カテゴリー別アーカイブ: Development 2.0

ICT4Dの教科書が出版されました

ICT4Dの教科書

以前、このブログでも紹介したマンチェスター大学のHeeks教授が執筆するICT4Dの教科書ですが、気がついた発売されていました。早速、Amazonで購入してみました。これから読まねば!

この本は教科書を想定した構成になっており、以下の9つのトピックになっている。教科書を想定しているだけあり、学生への課題やディスカッションのテーマなども提示されている他、さらに、出版社のWebサイトから授業用のPPTスライドもダウンロード出来るようになっている。

  1. Understanding ICTs and socio-economic development
  2. Foundations of ICTs and socio-economic development
  3. Implementing ICT4D
  4. ICTs and economic growth
  5. ICTs, poverty and livelihoods
  6. ICTs and social development
  7. e-Governance and development
  8. ICTs and environmental sustainability
  9. The future of ICT4D

Heeks教授のブログでは、開発学やコンピュータサイエンス等のカリキュラムの一部にICT4Dが含まれることが増えて来ていると述べられている。理由は、携帯電話やスマホの爆発的な普及に代表されるようにICT4D分野そのものの広がりや、ICT4D絡みのイノベーションがバズっているから。日本では「そうかな?」と思うけれど、大学のカリキュラムはさておき、ICT4Dという用語が援助機関以外でも使われるようになってきたとは感じる。

ちなみに、アビームコンサルティングが「ICT4Devに関心を有する方募集」という求人もありました。応募したくなるフレーズだなぁ…

話を教科書に戻すと、ICT4Dというあまりに幅広い分野を俯瞰出来る教科書はとても便利。自分が5年間講師を勤めさせてもらっている神戸情報大学院のICT4Dの授業にも来年から取り入れてみたい。まずは自分自身が読破せねば。この年末年始の自分自身への宿題としたいと思います!

ドローンを飛ばしているのは誰?

Drone in Africa

Post by Heeks

FacebookのICT4Dグループページにマンチェスター大学のHeeks教授が面白いポストをしていた。上記のものだが、”Who’s (represented as) flying the drones?”(誰がドローンを飛ばしているのか?)とある。アフリカでドローンを使ったサービスが開始されていることはこのブログでも何度か取り上げたが、こういう見方もあったとは。ちょいと皮肉ったところがHeeks教授らしい。特に、右下の写真は何か含みがあるように思えてしまう。

ついつい「ドローン!アフリカで!?」というサプライズ的な感覚が先攻してしまうが、そのサービスを展開しているのは欧米企業日本の企業だったりする。先進国の企業が規制の緩いアフリカを市場に、ドローンを使ったビジネスを展開しているということであり、現地でそういう会社が成功しているという話とはちょっと違う。

先進国企業がアフリカへ進出していること自体は悪い事ではないと思うが、その中からどれくらい現地の企業や人々が裨益出来るのか?という点がポイントだろう。以前、「消費者からプロデューサーになる道とは?」でも述べたように、アフリカの人々が先進国企業のサービスの消費者(コンシューマー)になるだけでなく、自らそこから派生するビジネスを起業出来るようなプロデューサーやイノベーターになることが望ましい。日本でいうと第二次世界大戦後に松下幸之助とか本田宗一郎とかが出て来たみたいに。

そんな風に考えているんだが、そのためにはやはり人材育成が重要、という点に行き着く。今年も10月から神戸情報大学院大学(KIC)のICTイノベーター修士コース(←学生の9割は途上国からの留学生で、特にアフリカからの留学生が多い)の客員講師をやらしてもらっている。早いもので今年で5年目だ。ICT4Dという科目を、自分がマンチェスター大学院のICT4D修士コースで学んだこととJICAでの実務を通じて学んだことをミックスしつつ教えている。そのお陰で「ICT4Dプロジェクトはどうした成功するのか?」ということを毎年この時期になると改めて考えるのだが、結局、どんだけ現地に入り込めるか?とか現地に根ざしたサービスを展開出来るかとか?、が間違いなく成功の条件だ(至極当たり前のことだけど)。また、自分が見たいのは先進国の起業がアフリカで成功する姿ではなく、現地の会社が現地ならではのICTの使い方で面白いビジネスが展開される、そんな姿だ。

