング”」でも紹介されていたMonitor社(ロックフェラー財団支援)の”Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing”、そしてもう一つはマンチェスター大学のWorking Paper “Towards a Taxonomy and Critique of Impact Sourcing“。

今まで知っているようで知らなかったことがちょっと整理出来た感がある。以下、それぞれのレポートについて紹介。
Towards a Taxonomy and Critique of Impact Sourcing

Taxonomy (分類という意味)という言葉とおり、ISを分類することを試みている内容。以下、5つの観点からSamaSourceやRuralshore、TATA Rural BPO Center, Wipro Rural CenterといったISSP(インパクト・ソーシング・サービス・プロバイダ)を分類している。

  • 観点1. Prevailing Concept: そもそもの事業のコンセプトが何か?(社会開発が目的なのか、お金儲けが目的なのか?的な問い)
  • 観点2. Primary Business Objective: Market-drivenかCommunity-drivenか?
  • 観点3. Captal Investment: 資本に政府やドナーからのドネーションが入っているか?
  • 観点4. Economic Sustainability: 運営資金として政府やドナーからのドネーションに依存しているか、それとも事業収入で自立しているか?
  • 観点5. Return on Investment: リターンは社会開発的な効果か、それとも商業的な効果か?

この5つの観点からISを分類すると、以下の4つのカテゴリに分けられるという結果になっている。カッコ内の言葉は自分が勝手にイメージでつけてみました。

  • Non-profit Social Outsourcing Organization(寄付金に頼っても社会開発が主目的)
  • For-profit Social Outsourcing Organization(まずは利益を出すことが前提)
  • Socially Responsible Social Outsourcing Organization(大企業を中心にCSR的な意味も含めて)
  • Dual Value Social Outsourcing Organization(ビジネスで社会開発!)

下記の表がその結果をしめしたもの。なるほどなんとなく、こういうカテゴリがあるのかってなことがわかる。思わず「だから何?」というふうに思う方もいるかもしれませんが、ISのメリットやデメリットが何か?、課題が何か?、批判は何か?といったことを考えるにあたって、こういう分類は重要。一言で「インパクト・ソーシングの課題は○○だ」といったときに、上記のような様々な種類のISのうち、全てに当てはまるのか、それとも、どれかについて言っているのか?は明確にしておく必要がある。

Taxonomy of Impact Sourcing Organization

Source: Malik, F., Nicholson, B., & Morgan, S. (2013). Towards a Taxonomy and Critique of Impact Sourcing.

このレポートではISについての批判についても触れられているが、その批判は次に紹介するMonitor社のレポートとかぶるので、次にMonitor社のレポートを紹介したい。

Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing
最初のレポートがISの組織形態(資本にドネーションが入っているか等)とか社会開発インパクトにフォーカスを当てているのに大して、このレポートでは、もっとビジネスよりの視点からISを分類している点で違いがあって面白い。具体的には、ビジネスモデルの観点から以下、5つのカテゴリに分けている。(Source: Markets, M. I. (2011). Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing. Working paper, Monitor Group, Mumbai.)

  • Micro Model
クライアントが発注した業務を単純作業レベルに細切れにして主に個人へ発注するパターン。携帯電話だけでも作業できるようなレベルの仕事もあり、支払いはモバイルマネーやairtime(通話料クレジット)で支払うパターンも(実際にtxteagleというアメリカ企業が実施している)。簡単に誰でも参加できるが、ガッツリ儲けるのは困難か。また、管理会社としてはクオリティ・コントロールが難しい場合も。

クライアントが発注した業務を単純作業レベルに細切れにして主に個人へ発注するパターン。携帯電話だけでも作業できるようなレベルの仕事もあり、支払いはモバイルマネーやairtime(通話料クレジット)で支払うパターンも(実際にtxteagleというアメリカ企業が実施している)。簡単に誰でも参加できるが、ガッツリ儲けるのは困難か。また、管理会社としてはクオリティ・コントロールが難しい場合も。

  • Intermediary Model
クライアントと複数のISSPの間に中間業者(Intermediary)が入るパターン。中間業者はクライアント確保に注力して、作業のクオリティ・コントロールはISSPに投げることが可能。多くのクライアントを持ち、多くのISSPを抱えていくことが中間業者の儲ける道。また、最後の仕上げは中間業者が行うことである程度の質の担保も可能か。この形態の事例はSamasource。

