東海大学での講義と2018年に向けて

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12月23日、東海大学で情報通信技術を学ぶ大学1年生を対象に、ICT4Dについての講義をさせて頂く機会をもらいました。ICTが発展途上国でも意外と活用されているという事例を中心に、自分が青年海外協力隊で経験した話などを交えつつ、大学1年生の学生さん達に、途上国の課題解決にICTが活用出来るという可能性と共に、ICT導入の課題ついても話しました。良い意味の気づきがあったので、忘れないように2つ書いて見ます。

  • 誰もが途上国開発に関心がある訳じゃない

プレゼンの最初に「JICAって知ってますか?」と聞いてみたところ知っている学生さんは殆どおらず、また、「エチオピアの首都はどこでしょう?」と聞いても、皆さん「・・・?」という感じ。講義後にレポートを提出してもらったのですが、それを見ると、「途上国のためになる活動は素晴らしいことと思うけど、自分は行ってみたいとは思わない。」という意見も多く、「なぜなら日本にも課題は沢山あるから」とか「英語力がないから行っても貢献出来ない」とか「食事とか治安とか生活面が不安」といったような納得感のある理由でした。付け加えておくと、勿論、何割かの学生さんからは、「自分も将来ICT4Dに関わってみたい」という意見もありました。

もう10年以上途上国開発に関わる仕事をしてきたので、自分の中のスタンダードが世間一般のスタンダードとちょいずれてること(ついつい誰もがケニアのM-PESAのことは知っていると思ってしまう…みたいな)に気づくことが出来たのは良かったです。自分が大学1年生のとき(というか青年海外協力隊へ応募するまで)を思い返せば、自分もJICAって知らなかったしなぁ、と思ったりしたのでした。

  • 遠くのどこかの話をどう身近な話と感じてもらうか

なるべく関心を持ってもらえるようなネタを準備したと思っていたのですが、「遠いアフリカの話をどう身近な話として感じてもらうか?」という点は、もう少し工夫の余地があったなぁ、と反省。ケニア発のUshahidiが東日本大震災後に日本でもSinsai.infoとして活用されていたというネタは話したのですが、同様に日本にも繋がりを持たせたICT4D事例の紹介の仕方があったかなと。例えば、ちょっと途上国の開発課題の解決という観点からは(教育とか保健とかと比べると)分り難いかと想い、Impact Sourcingの事例は省いてしまったのですが、「大学に入り一人暮らしを始めようと見ている住宅情報の見取り図は、もしかしたらカンボジアの人達が作成した図面かもよ?」というような持って行き方もあったなぁ、と思ったり。こういう説明方法のスキルは上げて行きたいなと感じたのでした。

こんな感じの気づき&学びがを得る事が出来て、とても良かったです。機会を頂けたことに感謝!しかし、18〜19歳位の若い方達と話すと、(自分も若いつもりでいるんですが)歳食ったなぁ〜と実感。

自分がICT4Dを専門にしたいと思った2003年頃に比べると、日本で得られる途上国の情報はかなり多くなったし、「援助」だけでない途上国との関わり方もかなり多様化して来たと感じます。それでも、まだまだ日本の中でイメージする途上国(特にアフリカ)と実情にはギャップがあるので、そのギャップを縮めたいな、と改めて思いました(これ、協力隊から帰国したときにスゴい感じたことなんだよね)。これかは(これからも)より多くの人達をICT4D分野に巻き込んで行きたいな、というのを2018年に向けての抱負にしようと思います!

ICTという分野はあるのか?

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前回の投稿で紹介したInternational Development Youth Forumが実施した勉強会「ICT × 国際開発を考える講演会・ワークショップ」に参加してきました。前半の講演会は、アジア開発銀行で相殺首席補佐官を務める池田洋一郎氏、JICAの篠原雄之氏による話。後半は参加者でのディスカッション。色々と勉強になったので、備忘録的に。

  • ICTという分野はあるのか?

ICT4Dの話をすると、どうしても「ICTの前にBHNじゃないのか?」とか「ICT分野は民間がやるからODAでやらんでも良いだろう」という話題が出る事が多い。なので、池田氏に「公的資金をつぎ込む場合、ICT分野の優先順位はどう考えるのか?」という質問をしてみました。回答はとても明快で「ICTって分野はない」というもの。ICTはツールなので◯◯分野で何かを効率的に実施するために必要なら使うということ。以前からあるICTのメインストリーム化という観点と同じだと理解しました。じゃ、「教育分野で先生のトレーニングをした方が良いのか、それともICT教材を導入した方が良いのか?」のようにツールとして具体的に wiht or without ICT?となると判断は分野や個別案件で異なるのだろうと感じつつも、「ICTという分野はない」という点は最近Kanotとも話していた話題でもあり、ストンと落ちるものでした。

  • アジア開発銀行の高度技術信託基金(High-Level Technology Fund)

スマートシティやリモートセンシング技術などの高度なテクノロジーを途上国で活用するためのファンドが設立され、2017年5月のアジア開発銀行の第50回年次総会では日本政府が2年間で4,000万ドルを拠出するとの発言もされていたのでした。知らなかった。JICAではICT案件の比率はかなり低いですが、国際的にはSDGsに絡んだSTI (Science, Technology, and Innovation)やこういう動きもあるのだと改めてICT4D熱が高まっているかも、と感じます。

  • ICTの普及は途上国にとって良いの悪いの?

