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携帯電話のビックデータ解析から貧困や裕福さが予測可能??

こんにちは、Kanotです。特定の国や地域の経済状況を知る手段として、国勢調査がありますよね。こういった調査が国民の経済状況を理解するのに重要なのはわかるものの、膨大な資金と時間とマネジメント能力がないとできません。そして途上国の場合などは、こういった調査をする土台が整ってないことも多く、例えばアンゴラの例だと最新(2014年)の前の国勢調査は1970年で、その間だけで人口が4倍になっていた、など国勢調査が現状を表していないケースも多い状況です。

その一方で、今や途上国においても携帯電話は一人一台の時代に近づきつつあり、この携帯電話の使い方についてのビッグ・データを解析することで、その人の行動や経済状況って予測できるのでは???という疑問を検証した論文があります。

Science誌に掲載されたBlumenstock氏(U.C.Berkley)の「Predicting Poverty and Wealth from Mobile Phone Metadata」という論文です。Blumenstock氏はICT4Dの経済学的アプローチ究で有名な研究者です。

この論文では、ルワンダの、(1) 携帯電話のビッグデータ(使用履歴・行動履歴)、(2) 国勢調査の結果、(3) 電話インタビューで得た経済状況に関する情報から、どの程度携帯電話のデータだけで経済状況が予想可能かを調べています。

結果としては携帯電話のデータと経済状況には高い相関関係が得られていて、こういったデータを活用することでより早く・正しい推測が可能になるのではとしています。特に効果的なのが時間・資金面の問題で、通常の国勢調査だと途上国でも1億円以上、そして1年以上かかるものが、このビッグデータ解析だと150万円程度、4週間で終わるとしています。

この研究では、通話やメールを中心に調べていますが、FacebookなどのSNSやGoogleなどの検索サイトもかなり行動履歴を持っているはずなので、今後様々なことがこういったデータから予測できる日が近づいてきている(すでになっている?)のかもしれません。

ちなみに、ここで私が面白いなと思うのは、テクノロジーを使って国勢調査を簡単にしましょうという手段の代替ではなく、一見関係ないデータ(携帯電話の使用パターン)から経済状況を推測しようとしている点です。つまり、相関関係から推定する、というやつですが、ビッグデータの可能性を感じるいい機会になりました。

最近読んだ藤原和博さんの本「10年後、君に仕事はあるのか?」でも、これからの若者は人生の半分をネットの世界で過ごすことになると言っているように、もしかすると実生活よりもモバイルやネットでの行動パターンを分析した方がより正確な情報が得られる時代がもうすぐそこに来ているのかもしれません。

m-Agriculture成功の鍵は、どれだけ人が介在出来るか?

先日、ガーナのグラミン・ファンデーションが実施しているm-Agricultureプロジェクトの話を聞く機会があった。実際にプロジェクトを担当している方からの話が非常に興味深いものだったので紹介したい。

Achieving Impact at Scale through ICT-Enabled Extension Services (AIS) projectという名前のついたプロジェクトの話。グラミン・ファンデーションの他、カナダのIDRC、インド発祥のDigital Green、Farm Radio Internationalが連携して実施している。

携帯電話を使った農民支援というとパッと思いつくのが、農作物の市場価格や天気予報といった情報をテキスト等で農民に提供することで、農民が仲買人に作物を買い叩かれないようになったり、天候によるリスクを軽減出来たりというメリットがある、という話だ。しかしながら、今回聞いた話は、そういう取り組みと一味違った内容で面白かった。

グラミン・ファンデーションがいわゆる農業情報配信システムを開発し、市場価格や天気予報などの情報を配信するという点は同じ。ただし、単純に農民に情報を配信するのではない。

