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一歩先を見越したICT活用:WFPのmVAM

 

mVAM

Source: http://vam.wfp.org/sites/mvam_monitoring/#

ども、Tomonaritです。国連WFPが食糧不足などの状況をリサーチするためにとして携帯電話を使っているという話を聞いたので紹介します。

その名はMobile Vulnerability Analysis and Mapping (mVAM) 。上記の地図の青い国、約30カ国で使われている。仕組みとしては、音声通話とSMSを使って簡単な質問(商人に対して食糧の価格を質問したり、一般家庭に対して食糧確保や栄養状況など)をして、得た回答をデータベースにまとまるというもの。mVAMの仕組みを紹介する動画がYouTubeにあがっているけど、以下の動画(レソトの例)がとても現場感があって分かりやすい。「なんか凄いイノベーディブな取り組みなのか!?」と期待して動画を見ると、超地味に電話オベレーターが質問をしている感じに拍子抜けする。

この動画を見ても一体、どういう情報をとって、どいうアウトプットになるのかというイメージがわかない。でも、一例としてマラウイのレポートナイジェリアのレポートを見てみたら、とてもイメージがわいた。例えば、ナイジェリアでは食糧価格の動きを調査するために、特定の州の商人を対象に電話調査を行った話が書いてある。まず、2016年6〜7月に490名の商人に電話をかけて食糧価格を聞き取り、次に2016年12月に同じ商人(490名中416名)に再度電話をかけて食糧価格を聞き取り、再度、そのうちの378名にインタビューを実施している。結構、泥臭い作業だけども、思いのほか同じ商人にリーチ出来ている(378名/490=77%)のは凄いもんだ。日本と違って住所とかちゃんとしてないだろうに。

最初にどうやって電話番号を取得しているのか?という点については、商人についてはFace to Faceの調査で得た情報、一般家庭については携帯電話会社から得た情報を使っている。携帯電話のSIMカードを買う時に氏名や住所を登録しているので、ターゲットにしている地域の住民の番号はある程度取れるのだろう。勿論、SIMカードが転売されたり友達に使われたりということがあるので、登録情報が正しくないとこもあるが、おそらく携帯電話の位置情報でどこからのコールかは分るので、対象地域意外からの不要な回答は除外出来るのだろう。

電話を受けた人が質問に回答するインセンティブは?という点については、回答者には小額の謝金(50セント位)を払うケースもあるという。これは携帯電話の通話クレジットとして供与される仕組みだ。金を貰えるなら質問に答える気にもなる。

正直、自分の第一印象は「イノベーションって言うよりはテレアポ的な泥臭い手法だなぁ」というものだったが、「いやいや、ちょっと違うぞ」とすぐ思い直した。これまでは民間のコールセンター等を使ってオベレーターが電話をしているが、近い将来AIチャットボットを使って人じゃなくてコンピュータが電話調査をしてくれるようになる。そして収集したデータの分析もAIの力を借りてより簡単に出来るようになる。これは凄く簡単且つチープに調査が出来るようになるということ。そう考えると、現時点で人が電話調査を行い、ターゲット地域の人達に「電話調査ってこういうもんがあるのね」ということを認識させ、慣れさせておくことの意味はとても大きい。

mVAMの効果を考えると、「食糧不足とか栄養失調とかで困っている人達が住んでいるようなエリアには、携帯電話ネットワーク網が行き届いてないのでは?」とか「そういう人達って、そもそも携帯持ってないのでは?」というツッコミはある。しかしながら、mVANの効果は、現時点での利便性どうこうで善し悪しを判断するのではなく、今はいわばユーザへの啓発活動とも言える(電話調査ってもんを理解してもらう)準備期間なんじゃないか、と思った。

Uberによってタクシー運転手とのコミュニケーションは不要になり、Uberは無人タクシー導入の下地を作っていると言われる。同様に、今後のICT4Dは、課題解決のために今有るテクノロジーでどう対処するか?ということを考えるだけでなく、一歩先の将来により一層の効果を発揮出来るにはどう対処するか?ということも同時に考える必要があるのだと思ったのでした。

