カテゴリー別アーカイブ: e-Agriculture

m-Agriculture成功の鍵は、どれだけ人が介在出来るか?

先日、ガーナのグラミン・ファンデーションが実施しているm-Agricultureプロジェクトの話を聞く機会があった。実際にプロジェクトを担当している方からの話が非常に興味深いものだったので紹介したい。

Achieving Impact at Scale through ICT-Enabled Extension Services (AIS) projectという名前のついたプロジェクトの話。グラミン・ファンデーションの他、カナダのIDRC、インド発祥のDigital Green、Farm Radio Internationalが連携して実施している。

携帯電話を使った農民支援というとパッと思いつくのが、農作物の市場価格や天気予報といった情報をテキスト等で農民に提供することで、農民が仲買人に作物を買い叩かれないようになったり、天候によるリスクを軽減出来たりというメリットがある、という話だ。しかしながら、今回聞いた話は、そういう取り組みと一味違った内容で面白かった。

グラミン・ファンデーションがいわゆる農業情報配信システムを開発し、市場価格や天気予報などの情報を配信するという点は同じ。ただし、単純に農民に情報を配信するのではない。

農民から農作物を買い付ける仲買人(Agent)に対して、プロジェクトから情報配信用のアプリが入ったデバイス(スマホ、タブレット)を提供し、仲買人が農民に対して情報をセレクトして配信する仕組み。仲買人は最初に各農民と面談し、農民の情報(氏名や性別等の基本情報、育てている作物、農業スキル、欲しい情報、等)を聞き取りシステムに登録する。仲買人は定期的に各農家を訪問しアドバイスを提供することが義務付けられ、訪問時には写真を取ったりメモを取ったりして、その情報はデバイスを通じて、サーバーにアップされる。各シーズンにいつ頃、誰を訪問するべきか?というタイミング(種まきの前とか、収穫の前とか)はアプリで知ることが出来る。アプリには、登録された農民情報から農民をグルーピングして「米を作ってる農家」、「メイズを作ってる農家」、のように作物で分類したり、「経験抱負な農家」、「経験が浅い農家」のようにスキルで分類したりする機能があり、仲買人は配信される情報の内容を見て、それが必要なグループに配信する。沢山の情報を一斉に全員に配信するのではなく、各農家に合った情報を提供する。アプリの言語は英語のみだが、農民の中には英語が出来ない人もいる。その場合は、仲買人は定期訪問時に現地語でアドバイスしたり、ポータブルのプロジェクターで動画を見せて説明したりする。

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農家→仲買人→大手バイヤーの全体にメリットを提供出来る仕組み作りが上手い!

 

仲買人は50件の農家を管理しており、このプロジェクトではガーナ中で約200名の仲買人を対象としている。つまり、200×50=10,000ということで、一万件の農家を支援しているわけだ。当初は仲買人は100件の農家を管理する想定だったそうだが、実際にやってみると定期訪問が大変で数を50に変更したとのこと。

「どうやって対象とする仲買人を選んでいるのか?」と聞いたところ、仲買人を選ぶのではなく、複数の仲買人から作物を買い取る大手バイヤーのなかから農民への一定の支援に協力的なバイヤーを選び、その下にいる仲買人が対象になっているということだった。農民が作る作物の質・量が向上することは、大手バイヤーにとってもメリットであり、また、大手バイヤーは肥料販売やトラクターのレンタルなどもやっているケースが多く、そいうサービス業の繁盛にも繋がる。仲買人にとっても農民が作る作物の質・量が向上することは、安定した買い付けが出来る点でメリットがある。より安くて質の高い作物を探して遠方まで買い付けに行くコストよりも、地元の農民を支援してニーズにあった作物を育てさせる方が効率的である。つまりAISプロジェクトは、農民だけを直接支援しているというよりも、「農民→仲買人→大手バイヤー」という農作物の買い取りシステム全体を支援しているような印象。