農民から農作物を買い付ける仲買人(Agent)に対して、プロジェクトから情報配信用のアプリが入ったデバイス(スマホ、タブレット)を提供し、仲買人が農民に対して情報をセレクトして配信する仕組み。仲買人は最初に各農民と面談し、農民の情報(氏名や性別等の基本情報、育てている作物、農業スキル、欲しい情報、等)を聞き取りシステムに登録する。仲買人は定期的に各農家を訪問しアドバイスを提供することが義務付けられ、訪問時には写真を取ったりメモを取ったりして、その情報はデバイスを通じて、サーバーにアップされる。各シーズンにいつ頃、誰を訪問するべきか?というタイミング(種まきの前とか、収穫の前とか)はアプリで知ることが出来る。アプリには、登録された農民情報から農民をグルーピングして「米を作ってる農家」、「メイズを作ってる農家」、のように作物で分類したり、「経験抱負な農家」、「経験が浅い農家」のようにスキルで分類したりする機能があり、仲買人は配信される情報の内容を見て、それが必要なグループに配信する。沢山の情報を一斉に全員に配信するのではなく、各農家に合った情報を提供する。アプリの言語は英語のみだが、農民の中には英語が出来ない人もいる。その場合は、仲買人は定期訪問時に現地語でアドバイスしたり、ポータブルのプロジェクターで動画を見せて説明したりする。

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農家→仲買人→大手バイヤーの全体にメリットを提供出来る仕組み作りが上手い!

 

仲買人は50件の農家を管理しており、このプロジェクトではガーナ中で約200名の仲買人を対象としている。つまり、200×50=10,000ということで、一万件の農家を支援しているわけだ。当初は仲買人は100件の農家を管理する想定だったそうだが、実際にやってみると定期訪問が大変で数を50に変更したとのこと。

「どうやって対象とする仲買人を選んでいるのか?」と聞いたところ、仲買人を選ぶのではなく、複数の仲買人から作物を買い取る大手バイヤーのなかから農民への一定の支援に協力的なバイヤーを選び、その下にいる仲買人が対象になっているということだった。農民が作る作物の質・量が向上することは、大手バイヤーにとってもメリットであり、また、大手バイヤーは肥料販売やトラクターのレンタルなどもやっているケースが多く、そいうサービス業の繁盛にも繋がる。仲買人にとっても農民が作る作物の質・量が向上することは、安定した買い付けが出来る点でメリットがある。より安くて質の高い作物を探して遠方まで買い付けに行くコストよりも、地元の農民を支援してニーズにあった作物を育てさせる方が効率的である。つまりAISプロジェクトは、農民だけを直接支援しているというよりも、「農民→仲買人→大手バイヤー」という農作物の買い取りシステム全体を支援しているような印象。

アイデアとして「質の良い作物を大量に買い取りたい」という大手バイヤーを巻き込んだところが、秀逸だと感じた。政府系の農業普及指導員を巻き込んでこのような取り組みをしても、農民のスキルは向上したとしても最終的に質・量が改善した作物を「誰が買い取ってくれるのか?」という出口が不明瞭だ。一方、このプロジェクトでは最初にその出口を確保し、そこから支援の対象となる農民が選ばれている。農民のセレクションではなく大手バイヤーのセレクションからという逆のアプローチは秀逸だ。さらに、政府系の農業普及指導員よりも、仲買人の方が利害関係から「農民に良い作物を作らせる」という目的に対してモチベーションが明確である。

また、プロジェクトは農民への直接的なトレーニング等は行わず、仲買人に対してのみ各種トレーニングを提供している。ダイレクトに農民に情報配信をするのではなく、農民と仲買人という既存の関係性の上に情報配信をプラスするという方法をとっている点や、情報配信をするだけでなく実際はフFace to Faceで仲買人が農民に現地語でアドバイスをしたり定期訪問したりする点は、「ICTはあくまでツール。ICTそのものがソリューションではない。」ということを具現化したようなプロジェクトだ。いくつかm-Agricultureプロジェクトの事例を見ると、やはり「どれだけ人が農民とICTの間に介在出来るか?」が成功・失敗の分かれ目になっている。ちなみに、ガーナのグラミン・ファンデーションには、何度かこのブログでも紹介した外山健太郎氏が活動していたインドのマイクロソフト・リサーチで働いたいたガーナ人がいました。そういう繋がりから、Digital Greenとも連携しているのかもと憶測。

気になるのは、この農業情報配信システムの利用料金を「誰が払うか?」だ。現時点ではIDRCの援助で成り立っているため、誰からも利用料金は取っていないとのこと。この援助がストップしたときの持続性はどうなのか?

