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m-Agriculture成功の鍵は、どれだけ人が介在出来るか?

先日、ガーナのグラミン・ファンデーションが実施しているm-Agricultureプロジェクトの話を聞く機会があった。実際にプロジェクトを担当している方からの話が非常に興味深いものだったので紹介したい。

Achieving Impact at Scale through ICT-Enabled Extension Services (AIS) projectという名前のついたプロジェクトの話。グラミン・ファンデーションの他、カナダのIDRC、インド発祥のDigital Green、Farm Radio Internationalが連携して実施している。

携帯電話を使った農民支援というとパッと思いつくのが、農作物の市場価格や天気予報といった情報をテキスト等で農民に提供することで、農民が仲買人に作物を買い叩かれないようになったり、天候によるリスクを軽減出来たりというメリットがある、という話だ。しかしながら、今回聞いた話は、そういう取り組みと一味違った内容で面白かった。

グラミン・ファンデーションがいわゆる農業情報配信システムを開発し、市場価格や天気予報などの情報を配信するという点は同じ。ただし、単純に農民に情報を配信するのではない。

農民から農作物を買い付ける仲買人(Agent)に対して、プロジェクトから情報配信用のアプリが入ったデバイス(スマホ、タブレット)を提供し、仲買人が農民に対して情報をセレクトして配信する仕組み。仲買人は最初に各農民と面談し、農民の情報(氏名や性別等の基本情報、育てている作物、農業スキル、欲しい情報、等)を聞き取りシステムに登録する。仲買人は定期的に各農家を訪問しアドバイスを提供することが義務付けられ、訪問時には写真を取ったりメモを取ったりして、その情報はデバイスを通じて、サーバーにアップされる。各シーズンにいつ頃、誰を訪問するべきか?というタイミング(種まきの前とか、収穫の前とか)はアプリで知ることが出来る。アプリには、登録された農民情報から農民をグルーピングして「米を作ってる農家」、「メイズを作ってる農家」、のように作物で分類したり、「経験抱負な農家」、「経験が浅い農家」のようにスキルで分類したりする機能があり、仲買人は配信される情報の内容を見て、それが必要なグループに配信する。沢山の情報を一斉に全員に配信するのではなく、各農家に合った情報を提供する。アプリの言語は英語のみだが、農民の中には英語が出来ない人もいる。その場合は、仲買人は定期訪問時に現地語でアドバイスしたり、ポータブルのプロジェクターで動画を見せて説明したりする。

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農家→仲買人→大手バイヤーの全体にメリットを提供出来る仕組み作りが上手い!

 

仲買人は50件の農家を管理しており、このプロジェクトではガーナ中で約200名の仲買人を対象としている。つまり、200×50=10,000ということで、一万件の農家を支援しているわけだ。当初は仲買人は100件の農家を管理する想定だったそうだが、実際にやってみると定期訪問が大変で数を50に変更したとのこと。

「どうやって対象とする仲買人を選んでいるのか?」と聞いたところ、仲買人を選ぶのではなく、複数の仲買人から作物を買い取る大手バイヤーのなかから農民への一定の支援に協力的なバイヤーを選び、その下にいる仲買人が対象になっているということだった。農民が作る作物の質・量が向上することは、大手バイヤーにとってもメリットであり、また、大手バイヤーは肥料販売やトラクターのレンタルなどもやっているケースが多く、そいうサービス業の繁盛にも繋がる。仲買人にとっても農民が作る作物の質・量が向上することは、安定した買い付けが出来る点でメリットがある。より安くて質の高い作物を探して遠方まで買い付けに行くコストよりも、地元の農民を支援してニーズにあった作物を育てさせる方が効率的である。つまりAISプロジェクトは、農民だけを直接支援しているというよりも、「農民→仲買人→大手バイヤー」という農作物の買い取りシステム全体を支援しているような印象。

