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世銀のWDR2016 Digital Dividendsをオンラインで学ぼう!

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このブログでも何度かネタにしている世銀のWorld Development Report 2016 “Digital Dividends: Strengthening the Analog Foundation of the Digital Revolution” がオンラインで学べる!とう話。

“途上国では、電気や安全な水よりも携帯電話をもっている世帯の方が多い”

とか

“産業革命での蒸気機関技術の発明後、その技術がインドネシアに波及するまでには160年かかり、電力の発明後、それが韓国に波及するまでには60年を要した。だが、コンピュータがベトナムに波及するまでには15年、携帯やインターネットについてはその発明からものの数年で途上国にも波及した”

等、色々とインパクトのあるの数字がちりばめられているレポートの内容を全6回にわけてオンラインで勉強できます。しかも無料!。

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MOOCのなかでも有名なedXにて全6回の講座が11月7日から開始されます。さっき思わず申し込んでしまいました。そして5USD払ってオプションで修了証書を貰うことにしちゃいました。楽しみです。関心ある方は是非チェックしてみて下さい。

ゲーム for Development

 

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Africa Quest.comより

JICA(国際協力機構)がアプリゲームをリリースした。そこで働いている立場としても、結構驚きました!そのアプリは、アフリカの農業を疑似体験出来るSHEP (Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion)というもの。SHEPというのは、農業分野での支援アプローチのことで、市場で売って儲かる農作物を作りましょう(「作ってから売る」じゃなく「売るために作る」)というもの。このアプローチを学ぶことが出来るアプリです。このアプリの詳細は、Africa Quest.com「JICAが監修!アフリカの農業を疑似体験できるアプリ”SHEP”で遊んでみた」に詳しく紹介されてるので、是非、見てみて下さいまし。

ゲームを途上国開発に役立てるというアイデアといえば、以前、「Gameと国際協力」というタイトルで途上国開発を考えるきっかけとなるゲームをいくつかこのブログで紹介したことを思い出した。その中でも世界銀行が作ったEvokeというゲームはなかなか興味深かったので、改めてちょっと調べてみた。

このEvoke (呼び起こす、喚起する、引き起こす、呼び出す、という意味)は、いわゆるARG (Altanative Reality Game:代替現実ゲーム)というジャンルのもの。アフリカにおける様々な社会問題(女性の地位向上、災害や暴動時の緊急ネットワーク構築、食料問題への対策など)に対する改善策(Social Innovation)をプレイヤー達が考えるというもの。プレイヤーは与えられた問題の解決案作成のため、チームになってオンライン上でコミュニケーション(ブログを使ったり、映像や動画を共有したりして、各自の知識や調べたことを共有する)をとり、最終的に質の高い改善案をまとめあげる、というのがゲームのゴール。当初はアフリカの若者を対象としていたが、実際は世界150ヶ国から、援助開発業界のプロや教育者など様々な人たちが参加し、最終的な登録ユーザー数は19,324人に。

ゲームは2020年の想定でアフリカ問題に関連した色々な問題が発生する。プレイヤーはその問題解決を依頼された専門家的な立場。ゲームの期間は10週間。この期間に毎週1つの課題が与えられ(問題が発生する)、プレイヤーはそれを解決するために「学ぶ」(指定されたブログポストを読んだり)、「行動」(実在するSocial InnovatorとFacebookで友達になったり、Twitterでフォローしたり、ブログの読者登録したり)、「想像」(自分でもブログを書いたり、Social Innovationプロジェクト案を提示したり)という3つのプロセスを行う。書いたブログについてはプレイヤー同士でポイントを付与出来るので、自分のアイデアがどれくらい賛同されているかもわかる。優秀なプレイヤーは世界銀行から「World Bank Institute Certified Social Innovator」に認定されワシントンD.C.での「Social Innovation Conference」に招待されたり、優秀なプロジェクトアイデアには資金がついたり、という現実世界ともリンクしたゲームになっている。