この質問については、いつくかの案があるということだった。例えば、農民は現金を払うことに付いて非常に抵抗感が強いため、仲買人が作物を買い取るときに、作物の量を増やす等の方法でモノで払い(使用料金をさっぴいた買い取り価格にする方法も)、仲買人が現金で使用料金を支払うという方法が考えられる。また、別の案としては、最終的に質の良い作物を手にする大手バイヤーが使用料金を肩代わりする方法も。さらに、このプロジェクトは携帯電話での情報配信だけでなく、ラジオでの情報配信も行っていることから、トラクター貸し出し業や肥料販売などをしている会社(大手バイヤーと被ることもある)の宣伝をラジオに載っけて、その広告料でシステムの利用料金を賄うといった方法もありえる。

持続性については今後も色々と考えて行くという話だったが、上記の案はいずれも悪くないように感じた。ただ、これが援助でなくビジネスとして成り立つ場合、仲買人は自分が管理する農民をよりシビアにセレクトすることになる。例えば、肥沃な農地を持っている農民や一定のスキルのある農民を対象にした方が良いに決まっている。言い換えると、より恵まれない環境にある農民は、この仕組みに入れずに、お隣さんがより質の高い作物を作っているのを羨ましそうに見て、より格差が広がる…ということに。このプロジェクトでは、そういうことを避けるためにラジオを通じた情報提供を分け隔てなく行ったり、仲買人が農民をセレクトする際にバランスのとれたセレクションをするようにしているとのことだが、援助がビジネスに切り替わると、弱肉強食の世界にならざるを得ないだろう。まぁ、この手の話はまた別の機会に書きたいと思います。

今回、グラミン・ファンデーションの方から話を聞いて、人を支援するという視点ではなく、システム全体にメリットのある支援を考える視点の重要性を強く感じた。いやはや、とても勉強になりました。

最後に、Achieving Impact at Scale through ICT-Enabled Extension Services (AIS) projectの紹介がされているWebを見ると、もっと色々な情報が掲載されており、一部上記の話とも違う点(例えば、プロジェクトが対象としている仲買人は200ではなく220との記載)もありますが、生で聞いた話を元に上記は記載してみました。

遊びでスマホを使うことの開発効果って??

こんにちは、Kanotです。みなさんデジタルデバイス(スマホ・タブレット等)は普段使ってますか?ほとんどの方は使ってますよね?

では、そのデバイスを勉強など自己研鑽や生活の質改善のために使ってますか?多分大半の方は何かしらそういった目的でも使ってます・・・・・よね?

では、その自己研鑽等に使ってる時間って使用時間のうち何パーセント程度でしょうか?

この回答はおそらくみなさんせいぜい10-20%程度、どんなに高くても50%程度ではないでしょうか?つまり、何が言いたいかというと、デジタルデバイスに費やしている時間のうち、半分以上は遊びなどの目的(ネットサーフィン、SNS情報発信、メッセージ、Youtubeなど)で使われているということです。

では、世の中の「携帯電話が途上国開発に貢献!」の類で取り上げられるテーマというのは何でしょうか?保健情報提供、送金サービス、学習アプリ、、、、等々。いずれも遊び目的以外のものについてです。

もちろんこういったテーマの効果を測ったりすることが大事ではあるのですが、50%を越える時間を費やしている「遊び目的」のデジタルデバイス使用が人間形成や開発に与える影響、ってこれまであまり考えられてきていないのでは??

