インドのITセクター概観

1月 12, 2010

maki@久々登場です。。

Univ. Manchester のICT4DのブログにインドのITセクターの統計がでていた。
表やグラフはこのLinkに示されるとおりであり、Prof.Heeksのまとめの2点の直訳は以下。

・インドのソフトウェア産業の伸びはこの直近10年の平均で30%以上の数値をみせており、輸出の伸びは2008年度で360億ドルを超えるということ。

・インドのソフトウェア産業の輸出の伸びは国内市場のそれと比べて非常に大きな伸びを見せていること。その結果、1991年度に市場の19%であったもの輸出の割合が2008年度には69%のシェアとなったこと。

丁度、大学院の卒論でもインドのITセクターについて扱ったので少しだけ補足&蛇足コメント。

確かに、インドのIT産業、特にソフトウェア輸出の伸びは凄い。でもグラフを見ると確かに直近10年の伸びは30%以上だけれども、昨年度に関しては、伸び率は5%をきってしまった。これは欧米への輸出に大きく頼ったITセクターの歪な構造故に、リーマンショックによる不況の影響を大きく受けた結果だ。(もちろん、そんな世界不景気の中でも伸びを見せることは凄いことなのだけれども。)インドのITブームの要因の一つとして、Y2k対応のために、欧米の大企業がソフトウェア対応が間に合わずにインドへ外注したことから始まったとされる文献をいくつか読んだ。その影響もあってか、2002~3年頃のITバブル崩壊のときも、きちんとITセクターのグラフはへこんでいる。たまに読むMLでYahooグループにeGovINDIA@yahoogroups.comというのがある。投稿が活発なので正直全部読めていないけれども、「なぜ外国に対しては最先端のITシステムを提供しているのに、国内ではちゃんと利用できていないんだ?」っていう投稿をちらほら見かける。でもBOP的観点でインド全体を見回せば、国内市場の爆発的な伸びはこれからどっと押しよせて、このいびつな輸出vs輸入の構造もまた逆転していくんだろうか、とも思った。


アフリカ向けコピー機

1月 6, 2010

週刊「東洋経済」1月9日号のタイトルが、「アフリカ ―地球上最後の新興市場― の衝撃 徹底解明!」というものだったので、思わず買ってみた。そこでも携帯電話普及率の話などが書いてあったが、ICT4Dっぽいネタもあったのでご紹介。

理想科学工業という会社が、アフリカの学校向けにコピー機(正確には孔版印刷機)販売でシェアを伸ばしているという。理想科学工業は、先進国向けの孔版印刷機モデルから機能を絞って価格を抑えた「アフリカモデル」(20万円台)をリリースし、南アフリカの小・中学校市場においてかなりのシェアを占め、さらにナイジェリアやエチオピアへも進出する予定らしい。でも、中国企業が競合製品をより安い価格(10万円台)で販売してきているということも書かれていた。さすが、中国。

確かに自分がいたエチオピアの田舎の高校でも、テストの度に手回しのガリ版印刷機で何百枚ものテスト用紙をすっていた覚えが。コピー機感覚で使えるものがあれば、超ラクになるなぁ。と、ニーズがあるのは納得。アフリカ市場で頑張っている日本企業がいることが嬉しい。是非、中国企業に負けないで日本ならではの、「長持ち」&「高品質」といった点で、アフリカ市場を開拓して欲しいです。


Gold Farming とICT4D

12月 31, 2009

このブログでも元ネタとして良く使わせてもらっているICTs for Developmentというブログで、Gold Farmingについての記事がありました。Gold Farmingというのは、ネットゲームでのアイテムを販売することを意味する言葉。自分はゲーム自体をほとんどやらないため、正直詳しくないのですが、ネットゲームでのレアなアイテムなんかを他のユーザに販売して現金を得るビジネスがあるのは聞いたことがありました。eBayなんかのオークションサイトでゲームのアイテムが売られているようです。あと、Gold Farmingとはちょっと違うけど、ゲームのプレイヤーのレベルを上げるアルバイトなんかもある。

ゲーム会社の意向は置いておいて、このGold Farmingが途上国に済む人々が現金収入を得る手段となる可能性があるということを、ICTs for Developmentブログは指摘している。確かに、先進国でゲームのアイテムが販売されている価格と途上国での物価水準を考えると、ビジネスとして「ありえる」ような気がする。Gold Farmingと途上国開発についての研究はまだあまりされていないようですが、ICT4Dの一側面として面白いテーマだと思う。


