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ケニアのM-PESA成功から学べる点とは?

先日、神戸情報大学院大学でのICTイノベーターコース紹介イベントにて、ICT4D成功事例の紹介する機会を頂きました。成功事例として何をとりあげるか悩んだ挙句、このブログでも何度か紹介しているケニアのM-PESAを取り上げることにしました。

友人のTakano氏から色々と情報を得たり、元同級生のChrisの論文を読んでみたりと、改めて調べてみると知ってるようで知らない発見がかなりあり、とても勉強になりました。(Takanoさん、ご協力ありがとう!)折角なのでプレゼン資料を掲載してみます。

そして、当日は炭谷学長の探究実践ワークショップも行われました。あるテーマ(課題)についてのソリューションを作り上げるワークショップでしたが、参加者の方々は皆初対面にも関わらず、非常に限られた時間で興味深いソリューションを作り上げていました。大学院時代のグループワークを思い出しました。大変だけど楽しいもんなんですよね、グループワークって。

この秋から始まる神戸情報大学院大学の「ICTイノベーターコース」では、イノベーションってのが一つのキーワードですが、最近、「イノベーション」とは何だろうか?とふと考えました。上記スライドでケニアのM-PESAがどうして成功したのかについて説明していますが、最後は、やっぱりサファリコムの気合と根性が大きな要因だったんだろうと思ってます。ICT4Dの視点でいえば、成功するまでプロジェクトをドライブ出来る「ICT4D Champion」の存在ってことなんだと。そう感じた理由をちょっと書いてます(ICTとは関係ないのですが・・・)。

エチオピアの革は世界最高級で超高級車のシートなんかにも使われています。タイガーウッズもグラブにはエチオピアのシープスキンを使っているとか。でも、エチオピアの革産業には高度なデザインや加工技術がないため、革は原材料としてヨーロッパ等に輸出され、製品化はイタリアとかで行われるケースが多いのです。そのため、最高の革を持っていてもエチオピアよりも儲かるのはイタリアなど製品化をしている国だったりします。そんなエチオピアの革を、エチオピアで製品化し付加価値を高めて日本で販売しようというビジネスを行っているandu ametって会社があります。

その会社を企業したのは自分の青年海外協力隊時代の友人である鮫島さんでした。立上げ時にちょこっとお手伝いをさせてもらってたのですがは、「アイデアには同意するし、エチオピアのためにもなるし、頑張ってほしい。けど、エチオピアのこと、エチオピア人のことを良く知っているだけに、本当にエチオピアで日本人が買いたいと思うようなクオリティの高い製品が作れるのだろうか・・・」と、かなり心配でした。

でも、鮫島さんはハンパない努力とバイタリティで多くの方々を巻き込み支援・協力を得つつ、色々な困難を乗り越えて(今も乗り越えている最中だと思います)、自分から見てもかなりイケてる製品(例えば下の写真)を作り上げ、有名百貨店で販売するなど事業としても一定の軌道に乗っている様子です。そして、日経なんとかとかのビジネス系の表彰を受けたり、国際的な評価も受けたりと、急成長している最中です。

今回、M-PESAの成功要因について調べていて、このandu ametの成功要因ともかさなる部分があると感じました。それは要するに「気合いと根性」なんだと。携帯を活用して送金出来ないかな・・・?とか、途上国の製品を日本で販売出来ないかな・・・?ってアイデア自体は結構多くの人々が思いつくんだと思います。なので、そのアイデア自体はそんなイノベーションじゃなく、「そのアイデアを形にして実施して成功させること」がイノベーションなんだと改めて思いました。そんなわけで、M-PESA成功要因についてのプレゼン資料の最後に、「気合いと根性」の話を持ってきたのでした。イノベーションの種は「良いアイデア」じゃなくて、実は一歩踏み出す「気合いと根性」なのだろうと思いました。

ande amet

モバイルバンキング神話は本当?