アイデアとして「質の良い作物を大量に買い取りたい」という大手バイヤーを巻き込んだところが、秀逸だと感じた。政府系の農業普及指導員を巻き込んでこのような取り組みをしても、農民のスキルは向上したとしても最終的に質・量が改善した作物を「誰が買い取ってくれるのか?」という出口が不明瞭だ。一方、このプロジェクトでは最初にその出口を確保し、そこから支援の対象となる農民が選ばれている。農民のセレクションではなく大手バイヤーのセレクションからという逆のアプローチは秀逸だ。さらに、政府系の農業普及指導員よりも、仲買人の方が利害関係から「農民に良い作物を作らせる」という目的に対してモチベーションが明確である。

また、プロジェクトは農民への直接的なトレーニング等は行わず、仲買人に対してのみ各種トレーニングを提供している。ダイレクトに農民に情報配信をするのではなく、農民と仲買人という既存の関係性の上に情報配信をプラスするという方法をとっている点や、情報配信をするだけでなく実際はフFace to Faceで仲買人が農民に現地語でアドバイスをしたり定期訪問したりする点は、「ICTはあくまでツール。ICTそのものがソリューションではない。」ということを具現化したようなプロジェクトだ。いくつかm-Agricultureプロジェクトの事例を見ると、やはり「どれだけ人が農民とICTの間に介在出来るか?」が成功・失敗の分かれ目になっている。ちなみに、ガーナのグラミン・ファンデーションには、何度かこのブログでも紹介した外山健太郎氏が活動していたインドのマイクロソフト・リサーチで働いたいたガーナ人がいました。そういう繋がりから、Digital Greenとも連携しているのかもと憶測。

気になるのは、この農業情報配信システムの利用料金を「誰が払うか?」だ。現時点ではIDRCの援助で成り立っているため、誰からも利用料金は取っていないとのこと。この援助がストップしたときの持続性はどうなのか?

この質問については、いつくかの案があるということだった。例えば、農民は現金を払うことに付いて非常に抵抗感が強いため、仲買人が作物を買い取るときに、作物の量を増やす等の方法でモノで払い(使用料金をさっぴいた買い取り価格にする方法も)、仲買人が現金で使用料金を支払うという方法が考えられる。また、別の案としては、最終的に質の良い作物を手にする大手バイヤーが使用料金を肩代わりする方法も。さらに、このプロジェクトは携帯電話での情報配信だけでなく、ラジオでの情報配信も行っていることから、トラクター貸し出し業や肥料販売などをしている会社(大手バイヤーと被ることもある)の宣伝をラジオに載っけて、その広告料でシステムの利用料金を賄うといった方法もありえる。

持続性については今後も色々と考えて行くという話だったが、上記の案はいずれも悪くないように感じた。ただ、これが援助でなくビジネスとして成り立つ場合、仲買人は自分が管理する農民をよりシビアにセレクトすることになる。例えば、肥沃な農地を持っている農民や一定のスキルのある農民を対象にした方が良いに決まっている。言い換えると、より恵まれない環境にある農民は、この仕組みに入れずに、お隣さんがより質の高い作物を作っているのを羨ましそうに見て、より格差が広がる…ということに。このプロジェクトでは、そういうことを避けるためにラジオを通じた情報提供を分け隔てなく行ったり、仲買人が農民をセレクトする際にバランスのとれたセレクションをするようにしているとのことだが、援助がビジネスに切り替わると、弱肉強食の世界にならざるを得ないだろう。まぁ、この手の話はまた別の機会に書きたいと思います。

今回、グラミン・ファンデーションの方から話を聞いて、人を支援するという視点ではなく、システム全体にメリットのある支援を考える視点の重要性を強く感じた。いやはや、とても勉強になりました。

最後に、Achieving Impact at Scale through ICT-Enabled Extension Services (AIS) projectの紹介がされているWebを見ると、もっと色々な情報が掲載されており、一部上記の話とも違う点(例えば、プロジェクトが対象としている仲買人は200ではなく220との記載)もありますが、生で聞いた話を元に上記は記載してみました。