こういった問題提起をした論文があります。オランダErasmus大学のArora氏とMicrosoft Research IndiaのRangaswamy氏の2013年の論文「Digital leisure for development: reframing new media practice in the global South」です。

内容はまさに上記の問題を指摘していて、デジタルデバイスが開発に与える影響って、真面目な使い方(教育・保健)などより遊び目的の使い方(Facebook, Youtube等)の方が圧倒的に費やす時間が多いため、実はこちらの方が大きいのではないか。なのに、その遊び目的の使い方は研究対象などにこれまでされてこなかった。もっと研究すべきだ。といった内容です。

個人的に「うーむ、確かに・・・」と考えさせられました。確かにこれまで見過ごされてきた視点ではという指摘はその通りと思います。デジタルデバイスの開発への影響という点では、特定アプリ・特定サービスの効果だけではなく、もっと広い視点を持たねば、と反省させられた論文でしたので、紹介させていただきました。

携帯電話・SNS中毒に警告@ガーナ

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世界銀行のWorld Development Report 2016によると、サブサハラ・アフリカ地域の携帯電話普及率は73%と言われている。アフリカの中でも結構進んでいるガーナでは、携帯普及率が約128%まで伸びている。「ガーナで携帯どんな感じで使われているのか?」について、自分のガーナ生活もあとわずかとなってきたので、身近で感じる点を書いてみようかと。

まず、自分の職場を見てみるとガーナ人スタッフの多くはスマホユーザー。最新機種じゃないけど、iPhoneを使ってる人もいる。逆に職場から貸与されるガラケーをメインで使っているのは日本人のほうかも。そして仕事上の関係者とのやり取りでもガーナ人同士ではWhatsAppを有効活用している。確かに海外出張中でも国際電話をかけずにやり取り出来るし、電話番号とか名前とかを間違いなく伝えるには音声通話より確実だ。

町中の携帯電話会社の宣伝や看板には「ヤムを捨てて、スマホに換えよう!」というメッセージが書いてある(上記の画像はその一つでTigo社のもの)。「ヤム」というのは、ヤムイモのことでガーナではガラケーのことを”ダサい”という意味を込めて「ヤムPhone」と呼ぶのです(形状的に似てるという意味もある)。やっぱり国を超えてもイモはダサいというイメージなのか(笑)。ガーナでガラケーを使っている人は、ガーナ人に「俺、ヤムPhone使ってんだよね〜。スマホに買い換えたいなー」と言ってみましょう。うけるはずです。

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ヤムイモです

職場の同僚でない仕事で付き合いがあるガーナ人達も結構スマホを活用している。偉い人や重要なポジションの人ほどスマホを使っている気がする。打合せなどで席に着くと、テーブルの上に2〜3個のスマホをドサッと置く人もいる。初対面のとき、名刺交換後にスマホの名刺管理アプリで写真を撮ってさらに「ちょい、顔写真も取らせて」と言われ、その場で名刺と顔写真を登録し、「これで君からの電話はすぐわかる」と言われたことも。しかももう50歳後半の人に。スゲー使いこなしてんなぁ、と驚きました。

そしてミーティング中でも執務中でもちょいちょいスマホをいじっている輩が少なくない。SNSで友達とやりとりしているのか?それともミーティングのトピックや関連事項をGoogleで調べているのか?以前、職場でスマホにイヤホン繋いで聞いている同僚が居たので「何してんの?流石に勤務中に音楽聞いてちゃまずいでしょ?」と言ったら、「ミーティングを録音したのを聞いて議事録書いんだけど…何か?」との返事。おおっ、スイマセン…ってな感じのことも。意外なまでに使いこなしてんなぁ。