マンチェスター大学でICT4Dを学んできた知人(Takano氏)の修士論文を、この年末年始に読ませて頂きました。いやー、英語の長文を読むのは久しぶりだったのですが、非常に面白かったので苦なく読むことが出来ました。その論文はモバイルバンキングについてのものであり、とても示唆に富んでいると感じたので、内容について以下ポイントをご紹介したいと思います。

ケニアのM-PESAによってモバイルバンキングが注目を浴びたのは、ご存知の方も多いと思います。実際、ケニアで2007年3月にサファリコムがM-PESAサービスを開始してから、グングンと普及していき、2010年には利用者は1千万人を突破し、人口の40%が利用していることに。さらに、2012年にはケニアのGDPの約15%にあたる金額が同サービス上でやりとりされているといった統計もある。そして、M-PESAで火がついたモバイルバンキングサービスは、他の国へも波及し現在は世界で140を超えるサービスが存在する。なかでも特にアフリカ諸国への波及効果は大きく、世界のモバイルバンキングサービスの約半数がアフリカ諸国を対象としたものである。

モバイルバンキングによって、これまで金融サービスを利用することが出来なかった貧困層(銀行口座を開くために必要な身分証明書がなかったり、口座を保有するためにかかる費用が払えなかったり、そもそも銀行が近くになかったり…といった人々)も送金や貯金といったサービスを簡単に利用することが可能になった。送金により海外や都市部の親類から支援を受けられることで、身内の不幸などで急にお金が必要になったときに高利貸しに金を借りたりしなくて良くなったなどといった直接的なメリットに加え、送金履歴が定期的収入の証明になり、そこから小額融資を受けられるようになるなど、そのメリットは大きい。

と、ここまでの話を聞いていると、アフリカにおいて携帯電話の普及率が劇的に伸びている背景なども考慮すると、「いいね!」を押したくなる感じ。ケニア以外のアフリカ諸国でもモバイルバンキングが普及して、貧困層の生活向上につながるのだろうと思われる。しかし!「そんなに楽観的じゃないんじゃない?」というのが論文の問題提起。いわゆる「モバイルバンキング神話」に疑問を投げかけている。
そして、モバイルバンキング普及の成否要因を分析するためのフレームワークをとして、Access Frontier Model(Porteous 2005)とDiffusion of Innovation Theory(DOI)(Rogers 1983)をミックスしたフレームワークを提案している。

Access frontier model
Access Frontier Model

Source: Adapted from Porteous (2005) by Takano (2012)

Explanation of m-banking influential factors

Explanation of m-banking influential factors

Source: Brown et. al. (2003)

まず最初の「Access frontier model」が意味するのは、MARKET CAN REARCHというエリアが上に広がって行けばいくほど、サービスが普及しているということ。一方、下の表「Explanation of m-banking influential factors」ってのは、モバイルバンキングサービス普及の成否に影響する主な要因を9つに整理したもの。この2つをミックスした以下のフレームワークを論文では提案されており、これにはとても感心・共感出来るものがあります。

Conceptual Framework of the Research

Source: Developed from Porteous (2005) and Brown et al. (2003) by Takano (2012)

