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Structural Data Justice(データ活用の妥当性)

久しぶりにManchester大学のWorking Paperを読んでみた。「A Structural Model and Manifesto for Data Justice for International Development」というタイトル。100%理解出来た自信はないけど、自分なりの気づきを書き留めておく。

Source: Heeks (2017) "A Structural Model and Manifesto for Data Justice for International Development", Development Informatics Working Paper, No.69, University of Manchester. [http://www.gdi.manchester.ac.uk/research/publications/di/di-wp69/]

Source: Heeks (2017) “A Structural Model and Manifesto for Data Justice for International Development”, Development Informatics Working Paper, No.69, University of Manchester. [http://www.gdi.manchester.ac.uk/research/publications/di/di-wp69/]

このペーパーの目的は、Structural Data Justice(SDJ)を分析するモデルを提案するものなのだが、そもそもSDJって何だ?という感じ。

読んでみた自分の理解では、組織、社会、政府などがデータに基づく判断・行動を起こすときに、「そもそもどういうプロセスでその判断・行動に落ち着いたのか?」そして「そのデータに基づく判断・行動にはどれくらい妥当性があるのか?」という「データ活用の妥当性」的なもの。そして、上記のモデル(まだ改良途中のもの)がそういった疑問に応えるためのレンズになりえるという提案。

議論の大枠としては、インドとケニアでのデータ活用の事例を用いつつ、以下2つの視点から「データ活用の妥当性」を測るモデルを提案している。

  1. 世銀のWDR2016を始め色々なところで主張されている「ICTは色んな可能性を秘めているけど、最後は人間力」という前提で、「データ活用」と一言で行ってもその活用を決めるのは人間、その活用の技術的なクオリティを上げるのも人間、データから導き出された結果をどう活用する(判断・行動する)のも人間という視点(上記の図の「Capabilities」(人間の能力)の円)
  2. データ活用が吉と出るか凶と出るかは組織や環境(制度的側面、政治的側面(組織や人間の力関係)など)にも大きく左右されるし、また、逆にデータ活用が組織や環境にも影響を与えるという視点

例えば、インドの電力会社が電気料金未払いを防ぐために各顧客先に料金メーターを設置し、データを自動的に吸い上げることを始めたが、未払いが多いのは貧乏人ではなく、金持ち住む地域だった。政治力のある金持ち層から厳しく徴収が出来ない背景が浮き彫りに。そして、電力会社がそのデータを公開し厳しく取り立てするのか否かは、人間の判断によるわけだ。

また、ケニアのスラムの状況を把握するため、スラムに住む住民情報をGIS上にマッピングして彼らの生活改善に活用する試みがある。似たようなプロジェクトのアイデアは自分もガーナ時代に聞いた事がある。勿論、良いプロジェクトだ。例えばそのデータに基づいて、「この地区ではスラム住民が多くバスを利用しているから、路線を増やそう」とバス会社が判断したとする。バス会社にとってもスラム住民にとっても良いことだろう。でも、「そもそもどうしてスラムに不法に居住しなけばならないのか?」、「彼らは元の住居から不当に立ち退きされたのでは?」という根本的な問題から目を逸らすことになっていないだろうか。データ活用においてどの側面に光をあててるのか、それによって陰となる側面は何か?という判断も人間がするものだ。

ふと、先日やっていたNHKの番組「AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン」が波紋をよんでいた件を思い出した。この番組は「AIに聞いてみた」という体で日本の社会問題への解決案を紹介するもので、自分も行きつけのスーパー銭湯のサウナで楽しく見ていた。が、紹介されている解決案はAIが導き出したというものではなく、番組制作側が推している解決策をデータの相関関係を根拠に紹介してたということで、後から非難の声が。(この件については詳しくは東洋経済ONLINE「NHK渾身のAIが炎上した必然」を見てもらいたい)

要するにデータをどう見せるかは共有側の知識・能力次第であり、それを信じるのか疑って見破るのかも受けての知識・能力次第ということだ。そういうセンスがないと騙されてしまう。

このペーパーの最後に、Data Justice for Development Manifestoとして12個の提言がされているが、中でも「Build upstream and downstream data-related capabilities among those who lack them in developing countries.」という点が非常に重要だと感じた。

 