ICT4D分野は、この先10年位が一番面白いかも

先週、「大企業のBOPビジネス卒業式~BOPビジネスの幻想とSDGsへのバトン~」という勉強会に参加しました。インドで苺栽培に取り組むNEC、マラリア予防の蚊帳(オリセットネット)を展開する住友化学、インドでビジネス創出のプラットフォーム構築に取り組むリコー、クロスフィールドの留職プログラムも使いつつ途上国でのビジネスに取り組むパナソニック、といった大企業の方々が、「BOPビジネスに取り組んだ結果、どうだったの?ホントに儲かってんの・・・?」という疑問に答えてくれるような内容でした。

この疑問に対する答えは、「やっぱり儲かんない」という感じのもの。オリセットネットはドナーが大量購入しておりちゃんと儲かっている点ではビジネスとしては成功。でも、途上国の貧困層をターゲットとしたB to CのBOPビジネスとしては、やはり成功とまでは言えない感じ。他の3社については、大企業が取り組むビジネスとして採算が取れるレベルでは儲かっていないというのが実情。残念だけど、これが現実、という点は納得感がある。

グループディスカッションの場もあり、他の参加者の方々とも色々と意見交換することが出来た。その中で、「やっぱBOPビジネスは儲からない」、「CSRとして企業イメージアップのためにやるのが限界」、「現地を知らず、コストの高い日本人が汗かいてやるより、現地企業を買収したほうが早い」、といった意見も。残念だけど、いずれも納得感がある。

それでも、バングラデシュのグラミンフォンとかケニアのM-PESAとか、数少ないサクセスストーリーの響きは良く、この分野に興味・期待を持っている人は少なくないと思う。実際、この勉強会は参加費が2000円だったものの、100名位が参加していた。

正月早々の日経新聞に途上国ビジネスの特集が掲載されていた。その記事ではケニアのM-PESAの利用者は3千万人を超えたが、一方、世界で金融サービスを利用出来ない成人は20億人。同様に安全な水にアクセス出来ない人は21億人、清潔なトイレにアクセス出来ない人は45億人、ネットを使えない人は40億人など、まだまだ満たされないニーズは山ほどあるというような事が書かれていた。さらに、シンガポールの大手商社オラム・インターナショナル社がガボンの農園でドローンを飛ばし、農作物の育成状況を監視し、ビッグデータを使って肥料散布のアドバイスをするサービスを展開している事例などが紹介されていた。

今、SDGsの背景からも途上国ビジネスへの注目が高まっているが、これだけ途上国ビジネスが注目を浴びている背景には、やはりテクノロジーの発達が大きいと思う。以前からニーズはあったもののビジネスを展開出来る術がほとんとなかった状況が、今はテクノロジーのお陰で「出来るかも?」というふうに変わっている。そして今後さらにテクノロジーの発展により社会が大きく変わって今は想像出来ないサービスが生まれるので、「イノベーションが起きれば実現可能!」と期待感も高まる。最近、やたらめったら耳にするイノベーションって言葉には違和感(そんな誰でも起こせないからイノベーションなのに、とても普通に使われている感が否めない)を感じるものの、「ニーズ・課題が沢山あって、それを解決出来そうなツールもある」という今の時代に生きているというのは結構恵まれていると思う。

最近、「現代の魔法使い」落合陽一氏の「これから世界をつくる仲間たちへ」という本を読んだら、以下のようなくだりがあった。

“たぶん、2030年代ぐらいの近未来の若者たちは、2010年代という過去を羨ましがるに違いありません。『20年前は、まだコンピュータで解決されていない問題があったらいいよなぁ』というわけです。”

こんなふうに思うと、「BOPビジネスは儲かんない」とか、このブログでも良く取り上げるように「ICT4Dプロジェクトは失敗に終わる…」と悲観的にならずに、諦めずにテクノロジーを駆使して成功させる道筋を考えられるのは今だけのような気もしてくる。

冒頭の勉強会でオリセットネットについてプレゼンをした住友化学の山口くん(←自分のエチオピアの青年海外協力隊の追後輩でもある)が、「今後はどうしたらマラリアを撲滅させる事が出来るかAIを活用して対策を考えるようなこともトライしたい」と言っていた。確かにそういう使い方もあるなぁ、AI。ICT4D分野は、この先10年位が一番面白いかも。時代の流れに取り残されないようにせねば・・・!

ちなみに、この話題にあまり関係ないけど、冒頭の写真はエチオピアの首都アディスアベバで行われている、タブレットを利用した人工知能プロジェクト「ヤネト(YaNetu)」。多分、YaNetuはアムハラ語で「私と一緒に」という意味かな。下の動画に出て来るアバターの先生の顔、ちょっと怖い(笑)

今更ガラケーは売れないんじゃないか?