アイデアとして「質の良い作物を大量に買い取りたい」という大手バイヤーを巻き込んだところが、秀逸だと感じた。政府系の農業普及指導員を巻き込んでこのような取り組みをしても、農民のスキルは向上したとしても最終的に質・量が改善した作物を「誰が買い取ってくれるのか?」という出口が不明瞭だ。一方、このプロジェクトでは最初にその出口を確保し、そこから支援の対象となる農民が選ばれている。農民のセレクションではなく大手バイヤーのセレクションからという逆のアプローチは秀逸だ。さらに、政府系の農業普及指導員よりも、仲買人の方が利害関係から「農民に良い作物を作らせる」という目的に対してモチベーションが明確である。

また、プロジェクトは農民への直接的なトレーニング等は行わず、仲買人に対してのみ各種トレーニングを提供している。ダイレクトに農民に情報配信をするのではなく、農民と仲買人という既存の関係性の上に情報配信をプラスするという方法をとっている点や、情報配信をするだけでなく実際はフFace to Faceで仲買人が農民に現地語でアドバイスをしたり定期訪問したりする点は、「ICTはあくまでツール。ICTそのものがソリューションではない。」ということを具現化したようなプロジェクトだ。いくつかm-Agricultureプロジェクトの事例を見ると、やはり「どれだけ人が農民とICTの間に介在出来るか?」が成功・失敗の分かれ目になっている。ちなみに、ガーナのグラミン・ファンデーションには、何度かこのブログでも紹介した外山健太郎氏が活動していたインドのマイクロソフト・リサーチで働いたいたガーナ人がいました。そういう繋がりから、Digital Greenとも連携しているのかもと憶測。

気になるのは、この農業情報配信システムの利用料金を「誰が払うか?」だ。現時点ではIDRCの援助で成り立っているため、誰からも利用料金は取っていないとのこと。この援助がストップしたときの持続性はどうなのか?

この質問については、いつくかの案があるということだった。例えば、農民は現金を払うことに付いて非常に抵抗感が強いため、仲買人が作物を買い取るときに、作物の量を増やす等の方法でモノで払い(使用料金をさっぴいた買い取り価格にする方法も)、仲買人が現金で使用料金を支払うという方法が考えられる。また、別の案としては、最終的に質の良い作物を手にする大手バイヤーが使用料金を肩代わりする方法も。さらに、このプロジェクトは携帯電話での情報配信だけでなく、ラジオでの情報配信も行っていることから、トラクター貸し出し業や肥料販売などをしている会社(大手バイヤーと被ることもある)の宣伝をラジオに載っけて、その広告料でシステムの利用料金を賄うといった方法もありえる。

持続性については今後も色々と考えて行くという話だったが、上記の案はいずれも悪くないように感じた。ただ、これが援助でなくビジネスとして成り立つ場合、仲買人は自分が管理する農民をよりシビアにセレクトすることになる。例えば、肥沃な農地を持っている農民や一定のスキルのある農民を対象にした方が良いに決まっている。言い換えると、より恵まれない環境にある農民は、この仕組みに入れずに、お隣さんがより質の高い作物を作っているのを羨ましそうに見て、より格差が広がる…ということに。このプロジェクトでは、そういうことを避けるためにラジオを通じた情報提供を分け隔てなく行ったり、仲買人が農民をセレクトする際にバランスのとれたセレクションをするようにしているとのことだが、援助がビジネスに切り替わると、弱肉強食の世界にならざるを得ないだろう。まぁ、この手の話はまた別の機会に書きたいと思います。

今回、グラミン・ファンデーションの方から話を聞いて、人を支援するという視点ではなく、システム全体にメリットのある支援を考える視点の重要性を強く感じた。いやはや、とても勉強になりました。

最後に、Achieving Impact at Scale through ICT-Enabled Extension Services (AIS) projectの紹介がされているWebを見ると、もっと色々な情報が掲載されており、一部上記の話とも違う点(例えば、プロジェクトが対象としている仲買人は200ではなく220との記載)もありますが、生で聞いた話を元に上記は記載してみました。

