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東北沖地震 震災情報サイト sinsai.info

このブログでも何回か取り上げているUshahidiというケニア発のオープンソース災害マネジメントアプリケーションを利用して、3月11日に起きた東北沖地震の震災情報サイト“sinsai.info”というサイトが立ち上げられている。このサイトは、OpenStreetMap Japan および OpenStreetMap Foundation Japan という団体の有志により、運営されている。


twitterでのつぶやきやメールを通じて誰でも情報をアップロード出来、サイト上では、アップされた情報を救助要請、交通機関、安否確認、医療、店舗・施設情報など約15カテゴリに分けて識別できるようになっている。

2007年12月のケニア大統領選挙後の暴動・混乱に人々が巻き込まれないようにと作られたUshahidiが、このように日本でも利用されている。途上国発のソリューションが先進国でも利用されている。ICT4Dにおけるオープンソースの可能性って、こういうところにあると感じる。紛争とか震災とかの状況下では、シンプルに使えるツールが必要で、そういった点では途上国発のソリューションが役立つのだろう。

Social Networking for Development

最近、ICT4Dの幅広い分野でも、特にソーシャル・ネットワーキングを活用した途上国支援に興味を感じる。

TwitterがKivaと連携して、Twitter上でもKivaに紹介されている途上国の企業家達に一口25ドルの融資が出来るようになった。Kiva上の途上国の企業家情報がTwitterにも掲載されて、そこで融資も出来る仕組み。ますます、Kivaを通じて普通の人々から途上国への融資が増えるだろう。こんなことが出来るようになるなんて、4、5年前には全然予想できなかったんじゃないかと思う。

また、こんなソーシャル・ネットワーキングもある。“Refugees United

greenz.jpにわかりやすい説明が載っていたので、以下引用させてもらう。

“「Refugees United」は、いわば難民のための「Facebook」。 誰でも無料でプロフィールを登録したり、登録されているデータの中から自分の「尋ね人」を検索することができ、ウェブサイト上で、メッセージをやり取りす ることができます。もちろん、実名を公表することに抵抗がある人はニックネームでの登録もOK。出生地や育った場所、家族構成・カラダの特徴など、家族や 親しい人しか知りえない情報を一緒に登録しておけば、これらを手がかりに、家族や友人に自分を見つけてもらいやすくなります。また、このソーシャルネット ワークサービスは19言語に対応。より多くの難民たちが、言語の障壁なく、スムーズにコミュニケーションできるようになっています。”

なるほど、確かにありそうでなかった仕組み。凄いなぁ。
ソーシャル・ネットワーキングってことでいうと、上記2例のようなWebサイトそのものでなくても、その繋がりによって発生するムーブメントも大きな途上国開発ドライバーだと思う。以前紹介したUshahidi構築のストーリーなどがその代表。ソーシャル・ネットワーキングを通じて、途上国の人達と先進国の(技術を持った)人達が繋がることで、そこから途上国の役に立つWebサイトなりアプリなりが生まれる。

Online AfricaというWebサイトに、「One year of following African ICT news」というタイトルでアフリカのICT関連ニュースの一年間の統計情報が掲載されていた。その調べによると、1年間で最も取り上げられたトピックは「Mobile」かと思いきや「Broadband」である(←1番多く付けられたタグが「Broadband」ということから、そのように考えた)。この辺りからも、インターネットへの期待感=繋がることへの期待感を感じる。近い将来、途上国開発や援助のメインアクターは、政府援助機関や国連だけでなく、普通の人々に移行していくのかも。是非、そうなって欲しいところである。

ICT4Dにおける政府の役割とは

10月1日のRichard Heeks教授による公開勉強会を通じて、「ICT4Dにおける政府の役割とは?」ということを考えてみた。個人的には、以下の点から、政府の役割はインフラ的な部分を整備することだと考えている。