インパクト・ソーシングの形態

ここ最近、このブログでも取り上げたインパクト・ソーシング(以下、IS)についての2つのレポートを読んでみました。1つは先日の「新興市場戦略としての”インパクト・ソーシング”」でも紹介されていたMonitor社(ロックフェラー財団支援)の”Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing”、そしてもう一つはマンチェスター大学のWorking Paper “Towards a Taxonomy and Critique of Impact Sourcing“。

今まで知っているようで知らなかったことがちょっと整理出来た感がある。以下、それぞれのレポートについて紹介。
Towards a Taxonomy and Critique of Impact Sourcing

Taxonomy (分類という意味)という言葉とおり、ISを分類することを試みている内容。以下、5つの観点からSamaSourceやRuralshore、TATA Rural BPO Center, Wipro Rural CenterといったISSP(インパクト・ソーシング・サービス・プロバイダ)を分類している。

  • 観点1. Prevailing Concept: そもそもの事業のコンセプトが何か?(社会開発が目的なのか、お金儲けが目的なのか?的な問い)
  • 観点2. Primary Business Objective: Market-drivenかCommunity-drivenか?
  • 観点3. Captal Investment: 資本に政府やドナーからのドネーションが入っているか?
  • 観点4. Economic Sustainability: 運営資金として政府やドナーからのドネーションに依存しているか、それとも事業収入で自立しているか?
  • 観点5. Return on Investment: リターンは社会開発的な効果か、それとも商業的な効果か?

この5つの観点からISを分類すると、以下の4つのカテゴリに分けられるという結果になっている。カッコ内の言葉は自分が勝手にイメージでつけてみました。

  • Non-profit Social Outsourcing Organization(寄付金に頼っても社会開発が主目的)
  • For-profit Social Outsourcing Organization(まずは利益を出すことが前提)
  • Socially Responsible Social Outsourcing Organization(大企業を中心にCSR的な意味も含めて)
  • Dual Value Social Outsourcing Organization(ビジネスで社会開発!)

下記の表がその結果をしめしたもの。なるほどなんとなく、こういうカテゴリがあるのかってなことがわかる。思わず「だから何?」というふうに思う方もいるかもしれませんが、ISのメリットやデメリットが何か?、課題が何か?、批判は何か?といったことを考えるにあたって、こういう分類は重要。一言で「インパクト・ソーシングの課題は○○だ」といったときに、上記のような様々な種類のISのうち、全てに当てはまるのか、それとも、どれかについて言っているのか?は明確にしておく必要がある。

Taxonomy of Impact Sourcing Organization

Source: Malik, F., Nicholson, B., & Morgan, S. (2013). Towards a Taxonomy and Critique of Impact Sourcing.

このレポートではISについての批判についても触れられているが、その批判は次に紹介するMonitor社のレポートとかぶるので、次にMonitor社のレポートを紹介したい。

Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing
最初のレポートがISの組織形態(資本にドネーションが入っているか等)とか社会開発インパクトにフォーカスを当てているのに大して、このレポートでは、もっとビジネスよりの視点からISを分類している点で違いがあって面白い。具体的には、ビジネスモデルの観点から以下、5つのカテゴリに分けている。(Source: Markets, M. I. (2011). Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing. Working paper, Monitor Group, Mumbai.)

  • Micro Model
クライアントが発注した業務を単純作業レベルに細切れにして主に個人へ発注するパターン。携帯電話だけでも作業できるようなレベルの仕事もあり、支払いはモバイルマネーやairtime(通話料クレジット)で支払うパターンも(実際にtxteagleというアメリカ企業が実施している)。簡単に誰でも参加できるが、ガッツリ儲けるのは困難か。また、管理会社としてはクオリティ・コントロールが難しい場合も。

クライアントが発注した業務を単純作業レベルに細切れにして主に個人へ発注するパターン。携帯電話だけでも作業できるようなレベルの仕事もあり、支払いはモバイルマネーやairtime(通話料クレジット)で支払うパターンも(実際にtxteagleというアメリカ企業が実施している)。簡単に誰でも参加できるが、ガッツリ儲けるのは困難か。また、管理会社としてはクオリティ・コントロールが難しい場合も。