クライアントと複数のISSPの間に中間業者(Intermediary)が入るパターン。中間業者はクライアント確保に注力して、作業のクオリティ・コントロールはISSPに投げることが可能。多くのクライアントを持ち、多くのISSPを抱えていくことが中間業者の儲ける道。また、最後の仕上げは中間業者が行うことである程度の質の担保も可能か。この形態の事例はSamasource。

  • Sub-contractor Model
大きなクライアントの下請けとしてBPOを請負う会社があるパターン。インドのParadigm Infotechという大企業の下請け(子会社)としてケニアにあるParadigm Expressが良い例。クライアント(親会社)から安定して仕事がもらえる&大企業のネームバリューがあるので、途上国が始めるBPO産業として有益な形態とも言える。

大きなクライアントの下請けとしてBPOを請負う会社があるパターン。インドのParadigm Infotechという大企業の下請け(子会社)としてケニアにあるParadigm Expressが良い例。クライアント(親会社)から安定して仕事がもらえる&大企業のネームバリューがあるので、途上国が始めるBPO産業として有益な形態とも言える。

  • Partner Model
Intermediary Modelと似ているが、中間業者(Parent ISSP)が取りまとめる相手が小さいISSPではなく、Center Partner(労働集約型のBPOセンター)である点が違う。BPO Center Partnerは従業員へのトレーニングやクオリティ・コントロールを行い、トップマネジメンはParent ISSPが行う。インドのRuralShoresがこの一例。

Intermediary Modelと似ているが、中間業者(Parent ISSP)が取りまとめる相手が小さいISSPではなく、Center Partner(労働集約型のBPOセンター)である点が違う。BPO Center Partnerは従業員へのトレーニングやクオリティ・コントロールを行い、トップマネジメンはParent ISSPが行う。インドのRuralShoresがこの一例。

  • Direct Model
下請けやパートナーという立場のBPOセンターではなくParent ISSPが自社でBPOセンターを設立していくパターン。自社でやる分、クオリティ・コントロールは効くし、需要に見合った規模のセンターを作れる反面、ビジネス拡大には投資と時間を要する。Subcontractor Modelの形態で親会社でない会社から受注した場合はこの形態と見なせる。インドのeGramITなどが例。

下請けやパートナーという立場のBPOセンターではなくParent ISSPが自社でBPOセンターを設立していくパターン。自社でやる分、クオリティ・コントロールは効くし、需要に見合った規模のセンターを作れる反面、ビジネス拡大には投資と時間を要する。Subcontractor Modelの形態で親会社でない会社から受注した場合はこの形態と見なせる。インドのeGramITなどが例。

以上、5つの形態に分けてあるのを見ると、先に紹介した分類とはまた違った面白さがある。ICT4D的な観点からは、いわゆるBOP層にも収入を得る機会を与えたり、携帯電話が使えれば参加できて、支払いもモバイルマネーといったMicro Modelに興味がわくが、一方で経済的インパクトや国としてのICT産業振興を考慮すると、Sub-contractor Modelの方が魅力的に見えたりもする。

最後にISの課題について。Monitor社のレポートの最後に、3つのカテゴリにわけて合計9つの課題が挙げられているたので紹介。

Source: Markets, M. I. (2011). Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing. Working paper, Monitor Group, Mumbai.

Source: Markets, M. I. (2011). Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing. Working paper, Monitor Group, Mumbai.

どれもそのとおりと納得できる課題ばかりだが、特に気になった点に黄色マーカーしてみた。
まず「本当にBPO層を採用、雇用、トレーニングできるのか?」という点。インドのように大卒でそれなりに学があるけど、田舎に住んでいるから職にありつけないというようなポテンシャルの高い人材がいる国なら、少々のトレーニングで使えるようになるかもしれないが、一方、インドとはちがって、中学校に行けなかった若者たちに対して、どれだけのトレーニングをすれば使えるようになるのか?を考えると、Micro Modelでの小遣い稼ぎレベルなら良いけど、本格的なアウトソーシング業務を実現できるISは簡単ではないと思われる。