ICT4D→Network4D
ICT for Developmentという言葉でICTを利用した途上国開発を考えるとき、学校にPC教室を整備するといったプロジェクトよりも、携帯電話やインターネットを利用した途上国の人々が裨益するサービスの方が遥かに可能性・効果があると思う。OLPCのようにハードを整備したり、ネットワークに繋がらないスタンドアロンのIT機器を利用することにも勿論効果や意味があるけれど、M-PESAにし、Kivaにしろ、Ushahidiにしろ、ICTによって途上国開発に今までなかった方法を生み出しているのは、ICTの効果の中でも特にネットワーク機能を利用しているものである。また、Richard Heeksの言うところのDevelopment2.0は、人人が繋がることで可能となる類のものと言える。

「ツールとしてのICT」→「インフラとしてのICT」
「ICT4D→Network4D」への変化は言い換えると、ICT4DにおけるICTの位置づけが「ツールとしてのICT」から「インフラとしてのICT」に変化したとも言えよう。そして、インフラとしてのICTが意味することは単にネットワークが繋がるインフラではなくて、みんなが使っているという点でインフラとしての機能しているということだ。例えば、携帯電話とインターネットを比較すると、明らかに携帯電話を利用したICT4Dプロジェクトや試みが注目を集めている。PCとインターネットで出来ることの方が多いにもかかわらずだ。これは、途上国でも携帯は一定数の人々が使っているけど、インターネットユーザー数はまだまだ低いからと考えられる。ネットワークで繋がることが出来るユーザー数が多くなければ、メリットはない。そして、一定数以上のユーザー数を確保し「インフラとしてのICT」化するには、みんなが使えること必要であり、その為には、安定した電力供給、通信インフラ、手頃な使用価格、などが前提条件である。

政府の役割は基盤整備
電力や通信インフラの整備、適切な価格競争を導く為の市場開放(国営独占でなく民間企業の参加など)、さらには、ユーザーが安全にインターネットや通話を利用出来るためのセキュリティ対策といったことがきちんと行われることが、ICTを活用した新しい途上国開発を実現・促進させるための基盤であり(仮に“ICT4D基盤”と呼ぶ)、これらの分野は民間では実施し難いエリアだろう。したがって、このICT4Dの基盤といえる分野を整備することが政府の役割と考えられる(以下の図)。逆に、こういった基盤部分が適切に整備されていれば、オープンソースのソフトを利用したり、Googleなどが提供するツールを利用して、個人でも様々なICT4Dアプリケーションやサービスを作り出せるし(例えば、Ushahidi)、NGOや民間企業による様々な取り組みが可能となる(例えば、P-MESAやKivaなど)。

上記の図では、ICT4D基盤の上に、色々な途上国開発に貢献するサービス(仮に“ICT4Dサービス”と呼ぶ)が成り立つという意味で、ピラミッド型で表示しているが、一方で、この基盤をきちんと整備出来れば、多くのICT4DサービスがNGOや民間企業のBOPビジネスやCSR活動によって作られると考えると、下記の図のようにも表示できる。

正確には若干異なるかもしれないが、イメージとしては、上の層に行くほど色々なアクターが様々な取り組みが出来る可能性が広がっていると考えられるんじゃないかと感じている。それため、上の層(=地域やセクターにあったICT4Dサービスを作り出すこと)は、NGOや民間企業に自由にやってもらい、下の層(ICT4D基盤)の整備を政府が力を入れてやるという住み分けが良いのではないかと考える。

また、援助機関に関しても、個別にICT4Dサービスを支援することをやるよりも、いっそのこと、ICT4D基盤の整備にもっと力を注いだら結果としてICT4Dサービスの支援になるのではないか?とも思う。勿論これでも、電力や通信インフラといった分野における支援は長年やってきているが、社会経済基盤整備の支援という視点に加えて、ICT4D基盤の整備でもあるという視点から、通信事業の民営化やセキュリティ対策といったことろまで包括的に支援することが重要だろう。

最後に付け足すと、ICT4D基盤としては言及しきれていない要素もある。それは、識字教育や情報リテラシーといったものもだ。ICT4Dサービスを利用するためには、識字能力(場合によっては英語力も)をはじめ、得た情報を知識化する能力や情報の真偽を見極める能力も必要で、つまり教育もICTを活用するには不可欠ということになる。教育を含めて、ICT4D基盤を整備することが出来れば、「インフラとしてのICT」が途上国開発の大きなトリガーになると期待できる。