そもそも携帯電話の普及度合いがある程度進んでいないとビジネスとしてのモバイルバンキングは成功しないという要因は誰でもすぐ見当がつくもの。ただ、Complexity、Risk、Self-efficiencyといった要因に関しては、現金の送付や銀行へ行って依頼する送金でなく、「携帯電話で送金するという仕組みそのもの」を理解出来るか(信用できるか)に関連しており、その理解力は教育レベルや以前に金融サービスを利用した経験があるかによるとこが大きい。提供されるサービス種類や料金形態についても同じことが言えるだろう。M-PESAでは送金受取人は代理店(キヨスクのような小さい商店)で現金を受け取るが、代理店にたまたま現金がなかった場合に、M-PESAというサービスそのものやサファリコムが苦情の対象になったり、信頼度が落ちるということはなく、あくまでも準備が悪い代理店への苦情に留まるらしい。こいうったブランド力・信用力をどう普及出来るかといった点もサービス普及の要因といえる(Facilitating conditionの観点)。また、ユーザ(貧困層)がどういった金融サービスを必要としているのかといったニーズを把握し、ニーズにあったサービス展開が必要である(Compatibirityの観点)。例えば、送金サービスに特化して開始したM-PESAに対して、南アフリカのモバイルバンキングサービス「Wizzit」は銀行が提供するように幅広いサービスメニューを用意したものの、貧困層はそんな幅広いサービスを欲していない(利用するほど貯金がない)という現実との乖離があった(→ビジネスとして上手くいってない)という調査結果もある。

このように見て行くと、単純にモバイルバンキングサービスが開始されれば、これまで銀行口座を開けずに金融サービスにアクセス不可能だった貧困層も金融サービスが利用可能になり、且つ、携帯電話会社も儲かるといったBOPビジネスの成功事例が築ける・・・といった「モバイルバンキング神話」は簡単には実現しえないことがわかる。実際、ケニアのM-PESA以外にモバイルバンキングが大成功しているという事例はあまり聞かないし(ロールモデルがないという指摘もある)、モバイルバンキングを対象した調査の多くが、携帯電話会社や支援した援助機関関係者が調査に参加していることから十分な証拠や検証なしのまま、その効果を肯定的に結論付けているという指摘もある(Duncombe and Boateng 2009)。

以上、紹介させて頂いた論文では、モバイルバンキングというと、ついつい携帯電話というテクノロジーに注目してしまうが、そもそもモバイルバンキングは金融サービスというビジネスであるのだから、金融サービスとして成功するのか否か、そしてその成否の要因は?といった観点からも分析・検証が重要であるということを示唆している。「ICTはあくまでもツール」という視点は常に意識しておかねばと、改めて感じました。

最後に、論文の内容をブログに掲載することに快諾頂いたTakanoさん、どうもありがとうございました。非常に興味深い内容を共有して貰えて感謝しています。

【Reference】
Brown, I., Cajee, Z., Davies, D. & Stroebel, S. (2003) ‘ Cell phone banking: predictors of adoption in South Africa – an exploratory study ‘, International Journal of Information Management, vol. 23, no. 5, pp. 381 – 394.

Duncombe, R & Boateng, R (2009) ‘ Mobile Phones and Financial Services in Developing Countries: a review of concepts, methods, issues, evidence and future research directions ‘, Third World Quarterly, vol. 30, no. 7, pp. 1237 – 1258.

Porteous, D.  (2005) ‘ The Access Frontier as an Approach and a Tool for Making Markets Work for the Poor ‘, DFID Policy Division [Online].

Rogers, E. (1983) Diffusion of Innovations, Free Press, New York.

Takano, M. (2012) The potential of mobile banking to expand access to financial services for the unbanked in Africa: Case study in Malawi, A dissertation submitted to the University of Manchester for the degree of MSc in ICTs for Development.

USAIDとシティバンクによるモバイルマネー利用促進

ケニアのM-PESAに代表されるモバイルバンキングサービスは、世界でも100を超える種類があり、そのうち半数以上がアフリカでのサービスとなっている。これまで銀行口座を持たない(持てない)層(多くは貧困層)が、送金サービスなどを簡単に使えるようになった他、その送金履歴を信用にして融資を受けられるようになったり、保険に入れるようになったりと、貧困層の生活改善に役立っている。