Techno-centric or Socio-technical

12月 25, 2009

ICT4Dプロジェクト成功の鍵となるのが、そのアプローチだと言われている。大まかに言うと、テクノロジー中心な考え方(Techno-centric approach)では上手くいかないケースが多く、必要とされているのは、そのシステムを使用する組織なり社会なりの背景や人間関係といったものに十分注目する社会工学的な考え方(Socio-technical approach)だということ。システム開発手法でも、ChecklandSoft Systems Methodologyなどがその良い例だと言える。

上記のようなことを本で読んだりしてきた。でも、結構抽象的でわかったようでわからないというのが正直なところだ。Techno-centricな考え方とSocio-technicalな考え方とは、具体的にどういうことを意味しているのか?

最近、そのことを改めて考えてみた。例えば、新しく導入したシステムがユーザに思い通りに使ってもらえないとき、その解決策としてどういう策を選ぶのかがアプローチの違いかと思う。システムに新しい機能を追加したり、使い勝手を良くしたりすることでユーザにより使われるようにするのが前者(Techno-centric)。そして、「なんで使われないのか?」をシステムを使う目的がないのでは?とか、そもそも「これくらいの利用率があるだろう」という目標の設定が違っていたのでは?ということから考えて解決策を見つけるのが後者(Socio-technical)なのだろう、と思う。常に後者がベターとは言い切れないが、まず後者のアプローチから入っていくのがベターだと言えよう。ポンポンと機能追加やカスタマイズを繰り返しても、問題の本質を見つけようとしなくては、問題は解決できないから。

なんかわかりきったことのようで、なかなか難しい。特に、自分の得意分野がテクニカルな方であればあるほど、そちらからのアプローチになるのが自然だろう。

今回、こんなことを考えたきっかけは、最近「ITストラテジスト」という資格に受かったから。プチ自慢ですが、色々と見聞きするところでは、情報処理系資格の中でもこの資格は難しいレベルのものだ。SE経験や技術的バックグランドを持たない自分が受かったことに驚いたが、Socio-technicalな小論文が功を成したのだと思う。問題にたいして、技術的な解決策をポンと出すのではなく、問題の原因を組織体制やスタッフ同士の人間関係に起因するものとして解決策を導き出した点が評価されたのだろう。そして、こういった資格が難しいレベルになっているということは、つまり、技術畑で経験を重ねてきた人達にとっては、技術的な解決策が先に思いつくのだと思う。自然と言えば自然だ。

しかしながら、Socio-technicalなアプローチを取るにしても、最終的には技術的な視点が必要となるケースが多いだろう。結局、どちらの視点も大事ってことか。そのバランスを上手く取ることがICT4Dプロジェクト成功の鍵なのだろう。


気候変動とICT

12月 22, 2009

ICTと開発(ICT4D)やICTと教育(ICT4E)といったように、ICT for・・・というように、ICTが活用出来る範囲は広く、正直「なんでもあり」感がある。

最近COP15などもあり良く話題に上がる気候変動。この分野でも途上国でICTがどう役立つかということについて書かれたブログが。BCO AllianceというICT4D分野で活動するNGOが”Planting the knowledge seed: Adapting to climate change using ICTs” というレポートを発表している。ICT自体の電力消費量を減らすという話もあるが、ここではそうではなくて、気候変動によって被る被害をICTによる情報提供によって避けることが出来るという点が例としてとりあげられている。気候変動によって井戸等の水の質や水量が変わることや津波についての情報などを、ICTによって地域住民に正確、迅速に伝達出来るようになるといったもの。

ICTのツールだけに、「ICT4・・・」の「・・・」に何が入るかは本当に何でもありだなぁ。


Top-downアプローチが悪いのか?