更に最近はUberの利用も広がって来た様子。そういえば、日本のように安心し一定のクオリティのサービス(料金も一律、マナーの悪い運転手もそんないない、車も奇麗だし)を受けられる国よりも、ぼられる心配があったり、マナーの悪い運転手が多かったり、ポンコツ車が多かったり…と安心して一定のクオリティのサービスを受けられない途上国の方がUberのようなサービスは浸透するという話を聞いた事がある。そういう意味ではガーナはハマるかも。携帯普及率も高いし。

ちなみに先日、Hello Food(JUMIA FOOD)というデリバリーサービスを使ってみた。スマホアプリをダウンロードして、アクラのレストランからピザ屋を選んで注文してみた。注文後、確認の電話がかかって来て、事前通知の時間どおりにピザが到着。注文時に「60分かかります」と出て来たのですが、流石にそこは途上国。日本のように「30分以内に届けます」とはいかないけど、事前にわかって注文するなら、まぁ許せる範囲。その後も何度か使ってますが悪くない。このサービスはレストランに注文して、それをバイク便で届けてくれるという単純なサービスながら、レストランにしてみるとデリバリー用のスタッフを雇う必要なくデリバリー注文を受けられるのでメリットが大きいのだろう。アクラの外人が使うようなレストランの多くが登録されている。そして、他の多くの国でも使われているサービスだ。

こんな風に携帯電話の利用はかなり浸透している。先日、ガーナの新聞に「Don’t be slaves to mobile phone, social media」という記事が。教員養成学校の卒業式スピーチで校長先生が、携帯電話、SNS中毒にならないように!と警告したという内容でした。学生の多くが携帯電話、SNSに多くの時間を費やしているのを問題視しての発言ということ。いやはや、日本の新聞にあるような記事がガーナの地元新聞にも出て来るとは。

UNDP人間開発報告書2015からのICT4Dトピックス(その2)

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前回の投稿に続いての「その2」です。

技術革新が仕事におよぼす影響について特に途上国の視点から、UNDP人間開発報告書の内容を拾っていきます。

まずは、技術革新(とくにICT)による大きな変化について。

  • 世界のフローにおいて知識集約型の財・サービスが中心を占めるようになり、資本集約型・労働集約型の財・サービスを上回るペースで増加している。現時点で前者は世界のフローの半分に達し、さらにその割合を増している。知識集約型財のフローは知識集約型財のそれの1.3倍のペースで増加している。(P101)
  • その結果として、財・サービスのデジタルなフローも増加している。実際、「アプリ経済」という言葉が示すように、今や多くの財が完全にバーチャル化している。(P101)
  • 調査研究によると、2013年時点で米国だけでもアプリ経済が75万人に何らかの形の仕事をもたらしていた。(P105)
  • 近年、知識が生産に対して中心的な意味を持つようになった。製造業でも組み込まれた知識によって最終製品の価値が決まる度合いが増している。例えば、スマホ最上位機種の価格は、部品と組み立てコストよりも高度な設計と技術に要したコストのほうが大きな部分を占めている。(P107)
  • 2012年の数字で知識集約型の財・サービス・金融の取引のほぼ半分において、その価値の大きな部分を研究・開発と熟練労働が占め、その価値はほぼ13兆米ドルに達している。そして、知識よりも労働力・資本・資源を集約した製品・サービスの割合が下がる一方で、知識集約型の製品・サービスの割合は着実に増している。(P107)