今回、Heeks教授の投稿を見て、改めて自分が見たい絵を認識出来た。また、自分がKICの講師という立場で、微力ながらもその絵の実現に貢献できる場所に今いるということをとてもラッキーだと感じたのでした。今年の授業も折り返し地点、あと半分も良い授業が出来るよう頑張ろう!

ホームページ→ブログ→SNS→動画→アプリ?

以前の投稿「ゲーム for Development」で紹介したFun Fun Farmingというアプリの紹介が動画に。このゲームを通じて、SHEP (Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion)という農業分野での支援アプローチを学ぶことが出来る。SHEPのアプローチは、市場で売って儲かる農作物を作りましょう(「作ってから売る」じゃなく「売るために作る」)というもの。ゲーム内で、農作物を作って、売って、利益を出して、その利益で農耕機械を購入して…、といった一連のプロセスを体験出来る。JICAのプロジェクトにしてはなかなか斬新な試みで、このゲームを研修等でも活用している。

これまで情報発信といえば、一昔前はホームページ、その後はブログやSNS、ツイッター、その次は動画、といったツールで発信するものだったけど、アプリ開発のハードルが下がってきたことを考えると、今後はアプリを作って情報発信するという方法が一般化する可能性を感じる。2000年頃かな、好きな人達はホームページビルダーで自分のホームページを作っていたけど、あんな感じで誰でもアプリを開発するようになるのかと。

そういえば最近、若宮正子さんという方の記事を見た。なんと80歳を過ぎてからプログラミングを勉強しiPhoneアプリ(雛人形をひな壇に正確に配置するゲーム)を開発。その功績が認められ、Appleがサンノゼで開催している開発者イベントWWDCに「サプライズスペシャルゲスト」として招待されたそうな。凄いな。

日本語だとBuzzFeedNewsというサイトに詳しく書いてある。下の動画は2014年のTEDx Tokyoでのもの。60歳からパソコンを始め、こんな風になれる人がいるんだなぁ、と尊敬。

誰でも簡単にICTを使いこなせる時代になって来ているが、まだまだ途上国と先進国の差は大きい。App Annieの調べによると、2015年に世界で売れたアプリTOP52のうち、日本・中国・韓国の企業が28社を占めており、その他は米国やヨーロッパで、いわゆる途上国の会社は入っていない。あれだけ人口の多いインドの会社もない。

FacebookやYouTubeの途上国ユーザどんどん拡大し、さらにそれを使いこなしているのを見ると、途上国発のアプリを先進国の人達が使うような時代は、そう遠くはないのかと思う。

マーク・ザッカーバーグの目指す世界 〜インターネットは人権の一つか?〜

インターネットへのアクセスは、もはや基本的人権の一つなのだろうか?

こんにちは、Kanotです。FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグの「Building Global Community(世界コミュニティの構築)(2017/2/16)」を読んだ。概要は後ほど紹介するが、もはや彼の視点はFacebookを越えた世界の通信へと広がっていて、起業家を越えて思想家に近づいている気がする。彼が以前発表した論文「Is Connectivity A Human Right?(コネクティビティは人権の一つか?)」と合わせて彼の目指す世界を考えてみたい。

以前の投稿「途上国開発におけるGoogle,Facebookの存在感」でも取り上げた通り、彼はFacebookとは別にinternet.orgという組織を立ち上げており、「世界中の人にインターネットを」といったスローガンで活動をしている。この活動(インターネットユーザの増加)は長期的にはFacebookの利益にもなりうるので、完全な社会貢献事業とは言えないのでは?とその投稿で指摘はしたものの、彼の目標は高く、何よりそれを実行できる力(お金・サービス)がある。