本の紹介「グラミンのソーシャル・ビジネス」

グラミンのソーシャル・ビジネス

大杉卓三、アシル・アハメッド著「グラミンのソーシャル・ビジネス」という本の紹介です。大杉先生とは神戸情報大学大学でお会いして、そのときにこの本を頂きました(どうもありがとうございます!)。大杉先生といえば九州大学などで日本でグラミンとの連携を牽引する第一人者として知られていますが、流石、いろいろと「グラミン=マイクロファイナンス」だけじゃない視点から興味深い情報満載でした。

グラミンの取組は、ICTに絡まない活動(例えば、グラミン・ダノン(ダノンヨーグルトの仏ダノン)とか、日本との連携で言えば、グラミン・ユニクロやグラミン・雪国まいたけ等)も多くありますが、自分自身の備忘録的に、この本からICT関連の取組を以下まとめてみました。

  • グラミンフォン

言わずと知れた携帯電話事業。グラミンフォンはテレノール、グラミン・テレコム、丸紅、ゴノフォンが出資して誕生した。この本を読むまで、ノルウェーのテレノール(←最近はミャンマーの通信事業者に参入するって話題で良く耳にします)や日本の丸紅が出資していたということを知らなかった。しかも株式の61%をテレノールが保有しており、グラミン・テレコムは38%だったとは。
グラミンフォンの取組は「ビレッジ・フォン・プログラム」や「ビレッジ・フォン・レディ」、このブログでも以前紹介されている「インフォ・レディ」など良く知られているので説明は不要かと。面白いのは、「ビレッジ・フォン・レディ」の発送は、牛を携帯に置き換えたという点。マイクロファイナンスで資金を借りて牛を購入し、牛乳を売って返済するというモデルの牛が携帯になったということ。ICTを使ったサービスといっても「牛→携帯」の置き換えがアイデアになっている。他にもこういう視点で新しいICTサービスが出来そうな気がする。
その他にも、「コミュニティ・インフォメーション・センター」というテレセンター的な事業もやってる。(グラミン・テレコムとグラミン・コミュニティも共同で「グラミン・インフォメーション・キオスク」ってのをやっている)

  • グラミン・シャクティ

太陽光発電システムなどの販売をしている。1464支店を持ち1万1000人を雇用している。また、グラミン・テクノロジー・センターでは、女性を対象に太陽光発電システムの部品製造やメンテナンス等の技術指導を行い雇用創出を実施している。ソーラーパネルには日本の京セラ製品が使われているという。
知らないところで日本企業の製品が頑張っているんだなぁ。

  • グラミン・インテル・ソーシャル・ビジネス

CPUメーカーの米インテルとの合併企業(2009年設立)。インターネットや携帯電話を使ったソーシャル・ビジネスをインドとバングラで展開。母子保健のプロジェクト等を実施しているという。
インテルといえば、Classmate PCとかOLPCからの撤退(Classmate PCと競合しちゃうからね)といったようにICT4D分野でのアクターの一者であるものの、あまりパッとしないイメージでしたが、グラミンとの合併企業もやっていたとは。

  • グラミン財団テクノロジー・センター

ICTを活用した貧困削減についての研究所。AppLabというプロジェクト(Application Laboratoryの略)をウガンダ、ガーナ、インドネシア、ラテンアメリカ、カリブ海地域で展開。AppLabは、モバイル・アプリやサービスの開発を行って、地域の開発課題へのソリューションを提供しようとしている。以前、このブログでもウガンダのプロジェクト例「Community Knowledge Worker」を紹介してましたが、農業分野以外にも、モバイル・マネー、ヘルスケア、マイクロフランチャイズ(小規模企業支援)、といった4分野でプロジェクトを行っている。
特にヘルスケア分野では、今度自分が行くガーナの例が取りあげられていたので紹介したい。
MOTECというプロジェクトで、妊婦を対象とした情報配信&カルテ情報管理を行っており、USAIDやゲイツ財団などの支援を受けている。また、ガーナでは世銀の母子保健プロジェクト「Every Woman Every Child」の助成金で、携帯を活用した母子保健ソーシャル・ビジネスモデルの開発も行っているという。

