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ミャンマー通信市場へKDDIが進出

ミャンマーのショッピングセンターの家具売り場の一角にあったネットカフェ

ミャンマーのショッピングセンターの家具売り場の一角にあったネットカフェ

KDDIと住友商事がミャンマー郵電公社(Maynma Posts and Telecommunications: MPT)と事業提携する形で、ミャンマー通信市場に参入することになった。「「敗者復活」のKDDI、ミャンマーに参入」というタイトルの東洋経済オンラインのニュースによれば、KDDIが50.1%、住友商事が49.9%を出資する子会社を通じてMPTと事業を展開していく予定。他のニュースによると20億ドルの設備投資規模という。

ミャンマーの携帯電話普及率は10.8%で、この数字は1995年末の日本の状況とほぼ同じ(9.6%)。
これから急成長が見込まれる市場で日本企業がどう活躍出来るか楽しみである。

この東洋経済オンラインのニュースの副題が、「目指すは日本流の高品質通信サービス」というものだった。確かに、それはミャンマーが望むことだろうし、日本流のサービスクオリティを実現してほしい。

ただ個人的には、この副題にはちょっとガッカリ…。それは、ミャンマーという特殊な市場(たとえば、ICTWorksブログでは、「Myanmar could even be the first smartphone-only country, with its population leapfrogging landlines and feature phones.」と書かれている)ならではのサービス(つまり日本では存在しないサービス等)を実現して欲しいという期待があるから。ミャンマー市場ならではサービスを開発して、それを日本に逆輸入するようなリバース・イノベーションや、M-PESAのような他の途上国へも展開出来るようなイノベーションをKDDI&住友商事が生み出してくれないかな。ちなみに、ミャンマーはこれでで最も多く(5回)出張に行く機会があった国でした。ヤンゴンの町

ミャンマーの首都ヤンゴンの町並み

ミャンマーの首都ヤンゴンの町並み

日本企業のICT4D分野進出

このブログを通じて知り合いになった方から、KDDIが新興国市場向けの採用を行っているとの話を聞いたのでご紹介。

以下、KDDIのWebサイト(http://www.kddi-saiyo.com/recruit/information.html)から。

□グローバル(新興国開拓)コース ※
※KDDIでは、今後の持続的成長をはかるため、海外事業を積極的に展開しています。
 特に新興国では、インターネットの普及などで立ち遅れている国が多いため、
 ICT (情報通信技術)環境の整備を通して、これらの国民の生活水準を向上させること、
 新たな市場を開拓し利益を得ることの両立を目指しています。
 このような背景をふまえ、「グローバル(新興国開拓)コース」は
 新興国市場を自ら開拓したい方、新興国で働きたいという強い想いを持った方、
 国際経験豊かな方(海外留学、国際交流活動、国際ボランティア等)、
 外国語に堪能な方を積極的に採用するコースです。(国籍は問いません)
 「グローバル(新興国開拓)コース」で採用された方は、グローバル関連部門に優先的に配置します。

ズバリICT4D分野の採用。
この分野に特化した就職先は、(特に日本では)探すのが大変と思っていますが、こういった枠が各企業にこれから出来てくると面白い。以前、このブログでも紹介しましたが、KDDIはバングラディッシュのBracNetへの出資や、アメリカの貧困層向け携帯電話会社への出資など、ICT4D分野へ積極的に進出している様子。今、自分が新卒なら是非ともエントリーしてみたい職です。

ただ、どこの企業でも利益追求が命題なわけで、KDDIみたいな通信会社にせよ、途上国開発に関わる商社にせよ、途上国での製品製造に関わるアパレルにせよ、働いている人は必ず「利益」か「人助けか」の選択を迫られると思う。採用する企業の方も、「ビジネス」に軸足を置く人を採用しないと、ミスマッチがおきてしまう。「人助け」に軸足を置く人は、NGOや援助機関などに身をおいて、そこから企業とコラボレーションする方が良いんだろうと思う。まぁ、なんにせよ、こういったICT4D分野の採用が行われるようになったことは、大きな変化ですね。

クラウドサービスの可能性

KDDIが出している「TIME & SPACE」という雑誌に、“災害復旧をサポートするICT”というテーマで、去年1月のハイチ地震後の復旧に利用されたICTサービスについての記事があった。「国境なき医師団」のICT版ともいえる「国境なきテレコム」という支援活動があり、電話回線復旧や太陽電池式の携帯電話を供与したりという活動をしており、日本からも支援チームが派遣されたという。

災害時にICTを活用したサービスが人命救助や復旧に役立つという話は良く耳にする。ケニア選挙に伴う暴動時に開発されたUshahidiが良い例である。そして、このUshahidiはハイチ地震でも利用され、人々の投稿によって、Webの地図上に誰がどんな支援を必要としているかや被害状況が反映されることで、援助団体がより効率的な支援が出来るようになったという話は別の媒体でも目にしたことがある。

さて、この記事で興味深い話はここから。
助けを必要とする人々からの連絡を受けるためのホットラインが米国の支援で用意されたという。災害直後の携帯電話回線は帯域が十分でないため、SMSを利用したホットラインだ。しかしながら、ハイチ人はハイチ語のSMSを利用するが、アメリカ人の受付担当者はハイチ語でSMSのやり取りが出来なかった。そこで登場したのが、クラウドサービス。ハイチ語のメッセージが届くと、世界各地に住むハイチ人がハイチ語のSMSメッセージを英語に翻訳して救援隊やNGOへ連絡するという仕組み。これでよりスムーズな支援が可能となった。

