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ICT4D研究がアジアからアフリカにシフトしつつある??

こんにちは、Kanotです。たまには自分の研究について書いてみたいと思います。国際学会ICTD2016でポスター発表した内容で、JICAのYoutubeサイト「ICT and Development」でも取り上げていただきました。

以下は論文の概要です(動画内容とほぼ同一です)。

世界銀行のWorld Development Reportやアフリカ開発会議(TICAD)でのICT立国ルワンダの存在感など、ICTの役割が認められてきた昨今ですが、ICTと開発(ICT4D)の研究フィールドはどのようなトレンドを描いているのでしょうか?特定の地域や国に寄っているのか、それとも満遍なく広がっているのか?そして地域や国のトレンドに変化はあるのでしょうか?

こういった興味から、過去10年間のICT4D関連の論文525本を地域・国でタグ付けし、傾向に変化があるのかを調べてみました。なお、ここでいう地域・国は執筆者についてではなく、研究対象となった地域・国のことを指しています。

  1. 国別トレンド
    以下のグラフは国別の論文割合で、上位6カ国をプロットしたものです。slide3

    この10年間はずっとインド(青線)が首位になっています。確かに私もインドというと、貧困という開発途上国のイメージと、IT人材を対象に生み出すIT大国というイメージの双方があり、ICT4Dの研究対象としても選ばれてきたのも納得できます。

    その一方、2010年くらいから伸びてきて、2014年にはインドに追いついている国があるのに気がつきましたでしょうか?この辺りを見るべくインドを除く5カ国を拡大したのが次のグラフです。

    slide5

    この一気に論文数を伸ばしているのがケニアです。私がポスター発表を行った国際学会ICTDでも、2012年に初めてアフリカ(南アフリカのケープタウン)で開催され、アフリカの勢いを感じていたところでした。上位6カ国のうち4つがアフリカ、2つがアジアと、アフリカの勢いを感じるところです。

  2. 地域別トレンド
    次に地域別の比較です。slide6

    このグラフにある通り、アジアとアフリカで8割以上を占めています。面白いのが2014年に初めてアフリカが論文数でアジアを上回って一位になったということです。先ほどの国別傾向でインドが下がりケニアが伸びている影響も受けていると思いますが、ICT4D研究全体のトレンドとしてもアジアからアフリカに移りつつあると言えるのではないでしょうか。

  3. 多様性
    これまで地域と国の傾向を見てきましたが、特定の国に偏った状態なのか、色々な国で研究が行われているのか、シャノンの多様性指数を用いて比較してみました。slide7

    このグラフがその結果なのですが、徐々にですが指数が向上しているのが見て取れます。これは対象国が広がってきている(多様性が増加している)ことを示すもので、これまでインド一国集中だったものがインフラ発展の成果もあってか色々な国にICT4D研究が広がっているということになるかと思います。

では、これらの変化がなぜ起きてきているのでしょうか。今回の論文においてはそこまでは検討できてないのですが、考えられる仮説としては、例えば以下のようなものがあります。
・地理的な多様性はIT政策やインフラの発展に相関がある。
・一部の国(インドなど)で研究が終わってきたため、他の国にシフトし、多様性が増加している。
・誰かが新しい国で研究を始めると他の研究者も興味を持ち始め、多様性増加に貢献している。

これらについてはまた次の研究で調べてみたいと思いますが、インフラの発展もあってか、ICT4D研究もアジアからアフリカに少しずつシフトしつつあり、色々な国で行われるようになってきているようです。

 

グリーンITと国際協力

CEATEC JAPANというIT・エレクトロニクス展に参加した。最先端技術の展示会ということで、国際協力とは一見関係なさそうだが、最近気になっていたグリーンITというキーワードで講演や展示が複数あるということで、参加してみた。

ちなみにグリーンITとは、ITを使って温室効果ガスの削減や、環境に役立つ事をしようという取り組みであり、世界中に関連団体がある。
日本だと、経産省系のグリーンIT推進協議会
などがある。

グリーンITの分類としては、大きく2つ「of IT」と「by IT」がある。
「of IT」とはIT機器自体の省エネ(例:省電力エアコンなど)のことであり、「by IT」とはITによる社会の省エネ(例:電子カルテなど)である。

講演では、日本のグリーンITの事例紹介に加えて、アジア各地での取り組みの紹介など、興味を引く内容だった。途上国だと思っていたアジアで省エネやエネルギー効率などに本気で取り組んでいることも驚きだった(排出権取引などで削減メリットがあるからかもしれないが)。

ただ、日本及びアジア地域のグリーンIT事例として挙がっていたのは、現時点ではCO2削減のための取り組みというのが大半であり、省エネ取り組みの紹介がメインであった。

個人的には国際協力との関連としての情報収集という目的で参加していただけに、もっと「by IT」寄りの話が聞きたかったが、今回の講演トピックでは多くはなかった。(配布された事例集には、日本国内の事例ではあるが、TV 会議や道路交通改善策、電子カルテ、e-Learningなどが載っていた。)

もう少し具体的に書くと、同じ環境×ITでも、例えば津波予測や災害情報システムであったり、アマゾンの森林保全・管理システムだったり、水関連だったりといった話が今後のICT4Dの選択肢として増えていくのかなと思っているので、そういう話が聞きたかったが、今のグリーンITは省エネ技術が中心であり、ちょっと方向性が違うのかもしれない。