そして、デジタル化されたサービスの特徴について。カッコ内は自分の補足説明です。

  • (デジタル化されたサービスを一旦開発すると、その複製は極めて楽チンになるとう話)ローコスト、あるいはゼロコストでの複製は仕事の成果に対するアクセスを広げるが、新たな雇用はほとんど生み出さないかもしれない。(P105)
  • (新たな雇用を生み出さない例として)ツイッターの月間アクティブユーザー数は、2015年3月時点で3億200万人に達し、1日5億件のツイートを通じて情報やニュースが生成・拡散される一方で、ツイッター社の従業員数は、3900人にすぎる、その半数を技術者が占めている。(P105)
  • デジタル経済の第2の特徴として、人々が消費する財・サービスの一部は消費者自身によって生産される。つまり消費者が「プロシューマー(ProducerとConsumerの合成語)」になる。(P105)←これはWeb2.0とかICT4D2.0の話と同じ。
  • その最も直接的な事例が、7万3000人超えのボランティア執筆者を擁するウィキペディアだろう。無料オンライン百科事典のウィキペディアは、2012年に244年続いた活字出版の幕を閉じた「エンサイクロペディア・ブリタニカ」などの有料情報サービスと直接的に競合している。(P105)
  • いくつかの形で仕事のプロ化に逆転が起きている。(P106)

最後に最終的に仕事にどういう影響があるか?AIやロボットの能力が上がっていくと、それに取って変わられる職が沢山あるよね、という話。

  • これまでに多くの国が、利益率の低い労働集約型の製品から電子機器の組み立て、そして高度な製品や設計、管理への移行を果たしてきた。開発プロセスが遅れて始まった国々は、「早すぎる脱工業化」さらには、「無工業化」にも直面している。今や製造業が多数の職なき人々を吸収することはできない。(P108)
  • 新技術がもたらす真の影響は、低技能の労働者の需要減と高技能の労働者の需要増である。(そしてそれが)仕事の機会の二極化を引き起こす。中間部分ではオフィスと工場で多くの職が着実に空洞化していくことになる。(P116)

上記の指摘は、以前の投稿「IoT、ビッグデータ、AI、3Dプリンタ、ドローン、新たなテクノロジーは途上国を豊かにするのか?」でも記載したように、自分もまさに同じことを考えていたのですんなり頭に入って来た。特に、東南アジア諸国が発展したような、日本など先進国の工場を誘致して、雇用を生み出すとともに、そこで働く労働者がスキルアップして行き、スピンオフして起業したりしながら、国の産業レベルが上がって行く…といった開発モデルは、途上国の工場ロボットをIoTで先進国から遠隔監視する仕組みやAIの活用、データだけ送れば3Dプリンターで製品が出来てしまう…という技術革新によって、成り立たなくなりつつある。アフリカなどのこれからの国は、これまでの開発モデルに代わる新しい開発モデルを模索する必要があるのだろう。この報告書では、以下の点がそれに関連している。

  • デジタル・リテラシーの重要性が増している。(P108)
  • デジタル革命とグローバルなつながりを人間開発の向上へと導くためには、市場の機能だけでは不十分なはずである。このような機会をより良く活かすために、国レベルと世界レベルでの公共政策と施策が必要とされている。(P121)

上記が、この章のまとめになっているのですが、以下、「仕事の機会の二極化」に関連して、個人的に驚いた点も追加します。

  • 世界でも最も裕福な上位1%が世界の富全体に占める割合は、2009年の44%から2014年の48%へ増加し、さらに2016年に50%を超える見通しにある。(P119)
  • 例えば、米国のCEOの報酬と一般労働者の報酬の対比は、以下のとおり(P120)
    • 1965年   20:1
    • 1978年   30:1
    • 2000年 383:1
    • 2013年 296:1

この数字を見ると、「途上国支援の問題は、上位1%の人達でどーにかして下さい」と自分の仕事の意味に疑問を感じてもしまいますが、これが現実。テクノロジーの発展がこれに拍車を掛けるというなら、ますます途上国に課せられた課題は大きいものだと感じます。

ちなみに、

  • デジタル革命はあらゆる種類の革新を安く速く可能にしている。このことは、過去数十年間の特許登録件数の増え方に映し出されている。1970ー2012年の間に、米国特許庁に認められた特許の件数(米国と他の国の総計)はほぼ5倍に増加した。コンピュータとエレクトロニクス分野における革新がこの増加の中心を占めた。特許登録全体に占めるその割合は、1990ー2012年の間に25.6%から54.6%に増加した。(P110)
  • 2013年の特許登録件数の上位12カ国は、以下のとおり。(P110)
    • 1位:日本
    • 2位:米国
    • 3位:中国
    • 4位:韓国
    • 5位:ドイツ
    • 6位:フランス
    • 7位:ロシア
    • 8位:英国
    • 9位:イスラエル
    • 10位:インド
    • 11位:イラン
    • 12位:シンガポール