そんな途上国開発の視点から、USAIDがモバイルマネーの利用促進を支援するために、シティバンクと官民連携パートナーシップを結んで9ヵ国(コロンビア、ハイチ、インドネシア、ケニア、フィリピンなどに特に注力)で共同の取組みを開始すると発表(U.S. AGENCY FOR INTERNATIONAL DEVELOPMENT & CITI TO ACCELERATE MOBILE MONEY ADOPTION)した。途上国を含め世界中に銀行送金のネットワークシステムを持つシティバンクは、M-PESAなどのモバイルマネーをシティバンクでも取り扱えるようにするそうな。シティバンクが取り扱うことで、これまでモバイルマネーに対応していなかった企業なども同様にモバイルマネーを扱うようになり、貧困層がより多くのサービスを利用出来たり、シティバンクのクレジットサービスが使えるようになったりする可能性がある。そして、USAIDは23百万USDの資金を投入して各国政府とともに関係政府機関や銀行や携帯事業者などに対する必要なトレーニング等を実施支援するという。この発表を読んで感じた点を以下3つ述べてみる。

1.やるなぁ、アメリカ
これまで銀行や保険のサービスにアクセス出来なかった貧困層に選択肢が増えるのは良いことだと思いつつ、中国に負けずアメリカもやることが明快だと感じた。途上国でのモバイルマネーという新たな市場が乱立しているところに、アメリカの銀行がプラットフォームを提供して一気に囲い込みに入るのを、USAIDが援助ということで支援するということか。やるなぁ、アメリカ(日本はこういう取組みが今ひとつ上手く出来ていないが・・・)。そのうち、マサイ族がスマホでGoogle Walletを利用して、シティバンクのサービスを使う日が来るのだろうか。Googleというインターネットのプラットフォームに続き、銀行サービスのプラットフォームもアメリカ企業は獲得するのに成功するか?

2.ICT4D成功事例となるか?
モバイルバンキングは途上国発のイノベーションであり、アフリカでは普及しているが、その他の国では今ひとつ浸透していない。背景として、アフリカでは関連法制度が整備されていないからこそ普及がここまで進んだとも言われる。このような独特の背景において成功したこの市場に、シティバンクのような先進国からのカッチリした大企業がどう連携していくのか興味がある。「草の根ICT4Dイノベーション」とも言えるモバイルバンキングに対して、Outsiderである先進国からの銀行が描いている絵は成功するのか?このブログでも、「法制度やユーザ志向やスキルなどが異なる先進国の背景で形成されたICT4Dプロジェクトは、途上国の背景では失敗することが多い」という指摘を紹介してきたが、今回のシティバンクの取り組みは上手くいけば、今後のICT4D分野でのグッドプクティスとなるかもしれない。

3.情報セキュリティの重要性
また、モバイルマネーの利用が進めば進むほど、情報セキュリティの重要性が増してくる。特にアフリカなどの途上国では、まだまだ情報セキュリティに対する対策や認識が低いだろう。USAIDの支援内容についての詳細は記載がなかったのでわからないが、この点もについても、手厚い支援が必要になってくるだろう。

以上3点を書いてみたが、もしかしたらUSAIDが23百万USDを使い切るころには、モバイルバンキングに代わるサービスが流行り始めたりして・・・と、テクノロジーの発展の速さも気になるところです。

ICT4Dにおける政府の役割とは

10月1日のRichard Heeks教授による公開勉強会を通じて、「ICT4Dにおける政府の役割とは?」ということを考えてみた。個人的には、以下の点から、政府の役割はインフラ的な部分を整備することだと考えている。

ICT4D→Network4D
ICT for Developmentという言葉でICTを利用した途上国開発を考えるとき、学校にPC教室を整備するといったプロジェクトよりも、携帯電話やインターネットを利用した途上国の人々が裨益するサービスの方が遥かに可能性・効果があると思う。OLPCのようにハードを整備したり、ネットワークに繋がらないスタンドアロンのIT機器を利用することにも勿論効果や意味があるけれど、M-PESAにし、Kivaにしろ、Ushahidiにしろ、ICTによって途上国開発に今までなかった方法を生み出しているのは、ICTの効果の中でも特にネットワーク機能を利用しているものである。また、Richard Heeksの言うところのDevelopment2.0は、人人が繋がることで可能となる類のものと言える。