AIやIoTなどICTの普及が進むと人間の労働がICTに取って代わられてしまうとか、ICTを十分利用出来る人と出来ない人の格差が広がる…といった議論もありました(ある意味、王道の議論)。答えはないのですが、公的機関の役割としては、プラットフォームやデータの支配者による独占が起きないように法的枠組みを作ること、という話があり、まさにそうなんだよなと同感しつつも、一方で規制によって民間企業のイノベーション促進に足かせをしてしまわないか…?という懸念も。この辺りの議論は世銀のWDR2016にも書かれていましたが、独占を禁止し公正な競争を促進するとう法的枠組みをどう作って行くのはセキュリティの課題とともに、大きなテーマだと再認識しました。

  • 質問力を鍛えねば

後半のディスカッションのテーマは、「ICTの普及によって若者の失業率は高まる?我々の働き方はどう変化する?生活はどう変わる?」的なものでした(正確じゃないけど、ざっくり言うとこんな感じのテーマでした)。答えがないテーマだからこそ面白いものの、哲学的な問いにも発展する内容。池田氏からは「より具体的且つ身近なテーマの方がディスカッションし易いよ」とのコメントがあり、確かにそうだなあと感じました。自分も神戸情報大学院で講師をしているときに、ついつい漠然とした問いを学生へ投げてしまうことがあるのですが、今回自分自身が参加者となったことで、「質問力を鍛えねば…」と自戒したのでした。また、答えのない課題について、どう自分なりの答えを持っておくのか?という点も、もっとちゃんとせねば…と思いました。

他にも色々面白いICT4D事例の紹介などがJICAの篠原さんからあったり、ディスカッションではキレのある発言があったりと、得るものが沢山あったのですが、全部は書けないのでこのへんで。

International Development Youth Forum

IDYF

Facebookを通じて「International Development Youth Forum(IDYF:国際開発ユースフォーラム)」という団体の方から連絡を貰いました。2012年に設立されたこの団体は、国際開発に関心のある学生達のネットワーキング的な活動をしているそうです。

何故ICT4Dブログに…?と思ったのですが、この団体が毎年行っている「国際開発ユースフォーラム」(場所は東京)の2018年のテーマが「“How should we co-exist with ICT? Does ICT bring us peril or prosperity?”」というもの。ほほぅ。

このフォーラムは約一週間、参加者がディスカッションしたりするプログラムなんですが、ディスカッションのお題が「“How could the use/advancement of ICT contribute to achieving inclusiveness within society?”」。具体的には3つの事例に基づいた議論を行うものですが、うち2つがICT4Dネタなのです。なかなか面白そう(以下、IDYFのサイトからコピペです)。

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  • 「ベトナムの農業におけるICTの活用」

アグリ・インフォマティクスと呼ばれる、データ分析に基づいて適切なアドバイスを提供するシステムが大きく注目されている。生産の効率化、低コスト化、専門的な経営、人材育成、信頼性など様々な問題を解決できて農業の第6時産業化が促進されるからだ。ベトナムでは、2010年のICT早期強化プロジェクトに関する首相決定に基づいて、2020年までにICT技術を農村まで拡大しようと努力している。ICT協力を謳った日越共同声明を受けて、JICAはベトナムでのAIに関するODA輸出を頑張っている。本会議では、日本がベトナムで行っている農業情報支援事業を様々な角度から分析し、どのような開発であるべきで、かつどのように改善できるのかを考える。

  • 「コロンビアの紛争後の平和構築におけるICTの役割」

コロンビアは内戦とそれに続く複数の危機を1960年から50年の長きにわたり経験した。FARC(コロンビア革命軍)と ELN(民族解放軍)の2大ゲリラ勢力は 政府に対し活発に反乱を起こし、麻薬取引や人身売買といった国際的組織犯罪により活動資金を調達していた。現在、政府はいずれの勢力とも終戦協定を締結し、紛争後の復興と発展に向けて舵を切った。コロンビアのICT大臣はICTが社会の統合を進め、市民参画を促し、民主化の定着に資し、以って復興と開発を加速させるとしている。国家的なICT大綱である “Vive Digital 2018”は ①働き方の改善②雇用創出③企業家支援④都市と地域の転換を4本柱に据えている。しかし同時に大臣は高齢者や障がい者はこうした社会の抜本的な変化に際してより大きな困難を抱えるとも認め、懸念している。さらに国内外の努力にも係わらず若者の失業率は17%近い。本ケーススタディにおける要点は「コロンビアにおけるICT活用・発達への情熱はデジタル・デバイド、高い若者の失業率、紛争後の復興という諸問題の解決に繋がるのか」であろう。参加者はICT活用がコロンビアにおいて相応の解決策であるのか状況を混乱させるだけなのかについて社会に存在する様々なギャップを念頭において熟慮する。