12月 17, 2009

Global VoiceというWebsiteに“ICT4D: Past mistakes, future wisdom”という題名で、ICT4Dプロジェクトが失敗する理由についての考察が述べられていた。「ICT4Dプロジェクトは全般的にTop-downアプローチがとられるが、現場の人々への考慮を欠いたTop-downアプローチはプロジェクトを失敗へ導く傾向が強い」といったことが書かれている。そしてTwitterでのICT4Dプロジェクトの失敗に関する議論をいくつか紹介していた。色々な意見があったが、程度の差はあるもののどれもその通りだと思った。

自分も以前、修士論文をまとめたときに、エチオピアの遠隔教育プロジェクト(プラズマTVの導入)も現場の教師を無視したTop-downアプローチであり、それが問題であるといったことを書いた。そして、多くのICT4D、もしくは先進国におけるITプロジェクトに関する論文や本でも、「Top-downアプローチは駄目」みたいなことが良く謳われている。しかしながら、最近、本当にTop-downアプローチは悪なのか?と疑問を感じるようになった。

Top-downでことにあたるのは悪くなく、そのトップが正しい判断を出来ない点が本当の問題なのではないだろうか?Bottom-upでことにあたるのは、民主主義的で現場重視という感じがして良さそうな気がする。しかしながら、現実的には組織はピラミッド型なわけで、最も数の多いBottomの人々の意見を聞いていたら、まとまる可能性は低い。しかも時間が凄いかかる。結果、みんなの意見をちょっとずつ取り入れた妥協の産物的システムは、誰にとっても不満足な出来になってしまうのでは?だったら、トップが(あくまでも正しい判断でという前提だが)グイグイ引っ張っていくほうが良いのではないかと感じるようになった。最近。

問題はその判断を下すトップ層にいる人達をどう教育するかだ。「ICTのことは疎いんで・・・」みたいなことを言うトップをどうICTのプロとは行かないまでも、間違いでない判断を出来るようにレベルアップさせるのか。Top-downアプローチを批判するよりも、トップのICTレベル向上を目的にした支援も有効だと思う。


ケニアのGoogle Maps

12月 15, 2009

Google がケニアでGoogle Mapsを使ってのサービスを拡大しているという記事がGoogle Africa Blogに記載されていた。Google Mapsをケニアのドメインで見られるようにし、Google Local Businessのサービスも使えるようになった。

さらに、Google Map Makerを利用した地図の作成。Google Map Makerはユーザがそれぞれ地図に道路を書いたり、建物を追記したりが出来るツール。その地域に詳しい人が書き込めば、より詳細な地図が出来上がる。地図のWikiみたいなものだ。このツールを用いてケニア人ユーザが地図つくりに参加して、ナイロビ近辺のA地点からB地点までのドライブ道なんてものも見れるようになっている。

アフリカでは正確な地図がない地域が多い。このようなユーザ参加型で地図を作成していくというのは新しい試みで面白い。もちろん信憑性は100%とはいえないけれど。

そして、ふと思い出したのがインドのバンガロールへ行った時のこと。タクシー運転手に行き先を告げて、価格交渉して、スタートしたにもかかわらず行き先に着けず長時間迷った。その訪問はインドのe-Governmentについて話を聞いたりするためのものだったが、「e-Governmentの前にタクシー会社がGIS、GPSを導入すべきだな」なんて冗談を言っていたら、友人から「だが、インド人タクシー運転手の多くは地図の見方がわからないのではないか?」と言われた。うーむ、おそらくその通りだ。だから町にも地図の看板が殆どないのだろう。。。エチオピア人も地図読める人は少なかったし。

となると、ケニア人は地図が結構読めるのだろうか?地図のサービスが利用されるのだろうか?という疑問が。でも、おそらく、インドでもエチオピアでも、「地図がない」から「地図が読めない」のであって、「地図が読めない」から「地図がない」わけではなかろう。Google Mapsのサービスを利用するケニア人はまだ少ないかもしれないけれど、きっと、地図があれば、地図を読めるようになって、地図を利用するんだろうなぁと思う。


ICT4Dの議論は変化しているのか?

12月 14, 2009

Webで読める本の紹介。英語なのですが、“ICT4D – Connecting People for a Better World”という本があることを最近知りました。2003年にジュネーブで開催された世界情報社会サミット(WSIS=World Summit on the Information Society)に関連して、スイス外務省開発協力局(SDC)とGlobal Knowledge Partnership(GKP)という国際団体によって作成されたものなので、正直結構古い。

それでも、ICTが貧困層を貧困から抜け出させるためのツールとなるのか、それとも、ICTは貧富の差をさらに拡大するものなのか?というテーマに沿って専門家達が意見を寄せており、あり意味ICT4Dの王道的な議論が網羅されていて全体像をつかむには良いかも。同じような本だと、ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校の教授、Tim Unwinが“ICT4D: Information and Communication Technology for Development”という本を出版していて、こっちの方が新しい情報が反映されていると思うが、買わないと読めない(しかも結構安くない値段だ)ので、Webで無料でよめる点はありがたい。