  • Intermediary Model
クライアントと複数のISSPの間に中間業者(Intermediary)が入るパターン。中間業者はクライアント確保に注力して、作業のクオリティ・コントロールはISSPに投げることが可能。多くのクライアントを持ち、多くのISSPを抱えていくことが中間業者の儲ける道。また、最後の仕上げは中間業者が行うことである程度の質の担保も可能か。この形態の事例はSamasource。

クライアントと複数のISSPの間に中間業者(Intermediary)が入るパターン。中間業者はクライアント確保に注力して、作業のクオリティ・コントロールはISSPに投げることが可能。多くのクライアントを持ち、多くのISSPを抱えていくことが中間業者の儲ける道。また、最後の仕上げは中間業者が行うことである程度の質の担保も可能か。この形態の事例はSamasource。

  • Sub-contractor Model
大きなクライアントの下請けとしてBPOを請負う会社があるパターン。インドのParadigm Infotechという大企業の下請け(子会社)としてケニアにあるParadigm Expressが良い例。クライアント(親会社)から安定して仕事がもらえる&大企業のネームバリューがあるので、途上国が始めるBPO産業として有益な形態とも言える。

大きなクライアントの下請けとしてBPOを請負う会社があるパターン。インドのParadigm Infotechという大企業の下請け(子会社)としてケニアにあるParadigm Expressが良い例。クライアント(親会社)から安定して仕事がもらえる&大企業のネームバリューがあるので、途上国が始めるBPO産業として有益な形態とも言える。

  • Partner Model
Intermediary Modelと似ているが、中間業者(Parent ISSP)が取りまとめる相手が小さいISSPではなく、Center Partner(労働集約型のBPOセンター)である点が違う。BPO Center Partnerは従業員へのトレーニングやクオリティ・コントロールを行い、トップマネジメンはParent ISSPが行う。インドのRuralShoresがこの一例。

Intermediary Modelと似ているが、中間業者(Parent ISSP)が取りまとめる相手が小さいISSPではなく、Center Partner(労働集約型のBPOセンター)である点が違う。BPO Center Partnerは従業員へのトレーニングやクオリティ・コントロールを行い、トップマネジメンはParent ISSPが行う。インドのRuralShoresがこの一例。

  • Direct Model
下請けやパートナーという立場のBPOセンターではなくParent ISSPが自社でBPOセンターを設立していくパターン。自社でやる分、クオリティ・コントロールは効くし、需要に見合った規模のセンターを作れる反面、ビジネス拡大には投資と時間を要する。Subcontractor Modelの形態で親会社でない会社から受注した場合はこの形態と見なせる。インドのeGramITなどが例。

下請けやパートナーという立場のBPOセンターではなくParent ISSPが自社でBPOセンターを設立していくパターン。自社でやる分、クオリティ・コントロールは効くし、需要に見合った規模のセンターを作れる反面、ビジネス拡大には投資と時間を要する。Subcontractor Modelの形態で親会社でない会社から受注した場合はこの形態と見なせる。インドのeGramITなどが例。

以上、5つの形態に分けてあるのを見ると、先に紹介した分類とはまた違った面白さがある。ICT4D的な観点からは、いわゆるBOP層にも収入を得る機会を与えたり、携帯電話が使えれば参加できて、支払いもモバイルマネーといったMicro Modelに興味がわくが、一方で経済的インパクトや国としてのICT産業振興を考慮すると、Sub-contractor Modelの方が魅力的に見えたりもする。

最後にISの課題について。Monitor社のレポートの最後に、3つのカテゴリにわけて合計9つの課題が挙げられているたので紹介。

Source: Markets, M. I. (2011). Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing. Working paper, Monitor Group, Mumbai.

Source: Markets, M. I. (2011). Job Creation Through Building the Field of Impact Sourcing. Working paper, Monitor Group, Mumbai.