ポストMDGsのICT4D研究優先課題

たまには固いタイトルでの投稿を。

途上国支援に携わっている方はご存知と思うが、ミレニアム開発目標(MDGs)という開発分野に関する国際社会の共通目標の達成に向け各国・援助機関等がプロジェクト等を行ってきている。2000年にまとめられたもので、8つの目標分野がある。

現在国際社会では、これの更新版、ポスト2015年開発目標(ポストMDGs)の策定が進められている状況である。

さて、このポストMDGsではICTはどのような位置づけになるのだろうか。おそらく具体的な名称として目標分野に入ることはMDGs同様ないのだろうが、各開発課題の達成に向けてICTの活用がキーとなることは変わらない。

前置きが長くなったが、そういった視点から、ポストMDGsにおけるICT4Dの優先研究分野について、最近の116本のICT4D論文から傾向を分析した結果が、マンチェスター大学のHPにRichard Heeks教授名で掲載されていた。

まずは以下の図。現在検討されているポストMDGsとICT4D研究のギャップを示したものである。中央線を越えているものは既に研究結果がある程度現れている分やで、下回っているものは研究数に不足があるものとのこと。

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更に分かりやすい図はこちら。

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開発分野とギャップをマトリックス上に示したものである。こう見ると、確かにこれまで研究も多かったであろうMobile, Social Media, e-Health, e-Learning, e-Governanceなどはそれなりにギャップは少ない。一方で、e-EnvironmentやICTs and Povertyやe-Agriculturなどがギャップが大きく、今後の優先的な研究分野として検討できるのではと締めている。

イノベーション・プライズ・フォー・アフリカ2014 ファイナリスト10名

innovation prize for africa

先日、ガーナの新聞を見ていたら、Innovationって文字が目に入りました。読んでみると、「Innovation Prize for Africa 2014」というコンペティションで、アフリカ42カ国からの約700件の応募の中から、最終的にファイナリスト10名が決定したというもの。

最優秀賞には、100,000USDの賞金、その他にも、商業性に優れた事業と社会貢献度に優れた事業にも、それぞれ25,000USDの賞金が与えらる。

どんな事業が選ばれているのか?と思い見てみると、10件中3件(下記)がICT4Dっぽい事業でした。

  • Elise Rasel Cloete (South Africa) –  GMP Traceability Management Software CC: This software is programmed to capture, store and trace data about livestock and enables data to be captured in real-time. The data is linked to the unique visual ear tag and stored on the system/remote server.(家畜の耳につけるタグを通じて家畜に関する各種情報を一元管理するソフトウェア)
  • Joshua Okello (Uganda) –  WinSenga: This innovation is a low-cost mobile phone based antenatal diagnosis kit that captures fetal heart beat sounds and provides diagnosis which is sent to the mother through SMS. The data can also be uploaded to cloud storage.(携帯電話を活用し、胎児の心臓音を拾って診断結果をお母さんにSMSを使って通知するシステム)
  • Maman Abdou Kane (Niger) – Horticultural tele irrigation: The “Horticultural Tele-Irrigation system is a technological process that allows growers to remotely control their market garden irrigation system through a mobile or landline regardless of geographic location.(携帯電話や普通の電話で、遠隔地からも灌漑設備をコントロール出来るシステム)

アフリカに行ったことがない方々からすると、上記のいずれもが、「へー、アフリカで・・・・」と思えるものじゃないかと思います。思いのほか進んでますね、アフリカ。

このコンペティションを実施している団体のコメントとして、「アフリカが直面している問題解決のためのソリューションはアフリカから誕生する(best solutions to the challenges Africans face on a daily basis can and will come from Africans themselves)」という言葉が印象的でした。