「ツールとしてのICT」→「インフラとしてのICT」
「ICT4D→Network4D」への変化は言い換えると、ICT4DにおけるICTの位置づけが「ツールとしてのICT」から「インフラとしてのICT」に変化したとも言えよう。そして、インフラとしてのICTが意味することは単にネットワークが繋がるインフラではなくて、みんなが使っているという点でインフラとしての機能しているということだ。例えば、携帯電話とインターネットを比較すると、明らかに携帯電話を利用したICT4Dプロジェクトや試みが注目を集めている。PCとインターネットで出来ることの方が多いにもかかわらずだ。これは、途上国でも携帯は一定数の人々が使っているけど、インターネットユーザー数はまだまだ低いからと考えられる。ネットワークで繋がることが出来るユーザー数が多くなければ、メリットはない。そして、一定数以上のユーザー数を確保し「インフラとしてのICT」化するには、みんなが使えること必要であり、その為には、安定した電力供給、通信インフラ、手頃な使用価格、などが前提条件である。

政府の役割は基盤整備
電力や通信インフラの整備、適切な価格競争を導く為の市場開放(国営独占でなく民間企業の参加など)、さらには、ユーザーが安全にインターネットや通話を利用出来るためのセキュリティ対策といったことがきちんと行われることが、ICTを活用した新しい途上国開発を実現・促進させるための基盤であり(仮に“ICT4D基盤”と呼ぶ)、これらの分野は民間では実施し難いエリアだろう。したがって、このICT4Dの基盤といえる分野を整備することが政府の役割と考えられる(以下の図)。逆に、こういった基盤部分が適切に整備されていれば、オープンソースのソフトを利用したり、Googleなどが提供するツールを利用して、個人でも様々なICT4Dアプリケーションやサービスを作り出せるし(例えば、Ushahidi)、NGOや民間企業による様々な取り組みが可能となる(例えば、P-MESAやKivaなど)。

上記の図では、ICT4D基盤の上に、色々な途上国開発に貢献するサービス(仮に“ICT4Dサービス”と呼ぶ)が成り立つという意味で、ピラミッド型で表示しているが、一方で、この基盤をきちんと整備出来れば、多くのICT4DサービスがNGOや民間企業のBOPビジネスやCSR活動によって作られると考えると、下記の図のようにも表示できる。

正確には若干異なるかもしれないが、イメージとしては、上の層に行くほど色々なアクターが様々な取り組みが出来る可能性が広がっていると考えられるんじゃないかと感じている。それため、上の層(=地域やセクターにあったICT4Dサービスを作り出すこと)は、NGOや民間企業に自由にやってもらい、下の層(ICT4D基盤)の整備を政府が力を入れてやるという住み分けが良いのではないかと考える。

また、援助機関に関しても、個別にICT4Dサービスを支援することをやるよりも、いっそのこと、ICT4D基盤の整備にもっと力を注いだら結果としてICT4Dサービスの支援になるのではないか?とも思う。勿論これでも、電力や通信インフラといった分野における支援は長年やってきているが、社会経済基盤整備の支援という視点に加えて、ICT4D基盤の整備でもあるという視点から、通信事業の民営化やセキュリティ対策といったことろまで包括的に支援することが重要だろう。

最後に付け足すと、ICT4D基盤としては言及しきれていない要素もある。それは、識字教育や情報リテラシーといったものもだ。ICT4Dサービスを利用するためには、識字能力(場合によっては英語力も)をはじめ、得た情報を知識化する能力や情報の真偽を見極める能力も必要で、つまり教育もICTを活用するには不可欠ということになる。教育を含めて、ICT4D基盤を整備することが出来れば、「インフラとしてのICT」が途上国開発の大きなトリガーになると期待できる。