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http:www.urgentevoke.comより

ちなみに面白かったのが、一番最初の課題は、「東京都知事が米不足に困っている」というストーリーから始まる食糧危機(ナイジェリアでのトウモロコシ不作)を解決するという点。上の漫画の吹き出しを見ると、「米のストックがあと一ヶ月で底をつく」ってなことが書いてある。

A Parallel World for the World Bank: A Case Study of Urgent: Evoke, An Educational Alternate Reality Game」という論文でこのEvokeについての考察があった。その中で、ユーザ数とゲーム開発費用の話があったので紹介したい。

 

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David I. WADDINGTON (2013) A Parallel World for the World Bank: A Case Study of Urgent: Evoke, An Educational Alternate Reality Game, Revue internationale des technologies en pédagogie universitaire, 10(3), pp 42 – 56.

上記は当初目標にしていたユーザ数と実際のユーザ数の比較表。そしてゲーム開発費は500,000USD (5,000万円か、結構高いね…)。ターゲットとしていたアクティブユーザ数が700ってことは、1ユーザあたり714USDのコスト。Completeできるユーザは7名ということは、1ユーザあたり71,428USD。高すぎだろ!&7人しかクリア出来ないってどういうゲームだ?という気がする。しかし実際は目標数値以上のプレイヤーが参加したというのは救いか。

この論文を読むまで知らなかったのですが、途上国開発だけではなく、教育分野でのゲーム活用というのは結構メジャーなテーマらしい。実際、Manchester Metropolitan UniversityとUniversity of Boltonが共同でARGOSI (Alternative Reality Game, Orientation, Socialization, and Induction)プロジェクトというのを2008年にやってたりする。

「効果をどう測るか?」という課題がありそうだけど、ゲームを使った啓発・教育というのは、ICTが普及すればするほど色んな可能性がある。そういえば、EvokeにはOLPC版もあるそうな。今回JICAが作ったアプリもどういう効果をもたらすのか(どう評価されるのか?)興味深いところです。

WDR2016から気になる情報まとめ —世界銀行がITを2016年の主要テーマに(その3)—

携帯普及のスピードが凄い

Source: World Development Report 2016, Word Bank

世界銀行のWorld Development Report 2016のテーマが「Digital Dividends」であり、その内容については、これまでも何回がネタにしてきました。今回は、このレポートから気になる情報や今度何かのときに使えそうな表現をまとめてみました。

これ、自分がどっかでプレゼンしたり報告書を書いたりする際に、結構使えるんじゃないかと思い、やってみました。皆さんも「おっ、使える」と思ったら、一部、意訳しているところもあるので必ずWDR原本を見てから引用して下さい。カッコ内がページ番号(全てOverview部分のページ番号)です。