ちみなに、上記3件以外では、ガーナなどのローカルフード「フーフー(もちみたいなもの)」を短時間(8分)で作れるフーフープロセッサーなんてのものあって、それはそれで面白い。ある意味、まさにアフリカからしか誕生しないソリューションだなぁ。

バングラで農民向け携帯アプリの会議

1/20の現地新聞に、農民向けの携帯アプリに関する政府主催会議の記事が載っていたので紹介する。農業に携帯を活用して・・・といった話は各国で既に存在している話と思われるが、今回の会議はICT省や通信郵政省などの省庁に加えて、民間ソフトウェア会社や携帯電話キャリアなども参加したようで、活発に意見交換が行われた模様。

この会議の目的は、携帯アプリの開発・利用を通じて、農民が効率的に農作業を行い、公平な価格で市場に販売出来ることを目指すとのこと。実はバングラデシュには農協のような政府系の団体はほとんど存在せず、大半は民間のブローカーを何重にも経て市場へ流れていく。当然その過程で多くのコミッションが抜かれ、農家は恐ろしいほどの低価格で出荷している。

会議の中では、以下のような提言・発言がなされたとのこと。
・国内でのスマートフォン組み立てを推進し、農民に低価格のスマートフォンを販売するべき。
・国内のソフトウェア会社による、バングラの実態に合った携帯アプリの開発を行うべき。
・産官学、NGOが一体となって進める(実際バングラはBRACなどNGOの力が非常に強い)。
・現在の農業系大学ではICT教育は非常に遅れている。
・ICT市場の成長を考えると、10万人のエンジニアを育てる必要がある。
・携帯電話キャリアはCSRの一環として農村部の支援をする準備がある。
・UISC(農村部の情報センター)の知名度が低く、活用レベルが低い。

これらの計画・提言のうちどの程度が実際に予算がついて動き出す物なのかは未知数ではあるが、ICT省と農業省が中心となって真に使える携帯アプリが開発されることを祈るのみである。

Grameen Applab

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マイクロファイナンスで有名なグラミン銀行がGrameen Applabといういう取組を実施している。Gates Foundationから資金を得たり、マイクロファイナンス研究機関のCGAPや各国の携帯事業者と協力してウガンダ、ガーナ、インドネシアなどで、農業、保健、マイクロファイナンスといった分野のプロジェクトを行っている。へーっと思ってWebを見ていたら、ウガンダのCommunity Knowledge Workerというプロジェクトを紹介するYoutube動画を発見。閲覧回数がまだ2回(少なっ!)だったのでご紹介したい(結構面白い動画で良く出来てると思いうのですが、可哀想なことに閲覧回数が2回とは・・・)。

見てもらうとわかるように、このプロジェクトはウガンダの携帯事業者MTNやGoogleと協力して、農村部の人々に農業関連情報を提供するというもの。具体的には、Community Knowledge Worker(CKW)と呼ばれる情報提供担当者を各地において、彼らにスマートフォンを提供する。場合によっては携帯充電用太陽光パネルのキットも供与しているようだ。村人は牛が病気だとか困ったことがあったら、CKWのところに行って質問すると、CKWはスマホで関連情報を調べて教えてくれる。スマホで情報を調べるときには、CKW用に開発されたデータベースシステムを使っている。データベースには、35種類の農作物、家畜7種類、天気予報、市場情報、交通機関情報、モバイルマネー取扱店の場所などに関する35,000以上の事項に関する助言がリアルタイムに蓄積されている(この動画後半では、実際にスマホの画面でどうやって情報を検索していくのか見られるので、イメージがつかめます)。2010年から開始され、現在は800名のCKWがいるという。

一昔前、バングラデッシュで携帯電話を貸し出すためのグラミン・レディ(テレフォン・レディ)という取組が始まったけど、固定回線がないような村で携帯電話を貸すことが中心だった。そこから、一歩進んだのがCKWのような取組だろう。依然、このブログでもKnotが紹介したバングラのInfoladyも似ている。グラミン・レディは2006年位に始まったが、携帯端末が行き渡った現在は活動をやめている。携帯貸し屋さんから情報屋さんへの変化。次は何屋さんが出てくるだろうか。