Webで読める日本語のICT4D関連の読みものとしては、以前読んだことがあるのでは、JICAの研究員という立場で山本達也氏の書いたレポート『開発途上国における情報化の進展とICT支援政策 -中東アラブ諸国の事例を中心に-』がある。自分がICT4Dという分野に興味を持った当初に読んで、こういう研究や調査をする仕事がしたいなぁと感じたのを思い出す。

色々とICT4Dの本とかレポートとかがあるけれど、そんなに沢山に目を通しているわけではないですが、なんとなく昔から議論の大筋は変わっていなくて、「ICTは開発に役立つのか?か否か」という問いに対しては、「そもそも、役立つか否かの議論は意味がない。どうしたら役立つのか?についての議論が大切」という回答が用意されており、「じゃ、どうやったら良いのか?」という問いに対して、個々のプロジェクトや国の状況に合った方法が重要、とか、ICT導入はあくまで手段なので目的を重視しないといけない、とか、ステークホルダーのコミットメントやステークホルダーを巻き込むことが重要、などの回答でまとめられている。以前と変わった点はツールとして取り上げられるテクノロジーや方法の切り口が新しくなってきたことで、携帯電話やWeb2.0といった新たなICT、BOPやCSRといった新たな方法が取り上げられるようになった点くらいでは?と感じる。それとも革新的な発見や潮流の変化ってあるのか・・・どうだろう?


インドのSMSビジネス

12月 13, 2009

Twitter経由で見ていたWebsiteの一つ「Tech Crunch」で、インドでSMSをつかった情報提供ビジネスを行っているSMSONEという企業が紹介されていた。

SMSONEのビジネスは、インターネット接続や電気すらもないような田舎の村を対象に、農作物の市場価格や、肥料や種が町で売られるタイミングなどを携帯メール(SMS)で提供するもの。まず、道で物売りをしているような村の若者などを一人みつけて、1000人の村人をメンバー登録してもらう。そして、その若者は街角レポーターのような役目を担って、村で必要とされている情報を集めたり、広告掲載を望むお店などを見つける。SMSONEは、若者の集めた情報や広告をSMSでメンバーに送りつける。SMSは受信するだけなら無料なので、村人はタダで情報を得ることができる。例えば、給水所の情報などはタイムリーに得られると便利だ。各家庭に水道ない田舎では、人々は生活用水を得るために給水所へ行く。給水所はあらからじめ「水曜、土曜の朝10:00から12:00まで水か出ます」みたいにスケジュールが決められているけれど、このスケジュールは頻繁に狂うことが。時間をかけてポリタンクを持って給水所へ来てみたら、水が出ないなんてこともよくある話。そんなとき、SMSONEのサービスで水か出るとか出ないとかがわかれば非常に便利。

このSMSONE、現在の購読者は400の地域で400,000人とのこと。今度もどんどん購読者は増えていくことが見込まれている。ローカル情報に特化したサービスで、情報へのアクセスに乏しい地域に情報を提供する。こういうビジネスがアツイ。


eAsia 2009

12月 12, 2009

今月の2日から4日にかけて、eAsia 2009というイベント(会議やワークショップ)がスリランカのコロンボで開催されていた。アジアのICT4DをテーマにeGovernment、eHealth、telecentreなどについて様々な会議やセミナー、ワークショップが行われた。この会議をリードしたのはインドのとスリランカの政府。

テレセンターについてサステイナビリティの点から自分はどちらかというとネガティブなイメージを持っていたが、このeAsia 2009のテーマの一つtelecentre forumの発表を読んで、アジア諸国ではテレセンターはずいぶん期待されているのだと感じた。世界のテレセンターの60%がアジアにあり、そのテレセンター同士のネットワーク構築といった可能性にも期待が寄せられている。

しかし、もっと気になったのは日本の参加がない点。マイクロソフトやオラクル、IBMといった米企業やIDRCやWorldBankといった援助機関は、スピーカーとしてやスポンサーとして名を連ねているのに、日本企業や日本政府系機関の名前は見つからなかった(もしかしたら日本人スピーカーもいるのかもしれませんが、自分の見た限りでは出てこなかったので、いずれにせよ日本のプレゼンスは低いことに違いはないだろう)。アジアでやってるんだから、こういうイベントにちょっとは日本も参加したら良いのになぁ。