「Race to the Bottom」というのは、どんどん低賃金で働く層に向かっていくことを示唆している。レポートでは、「does not create new class of “digital sweatshops.”」ということが言われていた。Sweatshopとは低賃金で長時間労働をさせる工場のこと。つまり、服飾産業(イギリスのプライマーク等が途上国で児童労働をさせているのが批判されていたことがあるが)の前例のように、仕事を単純化して安い賃金で働く労働力(児童労働など)を確保する方向へ、途上国のBPO産業が向かわないようにしなくてはいけないということ。
こういったリスクを回避するためにも、単なる価格競争とならないように、途上国のBPO産業はブランディングが必要だと改めて感じる(以前、このブログでも投稿してみた内容同様)。

これら2つのレポートはとても勉強になった。ISが進んでいるのはインドをはじめ、南アフリカ、ケニアという。今後、780,000人の雇用を生み出すと言われるISの波が、どうなっていくのか?ガーナにもその波は来そうなので、ウオッチングしていきたいと思います。

新興市場戦略としての”インパクト・ソーシング”

先週に「インパクト・ソーシング(以下、IS)」関連調査等を含めインドに出張しました。先の投稿でも言及あったRualshore社を含め大〜小規模のIS事業者にお会いしました所、折角なので(相当久々なのですが)投稿させて下さい。

4年前、このブログで投稿した際「ソーシャル・アウトソーシング」と呼んでいたけれど、最近は「ソーシャル」でなく「インパクト」というらしい。そこで改めて、「インパクト・ソーシング」とは、、??

この2ー3年でこの単語を積極的に使っているのは、米最大級の慈善団体ロックフェラー。その定義では「十分な機会に恵まれない農村部の若者や社会的弱者へ、職業訓練とBPOセンタでの持続的な雇用を提供すること」とある。

出所:ロックフェラー財団HP

米BPO大手コンサル、Avasant社の予測では、2020年時点でISは世界BPO産業の約17%、554億ドルの規模になる可能性があるという。

話はインドに戻ると、BPO発祥地でもある同国では2014年4月1日に施行された新会社法で一定規模(例:売上100億ルピー以上(170億円程度))以上の企業に税引前利益の2%をCSR活動へ支出することを義務化した。その対象は「食糧、貧困、教育、ジェンダー、乳幼児死亡率、母子保健、感染症・マラリア等、環境、雇用と職業訓練、ソーシャルビジネス、首相特別ファンド、差別カースト」への支出と記される。

「IS業界への追い風かも?」と思い、現地でIS事業者に聞いたが、各社の統一見解は、「単純なIS事業者へのBPOは、単なるコスト削減策で、『顧客自身のCSR』とは言えないだろう。」とのことだが、IS事業者のインフラへの寄付や職業訓練への協力等も含めた活動であれば、CSRとしても認められる、とのこと。同国ソフトウェア業界団体(NASSCOM)傘下の財団では、こうしたCSRの潮流が、IS拡大の起爆剤となる可能性を管轄省庁と議論中である。

ISを活用する顧客事例も多く聞けた。産業に応じた差異はあるが、大きく以下の3つの中長期的な顧客の目的が見えてきた。

第1に、現地での企業ブランド確立。訓練と雇用の提供する農村部BPOセンタにIS事業者と共同投資し、その周辺に自社プラントを建設する顧客もいた(途上国によくあるプラント設立反対運動等はなかったとの事。)。

第2に、ローカル人材資源獲得。特に金融、保険、消費財業界等の営業・マーケ部門においては海外や都市部から人材を送り込むよりもBPOセンタの資源を活用した、マーケットアクセスが可能だ。

第3に、新興市場で戦える自社人材の育成。BPOセンタの立ち上げ時期にはISを活用する顧客の本社も管理、教育を行うことが多く、顧客企業における一種の人材教育になっている、という。

世界のBPO市場の中心的労働力はこの数年はインドからの供給が多いこと、そして、同国の新会社法によるCSRの潮流によって、同国のIS事業の拡大とその活用は今後さらに増えていくと思われる。

 