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11月18日の日経新聞に、「パナソニック、アフリカで「ガラケー」1月発売 知名度向上 スマホ普及へ布石」という記事があった。アフリカで低所得層をターゲットに1500〜2000円でガラケーを売るという。「家電のブランド力で新興国メーカーに先行して市場を押さえる」という狙いらしい。最初にこのニュースを見て、正直、ずれていると思った。

既に新興国メーカーが遥かに先行しているにも関わらず、今更感ありありだ。どういうガラケーなのかは分らないが、本当に普通のガラケーじゃ、低所得層も食いつかないと思う。以前の投稿で、ガーナではガラケーのことを「ヤム(やむいものこと)」と呼んでいる事を書いた。「ヤムを捨てて、スマホに変えよう!」という看板が町に立つくらいだ(上記のような看板です)。勿論、田舎ではスマホを持てる人は非常に限られているけど、1500〜2000円でガラケーを買うなら、5000円出して中古のスマホを買いたいというのが消費者の思いじゃなかろうか。

ちょうど、DMMの面白いニュースを見た。「DMMがあの「CASH」を70億円で買収するワケ」という東洋経済の記事だ。DMMが「CASH」という中古品買い取りを行うサービス(ユーザに負担をかけずに、商品の写真等を送れば、その場で即買い取りしてくれるサービス)を展開するバンクというスタートアップを70億円もの金額で買収したという内容。詳しくはリンクの記事を見てもらいたいが、このCASHというサービス、あまりにユーザがバンバンものを売るために買い取り資金がショートし、そこにDMMが買収を持ちかけたという。DMMがDMM.Africaとしてアフリカビジネスに積極的に出て行っているのは、ご存知のとおり。この記事で一番面白かったのは、「(DMM社長の)亀山さんは「CASHで買い取ったスマホをアフリカで売るぞ~」と張り切っています。」という一文。パナソニックとのアプローチの違いが鮮明過ぎる。

低所得層が今更ガラケーを購入するのは、ある意味興味深い実験的取り組みだと思うが、せめて、機能はガラケーでも外見はスマホに見えるような、そんな工夫をしないと売れないんじゃなかろうか。もう10年近く前に、インドでは「外側はスマホ、中身はガラケー」という携帯が町の電気屋で売られていた。やっぱり、カッコいいから携帯はここまで普及したと考えると、ふた昔前のノキアのガラケー的なのじゃ売れないと思う(ノキアのやつは懐中電灯機能が付いており、それはそれでとても便利だったが・・・)。

ホームページ→ブログ→SNS→動画→アプリ?

以前の投稿「ゲーム for Development」で紹介したFun Fun Farmingというアプリの紹介が動画に。このゲームを通じて、SHEP (Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion)という農業分野での支援アプローチを学ぶことが出来る。SHEPのアプローチは、市場で売って儲かる農作物を作りましょう(「作ってから売る」じゃなく「売るために作る」)というもの。ゲーム内で、農作物を作って、売って、利益を出して、その利益で農耕機械を購入して…、といった一連のプロセスを体験出来る。JICAのプロジェクトにしてはなかなか斬新な試みで、このゲームを研修等でも活用している。

これまで情報発信といえば、一昔前はホームページ、その後はブログやSNS、ツイッター、その次は動画、といったツールで発信するものだったけど、アプリ開発のハードルが下がってきたことを考えると、今後はアプリを作って情報発信するという方法が一般化する可能性を感じる。2000年頃かな、好きな人達はホームページビルダーで自分のホームページを作っていたけど、あんな感じで誰でもアプリを開発するようになるのかと。

そういえば最近、若宮正子さんという方の記事を見た。なんと80歳を過ぎてからプログラミングを勉強しiPhoneアプリ(雛人形をひな壇に正確に配置するゲーム)を開発。その功績が認められ、Appleがサンノゼで開催している開発者イベントWWDCに「サプライズスペシャルゲスト」として招待されたそうな。凄いな。

日本語だとBuzzFeedNewsというサイトに詳しく書いてある。下の動画は2014年のTEDx Tokyoでのもの。60歳からパソコンを始め、こんな風になれる人がいるんだなぁ、と尊敬。

誰でも簡単にICTを使いこなせる時代になって来ているが、まだまだ途上国と先進国の差は大きい。App Annieの調べによると、2015年に世界で売れたアプリTOP52のうち、日本・中国・韓国の企業が28社を占めており、その他は米国やヨーロッパで、いわゆる途上国の会社は入っていない。あれだけ人口の多いインドの会社もない。

FacebookやYouTubeの途上国ユーザどんどん拡大し、さらにそれを使いこなしているのを見ると、途上国発のアプリを先進国の人達が使うような時代は、そう遠くはないのかと思う。

携帯電話のビックデータ解析から貧困や裕福さが予測可能??