  1. 世界の40%以上がインターネットにアクセス出来る。底辺の20%の世帯でも10人中7人近くが携帯を持っている。最貧困層にとっては、トイレや安全な水へのアクセスよりも携帯電話へのアクセスがしやすいというのが現状。(Foreword, xiii)
  2. ケニアではM-PESAにより送金コストは90%低下した。(Foreword, xiii)
  3. 世界の24億人が身分証明書(出生証明等)を持っていない。(Foreword, xiii)
  4. 世界の約60億人は高速インターネットにアクセス出来ない。(Foreword, xiii)
  5. Google検索回数は毎日40億回以上だが、一方で世界の40億人がインターネットにアクセス出来ない。(Foreword, xiiv)
  6. 途上国では、電気や安全な水よりも携帯電話をもっている世帯の方が多い。途上国で下から5分の1のに該当する貧困層でも、70%近くが携帯電話を持っている。インターネットユーザ数はここ10年で3倍以上になった(2005年の10億人から2015年は32億人までに増加する見込み)。(2)
  7. 企業同士はこれまで以上に繋がっているが、世界の生産性の伸びは低下している。デジタル技術により働き方が多様化しているが、労働市場は二極化が進み不公平になっている(特に先進国にて、そして途上国でも徐々に)。民主主義は広がっているが、自由で公平な選挙は減っている。これらがデジタル技術の普及のせいだと言うことではないが、世の中を便利にするデジタル技術が普及しているのにもかかわらず何故?。(2)
  8. それには2つの理由がある。1つ目は、依然として60億人近くがインターネットにアクセス出来ていないため、デジタル技術の恩恵を受けていないという点。2つ目は、デジタル技術による恩恵が新たなリスクにより相殺されているという点。(2−3)
  9. 驚くことはなく、より良い教育を受けている者、よりインターネットへのアクセスが出来る者、より能力が高い者達が最もデジタル技術の恩恵を受けている。(3)
  10. 世界の40億人はインターネットにアクセス出来ない。20億人近くが携帯電話を使っていない。約5億人が携帯電話の圏外に住んでいる。取り残された人達全員にインターネットアクセス環境を提供することがSDGsのターゲットの1つになっている。(4)
  11. 産業革命での蒸気機関技術の発明後、その技術がインドネシアに波及するまでには160年かかり、電力の発明後、それが韓国に波及するまでには60年を要した。だが、コンピュータがベトナムに波及するまでには15年、携帯やインターネットについてはその発明からものの数年で途上国にも波及した。(5) (⇒この携帯やインターネットの普及の早さが電力などとの比較で冒頭のグラフで良くわかる!)
  12. 途上国でのICT技術利活用については多くの好事例があるものの、先進国ではそれらよりも遥かに効果的なICT技術の活用が以前より行われて来ている。(6)
  13. 平均して途上国でも10人中8人が携帯電話を持っている。(6)
  14. 携帯電話については、高所得国では98%の普及率に対して、最も低い普及率であるサブサハラ・アフリカ地域では73%である。(6)
  15. 高所得国では人口の80%がインターネットにアクセス出来るが、それに対して途上国では人口のたった31%しかインターネットにアクセス出来る環境にない。(6)
  16. インターネットユーザ数世界ランクは以下のとおり(6)
    1位:中国
    2位:アメリカ
    3位:インド
    4位:日本
    5位:ブラジル
  17. 2014年までに、国連加盟国193カ国のうち、全ての国が国家のウェブサイトを開設している。
    101カ国においては、(電子政府サービス用に)個人登録アカウントを作成可能、73カ国においては、所得税の手続きが可能、60カ国においては、会社登録が可能、190カ国が国家予算管理システムを利用、179カ国が関税システムを利用、159カ国が税金管理システムを利用、148カ国がデジタル認証システムを利用、20カ国は多目的デジタル認証プラットフォームを利用。(6)
  18. ブロードバンドインターネットを楽しむことが出来るのは世界人口のたった15%。途上国でのインターネットアクセスは携帯電話からが主だが、依然として20億人近くは携帯電話をもっておらず、世界人口の60%はインターネットにアクセス出来る環境にない。(6)