以上、本からの情報をICT4D絡みでまとめてみました。
これからガーナに行くので、意外とガーナでも活動されているというのが個人的には最も関心が高いところ。こういう取組がどういう結果になっているのか実際に知ることが出来たら面白そうです。

しかし、知れば知るほどグラミンの凄さをに驚きます。この本を読んでみて、自分もそれになり知っているつもりでいたのですが、それでもかなり知らないのだということに気づかせてもらいました。

Grameen Applab

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マイクロファイナンスで有名なグラミン銀行がGrameen Applabといういう取組を実施している。Gates Foundationから資金を得たり、マイクロファイナンス研究機関のCGAPや各国の携帯事業者と協力してウガンダ、ガーナ、インドネシアなどで、農業、保健、マイクロファイナンスといった分野のプロジェクトを行っている。へーっと思ってWebを見ていたら、ウガンダのCommunity Knowledge Workerというプロジェクトを紹介するYoutube動画を発見。閲覧回数がまだ2回(少なっ!)だったのでご紹介したい(結構面白い動画で良く出来てると思いうのですが、可哀想なことに閲覧回数が2回とは・・・)。

見てもらうとわかるように、このプロジェクトはウガンダの携帯事業者MTNやGoogleと協力して、農村部の人々に農業関連情報を提供するというもの。具体的には、Community Knowledge Worker(CKW)と呼ばれる情報提供担当者を各地において、彼らにスマートフォンを提供する。場合によっては携帯充電用太陽光パネルのキットも供与しているようだ。村人は牛が病気だとか困ったことがあったら、CKWのところに行って質問すると、CKWはスマホで関連情報を調べて教えてくれる。スマホで情報を調べるときには、CKW用に開発されたデータベースシステムを使っている。データベースには、35種類の農作物、家畜7種類、天気予報、市場情報、交通機関情報、モバイルマネー取扱店の場所などに関する35,000以上の事項に関する助言がリアルタイムに蓄積されている(この動画後半では、実際にスマホの画面でどうやって情報を検索していくのか見られるので、イメージがつかめます)。2010年から開始され、現在は800名のCKWがいるという。

一昔前、バングラデッシュで携帯電話を貸し出すためのグラミン・レディ(テレフォン・レディ)という取組が始まったけど、固定回線がないような村で携帯電話を貸すことが中心だった。そこから、一歩進んだのがCKWのような取組だろう。依然、このブログでもKnotが紹介したバングラのInfoladyも似ている。グラミン・レディは2006年位に始まったが、携帯端末が行き渡った現在は活動をやめている。携帯貸し屋さんから情報屋さんへの変化。次は何屋さんが出てくるだろうか。

小型のモバイルプロジェクターなんかも安くなったので、携帯とモバイルプロジェクターで移動紙芝居屋さんならぬ、移動映画屋さんとか、オープン教材を使った移動塾・家庭教師など、なんか色々と可能性がありそう。と、書いていたら、モバイルプロジェクターが欲しくなってきた、台風も弱まって来たので電気屋さんに行ってこうようかな~

ウガンダのm-healthプロジェクトが教えてくれること

ウガンダでのm-healthプロジェクトの記事「Google Sex Advice Boosted Cheating in Lesson for Mobile Health 」があった。読んで見て、ICT4Dプロジェクトで大切な視点を改めて再認識させられる内容だったので、ご紹介したい。