こんにちは、Kanotです。特定の国や地域の経済状況を知る手段として、国勢調査がありますよね。こういった調査が国民の経済状況を理解するのに重要なのはわかるものの、膨大な資金と時間とマネジメント能力がないとできません。そして途上国の場合などは、こういった調査をする土台が整ってないことも多く、例えばアンゴラの例だと最新(2014年)の前の国勢調査は1970年で、その間だけで人口が4倍になっていた、など国勢調査が現状を表していないケースも多い状況です。

その一方で、今や途上国においても携帯電話は一人一台の時代に近づきつつあり、この携帯電話の使い方についてのビッグ・データを解析することで、その人の行動や経済状況って予測できるのでは???という疑問を検証した論文があります。

Science誌に掲載されたBlumenstock氏(U.C.Berkley)の「Predicting Poverty and Wealth from Mobile Phone Metadata」という論文です。Blumenstock氏はICT4Dの経済学的アプローチ究で有名な研究者です。

この論文では、ルワンダの、(1) 携帯電話のビッグデータ(使用履歴・行動履歴)、(2) 国勢調査の結果、(3) 電話インタビューで得た経済状況に関する情報から、どの程度携帯電話のデータだけで経済状況が予想可能かを調べています。

結果としては携帯電話のデータと経済状況には高い相関関係が得られていて、こういったデータを活用することでより早く・正しい推測が可能になるのではとしています。特に効果的なのが時間・資金面の問題で、通常の国勢調査だと途上国でも1億円以上、そして1年以上かかるものが、このビッグデータ解析だと150万円程度、4週間で終わるとしています。

この研究では、通話やメールを中心に調べていますが、FacebookなどのSNSやGoogleなどの検索サイトもかなり行動履歴を持っているはずなので、今後様々なことがこういったデータから予測できる日が近づいてきている(すでになっている?)のかもしれません。

ちなみに、ここで私が面白いなと思うのは、テクノロジーを使って国勢調査を簡単にしましょうという手段の代替ではなく、一見関係ないデータ(携帯電話の使用パターン)から経済状況を推測しようとしている点です。つまり、相関関係から推定する、というやつですが、ビッグデータの可能性を感じるいい機会になりました。

最近読んだ藤原和博さんの本「10年後、君に仕事はあるのか?」でも、これからの若者は人生の半分をネットの世界で過ごすことになると言っているように、もしかすると実生活よりもモバイルやネットでの行動パターンを分析した方がより正確な情報が得られる時代がもうすぐそこに来ているのかもしれません。

m-Agriculture成功の鍵は、どれだけ人が介在出来るか?

先日、ガーナのグラミン・ファンデーションが実施しているm-Agricultureプロジェクトの話を聞く機会があった。実際にプロジェクトを担当している方からの話が非常に興味深いものだったので紹介したい。

Achieving Impact at Scale through ICT-Enabled Extension Services (AIS) projectという名前のついたプロジェクトの話。グラミン・ファンデーションの他、カナダのIDRC、インド発祥のDigital Green、Farm Radio Internationalが連携して実施している。

携帯電話を使った農民支援というとパッと思いつくのが、農作物の市場価格や天気予報といった情報をテキスト等で農民に提供することで、農民が仲買人に作物を買い叩かれないようになったり、天候によるリスクを軽減出来たりというメリットがある、という話だ。しかしながら、今回聞いた話は、そういう取り組みと一味違った内容で面白かった。

グラミン・ファンデーションがいわゆる農業情報配信システムを開発し、市場価格や天気予報などの情報を配信するという点は同じ。ただし、単純に農民に情報を配信するのではない。