  19. インターネット接続できない人達の多くはインド人と中国人だが、北アメリカ大陸ですらまだ1.2億人がネット接続出来ない環境にいる。(6-7)
  20. 例えば、ウィキペディアへの貢献度は、アフリカ全土からよりも香港からのほうが大きい。インターネットユーザ数ではアフリカ全土は香港の50倍であるにも関わらず。グーグルにインデックス付けされている一般ユーザが作成したコンテンツの85%がアメリカ、カナダ、ヨーロッパからのものであり、科学系学術誌の発行元も同様。(8)
  21. 欧州EUにおける収入トップ20%はボトム20%の層に比べて45倍も頻繁にeサービスを利用している。(8)
  22. ICT産業がGDPに占める割合はOECD加盟国で約6%という低さであり、途上国ではさらに低くなる。
    世界的ICT企業のトップ14のうち8を抱える米国ですら、ICT産業がGDPに占める割合は7%である。(12)
  23. 外国企業誘致と健全な競争を促進するアイルランドが12%と高い。
    一方、アフリカで最も大きなICTセクターの1つを抱えるケニアでもGDPに占める割合はたったの3.8%である(2013年)。(12)
  24. インターネットは電力や道路と同様に国の基礎的インフラの一部となってきている。(12)
  25. アリババのようなeコマース市場は今後5年で6兆 USD以上の規模となる可能性がある。(12)
  26. 途上国ではICTセクターの雇用は全雇用の約1%に過ぎない。例えば、ボリビアやガーナでは0.5%であり、コロンビアやスリランカでは2%である。また、OECD加盟国でも3〜5%という数字である。(14)
  27. ケニアではM-PESAによって80,000以上のエージェントが収入を得ている。中国では最近のeコマースブームで1千万以上の雇用が創出された。この数字は人口の約1.3%に該当する。(14)
  28. 世界の10億人以上が障碍者であり、その80%が途上国に住んでいる。(15)
  29. ホンジェラスではSMSによる情報発信・受信(作物の市場価格情報等)によって、農民の農作物の売値が12.5%上昇した。パキスタンでは、携帯利用によって農民は傷み易い農作物の収穫後の廃棄量を21〜35%ほど削減することが出来た。(15)
  30. アフリカ12カ国での調査結果によると、65%が携帯電話によって生活が良くなったと回答し、20%のみがそうではないと回答している。73%が携帯電話により移動時間とコストの削減の効果について言及しており、10 %のみが別の理由を言及している。3分の2が携帯電話を持つ事でより安全・安心であると感じられると考えている。(16)
  31. (電子政府化が進んでいる)エストニアでは、電子署名により1手続きあたり20分の時間短縮が出来ている。(16)
  32. インドではこの5年間で9億人近くがデジタルIDを取得した。(17)
    ナイジェリアでは、デジタルIDの導入により62,000名の幽霊公務員(実際は存在しないが給料が払われている公務員のこと。要するに給料を誰かが知らばっくれてもらっちゃっている)の存在を明らかにし、その給料(年間10億USD)の削減が出来た。(17)
  33. モザンビークではSMSによる不正行為告発が可能になったことで、投票率が5%上昇した。(17)
  34. しかし、公共セクターのICTプロジェクトの大半は失敗におわり、予算の無駄遣いとなる。(17)
  35. グーグルは世界のデジタル広告収益の3分の1を得ている。(19)
  36. エストニアの電子政府システムでは、市民は同じ情報を2度入力することはありえない。(20)
  37. ナイジェリア人の58%及びインド人の57%はインターネット上にアップした個人的な情報は安全だと信じている。一方、同じ質問に対してフランス人は18%、ドイツ人の16%のみが安全だと信じていると回答している。(20)
  38. 多くの報告書がテクノロジーの発展が不平等を引き起こすと指摘している。(21)
  39. インターネット環境が最も優れている国の1つであるフィンランドは、教育レベルも世界トップクラスであるが、授業の中でICTはほとんど活用していない。(32)
  40. 2014年時点で107カ国がプライバシー法を制定しているが、そのうち途上国は51カ国のみである。(35)
  41. Analog Foundationは一夜にして成らず。(38)