ITとI「C」T

一昔前に、IT革命という言葉が流行っていたが、最近では、ITという言葉よりも、ICTという言葉が使われるようになっている。例えば、このブログのタイトルもIT4Dではなくて、ICT4Dである。ITとICTの違いはCがあるかないか。つまり、Communicationが重要視されてきたことが、ICTという言葉が使われるようになった理由だとわかる。最近、このコミュニケーションの重要性を感じるプロジェクト・事例が目についたので、まとめてみる。

世界銀行が実施するコンテスト。世銀が無料で提供する様々なデータ(World Development Indicators, Africa Development Indicators, Global Finance Indicators, and Doing Business Indicators)を利用して、途上国開発に貢献するアプリケーションを作製するアイデアを募っている。携帯アプリ、SMS、普通のPCで動くソフトウェア、Webベースのソフト等、幅広い範囲で、ソフトウェア開発者やNGOなどの途上国開発の実務者などからのアイデアを募集するようだ。詳細はこの10月に正式発表予定。ちなみに同様の似たような試みとして、Apps for Healthy KidsApps for Democracyなんていうのもある。

ソニー、国際NGO「世界自然保護基金(WWF)」、デザイン・コンサル会社「IDEO」が協力して、ソニーの技術を地球環境保護に役立てるアイデアを募集している。現代ビジネスというサイトにわかりやすい説明が載っている。Webサイト上で、お題にあげられた課題について、誰でもが自由にアイデアを出したり、他人のアイデアを評価したり(“拍手”とか)しながら、最終的に一番良いアイデアをユーザー投票で決めるというもの。不特定多数のユーザーからのアイデアを、ユーザーが評価し、最終的にスポンサー(=お題となる課題を出した会社など)が気に入れば、そのアイデアが実際に製品やサービスになる。同様な試みとしては、「GE’s Ecomagination Challenge」というのがあり、GEがスマート・グリット・テクノローの活用アイデアを募集するサイトで、こちらもユーザが応募者のアイデアを評価する仕組みがある。

このブログでも一度紹介したことがある危機管理Webサイト。ケニアの選挙に絡んだ暴動が起きたときに、どこの地区で暴動や事件等が起きているかを共有するために作られたWebサイト。ユーザーが携帯で「エリアAで暴動あり」とか、「エリアBで警官による暴力事件あり」みたいな情報をアップデートし、その情報がGoogle Maps上に反映されるというもの。オープンソース・ソフトウェアとしてアップロードされたところ、インドやメキシコでの選挙監視や中東ガザ地区の武力行為の状況把握、ハイチでの地震災害時の状況把握などにも利用された。(こちらも詳しい内容は現代ビジネスに記載されています)

以上を見てみると、コミュニケーションがキーになっていることがわかる。「情報ソースは提供するから情報の使い方のアイデアを出してね」といったApps for Development。ユーザからのアイデアのみならず、評価もユーザーに委ねるオープン・プラネット・アイデアズ。掲載するコンテンツの提供元がユーザ自信であるUshahidi。どれも、単なる情報提供ではなく、コミュニケーションである。

さらに、Ushahidiが誕生したきっかけは、まさにICTによるコミュニケーションによるものである(以下、現代ビジネスから引用)。

(ここから)・・・・・・ウシャヒディは2008年の初め、当時31歳の女性弁護士、ブロガー、活動家であるオリ・オコーラ氏のひとつの小さな行為から生まれました。前年末にケニアで実施された大統領選挙での不正疑惑に対し、国内各地で暴動が勃発、報道規制が敷かれる中、オコーラ氏は現地での状況を絶え間なくブログに掲載していたのです。どの地域でどのような暴力事件が起きたか、被害状況等に関し、更新を続けていたのです。
すぐに一人で情報更新することが追いつかなくなり、ブログに助けを求めました。
「誰かエンジニアの人で、グーグル・マップス(無料地図情報サービス)を使って暴動発生箇所と破壊状況のマッシュアップ(融合)サイト作ってくれない?」
すぐに二人のエンジニアが手を上げ、約3日間の週末作業で作られたソフトウェアが、危機災害時の情報集約ビジュアルサイト、ウシャヒディの始まりでした・・・・・・(ここまで)