マイクロファイナンスとMobile-banking

CGAPというサイトに、“How can microfinance take advantage of mobile banking?”というタイトルで、マイクロファイナンスを提供する組織が、どのように携帯電話を使ったバンキングシステムを利用しているかという話が載っていた。

ケニアのM-PESAに代表される携帯電話を使った送金システムは、銀行口座を持たない(持てない)貧困層の人々に送金サービスを利用する機会を与えている。一方、マイクロファイナンスは銀行からお金を借りれない貧困層が、融資というサービスを受けられる機会を与えている。このMobile-bankingとマイクロファイナンス、どちらも貧困層に銀行のようなサービスを提供しているという共有点があり、それ故、マイクロファイナンス機関がMobile-bankingを利用することで、そのサービス範囲を拡大したり、より便利にしたりすることが期待される。

しかしながら、Mobile-bankingサービス利用が拡大することで一番得をするのは、携帯通信会社やサービスに絡んでいる大手銀行。マイクロファイナンス機関が得する訳ではない。そんな状況のなか、各マイクロファイナンス機関は色々な取り組みを見せている。例えば、ケニアやフィリピンのように携帯での送金サービスが確立している国では、普通に携帯での送金サービスを、融資資金の回収に利用している。また、携帯通信会社と協力して独自のサービスを開発しているマイクロファイナンス機関もある。ケニアのEquity Bank(マイクロファイナンス機関)はSafaricom(携帯通信会社)と共同で、M-Keshoという貯金用口座サービスを始めている。銀行口座を持たない人達が携帯電話を利用して貯金出来るサービスだ。貯金文化を浸透させることで貧困層の生活改善をにらんでいる。さらには、独自にゼロからMobile-bankingサービスシステムを構築しようとしているマイクロファイナンス機関もある(マラウイのOpportunity Bankなど)。

ケニアやフィリピンのように既にMobile-bankingシステムが導入されている国では、色々な可能性がある一方で、Mobile-bankingシステムがない国(多くの途上国はこちらのグループ)では、マイクロファイナンス機関が独自にMobile-bankingシステムを構築しようとしているが、手間と費用がかかり過ぎて実現は困難だという。

マイクロファイナンスとMobile-banking。これから興味深いテーマだ。ちなみに、ケニアのM-Keshoによる貯金の習慣を広げようとするプロジェクト(ケニアは途上国でもっとも貯金する人々が多い国になる!?)は、ビルゲイツの財団やDFIDも協力している。日本企業もこういった新市場開拓の可能性や日本ODAもこのような技術協力の可能性があるのかもしれない。

東アフリカ・ソーシャルベンチャープロジェクト

i3デザインという会社が、東アフリカ・ソーシャルベンチャープロジェクトという事業を展開している。このプロジェクトは、ケニアで中古車販売用のWebサイト(PC用・携帯用ともに)を運営する企業を支援するもの。日本に研修できていたケニアの方が、帰国後に中古車販売用Webサイトビジネスを起業するところから支援していたようだ。

ケニアといえば、携帯電話を利用した送金システム「M-pesa」が注目を浴びている。あるレポートによれば、2010年度はM-pesaによる送金がケニアのGDPの20%を占めるという予想もある。また、アフリカの通信事情が今度ブロードバンド化が進むことで大幅に改善されるという期待も強い。

ケニアにおける中古車Webサイトのビジネスは、時代を見据えた投資価値のあるビジネスと言えよう。また、このケニア人の方は日本での研修に参加していたことから、日本のことや日本人の文化などもある程度理解しているのではないだろうか。そいうった面で、信頼できるパートナーがおり、有望な分野での途上国ビジネス支援である。東アフリカ・ソーシャルベンチャープロジェクトのような日本企業による途上国企業支援が多くなればと願いたい。そのためにも、このプロジェクトは是非とも成功してほしい。