最後のやつは、まさしくこのレポートが訴えかけている結論ですね。ICT導入の効果は教育とか法整備とか、いわゆるデジタルではなくアナログの要素に大きく左右されるということ。なんとなく眺めていると、それなりにここ最近の途上国のICT事情の全容が見えて来るような気がする。

世界銀行がITを2016年の主要テーマに(その2)

前回のKanotの投稿「世界銀行がITを2016年の主要テーマに」について、コメントを書いていたら、あまりに長文になってしまったので、別トピックとして投稿することにしちゃたTomonaritです。

Kanotの投稿はとても勉強になる投稿っすね。あざーす!自分はWDRレポートそのものは斜め読みしかしていないので、日本語分かり易く書いてくれてとてもためになりました。
自分もICTがWDRのテーマに選ばれたとこ自体は凄い嬉しいですね。一方、議論そのものの根底にある考え方、すなわち「ICTはツールに過ぎずアナログ・コンポーネントがより重要。アナログ・コンポーネントが整ってないと、逆に整ってる国とそうでない国の格差がICTによって広がっていく」ということ、は10年以上前から変わっていないと感じます。逆に言えば、それが現実・真実ということなんだろうけど、ちょっと物足りなさを感じてしまう気も。

最近、自分が講師をやらせてもらっている神戸情報大学院大学の授業の課題として、学生(ほとんどがアフリカからの留学生)から提出されたエッセイ(20数本)を読んでました。実際のICT4Dプロジェクトをケーススタディとして、その成功の秘訣もしくは課題と原因&解決案を考えてもらうというのがお題です。一通り読んでみて思うところは、結局「アナログ・コンポーネントの改善」や「インフラ整備」が必要というような結論なんですよね。そして、それは自分も全く正論で正しいと思うのです。

しかしながら、「じゃ、アナログ・コンポーネントとしての教育制度や教授法が整うまではICTを学校に導入するのは待ちましょう」とか「じゃ、ICTインフラが整ってユーザのスキルが一定レベルまで上がるまではICTを導入するのは待ちましょう」というのだけが本当に「ベストな判断」なのか?というと自分は疑問を感じちゃったりします。
間違いなく「正しい判断」だとは思うものの、そこで「待ちましょう」という判断をしては、決してそれ以上の進歩がないような、なんとなく残念な気がするんですよね。

いくらアフリカを代表とする途上国の携帯電話普及率が劇的に伸びてきているとは言え、ICT環境や法制度や個々人のスキルなど条件の善し悪しを言い出したら途上国が全体的に劣っているのは間違いないので、「そんな条件でも、そんな条件だからこそ」ICTに期待出来る何かがあるんじゃないかと、つい夢を見てしまうのです。ケニアのM-PESAUshahidiインパクト・ソーシング(ソーシャル・アウトソーシング)のSamasourceなど、ある一定の厳しい環境・条件のなかでも成功しているICT4D事例があるということは、環境・条件の悪い途上国でのプロジェクトや事業でも、どっかに成功させる可能性があるんじゃないかと・・・。
これまでの王道の議論では、「成否の鍵はコンテクストによりけり」というような締めくくりになってしまうのですが、そうじゃない結論、「ズバリ、こうすれば上手く行く」というもの、を探して行きたいですね。いや〜、それがわかれば苦労はないか・・・。

世界銀行が提供するマイクロファイナンスの遠隔研修

もう結構前(2000年)に世界銀行のイニシアチブとして始まったグローバル・デベロップメント・ラーニング・ネットワーク(GDLN)というのがある。世界中(120以上の拠点)をテレビ会議でつなげて効果的な研修とか援助関係機関の情報交換などを実施ている。そのなかでアジア太平洋地域の中心拠点は日本にある(東京開発ラーニングセンター(TDLC))。

このGDLNを活用したマイクロファイナンスの研修コースがあるのでご紹介。TDLCの方に聞いた話では、途上国からの本研修の参加者は、このCertificateを武器に結構出世したりするケースもあるらしい。ICTを活用した遠隔教育・遠隔協力の好事例とも言えますね。日本でも受講出来るのでご興味ある方は申し込んでみてはいかがでしょうか。11月12日まで受付中とのこと。以下、TDLCのWebサイトのコピペです。

マイクロファイナンス・トレーナー・コース 8 (MFTOT 8) 受講登録受付開始

ビデオ会議、オンライン指導など組み合わせ学習

2011年12月 – 2012年4月

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アジア開発銀行研究所(ADBI)、東京開発ラーニングセンター(TDLC)、そして新しいパートナーの中国国家開発銀行(CDB)のコラボレーション・プログラム、第8回マイクロファイナンス・トレーナー・コースが平成23年12月~平成24年4月に開催されます。

2005年2月に始まったマイクロファイナンス・トレーナーズ・コース (MFTOT) は、マイクロファイナンスの実務家の研修を通じて、アジア大洋州地域のマイクロファイナンス機関の能力強化を目指すユニークなプログラムで, 過去7回で総計51カ国から694人のトレーナー資格認定者を生み出しました。 本コースでは国連資本開発基金(UNCDF)が開発した教材(CD-ROM、テキスト)を使用し、学習管理ソフトの Moodle上でトレーナーとして認定されたチューターによるオンライン指導と共に、国際的なマイクロファイナンスの専門家によるビデオ会議での講義を組み合わせたブレンデッド・ラーニング手法を取り入れた効果的な学習方法で、 UNCDFが開発した学習教材Microfinance Distance Learning (MFDL) Courseのトレーナーを育成します。