どれもそのとおりと納得できる課題ばかりだが、特に気になった点に黄色マーカーしてみた。
まず「本当にBPO層を採用、雇用、トレーニングできるのか?」という点。インドのように大卒でそれなりに学があるけど、田舎に住んでいるから職にありつけないというようなポテンシャルの高い人材がいる国なら、少々のトレーニングで使えるようになるかもしれないが、一方、インドとはちがって、中学校に行けなかった若者たちに対して、どれだけのトレーニングをすれば使えるようになるのか?を考えると、Micro Modelでの小遣い稼ぎレベルなら良いけど、本格的なアウトソーシング業務を実現できるISは簡単ではないと思われる。

「Race to the Bottom」というのは、どんどん低賃金で働く層に向かっていくことを示唆している。レポートでは、「does not create new class of “digital sweatshops.”」ということが言われていた。Sweatshopとは低賃金で長時間労働をさせる工場のこと。つまり、服飾産業(イギリスのプライマーク等が途上国で児童労働をさせているのが批判されていたことがあるが)の前例のように、仕事を単純化して安い賃金で働く労働力(児童労働など)を確保する方向へ、途上国のBPO産業が向かわないようにしなくてはいけないということ。
こういったリスクを回避するためにも、単なる価格競争とならないように、途上国のBPO産業はブランディングが必要だと改めて感じる(以前、このブログでも投稿してみた内容同様)。

これら2つのレポートはとても勉強になった。ISが進んでいるのはインドをはじめ、南アフリカ、ケニアという。今後、780,000人の雇用を生み出すと言われるISの波が、どうなっていくのか?ガーナにもその波は来そうなので、ウオッチングしていきたいと思います。

アフリカでソーラーパワーPCは売れるのか?

SOL2

ガーナ市場をターゲットに太陽光発電のノートPCが売られていたことを最近知りました。

と、いってもお店で売っているのを見たのではなく、ネットでそういう記事を目にしただけなんですが…。
2013年にカナダの会社「WeWi Telecommunications 社が、「SOL」という名前で太陽光発電のノートPCをガーナ市場で展開していたというもの。詳しくは、こちのサイトに紹介がありました。

それ以前にもサムソンなどがソーラーパワーを使ったノートPCは販売していましたが、充電にかかる時間が長すぎてあまり訴求効果がなかったという反省点を改善し、SOLは2時間でフル充電可能という性能になっているとのこと。確かに、ソーラーパネルを広げる方式なので、ノートPCの画面の裏だけがソーラーパネルになっているのと比べると、その5倍位の面積がとれている様子です。その分、充電するときには、それなりのスペースが必要だろうなぁ。

SOL気になる価格は、250~300カナダドル(約24,000~28,800円)と、思いのほかリーズナブル。

最初にガーナで売り出したということですが、どれほど売れたのかについては、情報が見つかりませんでした。でも、ガーナ政府のウェブサイトでも、SOLについて書かれており、教育大臣が教育におけるICTの重要性を述べていたり、また、SOLを免税でガーナに輸出したいというメーカーの希望に対して、電力省の人間が、「組立て向上を是非ガーナに作って雇用創出して欲しい」と返していたりと、それなりに話題になった様です。

そして、2014年にはケニア市場にもSOLが展開されており、それに関するニュースがYoutubeに上がってました。

ソーラーパワーを使ったノートPCといえば、OLPCもそうだし、物珍しさが段々薄れてきている思います。そして、やはり一番の疑問は、「売れるのか?」という点。「アフリカの田舎で電気がないとことろで電化製品が売れるわけない」という固定観念は、携帯電話の爆発的普及によって打ち壊されたのはその通り。

でも、個人的には「ノートPCがいるかなぁ?」という単純に疑ってしまう。持ち運びに難がなく、誰かと喋る(もしくはテキストメッセージを送る)という単純な携帯電話なら「欲しい」と思う人達も、エクセルやワードを使いたい訳じゃないからノートPCは要らないんじゃぁないかと。

また、インターネットを使うためなら、スマホの方が携帯電話と合わせて1台で足りるので、スマホに軍配が上がりそう。

そいなると、田舎の電気のない地域でいったい誰がノートPCを欲しいのか?OLPC同様に教育機関にはニーズがあるものの、それ以外にはないんじゃないだろうか・・・、と思ってしまうのです(そういう地域へ出張に行くビジネスマンの方がむしろニーズがありそうな気が)。

でも、こういう製品が出回って選択肢が増えるのはとても良いことだと思う。そんなことを考えつつ、これからガーナのPCショップにSOLがあるのか探してみようと思います。

Hope City Project in Ghana

Ghana Hope City

質問です。この写真なんでしょう?