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面白いテーマ設定で、思わず自分も参加したくなったのですが、若者限定イベント(18〜28歳が対象)ということで、オジサンは参加不可能でした(涙)

しかし、世銀のWDR2016のテーマがICT4Dだったり、民間企業もICT4Dという用語を使うようになってきたり、SDGs達成のためにSTI (Science, Technology, Innovation)が注目されたりと、ここ最近、ICT4Dの波が来ている気がしています。そして、こういう若者のフォーラムのテーマにもなるとは。10年前とは偉い変化だなぁ・・・。

と、なんだか浸ってしまいましたが、この「国際開発ユースフォーラム2018」(2018年3月11〜18日)に参加したい方(年齢制限18〜28歳の若者)は、この団体のWebサイトから申込みしてみてはどうでしょうか(締め切りが12月17日と結構迫ってます)。

シェアリングエコノミーが途上国にもたらす安心・安全

こんばんは、Kanotです。私はUberやAirbnbをはじめとするシェアリングエコノミーの最大の功績の一つは、実際の利用者による安心・安全を可視化する仕組みを作ったことだと思っています。(もう一つあるのですが、それは次回にでも。)日経新聞の「信頼もシェアできるか(2017/12/8)」にて、似たような観点の記事が書かれていたのですが、この記事では、UberやAirbnbなどのシェアリングエコノミーの信頼(安心・安全)に関する企業と政府のアプローチの違いなどが語られており、Uberの成功要因の一つに、技術による安心・安全の強化が挙げられていました。

まず、この記事を読んで改めて感じたことは、技術と信頼の関係が大きく変わってきたということです。少なくとも2000年より前はインターネット経由ということはAnonymous(匿名)であり信頼できない人たちの代名詞でした。当時流行っていたSNSのMixiもハンドルネームが基本であり、実名で活動するなどほぼ行われてきませんでした。それがFacebookの功績で、名前を出しても問題がないという認識に変わってきて、むしろ今はネットワーキングSNSのLinkedInや名刺SNSのEightなどに代表されるように、積極的に名前を出してオンライン上で人脈を再構築する時代に変わってきています。

話をシェアリングエコノミーに戻します。UberやAirbnbなども、まさに技術を使って、ドライバーや宿主の顔や評判を「本当に利用した人のレビュー」を通じて見える化することで、安心・安全を強化する方策が取られています。そしてこれらの国境を越えた安心・安全の可視化の恩恵を受けやすいのは、実は発展途上国の人たちだと感じています。

発展途上国の人たちはこれまで、情報が少なかったり、一般犯罪が多かったりという理由で、外国人の信頼を得るのが容易ではありませんでした。例えば、私がバックパッカー時代に「ほとんどの人間はだましてくる」と疑心暗鬼になっていた北インドで信頼できる人を見つけるというのは本当に困難でした。泊まっていたホテルの従業員すら悪徳旅行代理店に紹介しようとしてきたくらいで、当時最も信頼できる情報はバックパッカー宿に置いてある手書きの旅ノートでした。しかし、今は国境を越えて、現地の人が貸し出す宿や、運転する車に対する評価が世界基準で見ることができます。これは本当に画期的であり、特に、これまでの「外人からぼったくった方が儲かる」時代から「正直に信頼を積み上げた者が報われる」時代が来たのだと感じます。

次回は、私がシェアリングエコノミーの功績だと思うもう一つの点、ハイテクなシェアリングエコノミーによって実現するローテクな社会、について書きたいと思います。

Photo from FEE (Foundation for Economic Education)

ICT4Dの教科書が出版されました

ICT4Dの教科書

以前、このブログでも紹介したマンチェスター大学のHeeks教授が執筆するICT4Dの教科書ですが、気がついた発売されていました。早速、Amazonで購入してみました。これから読まねば!