農民から農作物を買い付ける仲買人(Agent)に対して、プロジェクトから情報配信用のアプリが入ったデバイス(スマホ、タブレット)を提供し、仲買人が農民に対して情報をセレクトして配信する仕組み。仲買人は最初に各農民と面談し、農民の情報(氏名や性別等の基本情報、育てている作物、農業スキル、欲しい情報、等)を聞き取りシステムに登録する。仲買人は定期的に各農家を訪問しアドバイスを提供することが義務付けられ、訪問時には写真を取ったりメモを取ったりして、その情報はデバイスを通じて、サーバーにアップされる。各シーズンにいつ頃、誰を訪問するべきか?というタイミング(種まきの前とか、収穫の前とか)はアプリで知ることが出来る。アプリには、登録された農民情報から農民をグルーピングして「米を作ってる農家」、「メイズを作ってる農家」、のように作物で分類したり、「経験抱負な農家」、「経験が浅い農家」のようにスキルで分類したりする機能があり、仲買人は配信される情報の内容を見て、それが必要なグループに配信する。沢山の情報を一斉に全員に配信するのではなく、各農家に合った情報を提供する。アプリの言語は英語のみだが、農民の中には英語が出来ない人もいる。その場合は、仲買人は定期訪問時に現地語でアドバイスしたり、ポータブルのプロジェクターで動画を見せて説明したりする。

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農家→仲買人→大手バイヤーの全体にメリットを提供出来る仕組み作りが上手い!

 

仲買人は50件の農家を管理しており、このプロジェクトではガーナ中で約200名の仲買人を対象としている。つまり、200×50=10,000ということで、一万件の農家を支援しているわけだ。当初は仲買人は100件の農家を管理する想定だったそうだが、実際にやってみると定期訪問が大変で数を50に変更したとのこと。

「どうやって対象とする仲買人を選んでいるのか?」と聞いたところ、仲買人を選ぶのではなく、複数の仲買人から作物を買い取る大手バイヤーのなかから農民への一定の支援に協力的なバイヤーを選び、その下にいる仲買人が対象になっているということだった。農民が作る作物の質・量が向上することは、大手バイヤーにとってもメリットであり、また、大手バイヤーは肥料販売やトラクターのレンタルなどもやっているケースが多く、そいうサービス業の繁盛にも繋がる。仲買人にとっても農民が作る作物の質・量が向上することは、安定した買い付けが出来る点でメリットがある。より安くて質の高い作物を探して遠方まで買い付けに行くコストよりも、地元の農民を支援してニーズにあった作物を育てさせる方が効率的である。つまりAISプロジェクトは、農民だけを直接支援しているというよりも、「農民→仲買人→大手バイヤー」という農作物の買い取りシステム全体を支援しているような印象。

アイデアとして「質の良い作物を大量に買い取りたい」という大手バイヤーを巻き込んだところが、秀逸だと感じた。政府系の農業普及指導員を巻き込んでこのような取り組みをしても、農民のスキルは向上したとしても最終的に質・量が改善した作物を「誰が買い取ってくれるのか?」という出口が不明瞭だ。一方、このプロジェクトでは最初にその出口を確保し、そこから支援の対象となる農民が選ばれている。農民のセレクションではなく大手バイヤーのセレクションからという逆のアプローチは秀逸だ。さらに、政府系の農業普及指導員よりも、仲買人の方が利害関係から「農民に良い作物を作らせる」という目的に対してモチベーションが明確である。

また、プロジェクトは農民への直接的なトレーニング等は行わず、仲買人に対してのみ各種トレーニングを提供している。ダイレクトに農民に情報配信をするのではなく、農民と仲買人という既存の関係性の上に情報配信をプラスするという方法をとっている点や、情報配信をするだけでなく実際はフFace to Faceで仲買人が農民に現地語でアドバイスをしたり定期訪問したりする点は、「ICTはあくまでツール。ICTそのものがソリューションではない。」ということを具現化したようなプロジェクトだ。いくつかm-Agricultureプロジェクトの事例を見ると、やはり「どれだけ人が農民とICTの間に介在出来るか?」が成功・失敗の分かれ目になっている。ちなみに、ガーナのグラミン・ファンデーションには、何度かこのブログでも紹介した外山健太郎氏が活動していたインドのマイクロソフト・リサーチで働いたいたガーナ人がいました。そういう繋がりから、Digital Greenとも連携しているのかもと憶測。

気になるのは、この農業情報配信システムの利用料金を「誰が払うか?」だ。現時点ではIDRCの援助で成り立っているため、誰からも利用料金は取っていないとのこと。この援助がストップしたときの持続性はどうなのか?