地球温暖化対策のためのIT活用という大目的としては、そういった案件も対象となってしかるべきと思うので、ぜひどんどん広げていって日本の技術力を活用して欲しいものである。

アジアとの架け橋を目指す沖縄のIT戦略

皆さんは沖縄県が県を上げて取り組んでいることのひとつにITを中核にすえた地域振興といったことがあるのはご存知だろうか?
先日沖縄に行く機会があり、沖縄県のITに関する取り組みについて話を聞く・見学したので報告したい。

沖縄では県の取り組みとしてIT特区を作り、税制面等の優遇措置を行うことで県外からの誘致を行っている。具体的には、うるま市にIT津梁パークというエリアを作り、ここに大小様々なIT関係の企業を大量に誘致し、ITの一大エリアを作ってしまおうという計画があり、少しずつ建物ができてきている。イメージ的には目指せシリコンバレーといったところか。

ただ、現状は本土から進出する企業の目的は安い人件費を目的としたコールセンター設置などが大半で、クリエイティブな部分は東京なりに置いているという企業が多い。

そこで沖縄県では企業が海外に発注するオフショアに対してニアショアという言葉を使い、「言葉も通じて人件費の安い沖縄でシステム開発しませんか?」と宣伝している。

しかし、このやり方だとアジア諸国とライバルという関係になってしまい、コスト競争でアジア諸国に勝てるわけはなく、厳しい戦いになってしまう。

もうひとつの取り組みとしては、アジアと本土をつなぐハブとしての沖縄を目指すということである。例えばアジアの企業がオフショア開発を受注できるようにアジア人材を沖縄で教育したりといったことも考えているようである。沖縄県の行っているIT人材育成研修とかのメニューにも目指すところとしてプロジェクト・マネージャと並んでブリッジSEというのも入っており、やはりハブというのを意識しているようである。これは地の利を生かしていて面白い取り組みだなと感じた。

今回の訪問を通して考えたこととしては、本土からの誘致等については、景気後退などもあり積極投資をするIT企業が多いとは思えず、沖縄の思いと温度差があるように感じる。もうこの際、本土からの進出誘致はそこそこに、日本や中国・韓国への進出を目指すIT企業(例えばインドの大企業とか)に規制の少ない沖縄に来てもらい、国際色豊かなエリアにするといった手であれば大規模誘致も見込めるのではないだろうか(沖縄からだと東京よりも台湾・上海・韓国などの方が近い)。というかそうなったら沖縄という場所が本土のどことも異なる面白い価値を持った場所になると思う。

アジア太平洋地域のオフショア先トップ10

アジア太平洋地域のオフショア先トップ10が米ガートナーによって発表された。その10カ国は、オーストラリア、中国、インド、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム(アルファベット順)。このニュースによると・・・・

  • インドを中国が追っている構図
  • 賃金Upや政治上の問題(テロなど)の影響によりインドのシェアは縮小気味
  • マレーシア、フィリピン、ベトナムなどが台頭
  • コストとセキュリティがトレードオフの関係
  • 日本企業にとっては、日本語対応がキーであり、ベトナムやタイが日本語教育を強化、etc

オフショアというと、ぱっと思いつくのはインドと中国、そしてシンガポールだったけれど、マレーシアやベトナム等もこの分野に進出しているらしい。途上国が先進国とビジネスをしていく上では、やはり政治情勢や政府の対応が重要だと感じる。インフラ整備や海外企業誘致政策から技術者レベル向上のための教育制度まで、全て政府が主導権を握っているから。さらに、今後は環境対策なども基準となって来るだろうし。ICT4Dというと、ICTを利用した教育やビジネスにフォーカスが向きやすいけれど、ICT政策支援というのが実はかなり大きな意味を持っているのだろう。

また、途上国・新興国のIT産業が発展すれば、日本企業にとっても、日本語対応のコールセンターやデータセンター向けのアプリケーションなどの市場が拡大し、国内IT企業にとっても好都合だ。これまで、あまりこういった視点でICT4Dを見ていなかったけれど、今後は途上国・新興国のIT産業開発についても、チェックしていかねば。

eAsia 2009

今月の2日から4日にかけて、eAsia 2009というイベント(会議やワークショップ)がスリランカのコロンボで開催されていた。アジアのICT4DをテーマにeGovernment、eHealth、telecentreなどについて様々な会議やセミナー、ワークショップが行われた。この会議をリードしたのはインドのとスリランカの政府。

テレセンターについてサステイナビリティの点から自分はどちらかというとネガティブなイメージを持っていたが、このeAsia 2009のテーマの一つtelecentre forumの発表を読んで、アジア諸国ではテレセンターはずいぶん期待されているのだと感じた。世界のテレセンターの60%がアジアにあり、そのテレセンター同士のネットワーク構築といった可能性にも期待が寄せられている。

しかし、もっと気になったのは日本の参加がない点。マイクロソフトやオラクル、IBMといった米企業やIDRCやWorldBankといった援助機関は、スピーカーとしてやスポンサーとして名を連ねているのに、日本企業や日本政府系機関の名前は見つからなかった(もしかしたら日本人スピーカーもいるのかもしれませんが、自分の見た限りでは出てこなかったので、いずれにせよ日本のプレゼンスは低いことに違いはないだろう)。アジアでやってるんだから、こういうイベントにちょっとは日本も参加したら良いのになぁ。