これ、2016年にガーナで完成予定のテクノロー都市なんです!自分、全然知らなかったのですが、2013年3月にこのテクノロジー都市を建設するプロジェクトが始まっているのでした。当時のニュースがYoutubeにも上がっていました。

BBCでもありましたが、概要はアフリカビジネスニュースに日本語があったので以下コピペです。

「ガーナのローカルテクノロジー企業「RLG Communications」は3年後に完成予定であるガーナの一大プロジェクト「City of Hope」について公式HP上で詳細を述べている。

同プロジェクトはガーナの首都アクラ郊外に世界規模のテクノロジー都市を建設するという壮大なものである。ガーナ国内におけるテクノロジー分野のオフィスを一箇所に集約するのが狙いである。

建設予定地はアクラ郊外のカソアであり、総工費は100億ドル。6棟の高層ビルから成るプロジェクトで、「City of Hope(希望の都市)」と命名された。建物の高さは270メートルとなり、アフリカ大陸内で最も高い建築物となるという。完成後、建物内では25,000人が働くことになるといい、3年間の工事期間中には50.000人分の雇用が見込めるという。

それぞれの棟内には情報機器の組み立て工場、新テクノロジーを習得するための養成所、銀行、商業施設、レジャーセンター、スポーツジム、医療や教育サービス関連施設などが併設されるという。

ジョン・ドラマニ・マハマガーナ大統領は、民間企業支援の重要性を認識しており、先端分野を担う民間企業を政府が後押しすることを約束している。

RLG Communicationは先日米マイクロソフト社とパートナーシップ協定を結び、今後はマイクロソフト社のソフトを西アフリカ向けにローカライズしていくことに尽力する。RLG Communicationは携帯電話、ノートPC、タブレットPC、液晶ディスプレイなどの生産を行っており、中国、ナイジェリア、ガンビアにオフィスを構えている。」

ガーナというとアフリカの中でもICT分野で抜きんでているのは、これまでもいくつかの記事(例えば、「ガーナ:新産業として注目されるICTとBPO~世界銀行の取組み」、とかこのブログだと「アフリカのFOSS開発者は、4,527人?」など)でなんとなく知っていたものの、こんなビックプロジェクトがあったとは。

本プロジェクトと同様の100億ドル規模の20万戸住宅建設プロジェクトが韓国企業とのPPPで実施されているものの資金調達で難航しているといった課題から、本プロジェクトにおいても資金調達が問題なく出来るのか?という懸念を指摘する声もあるようですが、これ実現したらどうなるか、他のアフリカ近隣国への影響なども含め楽しみです。ケニアのKonza Techno City Projectなどと共に、アフリカのイメージを変えることになるのではと期待です。

※ケニアのKonza Techno City Project
ケニアが5,000エーカーのサバンナの土地に、アフリカで最も近代的な都市の建設を計画。これも100億ドルの資金が投入される。場所は首都ナイロビから南に60キロで、ケニアのシリコンサバンナと言われている。この都市建設で20万人の雇用を創出することになる模様。

しかし、日本語でこのHope City Projectについて書いてあるサイトを探してみたのですが、ほとんどないのに驚きました。まだまだ日本とアフリカの距離感は遠いんだと改めて実感。

ケニアのM-PESA成功から学べる点とは?

先日、神戸情報大学院大学でのICTイノベーターコース紹介イベントにて、ICT4D成功事例の紹介する機会を頂きました。成功事例として何をとりあげるか悩んだ挙句、このブログでも何度か紹介しているケニアのM-PESAを取り上げることにしました。

友人のTakano氏から色々と情報を得たり、元同級生のChrisの論文を読んでみたりと、改めて調べてみると知ってるようで知らない発見がかなりあり、とても勉強になりました。(Takanoさん、ご協力ありがとう!)折角なのでプレゼン資料を掲載してみます。

そして、当日は炭谷学長の探究実践ワークショップも行われました。あるテーマ(課題)についてのソリューションを作り上げるワークショップでしたが、参加者の方々は皆初対面にも関わらず、非常に限られた時間で興味深いソリューションを作り上げていました。大学院時代のグループワークを思い出しました。大変だけど楽しいもんなんですよね、グループワークって。

