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ICT4Dの教科書

ICT4Dを勉強したい人はICT4Dの教科書を探したことがあるかと思います。でも、これまでそれらしい教科書はなかったんじゃないでしょうか。ところが近々に教科書が出版されます!僕が書きます!!

というのは嘘です。

マンチェスター大学大学院のICT4DコースのRichard Heeks教授がICT4Dの教科書を出版するそうな。amazonで見ると10月下旬の出版予定。そして、Heeksのブログにそのコンテンツの一部がDraftとしてアップされてました。以下のサブタイトルで全9回の講義用パワーポイント教材がダウンロード出来ます。

– ICT4D Course Introduction

– Session 1: Understanding ICT4D

– Session 2: Foundations of ICT4D

– Session 3: Implementing ICT4D

– Session 4: ICTs and Economic Growth

– Session 5: ICTs, Poverty and Livelihoods

– Session 6: ICTs and Social Development

– Session 7: e-Governance and Development

– Session 8: ICTs and Environmental Sustainability

– Session 9: The Future of ICT4D

ありがたいことに先生用に、生徒に課す課題や演習のインストラクション的なことも書いてあったりします。ただ、パワーポイントだけあって基本的にはフレームワークやモデルやグラフなどのビジュアルな教材なので(読んで理解するには、出版後に本を買って文章も一緒に読む必要アリでしょう)、見ただけでは理解出来ない点も多いと思いますが、「これからICT4Dについて勉強したいけど、実際どんなこと勉強すんだろ?」と思っている人には参考になるかと思います。ICT4Dというかなり幅広いテーマを今の途上国開発や技術革新に沿って多面的な切り口から解説・分析している点がわかるだけでも結構参考になるかも。

ちなみに、ICT4Dの教科書的な本としては、以前このブログで紹介した外山健太郎氏(このブログの管理人Knotの指導教授)の「Geek Heresy」やTim Unwin氏の「ICT4D」などがあるけど、それらと比較してHeeksの本はよりフレームワークやモデルといった理論に重きがおかれている感じです。上記の2冊はいずれも読んでみた感想として、理論的でありつつも、そこに著者の想いがより込められている感じ。読み物としての面白さはそっちの方があるかもしれないですが、Heeksの本は実際のプロジェクトをどう理論に落とし込むか、という点に重きが置かれている感じ。

日本にいると英語力落ちるので10月に出版されたら自分も読んで勉強せねば…。

ITアウトソーシングと途上国開発(論文通らず…)

esko人材募集

先日の投稿「IT Sourcing for Development: International Workshop@マンチェスター大学」で紹介したワークショップの論文募集にトライしてみることにしたという報告を以前しましたが、その結果がきました。残念ながら通らず…。無念な結果に終わってしまった。
ブログを通じてとても勉強になるコメントをくれた皆さん、スイマセン。

それでも最終的な結果をもらうまでに何度か事務局との質疑応答があり、それはそれで有益でした。それを通じて選考が通らなかった理由も明確に理解出来たので、今後、同様の学会発表などにトライする際の参考になればと思い、以下紹介したいと思います。

自分が書こうとしていた内容は、既存レポートやネットの情報から得られる情報を用いて(=つまりSecondary Data)、途上国政府がIT Outsorcingによる発展を目指す場合の留意点等を整理してみるというものでした。

しかしながら、このワークショップに参加する他の方々は、自身が実施したり、直接調査したりした結果(=Primary Data)を用いた分析結果等を論じるということで、自分の想定した論文内容ではちょいと太刀打ち出来ないといったところだと理解しています。

また、書きたい内容は非常に当たり前すぎたというのも理由の1つでした。「これまでImpact Sourcingや途上国のIT Outsourcingといったテーマがいくつもの論文が各種の機関や研究者によって書かれているが、あなたが今回書く論文は何かSomething Newな発見があるのか?」という質問もあり、そういわれると、そこまでの想定はなかったなぁと反省。

最初のひらめきというか思いつきで、ささっとabstractをまとめて応募しちゃったけど、もっと1ヶ月くらいかけてじっくり考えるべきでした。

以上、結果報告でした。

写真は、携帯電話を使った農業関連情報提供サービスをアフリカ各国で展開しているe-sokoの人材募集。ガーナの現地新聞に掲載されていました。こういう実務経験を経た人たちが訴える地に足のついた研究内容に比べると、自分の議論はどうしても空中戦になってしまう。それを補うためににゃ、もっと論文とか読まないとなぁ。

難しいITプロジェクト、厳しい途上国開発、失敗に終わるICT4D、だけど・・・

ICT4Dプロジェクトの大半が期待通りの成果が上がらず失敗に終わっているという話を良く聞く。ICT4Dについて勉強しに行ったマンチェスター大学でも、「またか・・・」という程、失敗例のケーススタディを読んだ。