IT Sourcing for Development: International Workshop@マンチェスター大学

ICT4D修士コースを提供しているマンチェスター大学が、「IT Sourcing for Development: International Workshop」という会議を10月に開くということで、現在、論文募集中です(7月11日締切)。ご興味ある方は応募してみてはどうでしょうか。

テーマは、会議のタイトルどおりに、「IT Sourcing」というもの。世の中には、Samasourceをはじめ、色々なソーシャル・アウトソーシングがあって、途上国開発をビジネス面から促進させる取組であり、単純にこういうビジネスは素晴らしいなぁと思う。

このテーマでどんな研究発表が行われるのか?ソーシャル・アウトソーシングの成功の秘訣とかかなぁ。と思って、この論文募集のWebに掲載されていた参考文献の1つMalik, F., Nicholson, B. & Morgan, S. (2013)Assessing the Social Development Potential of Impact Sourcingを読んでみた。その内容を簡単に紹介すると、以下のようなもの。

  • インパクト・ソーシング(←自分はソーシャル・アウトソーシングと同じ意味と理解しています)に関する研究は、そのビジネスの持続性にフォーカスしたものが多く、その開発効果にフォーカスしたものは少ない
  • なので、この論文はインパクト・ソーシングの開発効果の方にフォーカスしてみた
  • アウトソーシングする会社に雇われた人達(あまり裕福でない層)が働くことを通じてどのような変化(開発の観点からの変化)を体験しているかを調査するのが目的
  • 具体的なフレームワークとしては、Capability Frameworkに沿って以下3つのカテゴリ(Capabilities、Conversion Factors、Resources、)に変化を整理するという試み(以下、論文からの抜粋です)
  1. Capabilities include a set of potential and achieved functionings which the Impact Sourcing initiative may have enabled in marginalized outsourcing employees.
  2. Conversion Factors include all elements which may enable or restrict an individual from being employed, for example, lack of skills, lack of resources, cultural constraints, family support, etc.
  3. Resources include all tangible or intangible resources which act as capability inputs and opportunities provided by the outsourcing service provider to extend capabilities or to minimize the effect of restrictive conversion factors. For example, provision of training, a conducive work environment, provision of internet and computers etc.
  • ケーススタディとして、インドで女性を主な対象にインパクト・ソーシング事業を展開しているHarva outsourcing centreで働く女性10名に対してインタビューを実施した
  • 調査結果としては、(ちょいと自分の解釈を加えていますが、)無料でICTトレーニングを受けられたり、オフィスでスマートフォンを使わせてもらえたり、空き時間にインターネットを私用で使わせてもらえたりといったResourcesの提供があり、家計を助けるために働くという意欲や、学習する意欲、家族の理解などのConversion Factorsが高まって、スキルを身に着けて働いて稼ぐ、将来のために貯金する、といったことが出来るようなると共に自信が持てるようになるといったCapabilityの向上もある
  • ただし、この調査ではポジティブな側面しか見ていないので、ネガティブな側面についても今後突っ込んだ研究が必要

と、上記のような内容でした。

学術的な観点ではセンのフレームワークを使って開発効果を整理している点などが良いのかもしれませんが、いいことばかりの内容にちょっと物足りなさを感じました。また、この観点からすれば、別にインパクト・ソーシングでなくても、雇用創出の事業ならば同じような結果になるのではないかとも思い、ICTを使ったインパクト・ソーシングならではのポイントがあるともっと面白くなるんじゃないかと…。この分野の文献などあまり読んだことがないので、ちょっと勉強してみたくなりました。

LinkedInのVolunteer Marketplace機能開始から考えるICT4D

LinkedInVolunteer

LinkedIn が新しいサービスを開始したというニュースを見た。Volunteer Marketplaceというサービスで、ボランティア業務が検索可能になるというもの。CSR的な目的や職探しをしていない人達でもLinkedInを使うようにしてユーザを引き付けるなどの意図があるようだ。自分はあまりLinkedInって使っておらす、LinkedInでは既にそういうことはやっていたのかと思っていたので、このニュースを聞いて「へー、今までやってなかったんだ」と少し驚いた。そして、そういえば、似たようなサービスをやっているWebサイトがあったなぁと思い出した。

ウィリアム・イースタンリーの「傲慢な援助」に、そのWebサイトは紹介されていたGlobalgiving.comである。このブログでも「Gameと国際協力」というポストで以前少しだけ紹介したことがあったけど、改めてご紹介。