Googleとグラミン財団がMTN(携帯通信会社)の協力を得て、m-healthプロジェクトをウガンダの60の村で実施している(これ以外にもいろんな取組をしています)。このプロジェクトでは、主にエイズをはじめとする性感染症を防止するために、有益な情報を携帯のSMSを通じて提供する。性感染症に関する質問をSMSで受け付けて、Googleの技術でデータベースからその回答を自動的に見つけて、テンプレートに沿った回答メッセージを返信する仕組み。このプロジェクトで対象地域のパートナーでない異性とのセックスが減ったり、それによって性感染症が減るという効果が期待された。

しかしながら、Yale Universityにより最近実施されたプロジェクトの評価結果は、想像とは逆であった。プロジェクト実施前と実施後で、なんと浮気をする人(パートナー以外とのセックスをする人)が12%から27%に増えたのだ。その考えられる理由としては、以下のような要因が上げられている。

  1. 現地語での回答検索機能がイマイチであった
  2. (上記のため、)回答が不適切だった
  3. あまり住民がこのサービスを利用しなかった
  4. 有益な情報を得ることが出来ても、性感染症対策の薬を買う金がなかった
  5. このプロジェクトで女性はパートナーとのセックスでコンドームを使ったり等の対策を取るようになったが、それに反対する男性が逆にパートナーとセックスしなくなり、浮気相手とセックスするようになった(例えば、わかりやすくいうと、コンドームの使用を強要する奥さんよりも、コンドームしないでセックスさせてくれる浮気相手とセックスするようになった)

この調査結果は、まさにICT4Dプロジェクトの難しさを表していると感じた(先週のJICA関西のICT4Dセミナーで訴えたかったことと同じ)。ICTそのものよりも、それ以外の課題に直面するという例として、言語の問題や、ターゲットとしている人々がサービスを利用しない(=安全なセックスをそれほど求めてない)という事実、そもそも金がないという問題、そして、最後の5番目の理由に至っては、他人が考える有益な情報提供が必ずしも万人にとって有益な情報とは限らないというリアリティ。ほんと難しい・・・。

先日、神戸情報大学院の炭谷学長の本「課題解決の新技術」(←この本、面白いのでこの本については、また紹介したいと思います)を読んでいたらGoogle日本法人の元社長である辻野晃一郎氏の言葉が紹介されていた。「合理性を超えたとろに正解がある」

なるほど、確かにその通りなのかもしれない。以前、このブログ「モバイルバンキング神話は本当?」のコメントで紹介したように、M-PESA成功の秘訣は何か?というICT4Dブログ(マンチェスター大学のHeeks教授他が運営しているブログです)の投稿で、ケニア政府の支援やニーズの有無、サービスの仲介業者の充実度など多岐にわたる要素が成否のFactorであるとの研究結果が発表されていたことに対して、Safaricomの元CEOであるMichael Joseph氏が「そんなんじゃない。成功の要因は気合いと根性!」的なコメントをしていたことを思い出す。

また、マンチェスター大学Heeks教授のいうところの「Hard Rational Design」(合理性や理屈に基づいたプロジェクト設計)と「Soft Reality」(実際の混沌・矛盾に満ちた現実)のギャップともいえる。

途上国で携帯がここまで普及した理由としては、プリペイド方式とか低価格な端末が販売され始めたなど、それなりの理由があるが、個人的には「カッコイイから」というのが実は結構な理由の一つなんじゃないかと思う。カッコいいから持ちたいという気持ち。なんせ人が決めることですから。