この秋から始まる神戸情報大学院大学の「ICTイノベーターコース」では、イノベーションってのが一つのキーワードですが、最近、「イノベーション」とは何だろうか?とふと考えました。上記スライドでケニアのM-PESAがどうして成功したのかについて説明していますが、最後は、やっぱりサファリコムの気合と根性が大きな要因だったんだろうと思ってます。ICT4Dの視点でいえば、成功するまでプロジェクトをドライブ出来る「ICT4D Champion」の存在ってことなんだと。そう感じた理由をちょっと書いてます(ICTとは関係ないのですが・・・)。

エチオピアの革は世界最高級で超高級車のシートなんかにも使われています。タイガーウッズもグラブにはエチオピアのシープスキンを使っているとか。でも、エチオピアの革産業には高度なデザインや加工技術がないため、革は原材料としてヨーロッパ等に輸出され、製品化はイタリアとかで行われるケースが多いのです。そのため、最高の革を持っていてもエチオピアよりも儲かるのはイタリアなど製品化をしている国だったりします。そんなエチオピアの革を、エチオピアで製品化し付加価値を高めて日本で販売しようというビジネスを行っているandu ametって会社があります。

その会社を企業したのは自分の青年海外協力隊時代の友人である鮫島さんでした。立上げ時にちょこっとお手伝いをさせてもらってたのですがは、「アイデアには同意するし、エチオピアのためにもなるし、頑張ってほしい。けど、エチオピアのこと、エチオピア人のことを良く知っているだけに、本当にエチオピアで日本人が買いたいと思うようなクオリティの高い製品が作れるのだろうか・・・」と、かなり心配でした。

でも、鮫島さんはハンパない努力とバイタリティで多くの方々を巻き込み支援・協力を得つつ、色々な困難を乗り越えて(今も乗り越えている最中だと思います)、自分から見てもかなりイケてる製品(例えば下の写真)を作り上げ、有名百貨店で販売するなど事業としても一定の軌道に乗っている様子です。そして、日経なんとかとかのビジネス系の表彰を受けたり、国際的な評価も受けたりと、急成長している最中です。

今回、M-PESAの成功要因について調べていて、このandu ametの成功要因ともかさなる部分があると感じました。それは要するに「気合いと根性」なんだと。携帯を活用して送金出来ないかな・・・?とか、途上国の製品を日本で販売出来ないかな・・・?ってアイデア自体は結構多くの人々が思いつくんだと思います。なので、そのアイデア自体はそんなイノベーションじゃなく、「そのアイデアを形にして実施して成功させること」がイノベーションなんだと改めて思いました。そんなわけで、M-PESA成功要因についてのプレゼン資料の最後に、「気合いと根性」の話を持ってきたのでした。イノベーションの種は「良いアイデア」じゃなくて、実は一歩踏み出す「気合いと根性」なのだろうと思いました。

ande amet

ICT4Dに必要なのはスティーブ・ジョブズか

先日、アフリカの農業分野における携帯電話の活用状況に関する勉強会に参加させてもらった。自分も知らないサービスが思いのほか発展しており、非常に勉強になった。例えば以下のようなサービスがある。

Esoko
アフリカの15ヶ国で市場情報や技術情報などを農民にSMSで配信したり、業者と農民のマッチングをSMSを通じて支援するサービスなどを実施。国によってはSMSだけでなくボイスメールも利用可能。モーリシャスとガーナを拠点とするプライベート・カンパニーが世銀グループのInternational Finance Corporation (IFC) とSoros Economic Development Fund (SEDF)より資金を受けて実施している。

KACE
ケニア農産品取引所(KACE)がケニア、タンザニア、ウガンダで実施するサービス。農民や業者に対して市場情報などをSMSで配信するほか、情報提供用のキオスク設置も実施している。

ECX
エチオピア商品取引所(Ethiopia Commodity Exchange)が実施するSMSや音声での市場情報提供サービス。

ZNFU
ザンビア国家農民連合(Zambia National Farmers Union)が実施する市場情報提供サービス。農民に対するバイヤー情報の提供や農作物の輸送業者とのマッチング支援も行っている。