インターネットは友達や家族、コミュニティを繋げるだけではなく、グローバル知識社会への基礎となるものであり、全ての人にアクセスする権利がある。[1]

全ての人にインターネットに接続する機会を提供することは、知識社会に参加する基礎となる。それは我々がすべきことというだけでなく、根本的なこととして必要なステップである。[1]

この発言から感じることは、彼はインターネットへの接続はいまや、電気・水道などと同じレベルで世界中の人がアクセスできるべきもので、それによってこのグローバル社会への参加が可能になると考えている。そして彼はFacebookを、そのグローバル知識社会にアクセスする最初のステップとして使ってもらいたいということも述べている[1]。

今回のザッカーバーグ氏の投稿では、繁栄と自由、平和促進、そして貧困削減のためにコミュニティがどうあるべきかと論じている。そしてそのためのFacebookの役割として、以下のように述べている。

Facebookができる最も重要なことは、全ての人々がグローバル・コミュニティを構築できるようにする社会基盤を作ることである。[2]

さらに具体的には、以下のようなコミュニティの構築しうる社会インフラとなることを目指しているとのこと。

  • 世界中で弱まりつつある伝統的な組織を強化できるSupportive communitiesを構築するのをどのように支援しうるか。
  • 世界の人が接しうる危害を防ぎや危機で助け合えるSafe communitiesを構築するのをどのように支援しうるか。
  • 人々が新しいアイディアや共通認識を共有できるInformed communityを構築するのをどのように支援しうるか。
  • 世界中で投票率が5割に満たない現状を踏まえ、世界のCivically-engaged communityを構築するのをどのように支援しうるか。
  • ローカル・グローバル、文化、国・地域を問わず人間性や大衆の意見を反映するInclusive communityを構築するのをどのように支援しうるか。[2]

私個人的な見解としても、インターネットへのアクセスは、このグローバル化された社会で競争力を発揮して行く為に、水や水道と同じく必要不可欠なものになりつつあると思う。特に、これまでチャンスがなかった人にチャンスを与えうるという可能性は、非常に大きいものがあると思う。私自身も、インターネットやPCに大学時代にハマった経験が、今のキャリアに大きく影響している。情報にアクセスさえできれば、私のように勝手にハマって勝手に学んで行ける可能性があるわけで、インパクトは大きいと感じる。

その一方で、大半の情報は英語で書かれており、このインターネット社会が進めば進むほどアメリカ・ヨーロッパなど英語に近い言語の人たちの優位性が高まってしまうような気もしないでもない。この辺りは翻訳技術などが解決してくれるのだろうか。

いずれにせよ、マーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツなどはもはやその辺の援助機関よりも資金力・影響力を持っているため、今後もウォッチしていこうと思う。

最後に、マーク・ザッカーバーグの投稿で、ビル・ゲイツの言葉を「好きな言葉」として紹介していたので、それを引用して締めたいと思う。

我々はいつも、2年間でできることを過大評価している。しかし、10年間でできうることを過小評価している。 – Bill Gates –

[1] Zuckerberg, Mark. (2013). Is Internet connectivity a human right?. Internet.org.
(写真もこのサイトより引用)
[2]Zuckerberg, Mark. (2017). Building global community. Facebook.com.

遊びでスマホを使うことの開発効果って??

こんにちは、Kanotです。みなさんデジタルデバイス(スマホ・タブレット等)は普段使ってますか?ほとんどの方は使ってますよね?

では、そのデバイスを勉強など自己研鑽や生活の質改善のために使ってますか?多分大半の方は何かしらそういった目的でも使ってます・・・・・よね?

では、その自己研鑽等に使ってる時間って使用時間のうち何パーセント程度でしょうか?