おおっ!日本が1位になってる!
と言うことで、日本がICT4D分野(←狭いプロジェクトという意味でなく、むしろ上記のような途上国が直面している課題に対する解決の支援の方で)で途上国支援をしていく意義って、結構あると改めて感じました。

UNDP人間開発報告書2015からのICT4Dトピックス(その1)

最近、UNDP人間開発報告書「人間開発のための仕事」(2015年度の日本語版)を読んだ。第3章の「変化する仕事環境」という章に、思いのほかICT関連のトピックスが含まれていて面白かったので、2回に分けて内容を紹介したい。今回はこの報告書に書かれていたICT4D関連の事例をいくつか紹介し、次回はICTが仕事環境に及ぼす影響的なトピックスを紹介したい。

「技術革新」とか「デジタル時代の仕事」といった副題のついた内容のなかから面白いと思った点を以下記載します。まずはどんだけICTが世界(特に途上国)にも普及しているのか?という点。

  • 世界の携帯電話加入契約者数は、70億件を超え23億人がスマホを利用し、32億人がインターネットに繋がれている。(P101)
  • サハラ以南アフリカでは、2013年時点で3億1100万人だった携帯電話の』利用者数が2020年には5億4000万人にまで増える見通し。(P102, GSMS2014から)
  • 国際通話におけるスカイプの割合は、2005年の5%未満から2013年には約40%まで増加した。(P102, マッキンゼー調査から)

次に、ICT(携帯電話)の効果についてのざっくりした事例。

  • インドでは、農家や漁師が携帯電話を使って天候情報、気象情報の入手、卸値の比較をするようになり、収益が8%増加する一方で、情報へのアクセス向上により消費者価格はあ4%低下した。(P102)
  • ニジェールでは携帯電話の利用によって国内各地の市場における穀物の価格差が10%縮減した。(P102)
  • マレーシア、メキシコ、モロッコなど、さまざまな国において、インターネットを利用する中小企業は取引費用と市場参入障壁の縮減により、全体の平均値で生産性が11%上昇した。(P103)
  • 開発途上国におけるインターネットアクセスが先進国と同等の水準になれば、合計2兆2000億米ドルの国内総生産(GDP)と1億4000万人超えの新規雇用(うち4000万人はアフリカ、6500万人はインドにおいて)が生み出されるとの推計もある。開発途上国における生産性は長期的に25%押し上げられる。(P104)

続いて、クラウドソーシングの話からインパクソーシング事例を2つ。以前このブログでも紹介したSamasource以外にも上手く成功している事例があるんだなあ。3つめはおまけ。

  • Cloud factoryは、ケニアとネパールに約3000人の登録者を抱え、登録者の厚遇を通じてのサービス向上に取り組んでいる。(P107)
  • MobileWorksも同様の方針をとり、2010年にLeadGenusというプラットフォームを立ち上げ、50カ国にフルタイムの働き手を数百人抱えている。同社は退役軍人から難民まで不利な立場におかれた集団や社会的に排除されている集団に的を絞っている。(P107)
  • 国連ボランティアのオンライン・ボランティア・サービスは、2014年の数字で1万887人のボランティア(うち60%が女性)が自らの技能を通じて開発に関する仕事に貢献することを仲立ちした。(P111)