上記のウガンダのおけるm-healthプロジェクト結果の記事を読んで、このように改めてICT4Dプロジェクトで忘れてはならない視点を思い出した。勿論、このプロジェクトの結果が全てではなく、むしろ例外的なのかもしれない。これをもって、同様のm-healthプロジェクトそのものの価値や効果を否定するのは間違っている。今や世界の携帯電話契約数は人口比で96%(インターネット契約数の2倍以上)、途上国においても89%の普及率といわれている(2013年2月ITUレポート)。ここまで浸透しているツールを活用しない手はない。しかし、現場の視点から、どういった情報がどのようなコミュニティにおいてどんな意味を持つのか?といったことを、慎重に検討する姿勢は忘れてはならないということだろう。

e-Education×グラミン in バングラデシュ

前回のKanotの投稿が遠隔教育でしたが、今回も遠隔教育についてです。「国際開発ジャーナル」って雑誌に、バングラデシュの田舎で遠隔教育を実施しているグラミングループのプロジェクトが紹介(タイトル:「“インターネット”ד遠隔地”=教育イノベーション」)されていました。

バングラデシュでは、大学進学のためには殆どの者(あるアンケート結果では8割以上)が高校卒業後に3~4ヶ月間、予備校に通うそうだ。そうでもしないと合格出来ない狭き門(国立大学入学の競争率は約30倍)。しかも、首都ダッカにしか良い予備校・優秀な講師がいないため、田舎に住んでいる学生は、わざわざダッカに下宿しないといけない。当然、お金がない家庭では、そんなこと出来ず必然的に大学進学が出来るのは裕福な家庭の子供に限られる。そんな構造になっている。

そこで、早稲田大学の学生である税所篤快氏が立ち上げたのが「e-Education予備校」である。グラミン銀行で有名なグラミングループの協力を得て、ダッカの優秀な講師の授業をインターネット経由で田舎でも受講できる予備校を開始した。日本の予備校がやっているサテライト授業と同じことだ。初年度の今年は30名の生徒のうち、1名がダッカ大学に合格したという。

前回の投稿「オープンエデュケーションの可能性」で、大学の単なるオープンエデュケーションには実際に大学教育が提供する同級生と刺激をし合って勉強したり、議論したりといったメリットがないことが懸念点として上げられていたけれど、受信できる授業を集団で受講するスタイルであれば、実際の学校には及ばないまでも、ある程度同様の効果が期待できるだろう。また、特に大学受験予備校的な勉強であれば暗記系なので、遠隔教育に適している気がする。

それでも、このe-Education予備校の30人の生徒のうち5人は途中で来なくなってしまったということもレポートされいた。事前に十分なやる気があるかを家庭訪問等を通じて審査したにもかかわらずだ。そして、その原因は、予備校を無償にしたことと考えれており、来年度以降は小額でも授業料を取る方向に変えていく方針だという。

このプロジェクトを日本人の方がやっているのを非常に嬉しく思う。そして、自分が協力隊エチオピアの遠隔教育システム導入を目の当たりにしたときに、同様の試みにチャレンジしなかったとこに対する後悔もある。インフラは十分揃っていたのになぁ。。。
でも、もしチャレンジしていたら、電力の安定供給や電気代、講師への謝金、機器のメンテナンス、場所代、人件費、などなど、これまでも一般的にICT4Dプロジェクトで失敗要因(=サステイナビリティが確保出来ない)として指摘されている障害をどう克服できただろうか?という思いも。「国際開発ジャーナル」の記載では、そういった点については言及されていなかったので、このe-Education予備校が上記のようなハードルをどうやって克服している(or していく)のかについては、非常に気になるところだ。

Kiva Japanの説明会に行ってみた

このブログでもちょこっと紹介したことのあるKiva。このKivaの活動を日本でも広めていこうというのがKiva. Japanの活動。
Kiva本家のサイトは日本語ではないため、Kiva. Japanはそれを日本語に訳したサイトを作成して、英語が苦手な日本人にも門戸を広げようとしている。

この説明会で始めて知ったが、大和証券がマイクロファイナンス機関への融資を使った金融商品を取り扱い始めたという。驚いた。

また、驚いたこととしては、説明会に来ていた方々の多くが開発業界以外からだった点(あくまで感じた限りですが)。一定数はIT業界の方だったし、質問も「投資」としてKivaを見た場合のものが多かった気がした。マイクロファイナンスやBOPに続いて、「ICT4D」って概念も来年あたり来るなぁ。