この回答はおそらくみなさんせいぜい10-20%程度、どんなに高くても50%程度ではないでしょうか?つまり、何が言いたいかというと、デジタルデバイスに費やしている時間のうち、半分以上は遊びなどの目的(ネットサーフィン、SNS情報発信、メッセージ、Youtubeなど)で使われているということです。

では、世の中の「携帯電話が途上国開発に貢献!」の類で取り上げられるテーマというのは何でしょうか?保健情報提供、送金サービス、学習アプリ、、、、等々。いずれも遊び目的以外のものについてです。

もちろんこういったテーマの効果を測ったりすることが大事ではあるのですが、50%を越える時間を費やしている「遊び目的」のデジタルデバイス使用が人間形成や開発に与える影響、ってこれまであまり考えられてきていないのでは??

こういった問題提起をした論文があります。オランダErasmus大学のArora氏とMicrosoft Research IndiaのRangaswamy氏の2013年の論文「Digital leisure for development: reframing new media practice in the global South」です。

内容はまさに上記の問題を指摘していて、デジタルデバイスが開発に与える影響って、真面目な使い方(教育・保健)などより遊び目的の使い方(Facebook, Youtube等)の方が圧倒的に費やす時間が多いため、実はこちらの方が大きいのではないか。なのに、その遊び目的の使い方は研究対象などにこれまでされてこなかった。もっと研究すべきだ。といった内容です。

個人的に「うーむ、確かに・・・」と考えさせられました。確かにこれまで見過ごされてきた視点ではという指摘はその通りと思います。デジタルデバイスの開発への影響という点では、特定アプリ・特定サービスの効果だけではなく、もっと広い視点を持たねば、と反省させられた論文でしたので、紹介させていただきました。

UNDP人間開発報告書2015からのICT4Dトピックス(その2)

undp%e4%ba%ba%e9%96%93%e9%96%8b%e7%99%ba%e5%a0%b1%e5%91%8a%e6%9b%b82015

前回の投稿に続いての「その2」です。

技術革新が仕事におよぼす影響について特に途上国の視点から、UNDP人間開発報告書の内容を拾っていきます。

まずは、技術革新(とくにICT)による大きな変化について。

  • 世界のフローにおいて知識集約型の財・サービスが中心を占めるようになり、資本集約型・労働集約型の財・サービスを上回るペースで増加している。現時点で前者は世界のフローの半分に達し、さらにその割合を増している。知識集約型財のフローは知識集約型財のそれの1.3倍のペースで増加している。(P101)
  • その結果として、財・サービスのデジタルなフローも増加している。実際、「アプリ経済」という言葉が示すように、今や多くの財が完全にバーチャル化している。(P101)
  • 調査研究によると、2013年時点で米国だけでもアプリ経済が75万人に何らかの形の仕事をもたらしていた。(P105)
  • 近年、知識が生産に対して中心的な意味を持つようになった。製造業でも組み込まれた知識によって最終製品の価値が決まる度合いが増している。例えば、スマホ最上位機種の価格は、部品と組み立てコストよりも高度な設計と技術に要したコストのほうが大きな部分を占めている。(P107)
  • 2012年の数字で知識集約型の財・サービス・金融の取引のほぼ半分において、その価値の大きな部分を研究・開発と熟練労働が占め、その価値はほぼ13兆米ドルに達している。そして、知識よりも労働力・資本・資源を集約した製品・サービスの割合が下がる一方で、知識集約型の製品・サービスの割合は着実に増している。(P107)

そして、デジタル化されたサービスの特徴について。カッコ内は自分の補足説明です。

  • (デジタル化されたサービスを一旦開発すると、その複製は極めて楽チンになるとう話)ローコスト、あるいはゼロコストでの複製は仕事の成果に対するアクセスを広げるが、新たな雇用はほとんど生み出さないかもしれない。(P105)
  • (新たな雇用を生み出さない例として)ツイッターの月間アクティブユーザー数は、2015年3月時点で3億200万人に達し、1日5億件のツイートを通じて情報やニュースが生成・拡散される一方で、ツイッター社の従業員数は、3900人にすぎる、その半数を技術者が占めている。(P105)
  • デジタル経済の第2の特徴として、人々が消費する財・サービスの一部は消費者自身によって生産される。つまり消費者が「プロシューマー(ProducerとConsumerの合成語)」になる。(P105)←これはWeb2.0とかICT4D2.0の話と同じ。
  • その最も直接的な事例が、7万3000人超えのボランティア執筆者を擁するウィキペディアだろう。無料オンライン百科事典のウィキペディアは、2012年に244年続いた活字出版の幕を閉じた「エンサイクロペディア・ブリタニカ」などの有料情報サービスと直接的に競合している。(P105)
  • いくつかの形で仕事のプロ化に逆転が起きている。(P106)