ブログという情報発信ツールにより、技術を持った善意の第三者と繋がった点、また、Ushahidiがその後オープンソース・ソフトウェアとして様々な用途に様々な人達によりカスタマイズされていっている点などもICTの持つコミュニケーション機能がなくてはありえない事象である。

最近読んだ本「大人のための勉強方」(和田秀樹著)という本に、以下のようなことが書いてあった。
「情報とは知識化されていないときわめて使いづらいし、自分の知識にもなりにくい。そして、知識化された情報に出会うためには、他人のお世話になるのがいちばん。情報に出会うことは独学でも容易だが、知識に出会うには人を介するのがいちばん有効
インターネットや携帯電話といったICTがもたらしたメリットは、「情報」ではなく、知識を持った「人」と繋がることなのだと改めて感じる。つまり、コミュニケーション。これが重要だからこそ、「IT」じゃなくて「ICT」って言葉が使われるようになったのだと、いまさらながらに納得しました。

途上国での携帯電話普及の条件

このブログでも何度か取り上げておりますが、途上国での携帯電話普及のインパクトって、最近良く話題になっとりますなぁ。EconomistのSpecial Report(9月26日)に、「Mobile marvels」という題名で、途上国における携帯の話題が掲載されてました。そのなかからちょいと気になった点をご紹介。

途上国で携帯が普及した条件(要因)として、大きく3つの要素が上げられています。
1.プリペイド方式・・・銀行口座を持たない人や信用度の低い人でも携帯が使えるようになった!
2.機器価格の低下・・・携帯電話の本体価格が安くなって、途上国の人も手が届くようになった!
3.通信市場の自由化・・・政府系通信公社の独占から民間(外国資本も)参入により競争化⇒低価格に!

このレポートでは上記の3点が上げられていました。ここで「なるほど」と感じたのは3.「通信市場の自由化」。
例として、エチオピアとソマリアの携帯電話普及率が取り上げられていました。
未だに政府系公社が通信市場を独占しているエチオピアの携帯電話普及率は、3.5%(2008年末:100人のうち3.5人が携帯使っているという意味)であり、アフリカの平均40%にほど遠い数値になってます。さらに、エチオピアの隣国ソマリアと比較すると、ソマリアの携帯電話普及率は7.9%!内戦でエチオピアよりも混乱している国なのに、携帯普及率はソマリアのほうが高いのです。その理由として、エチオピアの通信市場が独占状態なのに対し、ソマリアでは通信市場の規制がなく、複数の通信企業がしのぎを削っている点が指摘されていました。

また、このレポートでは携帯電話の普及による民主化についても述べられていました。
携帯電話によって選挙速報が各地の投票所からラジオ局に伝わり放送されることで、あとから投票数を不正することが防止されたり、民主化運動にテキスト(携帯メール)が利用されたり、といった例があります。
いつくか紹介されている例で最も興味深いのが、「Ushahidi」というWebsite。「Ushahidi」とはスワヒリ語で“証言”という意味。このWebsiteは2008年のケニアの選挙暴動を機に開設され、危険情報(暴動があったとか、発砲事件があったとか)を掲載し共有するためのサイト。これが携帯からもアクセス可能だという。(Ushahidiについて、http://greenz.jp/2009/09/28/ushahidi/に日本語で書いてあります)

ここで話が戻るのですが、携帯電話による民主化についても、やっぱり通信市場の自由化に代表される政府の政策がカギなんだろうと思う。自分も現地にいた2005年のエチオピア総選挙では、それまで利用できたテキスト(携帯メール)が、全く使えなくなった。勿論、理由は現政権が反与党派の活動を制限するため。うーむ・・・。今は再びテキストが利用可能になっていますが、2010年のエチオピア選挙時にどうなるのか?