開発業界からの方が少ないと感じた理由の一つは、マイクロクレジットの仕組みについて、「あるかなぁ」と思った質問がなかった。それは、マイクロクレジットは無担保で融資するけど、返済の仕組みは結構シビアだという点。

多分色々な方法があると思うが、自分が知っているマイクロクレジットの仕組みはこんな感じ。お金を出す機関(MFIと総称される)は、融資するときに借り手にグループ(4~5人)を作るように指示する。そして、そのグループのメンバーが順番に融資を受けるようにする。グループのメンバーは、他のメンバーが借金を踏み倒した場合、その借金を肩代わりする決まりになっている。ここがポイント。つまり、借り手である貧困層にある人々は、返済能力のない者とグループを組もうとは思わない。なので自然と、貧困層のなかでも、ある程度返済能力のある者同士がグループを組むことになる。(→返済不履行の可能性が減る)

また、グループのメンバーが融資を受けるのは順番で、前のメンバーがきちんと返済しない限り自分の番が来ない。つまり、仲間内でシビアなモニタリングの目が光り、さらに、融資を受けたメンバーは「返済しなきゃ!返済できなかったら仲間から恨まれる・・・。」とプレッシャーを感じて、頑張れるというわけだ。(→返済不履行の可能性が減る)この仕組みは、モノ(土地や家畜など)を担保にしない代わりに、「人間関係」を担保にしているとも言われる。

しかしながら、批判もある。そもそもある程度返済能力があるもの同士がグループを組むわけなので、本当に困っている者はグループに入れない可能性が高い。そしてそれは、貧困層の中での格差を生むのでは?といった点だ。また、返済に困ったときに、仲間からのあまのプレッシャーに耐え切れず自殺した借り手がいるという話を、グラミン銀行について書いたある論文で読んだことがある。

ここで言いたいのは、マイクロクレジットが悪いってんじゃなく、マイクロクレジットにも良い点・悪い点の両方があるということ。そして、マイクロクレジットの結果がどう転ぶかは、現場のMFIに大きく左右されるという点。(Kivaも貸し手を増やすよりも、現場の方へ注力する方針であるらしい)

説明会では上記のようなマイクロクレジットの負の点は、特に質問であがらなかったので、開発業界からの参加者は少数派だったのかと感じた。Kivaの仕組みは凄くすばらしい。大和証券のような会社が上記のような金融商品を取り扱い出したのも、貧困層への融資という考え方が一般的に注目を浴び始めたことが関係しているだろうし、そういった意味でもKivaの効果ってのは凄いプラスだと思う。でも、上記で述べたような側面があるという点は、ちょっと知っておいたほうが良いかと思う(貸し手と借り手をつなぐ役目であるKivaの課題ってよりも、マイクロクレジット自体の課題だけどね・・・)。あと、やっぱり色んな取り組み(ビスネス、チャリティー、ODA、etc)のコンビネーションが貧困削減には重要だと思うッス。

しかし、Kiva Japanの活動は凄い頑張っていて好感がもてた。自分もなんかやんないとね。。。

本紹介”BOPを変革する情報通信技術” バングラデシュの挑戦

Blogサボってました。すみません。。。。。

さて、久々ですがICT4D関連の本の紹介です。

本紹介”BOPを変革する情報通信技術” バングラデシュの挑戦

かの有名なグラミン銀行のムハマドユヌスのグラミングループの通信系の会社と

日本の九州大学による面白いICT4Dの取組みがとっても分かりやすく書いてあります。

テレセンターとか電話貸し等、昔からのICT4Dの話題も含めつつ、

実際に保険分野での適用事例などは面白い。

BOP関連の本や調査研究はいっぱい出ているけれど、ICTにフォーカスして、

しかも、日本語でこの手のテーマの本がでるのってめずらしいんじゃないだろうか?

読みやすいのでお奨め。