上記以外にも山ほどこういったサービスがあり、天候情報の提供や、モバイル・バンキングと連携した天候インデックス保険サービスなどもある。

気になったのは各サービスのサステナビリティ。聞くところでは、サービスの多くは援助機関や政府からの資金支援がないと、まだ採算がとれない段階であり、援助からビジネスへ脱皮するには、ユーザ数の拡大など超えるべき課題がある。中には最初はユーザ確保のために無料でサービス提供を開始し、ある一定期間を過ぎたら有料にするといった方法が取られたプロジェクトなどもあるが、有料になったとたんにユーザが激減してしまうという結果になることも少なくない。

話は変わるが、現在改めてICT4Dについて基礎的な本を読んでいる。その中で、(一般的にもよく言われていることですが)「ICT4DプロジェクトはSupply-Drivenじゃいけない、Demand-Drivenじゃないといけません」ということが書いてある。このDemand-DrivenとかUser-Orientedとかが重要ってのは良くわかるが、「言うは易し行うは…」というのが実際のとろだろう。

例えば、上記の農業分野の携帯サービスで考えると、サービスが有料になったら農民が使わなくなるということは、その情報に十分な価値を感じられてないということだ。つまりSupply側が価値ありと考える市場価格とかバイヤー情報とか天気予報とか、そういったものが金を払うほど重要とは思っていない層がいるということ。「じゃ、農民にどんな情報ならお金払ってでも欲しいですか?」とDemand-Drivenなアプローチでいったらどうなるか?サステイナブルなビジネスモデルを実現できるのか?

必ずしも上手くいくとは言えない気がする。理由①上記のようなサービスにお金を払わない人は、そもそもサービスや情報に金で買うほどの価値があるかわからないかもしれない。理由②お金を払ってでも欲しい情報は、今は存在しない情報(今ある情報を分析・加工して精製される新しい情報)かもしれない。理由③払えるだけの金がない。

①    最初の点については、そもそも情報だけでは価値がなく、それを理解してアクションをとるからこそ価値(収穫量増加や利益増など)が生まれるわけなので、情報を理解したり活用したりする能力がないとダメということ。この場合は情報をどう活用するかの啓蒙活動的なことが必要になってくる。さらに、それが出来たとしてもアクションを起こせるだけのリソースもないといけない(例えば、害虫対処方法の情報をもらっても農薬を買うお金がないとか、市場価格情報を得ても価格が高まるまで農作物を保存しておける場所がないとか)。また、天候インデックス保険なんかについては、そのようなサービスの仕組みやメリットを理解する必要がある点もハードルである。モバイル・バンキングがケニア以外であまり成功しない理由の一つに「ユーザがそもそも金融サービスを理解していない」という点があげられるが、それと同様である。

②    二番目の点についてですが、こっちのほうが農業分野に限らずいろいろな分野での根本的な問題の気がする。つまり、欲しいものが何か?と聞かれても、今存在しない物やサービスについては、明確に答えることが非常に困難ということ。依然も紹介したけれど、スティーブ・ジョブズの言葉で、「多くの場合、人々は自分の欲しいものが何なのか、見せるまでわからないものだ」というのがある。農民が有料になったら使わなくなるサービスが多いということは、まだ「本当に欲しい情報」が提供はされてないのかもしれない。iPhoneが販売される前に、ああいう携帯電話が欲しいと言えたユーザはほとんどいなかっただろうに、iPhoneが発売されたら、みんな欲しくなって買っている。ICT4Dプロジェクトにおいても携帯電話の活用とかを考える際には、iPhoneの例ように、今はないけどみんなが欲しがる情報やサービスってのが何かを考えることが大切。TechnologyはInformationを伝達したり、Communicationを促進させるツールなので、TechnologyよりInformationの中身が重要。そして、こう考えてみると、決して「Demand-Driven」がベストなアプローチともいえないなぁと感じます。

③    三番目の点は、本当に難しい。そういう人ほど助けが必要なのに、情報提供サービスを使うだけの余裕がある農家の方がどんどん豊かになって、より格差が開いてしまうということに。なので、そういう層には別のタイプの支援をするしかないということ。ICT4Dだけが援助じゃないってことも忘れちゃいけないです。

と、色々と書きましたが、特に上記②の点が気になっている。ICT4Dのアプローチとして「Demand-Driven」とか「参加型」が良いという話はよくされているものの、本当に必要なのはスティーブ・ジョブズ的なイノベーションなのかもしれない。