小型のモバイルプロジェクターなんかも安くなったので、携帯とモバイルプロジェクターで移動紙芝居屋さんならぬ、移動映画屋さんとか、オープン教材を使った移動塾・家庭教師など、なんか色々と可能性がありそう。と、書いていたら、モバイルプロジェクターが欲しくなってきた、台風も弱まって来たので電気屋さんに行ってこうようかな~

女性主導の農村部向け情報屋サービス、インフォ・レディ

以前から気になっていたバングラデシュ国内のICTサービスに「インフォレディ(Infolady)」というものがあるのだが、ドイツのDeutsche Welleという組織が決めているGlobal Media AwardにこのInfoladyが選ばれたとのことで、当ブログでも紹介したい。

このサービスは、バングラデシュの若い女性を、情報へのアクセスが弱い農村部の住民へ情報屋として提供するというものであり、InfoとLadyは合わさってInfoladyというものである。
こう書くと、ありきたりのサービスのようだが、とてもユニークな点が含まれている。

1. イスラム教国で女性が自転車に乗って村を回るというインパクト
バングラデシュはイスラム教国であり、都市部では女性も会社勤めすることに違和感はなくなってきてるものの、田舎部ではいまだに女性の社会進出へのハードルは低くないのが現状である。その女性が自転車に乗るということ自体がこれまでなかったことであり、自転車で巡回するInfoladyは「働くかっこいい女性」というイメージを作り上げることに成功している。

2. 女性しか聞けないことがある
敬虔なイスラム教徒の中には妻を男性の目には全く触れさせない人などもおり、男性にも女性にも同じサービスを提供できるのは女性だけであり、女性差別を逆手にとったサービスを展開している。

3. パソコンとネットがあれば、よろず相談所になれる
携帯電話のカバレッジこそ9割を越えているバングラデシュであるが、あくまで通話とSMSのツールであり、インターネットは農村部ではほとんど普及していない。つまり、そのような場所でノートPCとネットと検索エンジンを活用すれば、「どんな質問にも答えられるスーパーウーマン」になれるわけである。当初は体重や体脂肪を測定し健康アドバイスをするだけのサービスだったのが、いまではよろず相談所になっており、住民の心をつかんでいる。

4. 提供サービスの柔軟性が非常に高い
ベーシックなサービス内容はあるものの、どのような付加サービスを行うかはInfolady自身に権限があり、柔軟に増減させることが可能になっている。例えば教育コンテンツを携帯している人もいれば、体脂肪計を携帯する人がいるなど。

ビジネスモデルとしては、Infoladyが農村部を巡回し、情報をもらうことに対価を払うシステムであり、体重計って2円、質問をネットで調べてあげて3円、といった具合で少額を積み重ねるまさにBOPビジネスである。実際に成果ベースであるInfoladyの平均収入はダッカの会社員の平均より高い。

こういった社会的ハンデを逆利用することでビジネスとしてしまうこと、外国企業には思いつかない発想である。ぜひ事業を発展させていって欲しいと思う。

リンク: 現地紙 Daily Star記事
http://www.thedailystar.net/beta2/news/Infolady-wins-bobs-award/

エチオピア商品取引所(ECX)について

先日投稿した記事「ICT4Dに必要なのはスティーブ・ジョブズか」にエチオピア商品取引所(ECX: Ethiopian Commodity Exchange)のことも書いたが、エチオピアは自分の第二の故郷なので、もう少し詳しい情報を紹介したい。

まずは以下の動画。このECXの生みの親であるEleni Zaude Gabre-Madhin(元世銀エコノミストのエチオピア人)のTEDでのプレゼンである。このプレゼンで、ECXがあれば、エチオピアの食糧危機や農民の生活向上に貢献できると説明している。特に、食糧危機であっても北部に食糧がなくて人が餓死する一方で、南部では食糧があまっているといった話からは、道路インフラの改善や政府が農作物を一元管理することの必要性を感じる。