最後に最終的に仕事にどういう影響があるか?AIやロボットの能力が上がっていくと、それに取って変わられる職が沢山あるよね、という話。

  • これまでに多くの国が、利益率の低い労働集約型の製品から電子機器の組み立て、そして高度な製品や設計、管理への移行を果たしてきた。開発プロセスが遅れて始まった国々は、「早すぎる脱工業化」さらには、「無工業化」にも直面している。今や製造業が多数の職なき人々を吸収することはできない。(P108)
  • 新技術がもたらす真の影響は、低技能の労働者の需要減と高技能の労働者の需要増である。(そしてそれが)仕事の機会の二極化を引き起こす。中間部分ではオフィスと工場で多くの職が着実に空洞化していくことになる。(P116)

上記の指摘は、以前の投稿「IoT、ビッグデータ、AI、3Dプリンタ、ドローン、新たなテクノロジーは途上国を豊かにするのか?」でも記載したように、自分もまさに同じことを考えていたのですんなり頭に入って来た。特に、東南アジア諸国が発展したような、日本など先進国の工場を誘致して、雇用を生み出すとともに、そこで働く労働者がスキルアップして行き、スピンオフして起業したりしながら、国の産業レベルが上がって行く…といった開発モデルは、途上国の工場ロボットをIoTで先進国から遠隔監視する仕組みやAIの活用、データだけ送れば3Dプリンターで製品が出来てしまう…という技術革新によって、成り立たなくなりつつある。アフリカなどのこれからの国は、これまでの開発モデルに代わる新しい開発モデルを模索する必要があるのだろう。この報告書では、以下の点がそれに関連している。

  • デジタル・リテラシーの重要性が増している。(P108)
  • デジタル革命とグローバルなつながりを人間開発の向上へと導くためには、市場の機能だけでは不十分なはずである。このような機会をより良く活かすために、国レベルと世界レベルでの公共政策と施策が必要とされている。(P121)

上記が、この章のまとめになっているのですが、以下、「仕事の機会の二極化」に関連して、個人的に驚いた点も追加します。

  • 世界でも最も裕福な上位1%が世界の富全体に占める割合は、2009年の44%から2014年の48%へ増加し、さらに2016年に50%を超える見通しにある。(P119)
  • 例えば、米国のCEOの報酬と一般労働者の報酬の対比は、以下のとおり(P120)
    • 1965年   20:1
    • 1978年   30:1
    • 2000年 383:1
    • 2013年 296:1

この数字を見ると、「途上国支援の問題は、上位1%の人達でどーにかして下さい」と自分の仕事の意味に疑問を感じてもしまいますが、これが現実。テクノロジーの発展がこれに拍車を掛けるというなら、ますます途上国に課せられた課題は大きいものだと感じます。

ちなみに、

  • デジタル革命はあらゆる種類の革新を安く速く可能にしている。このことは、過去数十年間の特許登録件数の増え方に映し出されている。1970ー2012年の間に、米国特許庁に認められた特許の件数(米国と他の国の総計)はほぼ5倍に増加した。コンピュータとエレクトロニクス分野における革新がこの増加の中心を占めた。特許登録全体に占めるその割合は、1990ー2012年の間に25.6%から54.6%に増加した。(P110)
  • 2013年の特許登録件数の上位12カ国は、以下のとおり。(P110)
    • 1位:日本
    • 2位:米国
    • 3位:中国
    • 4位:韓国
    • 5位:ドイツ
    • 6位:フランス
    • 7位:ロシア
    • 8位:英国
    • 9位:イスラエル
    • 10位:インド
    • 11位:イラン
    • 12位:シンガポール

おおっ!日本が1位になってる!
と言うことで、日本がICT4D分野(←狭いプロジェクトという意味でなく、むしろ上記のような途上国が直面している課題に対する解決の支援の方で)で途上国支援をしていく意義って、結構あると改めて感じました。

ICT4D研究がアジアからアフリカにシフトしつつある??