この質問については、いつくかの案があるということだった。例えば、農民は現金を払うことに付いて非常に抵抗感が強いため、仲買人が作物を買い取るときに、作物の量を増やす等の方法でモノで払い(使用料金をさっぴいた買い取り価格にする方法も)、仲買人が現金で使用料金を支払うという方法が考えられる。また、別の案としては、最終的に質の良い作物を手にする大手バイヤーが使用料金を肩代わりする方法も。さらに、このプロジェクトは携帯電話での情報配信だけでなく、ラジオでの情報配信も行っていることから、トラクター貸し出し業や肥料販売などをしている会社(大手バイヤーと被ることもある)の宣伝をラジオに載っけて、その広告料でシステムの利用料金を賄うといった方法もありえる。

持続性については今後も色々と考えて行くという話だったが、上記の案はいずれも悪くないように感じた。ただ、これが援助でなくビジネスとして成り立つ場合、仲買人は自分が管理する農民をよりシビアにセレクトすることになる。例えば、肥沃な農地を持っている農民や一定のスキルのある農民を対象にした方が良いに決まっている。言い換えると、より恵まれない環境にある農民は、この仕組みに入れずに、お隣さんがより質の高い作物を作っているのを羨ましそうに見て、より格差が広がる…ということに。このプロジェクトでは、そういうことを避けるためにラジオを通じた情報提供を分け隔てなく行ったり、仲買人が農民をセレクトする際にバランスのとれたセレクションをするようにしているとのことだが、援助がビジネスに切り替わると、弱肉強食の世界にならざるを得ないだろう。まぁ、この手の話はまた別の機会に書きたいと思います。

今回、グラミン・ファンデーションの方から話を聞いて、人を支援するという視点ではなく、システム全体にメリットのある支援を考える視点の重要性を強く感じた。いやはや、とても勉強になりました。

最後に、Achieving Impact at Scale through ICT-Enabled Extension Services (AIS) projectの紹介がされているWebを見ると、もっと色々な情報が掲載されており、一部上記の話とも違う点(例えば、プロジェクトが対象としている仲買人は200ではなく220との記載)もありますが、生で聞いた話を元に上記は記載してみました。

遊びでスマホを使うことの開発効果って??

こんにちは、Kanotです。みなさんデジタルデバイス(スマホ・タブレット等)は普段使ってますか?ほとんどの方は使ってますよね?

では、そのデバイスを勉強など自己研鑽や生活の質改善のために使ってますか?多分大半の方は何かしらそういった目的でも使ってます・・・・・よね?

では、その自己研鑽等に使ってる時間って使用時間のうち何パーセント程度でしょうか?

この回答はおそらくみなさんせいぜい10-20%程度、どんなに高くても50%程度ではないでしょうか?つまり、何が言いたいかというと、デジタルデバイスに費やしている時間のうち、半分以上は遊びなどの目的(ネットサーフィン、SNS情報発信、メッセージ、Youtubeなど)で使われているということです。

では、世の中の「携帯電話が途上国開発に貢献!」の類で取り上げられるテーマというのは何でしょうか?保健情報提供、送金サービス、学習アプリ、、、、等々。いずれも遊び目的以外のものについてです。

もちろんこういったテーマの効果を測ったりすることが大事ではあるのですが、50%を越える時間を費やしている「遊び目的」のデジタルデバイス使用が人間形成や開発に与える影響、ってこれまであまり考えられてきていないのでは??

こういった問題提起をした論文があります。オランダErasmus大学のArora氏とMicrosoft Research IndiaのRangaswamy氏の2013年の論文「Digital leisure for development: reframing new media practice in the global South」です。

内容はまさに上記の問題を指摘していて、デジタルデバイスが開発に与える影響って、真面目な使い方(教育・保健)などより遊び目的の使い方(Facebook, Youtube等)の方が圧倒的に費やす時間が多いため、実はこちらの方が大きいのではないか。なのに、その遊び目的の使い方は研究対象などにこれまでされてこなかった。もっと研究すべきだ。といった内容です。

個人的に「うーむ、確かに・・・」と考えさせられました。確かにこれまで見過ごされてきた視点ではという指摘はその通りと思います。デジタルデバイスの開発への影響という点では、特定アプリ・特定サービスの効果だけではなく、もっと広い視点を持たねば、と反省させられた論文でしたので、紹介させていただきました。