次にUNDPのレポート(2012年1月)等からの情報。2008年4月に設立されたECXは農民やバイヤーにコーヒーやゴマ、穀物の市場価格情報(ニューヨーク市場やシカゴ市場の価格なども)を提供している。情報提供の方法は、31箇所あるセンターの電光掲示板を通じてやWebサイト、携帯電話のテキストメッセージ、自動音声サービス(4言語でのサービス。ちなみに、エチオピアでは80を超える現地語があると言われる)が用いられている。現在、アフリカ域内での取引しか行っていないが、2011年には11億USDの取引規模を有する取引所に発展、毎日2万件以上の取引や市場情報照会の取引照会がある。

ICT4Dの観点からだと、携帯を利用して農民の収入増加に貢献するダイレクトなサービスをしている点に注目があつまるが、一方では、ECXはコーヒーなど輸出品の品質管理を行うことで、輸出品そのものの価格を上げることに取り組んでいる組織である。例えば、

「エチオピアコーヒーのECX制は、その国内生産量の約96%を占める輸出用コモディティコーヒーを9つの主要生産地(Yirgachefe、Sidama、Jimma、Harar、Limmu、Kaffa、Tepi、Bebeka、Lekempti)に分けて各10の等級に分類しようとしたもので(スペシャルティと国内用は現時点では分類が異なる)、4%にも満たないスペシャルティコーヒーを流通加速するより、コーヒー全体の価格を上げることを眼目として発足している。」

上記はECXについて書いてある珈琲系のブログからの抜粋だが、そのブログで取り上げられていたネタが興味深い。

これまでアメリカをはじめとする輸出先であるコーヒー業者は、エチオピアの農家から直接コーヒー豆を買い付けることで、その豆のブランド力をアピールしてきた。「単一産地」かつ「直接取引」のコーヒー豆です!ということをアピールしてきたわけだ。それが、ECXを通じてコーヒー豆を輸入することは、その豆が本当に特定の産地の豆なのか?と胸を張って言い切れなくなることを意味する。

希少な単一産地のコーヒー生豆の買い手にとって、生豆が栽培されたテロワール(土壌と風土)が、世界最大のコーヒー店チェーン、米スターバックス との販売競争で強みになる。専門的なコーヒー業者は、エチオピアとの関係が崩れ、同国産コーヒー生豆のブランド力が損なわれていると嘆く。カナダのディスカバリー・コーヒーのプリンシパルオーナー、ジョン・リオプカ氏は、エチオピア商品取引所の開所後、エチオピア産コーヒーを単一産地ブレンドのメニューから取り除いたと語った。(ブルームバーグの記事「専門店から消えるエチオピアコーヒーの香り-商品取引所開設の余波」(2011年9月)抜粋)

エチオピアのコーヒー価格を上げようとECXが品質管理等に取り組んでいる一で、海外におけるそのコーヒー豆のブランド力が落ちてしまうというリスクもあるという話。複雑な課題です。

最後にICT4Dの観点に話を戻したい。Eleni Zaude Gabre-MadhinのプレゼンでECXについての説明があるが、そこでは携帯電話を用いての情報提供サービスとは言っておらず、地方のテレセンター的な拠点を通じての情報提供といっている。さすがに2007年時点では携帯がエチオピアでもこれほど普及するとは思ってなかっただろうなぁ。以下のグラフ(上記と同じUNDPのレポートから)のようにエチオピアの普及率はかなり低いレベルでしたので。

アフリカの携帯普及率 in 2007

そして、ECXが軌道に乗った理由には、携帯電話の普及といううれしい誤算があったのかもと勝手に想像。参考までにアフリカのICT普及率のグラフ(上記と同じUNDPのレポートから)も載せてみます。

アフリカのICT普及率2010