一言で言えば、様々なプロジェクトに対する資金集めのクラウドファンディングのWebサイトである。掲載されているプロジェクトに寄付出来る点は当たり前だけど、Globalgiving.comではGift Cardを送るサービスもやっている。例えば、10ドル分を贈り物として友人に送り、その友人が10ドルをGlobalgiving.comに掲載されているプロジェクトのどれかに寄付出来るといったものだ。なかなか面白い。

そして、LinkedInのニュースで何故思い出したかというと、Globalgiving.comではWebサイトからお金を集めるだけではなく、プロジェクトにボランティアとして参加するためのボランティア業務の募集も沢山掲載されている点が特徴的だからだ。どんなボランティア業務があるのかパッと見てみたら、現地の活動を支援するボランティアもあれば、現地に行かずともFacebookやTwitterでの活動を支援を行うSocial Media Volunteerなんてのもある。

「傲慢な援助」での紹介を読むと、「援助の出会い系サイト」という比喩が使われており、資金集めだけでなく専門家と援助の仕事をマッチングさせるような点が結構強調されいるけど、実際にGlobalgiving.comのサイトや紹介ビデオ(上記)を見ると、そこの部分はそれほど力が入っているわけじゃないのかな?と思う。ボランティア業務の紹介も、Volunteermatch.orgという別サイトへのリンクとなっているし。

先日取り上げたFacebookのDonate now機能やLinkedInのボランティア業務検索機能といったように、途上国援助に関わるためのハードルはICTによってどんどん低くなって来たなぁ、と感じる。これは間違いなくICT4Dの大きな効果の1つだと思う。人(ボランティアのマッチング)と金(クラウドファンディング)は確保できる仕組みが出来てきたから、次はモノか? 「売ります・買います」サイトみたいのの世界版・・・、なんか違うな。さて、次はどんな新しいサービスが出てくるのか?もっともっと途上国援助に関わるためのハードルを下げられるような仕組みや、以前このブログに書いたアイデア(下記のもの)のような取組みも出てくるかな?

KivaのようにP2Pで途上国と先進国の個人が繋がる仕組みが当たり前になっている。FOSS4Dの分野でも、ニーズのあるソフト開発案件がリスト化されてて、参加したいと思う技術者(先進国、途上国問わず)が「参加する」投票をして、ある一定のリソースが確保されたらプロジェクト開始みたいな、Kivaのソフト開発プロジェクト版のようなサイトが登場して来たら面白そうだ。また、これまで途上国開発に参加していなかったアクターの参加が可能となることのインパクトは大きいし、個人レベルで途上国と先進国の人達が共同作業をする場が出来たら、それは単なるFOSS4Dという枠を超えて、途上国開発のあり方自体に変化をもたらす素晴らしいことだと考えられる。

アフリカの携帯アプリについて

ケニアの庶民の足として使われているのはマタツというミニバス。ワゴン車にギュウギュウ詰めになるほどお客を乗せて、ナイロビを走る。そんなマタツがひしめくナイロビ市内は、なかりの渋滞らしい(←マタツについて書いてある、あるブログより)。自分はナイロビに行ったことがないので、実際には知らないのですが、エチオピアのアジスアベバでも同様に庶民の足はミニバスで渋滞もかなりのもの。なんとなくイメージはわく。

そんなマタツをどう乗り継げは効率的に目的地に行けるか?というニーズに応えてくれるスマホアプリがある。その名も、マタツ・ナビゲーション・システム「MATNAVI」。なるほど、便利そうだなぁ。アジスアベバで同様なアプリがあったら使いたいところだ。

そういえば、以前このブログでもケニア政府がローカルコンテンツ作成支援をしているという記事を書いたが、そんな政府の支援もこういったアプリの誕生の背景にはあるのかもしれない。また、低価格のスマホが普及したのもケニアは早かったのだろう。さらに、これまた以前に紹介したネタですが、ケニアに住むウガンダ人が開発したiCheki(スワヒリ語でI seeという意味)という、タクシーの場所がわかる機能を持つ携帯アプリが、2010年にヨーロッパでの携帯アプリコンテストで賞をとったこともある。ケニア、やるなぁ。