こんにちは、Kanotです。たまには自分の研究について書いてみたいと思います。国際学会ICTD2016でポスター発表した内容で、JICAのYoutubeサイト「ICT and Development」でも取り上げていただきました。

以下は論文の概要です(動画内容とほぼ同一です)。

世界銀行のWorld Development Reportやアフリカ開発会議(TICAD)でのICT立国ルワンダの存在感など、ICTの役割が認められてきた昨今ですが、ICTと開発(ICT4D)の研究フィールドはどのようなトレンドを描いているのでしょうか?特定の地域や国に寄っているのか、それとも満遍なく広がっているのか?そして地域や国のトレンドに変化はあるのでしょうか?

こういった興味から、過去10年間のICT4D関連の論文525本を地域・国でタグ付けし、傾向に変化があるのかを調べてみました。なお、ここでいう地域・国は執筆者についてではなく、研究対象となった地域・国のことを指しています。

  1. 国別トレンド
    以下のグラフは国別の論文割合で、上位6カ国をプロットしたものです。slide3

    この10年間はずっとインド(青線)が首位になっています。確かに私もインドというと、貧困という開発途上国のイメージと、IT人材を対象に生み出すIT大国というイメージの双方があり、ICT4Dの研究対象としても選ばれてきたのも納得できます。

    その一方、2010年くらいから伸びてきて、2014年にはインドに追いついている国があるのに気がつきましたでしょうか?この辺りを見るべくインドを除く5カ国を拡大したのが次のグラフです。

    slide5

    この一気に論文数を伸ばしているのがケニアです。私がポスター発表を行った国際学会ICTDでも、2012年に初めてアフリカ(南アフリカのケープタウン)で開催され、アフリカの勢いを感じていたところでした。上位6カ国のうち4つがアフリカ、2つがアジアと、アフリカの勢いを感じるところです。

  2. 地域別トレンド
    次に地域別の比較です。slide6

    このグラフにある通り、アジアとアフリカで8割以上を占めています。面白いのが2014年に初めてアフリカが論文数でアジアを上回って一位になったということです。先ほどの国別傾向でインドが下がりケニアが伸びている影響も受けていると思いますが、ICT4D研究全体のトレンドとしてもアジアからアフリカに移りつつあると言えるのではないでしょうか。

  3. 多様性
    これまで地域と国の傾向を見てきましたが、特定の国に偏った状態なのか、色々な国で研究が行われているのか、シャノンの多様性指数を用いて比較してみました。slide7

    このグラフがその結果なのですが、徐々にですが指数が向上しているのが見て取れます。これは対象国が広がってきている(多様性が増加している)ことを示すもので、これまでインド一国集中だったものがインフラ発展の成果もあってか色々な国にICT4D研究が広がっているということになるかと思います。

では、これらの変化がなぜ起きてきているのでしょうか。今回の論文においてはそこまでは検討できてないのですが、考えられる仮説としては、例えば以下のようなものがあります。
・地理的な多様性はIT政策やインフラの発展に相関がある。
・一部の国(インドなど)で研究が終わってきたため、他の国にシフトし、多様性が増加している。
・誰かが新しい国で研究を始めると他の研究者も興味を持ち始め、多様性増加に貢献している。

これらについてはまた次の研究で調べてみたいと思いますが、インフラの発展もあってか、ICT4D研究もアジアからアフリカに少しずつシフトしつつあり、色々な国で行われるようになってきているようです。