この事例にクラウドサービスのこれからの可能性を感じる。以前、このブログでも携帯を活用した現地語翻訳サービスを紹介した。こういうサービスは一昔前には想像できなかったんじゃないかと思う。ICT4Dの話になると、途上国の人々がインターネットによって情報にアクセスできるようになっても、ネット上の情報は多くが英語のため、英語力がないとネットにアクセス出来ても裨益しないという点は、色々な文献で指摘されている。Technology-drivenじゃ駄目で、Socialな要素にもっと目を向けるべきという指摘。しかしながら、こういったサービスが発達していくと、英語力なんてなくてもOKという話になるんじゃないかと思う。Google翻訳の威力もどんどんあがっているし、Technology-drivenでも大丈夫じゃん!と。

今までは識字率上昇、基礎教育が大切という解決策しかなかったけれど、今は、翻訳できるサービスを使えば?というオプションが誕生。これは大きな変化だ。ドッグイヤーと呼ばれるICT分野。ICT4D分野の考え方も同じように変わっていく必要性は間違いなくあると思う。

Developmentに本当に必要なもの

日経コミュニケーションという雑誌にKDDIの山住忠司氏がバングラデシュについてのルポを書いている。以前このブログでも紹介したが、バングラディッシュのNGO「BRAC」がデフタパートナーズと共に進めている「BRACnet」のインターネット事業。これにKDDIが50%出資しており、山住氏はKDDIからBRACnetに出向されている方だ。10月号の「バングラデシュで“バクシーシ”に困惑 -ネットは“自立”を促せるか?」というタイトルの山住氏のルポが興味深かったので紹介。

“バクシーシ”という文化がバングラデシュにある。喜捨とほぼ同じで、金持ちは貧乏人にお金や食べ物を与えることで、徳を得られるといういうものだ。バングラデシュ以外でもイスラム圏である文化で、金持ちは喜捨をすることで、庶民の反感を買わないようにし、一方で貧困層もバクシーシに頼ることで、最低限の生活は出来るといった社会システムである。山住氏は、インターネット普及のためには、電力や識字率向上など色々なハードルがあるが、一番やっかいなハードルは、「インターネットをバングラデシュの人々に根付かせること」と言っている。

この意見に物凄く共感できた。与えられるのに慣れている人々が、どうやって自分で有益な情報を得るためにアクションを起こすのか。インターネットというツールが差し出されても、能動的に有益な情報を入手に行かなければ、インターネットはただの無駄情報の集まりにすぎない。「インターネットを根付かせること」は、人々が与えられるのを待つのではなく、能動的にチャンスをものにする意欲・自立する意思を持つことなのだろう。教育は保健のように色々な分野の援助があるけれど、結局、人々の意識を変えることがDevelopment実現の根底にあるのだと思う。インターネットによる情報の波が、彼らの自立を促すのか、それとも、自立した人だけが、インターネットの恩恵を受けるのか。どちらなのだろうか。

途上国ビジネスの鍵はパートナー

KDDIがアメリカの貧困層向けに米国の携帯電話会社(2社)に出資し経営権を握る。米国の貧困層は主に移民であり、祖国のインターネットを利用出来ない家族とのやりとりに携帯電話を利用している。KDDIはこのBOPマーケットを開拓していく心積もりのようだ。

KDDIといえば、2009年11月にバングラディッシュのbracNETにも出資し、50%の株式を取得している。bracNETは、バングラディッシュ大手のNGOであるBRACが、デフタ・パートナーズ(代表は原丈人という日本人)というベンチャーキャピタルと共同で始めた組織で、通信網整備やテレセンターの運営を通じてバングラディッシュの人々がICTの恩恵を受けられるような活動をしている。ここでも、KDDIがBOPビジネスへの参入を図っている。

一方、NTTも同じくバングラディッシュのICT分野を開拓しようとしている。以前、このブログでも紹介した本「BOPを変革する情報通信技術~バングラデシュの挑戦~」の著者が所属する九州大学とバングラディシュの大手NGOグラミングループとともに「グラミン・テクノロジー・ラボ(GTL)」の設立に協力している。GTLは途上国のニーズにマッチした技術や製品を開発するのが目的。KDDIに負けじと、NTTもBOPビジネスに乗り出している。

KDDI、NTTの両者のバングラディッシュにおけるBOPビジネスへの進出を見てみると類似点がある。それは、単独ではなく現地NGOをパートナーとして、そこに出資・協力している点。そして、もう一つは、どちらもデフタ・パートナーズや九州大学のように、既に現地NGOと良好な関係を築いている組織もパートナーになっている点だ。つまり、不確定要素や不安材料が多い途上国ビジネスでは、「信頼出来る現地パートナー」(NGOなど)が必要であり、さらに、「このNGOが本当に信頼出来るのか?」の指標として、既に先進国の組織との連携経験や信頼関係が築けているかを評価基準にしている。そして、NGO対自社(KDDIやNTT)ではなく、対象となる途上国との連携に長けている既存の先進国の組織も含めてリスクを軽減している。

  • 現地の活動=現地NGO(BRAC、グラミングループ
  • 技術の提供=日本企業(KDDI、NTT)
  • 両者の繋ぎ役=途上国との連携に長けている既存の先進国の組織(デフタ・パートナーズ、九州大学)

この上記のような役割分担が信頼出来る相手と確立できるならば、日本企業のもBOPビジネスに一歩踏み出し易くなる。そして、そこで鍵になるのは、「両者の繋ぎ役」。信頼出来る現地の企業やNGOを見定め、日本企業と引き合わせる。この役目を日本のNGOや政府機関(JICAなど)が上手く出来れば、日本企業の途上国BOPマーケット開拓が促進されるのではないだろうか。