このコースは、学習管理ソフトの Moodleを活用し、以下の媒体を組み合わせて実施いたします。

MFDL テキスト、CD-ROMによる自習
UNCDFが開発した教材で、マイクロファイナンス事業の成長、低所得層に対する持続可能な融資の手法などについて解説しています。アジア、南米、アフリカで成功した事業者を例に、最適な運営方法についても学びます。

チュターによるオンライン指導とウェブを介したディスカッション
本コースでトレーナーとして認定されたチューターが、コースの期間中オンラインで個別指導にあたります。

国際的な講師陣のビデオ会議による講義
ビデオ会議による3時間の講義が計4回行われます。会場はコース参加各国のGDLN センターです。 講師は国際的なマイクロファイナンスの専門家で、最近の動向を交えた実務的な内容に焦点をあてます。また、当日の模様はウェブキャストでもご視聴いただけます。

コース終了時には、受講する目的や課題の成績に見合ったトレーナーの資格認定書、またはコース完了認定書が受講者に授与されます。

コース内容、参加対象者、参加費、スケジュール、登録方法などの詳細は、TDLCウェブサイト上にある MFTOT 8英文プログラムページおよび Moodleコースウェブページ(英文)をご覧ください。

11月12日までオンライン参加登録受付中です。

世界銀行のICT4Dプロジェクト成功率は60%

ICTworksブログに面白い記事があったのでご紹介。“A Great Success: World Bank has a 70% failure rate with ICT4D projects to increase universal access”というタイトルで、世界銀行が公表したICT4D分野支援の評価レポートについて書かれている。

世銀のICT4D分野支援は以下の4分野。

  1. ICT sector reform
  2. access to information infrastructure
  3. ICT skills development
  4. ICT applications

2003年から2010年に世界銀行がこの分野で支援したのは約42億USD。アフリカの電話通信分における最大のマルチ援助機関である(とはいえ、42億USDは、同期間の民間投資総額約4000億USDと比べると1%ちょっとに過ぎないが)。世銀の好評した評価によると、ICTセクターリフォームが一番成果を出しているものの上記4分野全体としてのプロジェクト成功率は60%とのこと。特に、貧困層の情報へのアクセス向上といった分野においての成功率は30%程度との評価結果である。

ICT4Dプロジェクトの成功率の低さは、よく課題として取りあげられてる。例えば、マンチェスター大学のHeeks教授の調査では、途上国のe-Governmentプロジェクトの成功率は以下のような数値である。

  • 35% are total failures
  • 50% are partial failures
  • 15% are successes

これまで、文献などを読む中で自分もICT4Dプロジェクトの成功率は「低い」と考えるようになっていた。しかしながら、ICTworksブログが今回指摘している点は新しい視点だった。それは、貧困層の情報へのアクセス向上を目指すプロジェクトの30%という世銀の成功率は「それなりに大したもんだ」という見方である。ICT分野において様々な面(インフラや制度など)で環境が整っていない途上国でのプロジェクト成功率が30%だとしても、それは本当に低いのだろうか?様々な面において環境が整っているシリコンバレーのベンチャー起業の成功率は20%だという。それに比べたら十分な成功率とも言えるのではないか?低い成功率だからこの分野の援助は縮小すべきだといった考えに陥るのはちょっと待った!という訳だ。

成功率100%を目指すべきであるのは当然だけれども、盲目的に成功率の低さを批判・悲観するのも不適切だと考えさせられた。しかしながら、個人資金で実施している起業と同じレベルで公金を使っている援助プロジェクトを論じることは出来ないという点は忘れてはならないだろう。失敗したら財産を失う起業家であれば、成功率が低くとも自己責任であり誰にも迷惑をかけないが(実際は迷惑がかかるが・・・)、公金を使っているプロジェクトは失敗しても誰も財産を失うリスクを背負ってないという点で、逆に民間事業よりも高い成功率が求められるからだ(とはいえ、民間事業の方が上手くいくというのが現実ですが・・・)。とはいえ、シリコンバレーとの比較は面白い視点だ。

また、こういう数字をきちんと公表した世銀の姿勢は評価に値するだろう。同じくICTworksブログに“How Do We Break Oscar Night Syndrome in ICT4D M&E?”というタイトルでICT4Dプロジェクトの評価をちゃんと実施して、失敗についても情報公開・共有できる雰囲気を作るべきといった内容が書かれているが、まさにそのとおりだと思う。

ICT産業振興のために何が必要か?