アフリカの携帯アプリについて

ケニアの庶民の足として使われているのはマタツというミニバス。ワゴン車にギュウギュウ詰めになるほどお客を乗せて、ナイロビを走る。そんなマタツがひしめくナイロビ市内は、なかりの渋滞らしい(←マタツについて書いてある、あるブログより)。自分はナイロビに行ったことがないので、実際には知らないのですが、エチオピアのアジスアベバでも同様に庶民の足はミニバスで渋滞もかなりのもの。なんとなくイメージはわく。

そんなマタツをどう乗り継げは効率的に目的地に行けるか?というニーズに応えてくれるスマホアプリがある。その名も、マタツ・ナビゲーション・システム「MATNAVI」。なるほど、便利そうだなぁ。アジスアベバで同様なアプリがあったら使いたいところだ。

そういえば、以前このブログでもケニア政府がローカルコンテンツ作成支援をしているという記事を書いたが、そんな政府の支援もこういったアプリの誕生の背景にはあるのかもしれない。また、低価格のスマホが普及したのもケニアは早かったのだろう。さらに、これまた以前に紹介したネタですが、ケニアに住むウガンダ人が開発したiCheki(スワヒリ語でI seeという意味)という、タクシーの場所がわかる機能を持つ携帯アプリが、2010年にヨーロッパでの携帯アプリコンテストで賞をとったこともある。ケニア、やるなぁ。

現地ならではの便利アプリってのは、探してみたら色々ありそうで興味深い。それぞれの国独自の社会・経済・文化といった面が反映されているのだろう。そのうち、「携帯アプリから紐解くお国文化」的な研究をしたら、本でもかけそうですな。ちなみにエチオピアでは、独自のカレンダー(エチオピア暦)が使われており、1年は13ヶ月、新年は9月11日。さらに西暦2012年の現在はエチオピア暦では、2004年。このグレゴリ暦とエチオピア暦を変換するアプリ(携帯用じゃないけど)がありました(エチオピア人じゃなくて日本人が作ったのかな・・・)。

と、そんな感じで各地域特有のアプリは面白いなぁと思っていたら、携帯電話会社のOrangeがアフリカでスマホアプリコンテストをやっているというニュース“Apply now for the Orange African Social Venture Prize”を発見。優秀者には10,000〜25,000ユーロの賞金と6箇月間の事業支援サポート(事業化コンサルやIT専門家からの支援)が付くというもの。昨年度は、以下の3件がWinner。

  • Horticultural Tele-Irrigation: a Nigerien project that puts mobile technology in the hands of horticulturalists
  • Agasha Business Network: a Ugandan community-based e-commerce platform that promotes small African businesses to the global market
  • Kachile: an Ivory Coast e-commerce start-up for African craft products

アフリカ進出を検討する日本企業も増えてきたというような話を耳にする。そして、進出したいけどどこから手を付けるべきか・・・と悩んでいるケースもあるようだ。特にアフリカ×ICTという一見ありえなそうな分野ではなおさらリスクがありそうで敬遠されがちかも。でも、進出を検討する際には、このようなアプリコンテストとかビジネスプランコンテスト的なものから入っていくのも、ローリスクな始め方としてありじゃないかと思った。

アフリカでの携帯アプリコンテストは、世銀やグーグルなんかもやっているので、新しくはないけど、逆にいえば、それだけ受入られ易いと言える。例えば、アフリカ進出の取っ掛りがほしい日本のICT企業は、携帯アプリコンテストを実施すれば、応募してくるアプリやビジネスプランの種類や質から、現地のことを知ること(マーケティング情報を得ること)が出来るし、Orangeのように優秀者のビジネスを支援することで、その人(優秀賞をとった起業家や学生など)を現地ビジネスのパートナーに育てられるかもしれない。また、そいったコンテスト&支援を会社のCSR活動として位置づけてやれば、それなりのアピール効果もあるかもしれない。さらに、ターゲットとして想定している国の政府機関(経産省とか商工会議所みたいな機関)を巻き込んで実施出来れば、色々な面でより効果的かもしれない。実際に、Orangeやグーグルをはじめ欧米企業が取り組んでいるけれど、日本企業にとってもこういった小さく始める方法も可能性としてありだと感じた。