今回も「またか・・・」という話題。当ブログの元ネタとして使わせてもらっているICT4Dブログにて、「Why ERP System in Developing Countries Fail(何故、途上国のERPシステムは失敗に終わるのか)」というタイトルで、途上国の公共団体やNGO等の組織がERPシステムを導入した場合、失敗に終わるケースが多いことが指摘されている。

このほかにも、途上国のe-governmentプロジェクトの8割以上が「完全な失敗」もしくは「部分的な失敗」に分類されるというレポートや、教育分野でのICT利用は失敗に終わるケースが多いといったような主張は多くある(例えば、OLPCに対する議論でも同様の主張は見られる)。

こういった「ICT4D失敗説」の多くは、何故失敗するのか?という分析に重きが置かれている。そして、どうすれば失敗しないのか?という代替案になると、主張はされているものの失敗要因の分析に比べると若干説得力に欠ける感がある。なぜなら、様々な研究者やInfoDevに代表されるようなICT4D推進派援助機関などが「代替案」を提案しているもの、未だに「ICT4D成功例激増!」といった記事は目にしないからだ。

そもそも、途上国が背景でなくとも、大規模なITシステム導入プロジェクト(=“ICT” of ICT4D)の成功率は低い。さらに、この数十年間に莫大な援助をしているにも関わらず途上国開発が予想通りに進んでないことからも、一般的に途上国開発プロジェクト(”D” of ICT4D)が大成功に終わる可能性も高いとはいえない。これら2名の劣等生を生みの親とするICT4Dが、そんなに簡単にいくわけがない。特に最近、IT関連の仕事に携わっているが、なかなか思い通りに行かぬことが多い。個人的にも、改めて単なるITプロジェクトの難しさを痛感し、重ねて、ICT4Dによる途上国の発展はかなりハードルが高いと感じる。

ただ、プロジェクトとしてのICT利用ではなく、携帯電話やインターネットのようなICTの普及によるポジティブなインパクトについては、途上国の発展に大いに貢献していると思うし、非常に期待が出来る。ICT4D分野の研究も、ERPとかe-government(○○申請システムとか)といった個別システム導入に関するプロジェクトやOLPCなどのICT機器導入プロジェクトよりも、通信網整備や通信コスト削減といった情報インフラの整備そのものや、その情報インフラをどう使うかといったユーザ支援プロジェクトに対象が移っていくべきだと思う。

ICTとDevelopment どっちからのアプローチ?

Manchester大学大学院(IDPM)で勉強していたとき、先生であるHeeksはICT4Dプロジェクトの成功には、ICTもDevelopmentもわかる人材(=ICT4D Champion)が必要とされている、ということを言っていた。国際協力業界の人々や途上国政府の人々は得てしてITに弱く、ITコンサルタント等のIT業界の人々の話がきちんと理解出来ない。その逆に、IT業界の人々は主に先進国のITプロジェクトで経験をつんで来た人々で、途上国のことに疎く、その多様性や文化などへの配慮に欠ける点がある。したがって、両者のコミュニケーションが上手くいかないと、途上国の背景にマッチしないシステムが出来てしまう=ICT4Dプロジェクトは失敗してしまう・・・ということになる。

Heeksの書いたWorking paper“The ICT4D 2.0 Manifesto: Where Next for ICTs and International Development?”には、ICTもDevelopmentもわかる人材とは、Conputer Science, Information Systems, Development Studiesの3領域の知識を持ち合わせる者と書かれている(図参照)。

上記のような人材がいたら心強いのは確かだが、しかしながら、ICT4Dに係る人々は、IT業界に身をおきで途上国開発にも興味がある人か、国際協力業界に身をおきIT活用にも興味がある人のどちらかだろう。となると、必然的にICTより、もしくはDevelopmentよりのいずれかに強い人材となる。両方に長けているという人材はそうそう居ないだろう。

例えば、自分もそのようなスキルを見に付けたいと思うが、実際は超困難。自分は国際協力業界に身をおきITについても多少はかじっているというタイプだが、「かじっている」レベルからの上昇は国際協力業界にいる限りかなり難しい。また、IT業界の人だって、ICT4Dプロジェクトで途上国へ数年行けば、その間は最先端のIT技術にキャッチアップすることが出来ないわけで、常に途上国に居たのでは、近い将来、仕事がなくなってしまうのでは・・・。

Heeksは上記のWorking paperでICTもDevelopmentもわかる人材は、教育・研究機関等での両領域についての勉強や、実際のICT4Dプロジェクトへの参加経験から育成されるといっているが、実際はそんな簡単じゃないだろうと感じる。さらに、最近はIT業界に身をおく人々のICT4D分野への進出が目立つし、活躍もしていると思う。そうなると、ますます国際協力業界に身をおきITもわかる人が必要になってくるので、自分はそういう人材になりたいと思うが、いやはや、ICT4D Championへの道のりなかなか険しそうである。