ICT4Dに関するWorldbankのブログに、興味深いトピックがあった。「The Global Opportunity in IT-Based Services」という本をInfoDevとworldbankがリリースしたという内容。この本では、国の経済発展のためにICT産業を振興させるにはどうしたら良いかということがテーマになっている。具体的には、途上国におけるICT産業振興の重要な条件を、いくつかの指標としてまとめることで、先進国からのIT企業を誘致したり、IT企業のデータセンターやコールセンターを自国に設立するために、途上国政府が、何をしなくてはいけないのかがわかるようになっている。

まず最初に、ICT産業を振興させるメリットが簡単に説明されていた。

  1. ICT産業は女性に高収入の職を提供する
  2. 新しい産業ということで、既存のしがらみが少ないICT業界では、規制緩和や改革を実施し易く、それが他産業界にも好影響を波及させる
  3. 貧しいという国のイメージを改善、払拭することが出来る

ICT4Dの話になると、「医療や水の方がICTより重要なのに何故ICTに投資する必要があるのか?」という疑問が良くあるが、教育にICTを利用するとか、電子政府などに比べると、「ICT産業そのものの発展」については、上記のようにクリアなメリットがある。特に、3の点が個人的にはとても納得できた。というのも、「インド人=ITに強い」というイメージはまさにインドがICT産業振興により生み出したインドに対するポジティブなイメージだと実感出来るから。以前、同じシェアハウスでインド人と英国人と一つ屋根の下に暮らしていたが、英国人はPCの調子が悪くなるとすぐインド人に質問していた。そのインド人曰く、「俺はハードウェアのエンジニアじゃないんだけど、あの英国人のおっさん、何かにつけて俺を頼りにしてきてまいるぜ・・・」的なことをよくぼやいていた。この、インド人は頭が良くてITに強いというイメージは、本当に凄い浸透していると思うし、そのイメージが、まちがいなく、他の産業(工業や貿易など)のインド人ビジネスマンにとってもポジティブに働いているはずだろう。イメージ、馬鹿に出来ないなぁ。
ちなみに、上記3点以外にも、ICT産業に従事する高収入層が増えると、それに付随して他の業界(飲食、服飾、建設など)でも仕事が増えるという効果も。インドやフィリピンではICT産業のワーカーは収入が他産業に比べて1.5~2倍であり、ICT産業で一人分の職が発生すると、他産業で2~3人分の職も発生するとか。

そして次に、インドが成功したようにICT産業が牽引する開発を実施するためにはどういうことが重要なのかが説明されており、主に次の3点があげられている。

  1. ITスキルを持った人材(質&量の確保)
  2. コスト面の強み(人件費の安さ、免税など政府の便宜など)
  3. インフラ(安定した電力供給、複数の国際電話回線、その他暮らしの面のでのインフラも含む)

この条件を見ていくと、3のインフラには、様々なものが含まれている。電力や通信網、国際便のアクセスやビジネスや不動産に関する法律の整備(著作権なども)の仕事に関係するものから、医療面、安全面、衛生面といった生活に関連することも。これらの条件を読んでいると、そもそもこういうインフラが整っていないのが途上国であり、それを開発したいからICT産業復興による経済発展を狙っているんだろうと、「ニワトリが先か、卵が先か?」的な思いが頭をよぎる。おとしどころとしては、インドやフィリピンなどが実践してきたようにそこだけはインフラが整っているITパークみたいな施設を設けることで、先進国のIT企業を誘致するというプランか。

この本によれば、世界規模でのICT産業は5000億USDの市場であると見込まれている。そして今のところ、その約7割は手付かずの状態。この有望な市場にどこまで途上国が入り込めるのか?第二、第三のインドのような国が出てくることを期待したい。