この本は教科書を想定した構成になっており、以下の9つのトピックになっている。教科書を想定しているだけあり、学生への課題やディスカッションのテーマなども提示されている他、さらに、出版社のWebサイトから授業用のPPTスライドもダウンロード出来るようになっている。

  1. Understanding ICTs and socio-economic development
  2. Foundations of ICTs and socio-economic development
  3. Implementing ICT4D
  4. ICTs and economic growth
  5. ICTs, poverty and livelihoods
  6. ICTs and social development
  7. e-Governance and development
  8. ICTs and environmental sustainability
  9. The future of ICT4D

Heeks教授のブログでは、開発学やコンピュータサイエンス等のカリキュラムの一部にICT4Dが含まれることが増えて来ていると述べられている。理由は、携帯電話やスマホの爆発的な普及に代表されるようにICT4D分野そのものの広がりや、ICT4D絡みのイノベーションがバズっているから。日本では「そうかな?」と思うけれど、大学のカリキュラムはさておき、ICT4Dという用語が援助機関以外でも使われるようになってきたとは感じる。

ちなみに、アビームコンサルティングが「ICT4Devに関心を有する方募集」という求人もありました。応募したくなるフレーズだなぁ…

話を教科書に戻すと、ICT4Dというあまりに幅広い分野を俯瞰出来る教科書はとても便利。自分が5年間講師を勤めさせてもらっている神戸情報大学院のICT4Dの授業にも来年から取り入れてみたい。まずは自分自身が読破せねば。この年末年始の自分自身への宿題としたいと思います!

第4回オフ会終了!

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Kanotのプレゼン風景(みんな向こうを向いているのは、奥の壁にプロジェクターを映しているから)

12月2日(土)に第4回オフ会を開催しました。約3年半ぶりのオフ会でしたが、約20名が参加し、盛り上がりました!ご参加頂いた皆さん、どうもありがとうございました!!

民間企業、公的機関、大学など、様々なバックグラウンドの方達との会話は刺激的でとても勉強になりました。Kanotと「盛り上げ策」を考えていたものの参加者同士が自然に盛り上がってくれて、逆に準備したことを「すいません、折角準備したんでやらせてもらいます・・・」的な感じでした。

バラエティに富んだ人達と話巣ことが出来、色々な気づきがあったので書きたいところなんですが、オフ会ではしゃぎ過ぎたのか、風邪を引いてしまい今は気力がないので、とりあえず参加者の皆さんへのお礼を込めた開催報告まで。あー、鼻水が出る・・・。

今更ガラケーは売れないんじゃないか?

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11月18日の日経新聞に、「パナソニック、アフリカで「ガラケー」1月発売 知名度向上 スマホ普及へ布石」という記事があった。アフリカで低所得層をターゲットに1500〜2000円でガラケーを売るという。「家電のブランド力で新興国メーカーに先行して市場を押さえる」という狙いらしい。最初にこのニュースを見て、正直、ずれていると思った。

既に新興国メーカーが遥かに先行しているにも関わらず、今更感ありありだ。どういうガラケーなのかは分らないが、本当に普通のガラケーじゃ、低所得層も食いつかないと思う。以前の投稿で、ガーナではガラケーのことを「ヤム(やむいものこと)」と呼んでいる事を書いた。「ヤムを捨てて、スマホに変えよう!」という看板が町に立つくらいだ(上記のような看板です)。勿論、田舎ではスマホを持てる人は非常に限られているけど、1500〜2000円でガラケーを買うなら、5000円出して中古のスマホを買いたいというのが消費者の思いじゃなかろうか。

ちょうど、DMMの面白いニュースを見た。「DMMがあの「CASH」を70億円で買収するワケ」という東洋経済の記事だ。DMMが「CASH」という中古品買い取りを行うサービス(ユーザに負担をかけずに、商品の写真等を送れば、その場で即買い取りしてくれるサービス)を展開するバンクというスタートアップを70億円もの金額で買収したという内容。詳しくはリンクの記事を見てもらいたいが、このCASHというサービス、あまりにユーザがバンバンものを売るために買い取り資金がショートし、そこにDMMが買収を持ちかけたという。DMMがDMM.Africaとしてアフリカビジネスに積極的に出て行っているのは、ご存知のとおり。この記事で一番面白かったのは、「(DMM社長の)亀山さんは「CASHで買い取ったスマホをアフリカで売るぞ~」と張り切っています。」という一文。パナソニックとのアプローチの違いが鮮明過ぎる。

低所得層が今更ガラケーを購入するのは、ある意味興味深い実験的取り組みだと思うが、せめて、機能はガラケーでも外見はスマホに見えるような、そんな工夫をしないと売れないんじゃなかろうか。もう10年近く前に、インドでは「外側はスマホ、中身はガラケー」という携帯が町の電気屋で売られていた。やっぱり、カッコいいから携帯はここまで普及したと考えると、ふた昔前のノキアのガラケー的なのじゃ売れないと思う(ノキアのやつは懐中電灯機能が付いており、それはそれでとても便利だったが・・・)。