現地ならではの便利アプリってのは、探してみたら色々ありそうで興味深い。それぞれの国独自の社会・経済・文化といった面が反映されているのだろう。そのうち、「携帯アプリから紐解くお国文化」的な研究をしたら、本でもかけそうですな。ちなみにエチオピアでは、独自のカレンダー(エチオピア暦)が使われており、1年は13ヶ月、新年は9月11日。さらに西暦2012年の現在はエチオピア暦では、2004年。このグレゴリ暦とエチオピア暦を変換するアプリ(携帯用じゃないけど)がありました(エチオピア人じゃなくて日本人が作ったのかな・・・)。

と、そんな感じで各地域特有のアプリは面白いなぁと思っていたら、携帯電話会社のOrangeがアフリカでスマホアプリコンテストをやっているというニュース“Apply now for the Orange African Social Venture Prize”を発見。優秀者には10,000〜25,000ユーロの賞金と6箇月間の事業支援サポート(事業化コンサルやIT専門家からの支援)が付くというもの。昨年度は、以下の3件がWinner。

  • Horticultural Tele-Irrigation: a Nigerien project that puts mobile technology in the hands of horticulturalists
  • Agasha Business Network: a Ugandan community-based e-commerce platform that promotes small African businesses to the global market
  • Kachile: an Ivory Coast e-commerce start-up for African craft products

アフリカ進出を検討する日本企業も増えてきたというような話を耳にする。そして、進出したいけどどこから手を付けるべきか・・・と悩んでいるケースもあるようだ。特にアフリカ×ICTという一見ありえなそうな分野ではなおさらリスクがありそうで敬遠されがちかも。でも、進出を検討する際には、このようなアプリコンテストとかビジネスプランコンテスト的なものから入っていくのも、ローリスクな始め方としてありじゃないかと思った。

アフリカでの携帯アプリコンテストは、世銀やグーグルなんかもやっているので、新しくはないけど、逆にいえば、それだけ受入られ易いと言える。例えば、アフリカ進出の取っ掛りがほしい日本のICT企業は、携帯アプリコンテストを実施すれば、応募してくるアプリやビジネスプランの種類や質から、現地のことを知ること(マーケティング情報を得ること)が出来るし、Orangeのように優秀者のビジネスを支援することで、その人(優秀賞をとった起業家や学生など)を現地ビジネスのパートナーに育てられるかもしれない。また、そいったコンテスト&支援を会社のCSR活動として位置づけてやれば、それなりのアピール効果もあるかもしれない。さらに、ターゲットとして想定している国の政府機関(経産省とか商工会議所みたいな機関)を巻き込んで実施出来れば、色々な面でより効果的かもしれない。実際に、Orangeやグーグルをはじめ欧米企業が取り組んでいるけれど、日本企業にとってもこういった小さく始める方法も可能性としてありだと感じた。

USAIDとIBMとNGOが組んでボランティアプログラム

USAIDとIBMとCDC Development SolutionsというNGOが手を組んで、現職参加の社員を様々な国に送り、医療や教育システム、技術インフラ、都市開発をボランタリーにやりましょうという提携を結んだとのこと。

http://www.usaid.gov/press/releases/2011/pr110531.html

IBMといえば、「Corporate Service Corps」という斬新なプログラムを作り、数年前から実施している。世界中のIBMから特別チームメンバーを作り、途上国で一定期間システム開発を行うというプログラムで、途上国支援に加えて社員育成(多国籍でのチーム活動などを通じたコミュニケーション力向上)などを目指すものであり、非常に面白い取り組みだと思っていた。

それが今度はUSAID(なぜPeace Corpsでない?)と組むとのことである。

日本にもIT企業は沢山あって、こういった形でのプロジェクトというのは、社員の能力開発(特にコミュニケーション力)には非常に効果的だと思うのだが、なかなか実現していない。

青年海外協力隊と企業が連携という話は時々聞くのだが、この事例のように大々的に数十人~数百人規模での連携というのは例がないと思う。ぜひせっかくの税金を使った事業、(途上国にも裨益するというのは条件だが)このような社員の能力開発も選択肢として進めていって欲しいものである。