そして、3Dプリンターの話。

  • 世界最大級の3Dプリンター共有サービスの1つは、110カ国にある9000台の3Dプリンターをつないで時間貸しをしている。(P93)(どこの会社かまで書いてないけど、世界156カ国にある2万9000台の3Dプリンターを運営する3Dハブズという会社のことかと憶測。この会社のサービスについては、Newsweekのニュース「3Dプリンターがアメリカの製造業を救う」が面白い!)
  • 3Dプリンターで義肢を製作する世界初の3Dラボが南スーダンにある。この「プロジェクト・ダニエル」は、爆撃で両腕を失った少年ダニエル・オマーに義手を提供するために2013年に始まった。(P94) 冒頭の動画はこの「プロジェクト・ダニエル」紹介動画です。すげーな、3Dプリンター。

以上、事例紹介でした。「人間開発のための仕事」というテーマだけに、こういうテクノロジーがどう仕事に影響を与えるのか?というのが本題で、上記の事例はその前段的な位置づけ。1年前の報告書だけど新しい発見もあり面白かった。きっと今ならドローンについての記載も載るだろうな。

次回は、技術革新によって、従来の資本集約型・労働集約型の仕事から知識集約型の仕事へ変化してくことで、途上国の人達は仕事を失うのか?的な議論を紹介します。

ポケモンGOは途上国開発に影響を与えるか?

こんにちは、Kanotです。現在アメリカで「ポケモンGO」(10日前に公開されたスマホアプリ)が社会現象とも呼べるブームになっていることは連日報道されている通りである。私自身もアプリをインストールしているが、ゲームの世界と現実世界が一体になった新しいスタイルのゲーム(AR(拡張現実)と呼ばれる技術)に、ゲームの新しい時代が来たと感じる。

さて、そんな中、ICTworksに「ポケモンGOが途上国開発(特にDigital Development)にどのように関連するか」という記事を見つけたので私見も述べつつ紹介したいと思う。(写真は当該記事のもの)

まずは記事の概要から。

  1. ポケモンGOの良い点
    • 広い範囲で影響力を持つ
      このゲームは公式には先進国だけが現時点(2016年7月)では対象になっているが、USAID(アメリカの政府援助機関)のサポートによってエジプト、エルサルバドル、フィリピン、グァテマラにおいてもサービスが提供されている。対象が スマートフォン保持者に限られることもあり、比較的所得の高い層が対象にはなってしまうものの、広い範囲で影響力を及ぼす可能性を秘めている。
    • ゲームがコミュニティを作り、教育を促進する
      このゲームの特色である外に出て動き回ることが他の人とコミュニケーションをとることにつながり、共通の課題解決に一役買う可能性がある。
    • 新たなローカルビジネスの可能性
      企業やドナーが人を集める手段としてポケモンGOを活用することは十分想定できるし、それが途上国の観光戦略などに影響を与える可能性がある。
  2. ポケモンGOの問題点
    • GPSを常にONにしてアプリを起動しながら使うアプリなので、途上国で普及している性能の低いスマートフォンでは電池消費などの観点で問題が発生するのではないか。
    • アメリカでも言われていることだが、今後誘拐や強盗などの犯罪などに利用される可能性は十分想定される。
  3. 結論
    途上国においても携帯電話の普及、特にスマートフォンの普及が急増していることもあり、この新しいタイプのコミュニケーション、ユーザの関わり方、ゲーム手法は、開発においても新しい発想やインパクトを与えうる可能性は秘めている。

以上がICTworksの投稿内容の要約である。まぁ先進国にも当てはまる一般論を述べているという印象で、そこまで斬新な切り口は見当たらなかったが、USAIDがポケモンGOを途上国で展開という話は非常に気になるところである(USAIDのWebサイトなどでは詳細は見つからなかった)。彼らがどのような理由でそのプロジェクトに取り組んでいるのか今後も追っていきたい。その一方で、このようなAR (現実世界とバーチャル世界の融合)が新しい形のコミュニケーションや学びの形につながっていく可能性は非常に大きく、今後どのような形で(ポケモンGOに限らず)この技術が発展していくか、注意深く見守っていきたい。